数学史(1700-1900) I-III (Abrégé d'histoire des mathématiques, 1700–1900)
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Table of contents :
I
はじめに
原著まえがき
凡例
目次
序章 -- Jean Dieudonné
I. 数学者の生活
II. 数学者集団
III. 数学の進化と発展
参考文献
第I章 18世紀の解析学 -- Jean Dieudonné
I. 序
II. 問題
III. 厳密性と形式主義
IV. 一般的な結果
V. 特殊関数の研究
VI. 微分方程式
VII. 1階の偏微分方程式
VIII. 高階の偏微分方程式
IX. 変分法
X. 数値計算
参考文献
第II章 1840年までの代数学と幾何学 -- Jean Guérindon, Jean Dieudonné
I. 序
II. 線形および多重線形代数学
III. 代数方程式の解法
IV. 解析幾何学と幾何解析学
V. 複素射影幾何学
参考文献
第III章 1840年以降の代数学 -- Jean Guérindon, Jean Dieudonné
I. 序
II. 新しい対象上での算法
III. 線形および多重線形代数学
A) ベクトルと行列
B) 双線形形式の《簡約》定理
C) 不変式論
D) 四元数と超複素数系
E) 外積代数
IV. 体,環,イデアル,加群
A) 《古典的》体と環
B) 同値類上の演算と非古典的体
V. 群,群の作用と幾何学
A) 有限群論の始まり
B) 指標と線形表現
C) 群の作用と幾何学
VI. 現代代数学の誕生
参考文献
第IV章 解析関数 -- Jean-Luc Verley
I. 序
II. 初等関数
A) 代数解析
B) 対数論争
III. 実定積分の計算
IV. 幾何学的表現
V. Cauchyと19世紀前半のフランス学派
A) 整級数の収束
B) 線積分
C) 留数の計算
D) Cauchyの積分公式と級数展開
E) 連続関数
F) Puiseuxと代数関数
G) BriotとBouquetの論著
VI. Riemannと幾何学的関数論
A) 原理
B) Riemann面
C) 方法
VII. Weierstrassの関数論
A) Weierstrassの《視点》
B) 解析接続
C) 素因子
VIII. 複素多変数の関数
A) Cauchyの理論の拡張
B) 予備定理
C) 正則領域
D) Cousinの問題
E) 等角表現
F) 一般の解析空間
参考文献
第V章 数論 -- W. Ellison, F. Ellison
I. 数論の始まりに関する小史
II. 18世紀末
A) 整除性問題
B) 二次方程式
C) 種々の問題
D) 予想
III. 19世紀初頭
A) 合同
B) 二次相互法則
C) 四次および三次相互法則
D) 方程式 x^n-1=0
IV. 二元二次形式
A) 基本的概念
B) 表現問題
C) 二次形式の合成と種
D) Dirichletと類数公式
V. 代数的数論
A) Dirichletの寄与
B) Kummerと理想数
C) Dedekindと代数的数
D) Kroneckerと代数的数
E) Hilbertと代数的数
F) Weberと類体論
G) Hilbertと類体論
H) 代数的数の解析的理論
I) p進数,p進数論の発展
J) 類体論,1920-1930
K) Chevalleyと類体論
L) Artinのその後の仕事
VI. 素数
VII. 超越数
VIII. Diophantos近似
A) 連分数近似
B) DirichletとKroneckerの仕事
C) Minkowskiと数の幾何学
IX. 不定方程式
A) 一般論
B) 線形方程式
C) 非線形方程式
D) 不定方程式とDiophantos近似
E) 2変数以上の不定方程式
F) Hilbertの第10問題
X. n変数二次形式
XI. 加法的整数論
A) ふるい法
B) 円周法
C) 一般の整数列
XII. 有限体上の1変数代数関数体
A) Artinの学位論文
B) Davenportの問題
C) F. K. Schmidtの仕事
D) Weil予想
参考文献
II
目次
第VI章 解析学の基礎 -- Pierre Dugac
I. 19世紀初頭の厳密化の努力と収束および連続性の概念の解明
A) Carl Friedrich Gauss
B) Bernard Bolzano
C) Augustin-Louis Cauchy
D) Niels Henrik Abel
II. 三角級数,連続関数を項とする級数の連続性の問題と一様収束
A) 《任意の》関数を三角級数により表わすこと.FourierとDirichletの仕事
B) 連続関数項の収束級数とその連続性
C) 一様収束の概念の導入
III. 積分の定義
A) Cauchy式積分
B) Riemann式積分
C) 連続関数項の級数の項別積分と一様収束の概念の解明
IV. 実数,関数の一般論および集合に対する最初の反省
A) 19世紀前半におけるいくつかの無理数論
B) Martin Ohmの《完全に首尾一貫せる数学体系》とBolzanoの関数論
C) 無限の逆理
V. 実数の構成
A) Karl Weierstrass
B) Richard Dedekind
C) Charles Mérayの理論とGeorg Cantorの理論
VI. Weierstrass的厳密性
VII. 集合論の起こり
A) Dedekind流の構成
B) Georg Cantorの初期の仕事
VIII. 集合論および一般位相幾何学
A) Cantor流の構成
B) Richard Dedekindの一般位相幾何学への寄与
IX 測度論
A) 初期の発展
B) PeanoおよびJordanの仕事
C) Émile Borel
X. 算術の基礎
A) Hermann Grassmann
B) Richard Dedekindの整数論
C) Giuseppe Peano
参考文献
第VII章 楕円関数とAbel積分 -- Christian Houzel
第1部 楕円関数論
1. 楕円積分の級数展開
2. 楕円積分の満たす微分方程式
3. 楕円積分の加法定理
4. 楕円積分の標準形への還元
5. 逆関数と二重周期性
6. 二重周期有理型関数
7. 楕円積分の等分
8. 変換
9. モジュラー方程式
10. 楕円関数の級数展開および無限積表示
11. テータ関数
12. Weierstrassの関数
13. 虚数乗法
14. 楕円曲線
15. 楕円関数の応用
16. モジュラー関数と保型関数
第2部 Abel積分
17. Abelの定理
18. 逆問題,二変数テータ関数
19. 等分と変換
20. 超楕円積分についてのWeierstrassの業績
21. Riemannの業績
22. Weierstrassの理論
23. 代数曲線
24. Abel多様体
参考文献
第VIII章 関数解析学 -- Jean Dieudonné
I. 序
II. 局所的存在定理
A) 微分方程式に対する存在定理
B) Pfaff系
C) 陰関数
III. 複素領域における微分方程式
A) 線形方程式
B) 非線形方程式
IV. 実領域における微分方程式
V. Hamilton系
VI. 線形偏微分方程式とスペクトル理論
A) Fourier級数とSturm-Liouvilleの問題
B) ポテンシャル論,Laplace方程式およびDirichlet問題
C) 振動膜の方程式
D) 《無限の代数学》と積分方程式論の誕生
E) Hilbert空間
VII. 距離空間
VIII. ノルム空間とスペクトル理論
IX. 最近の発展
A) Fréchet空間
B) 双対性と超関数
C) ノルム環
D) 可換調和解析学
E) 非線形方程式
参考文献
第IX章 微分幾何学 -- Paulette Libermann
I. 序
II. 3次元ユークリッド空間内の曲線
III. 3次元ユークリッド空間にはめ込まれた曲面の研究,Gauss以前
A) 曲面の接平面の決定
B) 曲面の曲率
C) 偏微分方程式と微分幾何
D) 変分法と微分幾何
IV. 曲面の研究におけるGaussの寄与
V. Gaussの後継者達
A) 曲率と動標構
B) 測地線
VI. Riemannとn次元幾何学
VII. テンソル解析,接続の登場
参考文献
III
第X章 位相幾何学 -- Guy Hirsch
I. 序
II. 一般位相幾何学
III. 組合せ的位相幾何学
A) グラフと4色問題
B) Eulerの公式
C) Riemannの寄与
IV. ホモロジーの翌場
A) Poincaréの仕事
B) 複体とホモロジー
V. 双対性
A) Poincaréの定理とAlexanderの定理
B) Hopfの仕事と圏
VI. 不変性,Brouwerの仕事,ベクトル場
A) 不変性,基本予想
B) Brouwerの仕事,不動点
C) ベクトル場Stiefel-Whitney類
D) 次元
VII. 積構造
A) コホモロジーと積構造
B) H空間とHopf代数
VIII. 基本群と被覆
A) 基本群
B) アルゴリズム
C) Poincaré予想
D) 被覆
IX. ホモトピー群とファイバー束
A) ホモトピー群
B) 随伴関手
C) Eilenberg-MacLane空間
D) ファイバー束
X. 3次元多様体,単純ホモトピー型,CW複体
A) 3次元多様体,レンズ空間
B) 単純ホモトピー型
C) CW複体
D) 基本予想,区分的線形構造,微分構造
XI. 結論
参考文献
補足的読書のための示唆
第XI章 積分と測度 -- Jean Dieudonné
I. 積分の定義
II. 基本定理
III. Stieltjes測度とRadon測度
IV. 《抽象的》測度
参考文献
第XII章 確率論 -- Michel Loeve
I. 序
II. 創成と古典期
A) 創成
B) 古典期
III. 解放
A) シャム型三つ児
B) 確率と測度
IV. 20世紀
A) 確率過程
B) 確率的構造
T1 現代的極限問題の解:
T2 定常性の定理:
T3 マルチンゲールの定理:
T4 積分分解定理:
V. 分枝
参考文献
第XIII章 公理論と論理学 -- Marcel Guillaume
I. 序
II. 19世紀における公理的方法の変遷
A) 平行線の問題
B) 非ユークリッド幾何学の出現
C). 《解析的》方法と《総合的》方法の支持者間の論争
D) ユークリッド公理論の批判
E) Cayleyの総括からErlangenプログラムへ
F) Paschにおける幾何学の公理論の構想
G) 19世紀最後の10年間の公理主義
H) Hilbertとそれ以後の幾何学の基礎
III. 19世紀末までの形式化の発展とその役割の理解
A) 数学の記号法の発展における基本的段階
B) 計算法および数学の意味と範囲に関する見方の変遷
IV. 19世紀の数理論理学
A) 論理の代数と命題計算
B) 関係の理論
C)_ FregeとPeanoによる公理化された論理学
V. 20世紀の偉大なる理念
A) 論理主義と型の理論
B) 集合論
C) Hilbertのプログラム
D) 直観主義とその他の非古典的見解
E) 帰納的関数
F) モデルの理論の登場
G) Hilbertの第1問題の解決
参考文献
歴史人名一覧
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J・K
L
M
N
O・P
R
S
T
U・V
W
Z
訳者あとがき
索引
人名索引
A・B
C
D
E・F
G・H
I・J
K・L
M
N・O・P
Q・R
S
T・U・V・W
X・Y・Z
事項索引
A・B
C
D
E・F
G
H
I
J・K
L
M
N・O・P
Q・R
S
T
U・V・W・X・Y
Z

Citation preview













1700-1900



I



J.







デュドオ、編



\\; 字



1700 -1900



史 I



上野健爾金子 晃 浪川幸彦森田康夫訳 山下純一



岩 波 書 店



,



,



ABREGE D'HISTOIRE DES MATHEMATIQUES 2 volumes edited by Jean Dieudonnも Copyright©1978 by Hermanrt, Paris This Japanese edition is published in 1985 by Iwanami Shoten, Publishers, Tokyo by arrangement with Hermann, Paris.



V



はじめに 本書は 1 9 7 8年にパリの Hermann社 か ら 刊 行 さ れ た J e a nD i e u d o n n e : Ab-



r e g ed ' h i s t o i r ed e smathematiques1700-1900を,名大の浪川幸彦氏らが邦訳 されたものである.原著の意図や邦訳の経緯については,‘原著まえがき’および ‘訳者あとがき’にそれぞれ明らかにされているが,実は私も本書が日本の読者に 多くの碑益をもたらすであろうと考え,邦訳を慾憩したひとりであった.



1 7 0 0年から 1 9 0 0年までの数学史要約”ということになろ 原題を直訳すれば " うか.



(訳書の題からは省かれているが,‘‘要約”というのにも意味があると思う.



それについては後に触れる.)古代ギリシャから今世紀に及ぶ数学の長い歴史の



8世紀と 1 9世紀を特に選んだのは,‘原著まえがき’にもあるとおり, うちから, 1 現代数学の材料のほとんどすべてがこの時期に作られたからである.それに大学 初年級程度の知識を仮定すれば,そのころの数学の内容は興味のわくように書く



9 3 0年代の B o u r b a k i革命以来,今日の数学の多くの書 ことができるのである. 1 物や論文では,論理的実質を重視し,概念形成にも命題の叙述にも不要なものは すべて省き,なるべく一般的な表現がとられるようになった.フランスでは,そ の影響は中等程度の数学教育にも及んでいる.それに対し物理学者などから,今 日の数学の表現は‘あまりに抽象的’であり,本質を分り難くしているという非難 が起った.



しかし歴史的な背景を考えれば,そのような‘抽象概念’も,生まれる



o u r b a k iの創立者として,今日の数学 べき必然性があって生まれたのである. B ieudonneは,それを説明してお の表現様式の形成に責任をもつひとりである D きたかったのであろう.かれ自身数学史に関心をもち,またフランスのより若い 年代の数学史家 Dugacなどを友人としてもっている.そこで数学者,数学史家



1 1人から成るグループを作り, 1 8 ,1 9両世紀の数学の内容を,序章とも 1 4の章に わけて分担執筆した.そのようにして原著が成されたのである. 数学史の書き方としては,数学自身の内的な発達を主とするもの,他の諸科学, 社会情勢あるいは時代思想との関連を重視するもの,数学者個人あるいは集団の 生活状況等に興味の中心をおくもの等,いろいろのものがある.本書では‘内的



i e u d o n n eみずから執筆 な発達’を第一とする方針をとり,他の部面については D



はじめに



v i



した序章と,数学者個人に関する巻末の付録に多くを委ねている.(この付録は 簡単なものではあるが,多くの数学者を採り上げていて便利である.) 方針がこのように定められても,数学史の内容は執筆者の興味あるいは判断に よって大きく左右される.本書は上述のように各章を分担して執筆したもので, 執筆者にはそれぞれ個性がある.全体として大きな遺漏や重複がないようにし, 同じ事項が異なる個所で扱われるときは参照し合うように注を入れるなど,よく 連絡がとれてはいるが,執筆者の個性はそれぞれ生かされており,章の書き方は 必ずしも統一されていない.ある章では, 20世紀のかなり進んだところまで書か れているのに,他の章では 1 9世紀のそれほど進まないところまでで打切られて いる.読者によっては,ここのところをもっと詳しく書いておけばよいのに,な どと思われるところもあるかもしれない.(ここに原著の標題にある‘要約’とい



8 ,1 9世紀の数学といえば,ずいぶん厖大なも うことの意味があると思われる. 1 ので,現代式に表現したとしても,その結果を網羅するには何巻を要するか分ら ない.網羅を目指さず,執筆者の見識によって書くべき内容を精選し,全体が見 渡せるように要領よく体系づけるのが,‘要約’の意味であろう.) 私は本書のどの章にも,数学的内容,歴史的事実あるいは叙述のしかたについ て,今まで知っていた以上のものを見出し,多くのことを教えられた.(私の知 っていることで書かれていないものもあるが,それを省いたのも著者の見識と見 られよう.)読者のうちには,原著者の史観に必ずしも同意されない方もあろう が,それでもなお本書には学ぶべき多くのものが見出されるであろう. 原書は 2巻になっているが,訳書は 3巻にわけられた.訳者諸氏はわが国の読 者のための訳注や邦語の参考文献を加えられた.読者は時間の都合でどこからで も 1章ずつ読まれるのもよいが,私としては,いつかは 3巻とも通読されること をおすすめしたい. このごろ学問の専門分化が進み過ぎているようなので,こう した本で全数学を通観されることは,特に有用なことと思われる. 1 9 8 4年 5月



禰永昌吉



..



Vll



原著まえがき 現在の数学教育の性格が抽象に走りすぎているという非難をよく聞く:伝統的 な数学の対象とほとんど共通点がない一般的見地から見て基本的と考えられる概 念を,次から次へと導入する傾向があると.もしこのゆき方が,いろいろな場合 に使える十分に一般的な定理に早く到達するために必須であるとしてある程度正 当化されるとしてもなお,これらの一般的な概念が,その起源と,特別ではある がより直観的な概念からどのようにして発展したかとを知ればよりよく理解しう るということにかわりはない. 本書の目標は現代数学の最も基本的な諸概念を歴史的な流れの中に置き戻し, 概念それ自体がどう進化したか,あるいは自然科学への応用上の問題とどう関係 したかを見ることによって,現代数学の理解を容易にすることである.ここでは



1 7 0 0年から 1 9 0 0年ころまでの期間を通じての数学のさまざまな分野における主 な概念や成果の発展の跡をたどる. この期間を選んだのは,まず第 1に,やっと 1 7泄紀の終りになって,それ以後 ずっと数学を支配する基本的な道具が整備されたからである:その道具とは微分 積分学と D e s c a r t e s座標の方法であって,現代の数学を特徴づける,代数学,幾 何学,解析学の融合の萌芽を含んでいる.



1 8世紀は解析学が主流であって,それは幾何学,力学,天文学,確率論へ応用 されて目ざましい成果を積み上げる. 1 7 8 0年から 1 8 1 0年ごろまでの小休止のの ち解析学は,ー変数複素解析関数論の驚異的発展とともに再びあらゆる分野で征 服への進軍を再開する.その歴史の最も驚くべき一章は恐らく楕円関数, A b e l 関数,モジュラー形式,モジュラー関数の発見と研究であって,それらは 1 9世紀 数学のまさに核心をなすと言っても過言ではない.実際,楕円関数とモジュラー 関数の理論はさまざまな方向に枝分れして,当時の代数学の復興,特に群論のあ らゆる方向への発展と関係するばかりでなく, G aussの始めた代数的数論のすば らしい開花とも結びついて,以後それから離れることなく,そこでの最も深い研 究テーマを与える.一方で A bel関数論の諸問題は, Riemannとともに現代の代 数幾何学と位相幾何学を生むことになる.



.1 > •1 •1



原著まえがき



まさにこの発展の過程において,当時の数学者達は多くの新しい“抽象的な .



iらを知らず知らず無意識に感じ始めていた:任意次元の空間,種々の代数的, 位相的構造等々.それらは“数"'"図形”と言った古典的な概念とはもはやほん のわずかの関係しかないが, しかしそれらの概念なくしては,新しい諸結果が現 在および得たすべての範囲に達することは不可能であった.



9世紀数学の第 3の基本的特色は,基本的な概念と許される推論様式 最後に, 1 の性質を再検討しようとしたことである.このような反省は 1 8 0 0年に既に始ま



e i e r s t r a s s的“厳密さ”と,ただ一つの源である集合論に り,解析学における W 結び付ける形での,(幾何学だけでなく)あらゆる数学理論の公理的な定式化へと 到達した. このようにして, 1 9世紀末には現代数学のすべてのテーマが現われていた.本 書の読者は,大学 2 , 3年までの範囲内の知識の準備さえあれば,抽象化された数 学的概念が偶然のものでも根拠のないものでもないことを理解されるであろう. さらにおそらく読者は,この定式化が数学の概念を極めて広げ豊かにしたことを 理解し,さらに新しい道具の使える一般的な枠組の中に置くことによって,古典



0世紀になって解けるようになったのを 的な方法では歯が立たなかった難間が 2 知ることができるであろう.



i x



凡 例 1 . 数学用語の訳は原則として日本数学会編「数学辞典」(第 2版)による.数学 辞典にないものについては訳語のあとに括弧を付して原語を掲げた.



2 . 人名,地名(国名を除く)は原語綴とし,ロシア語は数学辞典に従ってアルフ ァベット化する.



このため原書のフランス語綴とはしばしば異なる.



3 . 引用文についてはすべて原典にさかのぼって訳し,重訳を避けた. このた めフランス語原文と異なる場合がある.原典の邦訳がある場合,それらを参照は したが,直接引用することはしていない.



4 . *)を付した脚注は原著者による. 5 . 訳注の短いものは[



]に入れて本文中に挿入し,長いものは[*]を付して脚



注とした.



6 . 〔 〕は引用文への原著書による補足である. 7 . 文献は各章ごとに章末にまとめられている.文献表のうち,数字あるいは ひらがなに(



)を付したものは訳者による追加分である.



8 . 数学用語の説明について,原書は多く [G-HJを参照させているが,本書の 読者は「数学辞典」の当該項を見られるとよい.



x i



目 次 はじめに



原著まえがき



凡 例 序 章 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .1 I数 学 者 の 生 活 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .2 I I 数 学 者 集 団 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5 I I I 数学の進化と発展 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0



第 I章



1 8世紀の解析学



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21



I序 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .21



I I 問 題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .2 2 I I I 厳 密 性 と 形 式 主 義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .22 IV 一般的な結果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 7 A) 導関数と積分の計算法則 B ) 大きな数の関数 C )E u l e r ) 三角級数 E ) 連分数 Maclaurinの和公式 D V 特 殊 関 数 の 研 究 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .35



A) 初等関数 B )B e s s e l関数 C ) 超幾何関数 D ) ガンマ関 u l e r積分 E ) 積分計算 数と E



F ) Legendre多項式と球関数



VI 微 分 方 程 式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4 2



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 4 7 VII 1階の偏微分方程式 ・ 階 の 偏 微 分 方 程 式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5 1 VIII 高 IX 変 分 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5 4







. .



Xll







X 数 値 計 算 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5 6



第I I章



1 8 4 0年までの代数学と幾何学..……•…………….. ,60



. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6 0 I序



A) 1 7世紀中葉の代数学と幾何学の状況 B ) 諸問題



I I 線形および多重線形代数学.............................................6 3 A) 行列式の理論 形変換



B) 一次結合,一次従属性,可換群



C) 線



D) 固有値 E) 双線形形式,二次形式と双対性



I I I 代数方程式の解法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・.....75 A) ((代数学の基本定理))



B) 根号による方程式の解法



IV 解 析 幾 何 学 と 幾 何 解 析 学 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 7 A) 代数幾何学の誕生



B) ベクトルの概念の導入



V 複素射影幾何学・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 2 A)一般性の研究 B) P o n c e l e tの 構 想 C) 射 影 的 性 質 と 計 量的性質



第I I I章



D) 変換と双対性



E) 1 9世紀の幾何学



1 8 4 0年以降の代数学 . .・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104



I序 ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 4



I I 新しい対象上での算法・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 5 I I I 線形および多重線形代数学 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 6 A) ベクトルと行列 式論



B) 双線形形式の((簡約))定理



D) 四元数と超複素数系



C) 不 変



E) 外積代数



IV 体 , 環 , イ デ ア ル , 加 群 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 2 7 A) ((古典的》体と環



B) 同値類上の演算と非古典的体



V 群,群の作用と幾何学 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 2 A) 有限群論の始まり 何学



B) 指標と線形表現



C) 群の作用と幾







. . .



X l l l







VI 現代代数学の誕生 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 4 0



第 IV章



解析関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 4 9



. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・1 4 9 I序 .



I I 初等関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 5 0 A)代数解析 B) 対数論争



I I I 実定積分の計算 .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 5 6 IV 幾何学的表現 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ' ・ ・ ・ 1 6 0 V C auchyと 19世紀前半のフランス学派……………………… 1 6 2 A) 整級数の収束 B)線 積 分 C) 留 数 の 計 算 の積分公式と級数展開 数



D) C auchy



E) 連続関数 F )P u i s e u xと代数関



G )B r i o tと Bouquetの論著



VI Riemannと幾何学的関数論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .… . .… . . . . .… 1 7 1 A) 原理 B ) Riemann面



C ) 方法



VII Weierstrassの 関 数 論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・1 7 7 A) W e i e r s t r a s sの((視点)) B ) 解析接続 C ) 素因子 V I I I 複素多変数の関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 8 1 A) Cauchyの理論の拡張 B )予備定理 C )正 則 領 域 D ) C o u s i nの問題 E ) 等角表現 F ) 一般の解析空間



第 V章 数



論 •• ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 8 9



I数 論 の 始 ま り に 関 す る 小 史 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .1 8 9 I I 1 8世紀末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ : ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 9 2 A) 整除性問題



B) 二次方程式 C) 種々の問題



D) 予想



I I I 1 9世紀初頭 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 9 8 A) 合同



B) 二次相互法則



D) 方 程 式 炉 ー 1=0



C) 四 次 お よ び 三 次 相 互 法 則



x i v



目 次



IV 二 元 二 次 形 式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .2 0 6 A) 基本的概念



B) 表現問題



C) 二 次 形 式 の 合 成 と 種



D)



D i r i c h l e tと類数公式



v 代数的数論...........................: •...........•.................•..•....•.. 2 1 7 A) D i r i c h l e tの 寄 与 B ) Kummerと理想数 C )D e d e k i n d と代数的数 的数



D ) Kroneckerと代数的数 E )H i l b e r tと代数



F ) Weberと類体論 G )H i l b e r tと類体論 H) 代数



的数の解析的理論



I ) p進数, p進 数 論 の 発 展



J ) 類体論,



1 9 2 0 1 9 3 0 K) C h e v a l l e yと類体論 L )A r t i nのその後の仕 事



VI 素 数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3 0 6 VII 超 越 数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3 2 2 V I I I D i o p h a n t o s近 似 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3 2 5 A)連分数近似 B )D i r i c h l e tとKroneckerの仕事 C )Minkowskiと数の幾何学 D ) 有理数による代数的数の近似 IX 不定方程式 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 3 7 A) 一般論



B) 線形方程式



C) 非線形方程式 D) 不定方程



式と D i o p h a n t o s近似 E ) 2変数以上の不定方程式 F )H i l 0問題 b e r tの第 1



X n変 数 二 次 形 式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3 5 5



XI 加 法 的 整 数 論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3 6 2 A) ふるい法



B) 円周法



C) 一般の整数列



XII 有限体上の 1変数代数関数体...・・・・・・・・・・・・・・・・..… … ・ ・・・・....… … 375 A) A r t i nの学位論文 B )D a v e n p o r tの問題 C )F . K . Schmidtの仕事 D ) Weil予想



xv



第I I巻目次 第 VI章 解 析 学 の 基 礎



II章 楕 円 関 数 と Abel積 分 第V 第V I I I章 関 数 解 析 学 第I , X章 微 分 幾 何 学



第I I I巻目次 第 X章 位 相 幾 何 学 第 XI章 積 分 と 測 度 第X I I章 確 率 論 第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学 歴史人名一覧



訳者あとがき 人名索引 事項索引







序 章 J e a nD i e u d o n n e 本書の目的は, 1 7 0 0年ころからの幾つかの重要な数学の理論の発展を簡潔に記 述することにある.それ以前の数学の歴史については,序章の末にある文献表の 書物を参照されたい.余りにも膨大になるため,数学の他の科学への応用の歴史 を扱うことはできなかった.これについても文献表に引用した書物を参照された ぃ . しかし各章ごとに,その章で扱われた数学的問題と密接に関係した,実験科 学から提出された主要な問題を列挙しておいた. 読者は少なくとも大学教養程度の数学の知識を持っているものと仮定する.本 文中,より進んだ理論,あるいは通常のカリキュラムでは扱われない理論にふれ る時には,必要な概念の簡潔な定義を与えるか,またはその定義の説明してある 易しい本を各章の終りにある参考文献に挙げておいた*). しかし, この方法にも明らかに限度がある.専門教育を受けていない読者には 歴史を理解することがほとんど不可能なふうに新しい諸概念が積み重ねられてい る現代的な諸理論については,その歴史を説こうとする試みは無益であると判断



iemann幾何学,複素 した.例えばそのような理論の例として,代数幾何学, R 解析空間の現代的理論,作用素のスペクトル論,エルゴード理論,超関数論とそ



i e群論と調和解析論,代数的位相幾何学と微分位 の偏微分方程式論への応用, L 相幾何学の大部分をあげることができる**).これらのより程度の高い理論の歴 史を知ろうという意欲と熱意のある読者のため,それらの理論について各章ごと



) * 現代数学用語と考え方に慣れていない読者がまず読む本として,特に次の書物をお 推めする(以後すべての章で [ G-H]と略記する): H.G r i f f i t h s ,P .H i l t o n ,A comprehensive t e x t b o o ko fc l a s s i c a lm a t h e m a t i c s : A comtemporaryi n t e r p r e t a t i o n ,VanNostrand・ R e i n h o l d ,L o n d o n ,1 9 7 0 . * ) この理由によって,これらの理論に至る概念の発展の歴史を往々 1 9 0 0年 よ り か な り前で打ち切らざるを得なかった.逆に,抽象的で定義の面倒な概念を多く必要としない 分かり易い問題については,概念の歴史をほとんど現代に至るまでしばしば記述した.











2•3



にいくつか文献をあげておいた. 言うまでもないことだが,本書の枠の中ではいかなる問題も,それを余すとこ ろなく扱うことは望むべくもなかった.著者達(その多くは専門の数学史家では ない)は歴史的観点,あるいは今日の数学へのつながりの点から見てあまり重要 でないと判断される事柄についてはあえて無視した. 他の科学と同様に(抽象的との評にもかかわらず)数学も現実から遊離した学問 ではないので,数学的概念の歴史と,それを導入した人間の歴史を全く別に考え ることは正しくない.本文中に登場する大部分の数学者の略伝を,必要な場合に はもっと詳しい伝記的著作名を挙げて,巻末に付録として与えた. さらに,この 序章で約 3世紀間にわたる数学者の生活と研究の方法についての一般的考察をい くらか付け加えておくのはむだではないであろう.



I 数学者の生活 本書の歴史の中で問題となっている数学者とは,彼らの発見したことがそれを 記述した出版物で知られている人達のことである.数学的創造の素質は限られた 人々に持前のもので,人種にもまた所属する社会にも依存しない.ただ後者には ある程度依存する.実際,大天才達においてさえ,完全に自分の力だけでその時 代に一般的に知られている数学の知識に達することのできた例を見つけることは できない.(この点に関する P a s c a lについての物語は伝説にすぎない.)したがっ て将来の数学者にとって,社会的環境は少なくとも,彼に本当の証明の存在する ことを示し,彼の好奇心を目覚めさせ,さらにひき続いて彼がそれについて解説 してある書物を手にとりさえすればその時代の数学を学び始めることを可能にす る,そうした初等教育が受けられるようなものでなければならない. 1 8世紀の終



e s c a r t e s , りまで,真に組織化された数学のための高等教育は存在しなかった. D a u s s ,D i r i c h l e tに至るまで,大数学者達はほとんどみな先 Fermatに始まって G 生なしに,先人の著作を読むことによって数学を習得した.今日でも,好ましい 社会的雰囲気の欠如のために多くの才能が埋れているのかも知れない.あまり発 展していない社会に数学者がいないのも不思議ではない. しかし,より発展した 国においても初等教育の方針が数学的適性の開花に好ましくないこともありうる.



0世紀に 例えば初等教育が宗教的,あるいは政治的に束縛されている場合とか, 2



3



I 数学者の生活



なる以前のアメリカの場合のように,実用性のみが重んじられている場合である. 人口のかなり多くに相当する階層が(必要があれば奨学金の援助により)教育を



a g n a n o ,R i c c a t i , 受けられる社会においては,数学者の出身階級は多様である. F a s c a l ,K r o n e c k e r ,J o r d a n , d ' A l e m b e r tのように貴族出身の者もいれば, P P o i n c a r e , vonNeumannのように上流ブルジョアジーの出身者もあり,逆に Gaussや E .Cartanのように非常に貧しい階層から出た人もいる. しかし大部分 は中流階級,



しかも生活の余り楽な方ではない家庭からも多く生まれている.



数学の才能は多く 16歳ごろに目覚める.



しかし教育が証明の概念を教えない



場合はそれより遅くなる.上に述べたアメリカの場合がそうであった.



しかしな



がら,一般に流布している説とは逆に,創造的活動期が 2 0歳から 2 5歳以前に始



a s c a l ,C l a i r a u t ,G a u s s ,G a l o i sは例外である.外的な まるのはまれである. P 0歳から 5 5歳位まで重要 条件が研究活動に都合がよければ,創造的な数学者は 5 0歳台に証明された見事な定理の例を幾つか な発見をし続けることができる. 6



0歳を超えた著者による例はほとんどない. 挙げることができるが, 7 多くの学者と同様,数学者の生活は倦むことを知らない好奇心と,研究してい る問題を解こうとする欲求に支配されている.その欲求は情熱と呼ぶべきもので あり,彼の置かれている現実を全く忘れさせる程である.名高い数学者の放心や 奇行はすべてこの欲求に起因する.いやしくもひとつの証明の発見は一般的に, 強くしかも持続的な意識の集中の期間を経てはじめてえられるものであり,この 時期は最終結果に達するまで場合によって数か月から数年の間繰り返されるので



aussはある多項式の符号を決めるのに数年を要したと自分で言っている ある. G e d e k i n dも代数的数論の基礎を確立するのに同様の長い し,また Kummerと D 時間をかけねばならなかった. したがって,十分な時間を研究に専心するために使うことができることを数学



9世紀以来彼らの好む職業は大学や工 者は何よりも望む.このような理由から 1 科大学の教育者である.そこでは講義時間数が比較的少なく,一方休暇が長い*). 報酬は二次的な問題でしかない.最近でも,特にアメリカでは,給料が著しく下 がるのを承知のうえで企業での高収入の地位を捨てて大学に数学者が移るのが見 ) * 一方では今日,この非常に貴重な時間が二義的でしかも消耗なさまざまの仕事によ って次第に蚕食されている.







4







られた. しかし大学教師の職の数がかなり増えたのはごく最近のことでしかない. 1 9 4 0 年以前には大国においてさえ大学教師の職は非常に少なかった.さらに 1 9 2 0年 以前では Kummer, W e i e r s t r a s s ,G r a s s m a n n ,K i l l i n g ,l ¥ f o n t e lといった優れ た数学者達でさえ,少なくとも生涯の一時期を高校教師として送っている.この ような状態は大学の数の少ない小国においてはその後も長く続いた.



1 9世紀より以前は,数学者が就ける職の可能性はさらに著しく不安定であっ た.慎ましい暮らしを保障する,個人的な財産,後援者,アカデミーの他,生計



G a u s sは を立てるためには天文台で働くか測量技師をやるぐらいしかなかった ( 8世 紀 に 優 かなり永い時間をこれらの仕事のために費やさねばならなかった). 1 れた数学者が非常に限られているのは恐らくこの情況によって説明される. 解こうとしている問題の熟考に長い時間を必要とするので,他の分野の同じく 没頭を必要とする仕事(例えば行政管理職)やまじめな科学研究を同時に行なうこ



sらr e県知事で とはほとんど必然的にできない.熱の理論を作っていた時同時に I o u r i e rは多分唯一の例外である.高い地位の管理職や行政職に就いた あった F 数学者がいたのは確かだが,それは彼らがその職にある間ほとんど研究を放棄し ていたということなのである. 同じ理由で,数学者が研究をなおざりにしないで,政党の中で活発に活動でき ま過激な政治的立場の数学者は少なかった. ることはまれである.それに最近まで f



a l o i sや,こちこちの王党派の Cauchy(彼は王位纂奪者と 御し難い共和主義者 G L o u i s P h i l i p p e ]に宣誓するより亡命を選んだ程である)の場合 みなしていた王 [ は歴史上,



どちらかと言えば,例外である.議論や出版の自由に価値を認めるの



で,数学者は一般的に自由主義の考えを持ち,専制主義(あるいは今日のいわゆる 全体主義)にはなじめない.



しかし通常は,そこに彼らが生まれるべく運命が定



めた政治体制の中の善良な―市民として生きるにとどまり,彼らと同時代の芸術 家や文学者に比べれば実際のデモや暴動に参加する部分はずっと少ない.積極的 に名誉を求めることはないが,大部分の数学者はそれに無関心ではなかった. 数学者であることは人間的弱点を免れる特権を保証するわけではない.この数 学の((ささやかな歴史))も破廉恥な虚栄心,ねたみ,悪意,不誠実,党派心が並ぶあ またの例にみちることになろう.いわゆる{{推測に基づく))科学(考古学,地質学,



5



I I 数学者集団



宇宙論等)を常にゆさぶって止まない本格的な論争に近いものは数学者間では比 較的まれである.そうした論争の嵐が生じたのは基礎がしっかりしていない理論



1 7 ,8世紀の微分積分学, 1 9 0 0年の((基礎論の危機)} が問題となる時のみであり (



I I I章を見よ),その少し後のイタリアの代数幾何学),それも基本的な考え ( 第X 方や許容される論証の様式が明確化されるとそれに対応して静まってしまった. しかし数学者の職業生活においては(そこでは学界での評判が昇進への重要な判 定規準となるので),より良い地位を求めての争いは,特に地位の数が少ない場合, 激しいものがある.先取権に対する異議は,



l 窃の非難へと増長して, しばしば票l



1 6世紀イタリア代数学者達や微分積分学の創立者達の華々しい時代以来ほとん ど絶えたことがない.



I I 数学者集団 実験科学で行なわれているようなチーム研究は数学では比較的まれである.大 部分の数学者は,独りで静かにしていないと深い洞察をするのが難しいと感じて いる.共同研究も確かによくあるが,それは非常に多くの場合,新しい基礎から 先に進むために,お互いに他の共同研究者のアイデアを利用することを認めた上 で,各共同研究者が別個に得ることのできたものを互いにつき合わせるというこ とである.数学者同士の長期にわたる共同研究の最もよく知られた例である,ィ



ardyと L i t t l e w o o dの場合, 1人は O x f o r d , 1人は Cambridgeに住 ギリスの H み,めったに会うこともな ( n )-y c 2 1 i 1 l ( m ) )+Rr



( 5 )



となる公式と,導関数 y c 2 r + 1 >によって決まり, E u l e rの数値計算が理にかなって



a y l o r いることを明らかにする凡の上限をうるためには,定まった次数までの T の公式と, L agrangeの剰余項を用いて,同じ計算をすれば十分である.



しかし,



1 9世紀になるまでこのことは実現されず, 1 9世紀に至ってもなぉ肴限個の項か らなる部分展開式としての((級数))を問題にするということが,不幸にして長い間 続くのである.



E u l e rが公式 1 .1 1.B1 B2 -= logn+r+---—+-1+万 + … +n 2 n 2 が 4 n 4 を発見するのは,かれの和公式(この和公式は別の所ですこし遅れて, E u l e rとは



aclaurinによっても得られた)のおかげである.ここで r = 0 . 5 7 7… は 独立に, M [ 2 ] ,( 1 ) ,XIV巻 ,1 1 8ページ). これについ かれの名がつけられている定数である (



u l e rが大きな桁数までの計算に適したさまざまな表現を与えることになる. ては E D) 三角級数



1 7 3 0年ごろから,一般項仰 cosnx十如 sinnxの級数がさまざまな文脈の中で 00



出現するようになる.そのひとつは,整級数区 CnZnにおいて z=e ものとおいたと n=O



きにその実部あるいは虚部として得られるものである. 自らの原理に従って



E u l e rは,級数 1 l+z十ざ十…+呼+… 1-z= を考え,上のようにして



1 - = cosx+cos2x十・・・, 2



l X cot-= sinx十 s i n2x+・ ・ 2 2







の表示をうる.そしてかれは関数の三角級数による展開式を項別に微分あるいは 積分することをためらわず,そのようにして今日超関数 ( d i s t r i b u t i o n )の理論に よってはじめて意味づけが可能になった表現に至っている.



u l e rは非常に多様な方法で 研究者としての生涯のさまざまな局面において, E



第 l章



32



1 8世 紀 の 解 析 学



三角級数を得ている.たとえば,展開 の =s i nの 一 1 ーs i n 2 の十・・・十 2 2



(-l)nー1



n







smn 叶...



( 6 )



は , L agrangeの補間公式から出発して極限をとることによって導かれる ( [ 2 ] ,( 1 ) ,



xv巻 446ページ). 7 4 9年に,木星と士星の運動の不等式に関 三角級数があらわれる別の場合は, 1 する論文 ( §VIを見よ)中にみられる.そこで E u l e rは関数 f ( ぉ )= 1/(1-nc o s) のS を積分することが必要になり,数値計算を試みたのちに, c o sののべきからなる 級数が nが 1に近いときには,非常にゆっくりと収束する数値級数を与えるとい



( x )を 区 Akc o skxの形に展開することを提案 うことを確かめている;また, f k=O



し,ふを計算するための帰納的な公式を与えている. d ' A l e m b e r tはこの問題に すぐに興味を示し,



ふ = 上 『f(x)心, 1 T :



『 知 ) cos



A1=1 _ 冗 o



n



: x ; 邸



( 7 )



という公式を得た. C l a i r a u tは,何年かのちにこの問題を再びとりあげて,補間 公式(!が偶関数となっている三角多項式とするとき,十分大きな nに 対 し て 有 効 )



h 1 r : 2 h k 1 r : 1n-1 2 Ak=這~!(了) c o s了 からその極限をとることによって,一般的な公式



ふ=竺『 f (の )c o s脳 dx 冗 o を与えている.かれはまた,この公式で,



(k~I)



( 8 )



fを必ずしも解析的だと仮定する必要



( F o u r i e r級数))の理論が自然な形 はないということも主張している.ここから, ( u l e rは,遅く死後にな しかも実をいうと E



で発達してくるものと考えたくなる.



[ 2 ] ,( 1 ) ,XVI巻 ,3 3 3ページ)の中で,((直交))関 ってはじめて出版されたある論文 ( 係



『coshxcos











dx= 0



( hキ k )



( 9 )



から公式 ( 8 )を得, 1 7 5 0年の日付のある仕事の中で,突飛な計算(ここでかれは無



3 3



IV 一 般 的 な 結 果



限階の定数係数微分方程式 y'+y "/ 2 !+y " ' / 3 !+ … =0を((積分))している)のすえ に,珈を周期とする周期関数は三角級数の和として表わされねばならないと結論 しているので,なおさらのことである.



しかしここで,われわれは,級数論とか



れら流の((連続))関数の概念によって 1 8世紀の解析学者の精神の内に生み出され た混乱が抜きさしならないものになっている事態をまのあたりにする.創造的熱 狂にかられて仕事を続けた Eulerが,数年前に書いたことをいつまでも覚えてい るとは思えないということを考えに入れておく必要もある.それにしてもかれは



6 )のように,まったく周期的でないという 自分が三角級数に((展開した))関数が, ( 事実にわずらわされなかったらしい.そして,か=冗としたときに公式 ( 6 )がすで に提起する矛盾の問題に直面したときも,(解析学ではじめての)かれがおちいっ



x v巻, 449ページ).



[ 2 ] ,( 1 ) , た非一様収束の現象を明らかにするには至らなかった (



1 7 7 2年のことであるが) k~5 に対して級数こ DanielBernoulliは ( n



芦i デの和を計算して,



cosnx nk







I x戸元のときに多項式となることを示したが(ここで



かれは,それらがおじ JakobB ernoulliが導いたものと因子を除いて,同じだと 気付いているようには見えない),さらに自分が得た公式がおの変域を変えたと きには変更を要するということに注意した最初の人である.かれはまた,振動す



§ V I I Iを見よ)に関連して,関数を三角級数で表わすことについて る弦の方程式 ( まき起った長い論争の中で正しい立場を守りぬいた唯一の人でもある.



とはいっ



ても,それが理解されるためには, 1 9世紀を待たなければならない.



E) 連分数 ( f r a c t i o nc o n t i n u e e * > ) Brouncker卿は, 1655年に,証明なしで冗の注目すべき表示 4 -=1+ 冗



1







2+ 2 5 2+ 49 2十 匹



を Wallisに伝えている.ここで右辺は,有限個の項までとって得られた分数の 極限として理解しなければならない. Eulerはこの公式にひきつけられ,非常に * ) フランス語の伝統的用語は ( ( f r a c t i o nc o n t i n u e ) )で あ る が , 分 数 が 変 化 す る パ ラ メ ー ( c o n t i n u o u s ) )ではなく タをふくんでいる場合にいやな混乱を導くおそれがある.英語では ( ( ( c o n t i n u e d ) )ということによってこの混乱を避けている.



第 I章



34



1 8世 紀 の 解 析 学



たくさんの応用 (§V,E)と §VIを見よ)を与えることになる一般論 ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XIV



巻 1 8 7ページ)の中にこれをとりこもうと企てている.二つの有限列 ( a 1 ,a 2 ,・ ・ ,



a n )と( b。,如…,如)について,連分数



冑 + 閾 + … + だ



( 1 0 )



bo+ は,数







S= bo+



ここで



+ 誓 + … + 誓



s'=b 1



として帰納的に定義される. E u l e rは,数 ( 1 0 )が An/Bnと書けることを示す―― ここで Ai』もは帰納的公式



ふ =b o ,



B。=1 ,



Ai=biAぃ +ajAj-2,



Bi=bjBj-1+ajBj-2 ( 1 1 )



(A-1=1, B-1=0とする)によって定義される.そして,かれは基本的な公式 An An-1=(-1)n 1 a 1 aが "an Bn B n 1 Bn-1Bn



( 1 2 )



' ' '



を証明している.二つの無限列 ( a n )咋1, (加)咋 1 について,(無限)連分数



誓 + … + 応 + …



bo+



は nを十 00 に近づけたとき(極限が存在する場合には)連分数 ( 1 0 )の 極 限 値 と し



1 2 )から,この極限値が級数 て定義される.公式 (



b 。十区(一 1r-1a西 ・ ・ a n n = l Bn-1Bn の和に一致することがわかるが,逆に, E u l e rは級数が与えられたときに連分数 になおせること,つまり



叶+…+ JcCnn--12-CnCn+・"



C 2 l 区 (-l)nー1ら =c n = l J c 1-c2 00



J



を証明する.かれはこれらの公式を絶妙の名人芸で使いこなし,かれが特に気に 入っている特殊関数の間の数えきれないほどのそしてエレガントな関係式を導い ている.



V 特殊関数の研究



3 5



V 特殊関数の研究 まさに昆虫学者のような情熱をもって, E u l e rは,今日なおわれわれの驚きを さそう特殊な関数の新しいそして思いがけない性質をたえまなく発見することに, かれの解析学での仕事の最も大きな部分を捧げている.ここでは,そうした問題 のうちの最も大切なもの A) 初等関数 B) B e s s e l関数



C) 超幾何関数 D) ガンマ関数と E u l e r積分 E) 積分計算 F) L egendre多項式と球関数 のみに話を限ろう. A) 初等関数 汽l o g( 1 +の),円関数[三角関数],そして逆円関数の整級 ((初等))関数,つまり e



7世紀以来知られていた.また, C o t e sと d eMoivre以来,表示 cosx 数展開は 1 +isinxが,正整数 nに対する公式 ( c o s x十i s i nx ) n=c o sn の十 i s i nnx を通して,指数関数のように振舞うことも知られていたが, E u l e r以前にはだれ



i x = c o sx+i s i nxに注目しなかったよ も,級数展開から直ちに得られる関係式 e u l e rは級数展開から有名な公式 うである. E cosx=



.



e i x+e i x 2'



=



eix_e —紅



S1IlX



2 i



( E u l e r 1十竺)れを知っていて, これから ( を導いている. かれはさらに炉 =lim( n



n→oo



積 ) )



sin ←鳴 (1 —差)



( 1 3 )



そして対数微分をとることによって,級数



= 一X1+2x区 研 ー1



cotx



00



V=l



l . 1 2 1 C 2



( 1 4 )



第 I章



36



18世 紀 の 解 析 学



を導いた.実際 ( s i nx ) / xを(偶数 nについての)多項式



) 『n-(1- 『)~n/2



(1+



..



>



l+cos笙



= J],(l-~1-cos



の極限としてとらえることができる.ここで右辺の分解は, C o t e sによって与え



1 3 )を得るためには, nを +oo られた 1のべき根の表示から得られる.これから ( に近づければ十分である ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XIV巻 ,1 4 4ページ).対数微分について同じよ うな極限をとることによって ( 1 4 )が得られる.すでに Eulerの同時代人からも十 分に厳密ではないとして攻撃されたこの推論は,形式的級数の代数の中でみれば, まったく正しい.



炉xnの というのは,この代数においては,形式的級数 Sk=区 c n=O



列が形式的級数 s= 区 CnXn に収束するというのは各 n について c~) の列が Cn に n=O



さらに, ( 1 3 )と( 1 4 )の右辺は整級数に展開で



近づくことを意味するからである.



きるが,これも形式的級数の代数の中でみる限りは正しい.



これから E ulerの最



も美しい公式のひとつ, が 1 1 1 百 = 1+¥+32+・・・十 n2+…



(かれはさらにこの公式の証明を他にも数多く見つけ出すことになる)と,



さらに



一般に



ミ1



( 加 ) 2k



戸=叩町ふ



n=l



( 1 5 )



が得られる.ここで Bkは B e r n o u l l i数を示している.公式*)



2 畑 xcotx=zx —l e 2 i x を利用すればよい.これ以後にも E ulerは級数 ( 1 5 )(これは Riemannの((ゼータ 関数))の正の偶数における値 ( ( 2 k )にほかならない)にしばしば立ち返ることにな



* ) この公式は, d eMoivreによってはじめて導入されたと思われる概念,《母関数))の好 a n )を調べるために,これに整級数 2 l l n X nを対応させ,この級数 例となっている.数列 (



の和を f ( x )とするとき,関数 fの性質から数列 ( a n )の 思 い も よ ら な い 性 質 が 導 き 出 さ れ a r d y L i t t l e w o o dの方法, ることがよくある(このアイデアの最もすぐれた応用のひとっ, H については第 V 章 , §XIを見よ).



> 特殊関数の研究



37



るが,それは,かれのアイデア ( § I l l )に従って, Kを負の整数(あるいはさらに有



1 5 )に((和))を定めることによって,ゼータ関数の関数等 理数)とした場合の級数 ( 式(第 V 章 , §VIを見よ)を発見するきっかけとなる.



B) Bessel関数 1 8 3 0年ごろの B e s s e lの仕事以後,微分方程式



長 +(1-岱 =0



y"+



( 1 6 )



え (20とする)の”を 0に近づけたときに有限値をとる唯一の解(定数倍は除いて)



e s s e l関数とよび, をB



h と書くようになる.



しかしすでに 1 7 3 3年から, D a n i e l



B e r n o u l l iが,鉛直方向に一様な重さをもった糸の微小振動を研究していて,関



o ,]1にほかならない整級数を作り,方程式 Jo(x)=Oの 根 を も ち い て 固 有 振 数J [ 2 ] ,( 2 ) ,X I 2巻 ,1 5 7 1 6 5ページ). 動数を決定するというところに導かれている (



ulerはすこし遅れて,一様でない糸の場合に一般化された同じ問題 かれ自身と E [ 2 ] ,( 2 ) ,XL巻 3 0 6ページ), Eulerはある特殊な場合にこの問題が, を研究し ( 1 6 )の形になる y"+c 研 y=O( cは定数)の形の微分方程式の積 変数変換によって ( 分に帰着されることを示している.かれはさらに,円形膜の振動を研究していて, この方程式にまた出くわしている.かれはこれについて詳しい研究を行ない,



h



に対する



応)=占 r『:)½)『 cos (zsin< p )c o s " < p d < p に同値な積分表示と,漸近展開



J~(COS ( X― } ―9 ) 孟 翌 +sin(← 一f 9 )え瓢)



J心) , . _ ,



に同値な(大きなのに関する)展開式を導いている.最後にかれは,初等関数によ



o(x)=O って積分の部分を処理できる場合を研究している.かれはまた,方程式 J が実数以外の解をもたないという予想を述べて,小さな解を計算している (§Xを 見よ).そしてかれは, J=Oとしたときの方程式 ( 1 6 )のもうひとつの解 Y。の級数



[ 2 ] ,( 2 ) ,XL巻 ,3 3 3ページ).いうまでもなく,収束性は問題 展開を求めている ( にされていない.



38



C)



第I章



18世紀の解析学



超幾何関数



簡単な形 の 整級数によって積分可能な2階の線形微分方程式に関する研究 の 中



で,Eulerは



x2(a+bxりy"+x(c+dxn)y'+(e+fxりy=O



という形 の 方程式,および超幾何級数



a/3 a(a+ 1)(3( (3+1)研+・・・ x+ F(a, (3,r; の)=1+ l!r 2!r(r+l)



(17)



を解としてもつより特殊な方程式



C -(a+(3+l)x)y'-a(3y= 0 x( l-x)y"+r



を考察している([2], 1 ( ), XII巻,177ペー ジ).かれはF(a, (3,r; x)に関して,恒 等式



( 一 の)r-a-PF(r-a,r�/3,r; x) F(a, {3,r; x) = 1



を証明し([2], 1 ( ), XVL巻43ページ),



『が ( ーか(1- のf)Vdf ゜ 1



(18)



の形 の 積分表示を与えている([2], (1), XII巻,256ページ).たとえば,



言n)Fm ( -n, -n,m+l; 吋)=』



1 ( 冗 l2_n + \ ��



となるが,Eulerはこれから,







等式



__



m �o s_ cpdcp







-



ちにJacobiに よってふたたび見出される次の恒



介+賣 —1 cosg,)如



=



を導いている([2], (1), XVL巻54ページ). D)







J,



冗@+心ご1 co sg,)n ' +



ガンマ関数とEuler積分



補間法 の 問題 は,しばしばEulerの想像力をかきたてた. Newtonは(n +l)個



の点で指定された値をとる, 次数がn次以下の多項式を求める公式を与えており, そのあとLagrangeが別の 同値な形 の 公式を導いてい る. Eulerは,すべての



自然数に対してそれぞれ指定された値をとるような,x>Oの範囲で定義された



Euler の意味で((連続な)) (§IIIを見よ)関数fをみつけるというさらに難しい問 1 -fX 1 1 1 一の 題を提出する. 1732年には, かれは数1+— + … 十n 列を関数x�i□dt, 2



V 特殊関数の研究



によって((補間))している.



39



しばらくたってから ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XVI1巻 1ページ),かれ



は,¢が与えられているときに



f ( n )=c p ( l ) + c p ( 2 ) +・・・十 c p ( n ) となる



fを決定する問題を一般的な仕方で考察し, 00



!(の)=区 ( c p ( l J )c p ( x十 v ) ) !J=l



という定義を与えている.ここで,右辺の級数は, X が十 00に発散するとき c p ( x ) が減少して 0に近づくなら,たしかに収束する.この条件が満たされないときに も,解として 00



f ( の)=邸っ(1)+L( c p ( l . ! ) c p ( X + l . ! ) +の( c p ( l . ! +1 ) c p ( l . ! ) ) ) V=l



をとるとうまく行く場合があることをかれは示しているが,このことから問題が, 周期関数の分だけ異なるたくさんの解をもちうることに気づくようになる.



!の 列 に 関 連 し た も の で あ る . こ れ に しかし,かれの最も美しい結果は階乗 n 関してかれは 1 729年 に 無 限 積



n 1→(n+ll n+x



r(x+1 )=I T c o



n=l



の形の補間関数を作り ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XIV巻 1ページ),ついで積分の形のもの



+ r



I'(x+1 )=i1(1og



心 =ioo 炉 戸du



を作っている.



[ 2 ] ,( 1 ) ,XVII巻 ,3 55ペー かれはたびたびこの関数に立ち返って,積分表示 ( ジ )



= 『tp-1(l-t)q-1dt=II'('P()pI+'(qq))



B(p,q )



xv巻, 82ページ)



や相補公式 ( [ 2 ] ,( 1 ) ,



r 位 )I '(l-x)= s i nr rが 冗



そして Legendre-Gaussの公式の特殊な場合 ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XIX巻 ,4 8 3ページ)



心) 心) …r ( 亡 ) =(2サ”ー 1)/2nー1/2 n n n



第 1章



40



1 8世 紀 の 解 析 学



を発見している. E) 積分計算



L e i b n i zは,有理分数関数を A/(x-a)n(ここで a ,A は複素数とする)の形の ((単純成分))の和に分解することによって,((初等))関数をもちいてその原始関数を



u l e rはこの方法を,かれの教 表わすことが原理的に可能になる方法を与えた. E ,n,pの い く つ か の 値 に 対 す る 科書の中で,詳しく解説し, m



f 呼



( a 血 十b ) P d X



ゃ JR ( x ,v P ( x ) ) d の(ここで Rは有理関数, Pは 2次以下の多項式とする)のよ うな数多くの他の原始関数の計算をどうすればこの計算に還元することができる かを示した.



Jv



R ( x , 灰面)dので P が 3次以上の多項式の場合の研究は,楕円



bel関数の理論を生み出すことになる(第 VII章を見よ). 関数や A E u l e rはまた, fの原始関数が((初等的))でないような定積分『f ( x ) d xの値を, 非常に多くの場合について,求めている.かれはそのために数多くのさまざまな



u l e r積分「@)や B ( p ,q )あるいは ( 1 8 )の形の 技巧を用い,特に多くの積分が E さらに一般的な積分にいかに還元されるかを示している.かれの一般的なアイデ アのうちのひとつは,任意の整数 n~l に対して



(na+a)J PR宣



= ( n / 3十 b )『



PRn+1邸+(町 +c)i1PRn+2邸



( 1 9 )



の形の漸化関係を満足する二つの関数 P,Rを考えることで ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XIV巻 ,3 2 4 ページ),これからかれは連分数展開



二 三 c-rIc 2 r ¥ … f'Pdx = ご +2{1-b+3{!-b+



J1PRdx



(3-b



l c 2 r lc-3r



を導いている.かれは, ( 1 9 )を満たすすべての関数 P,Rを決定する方法を示した



1 8 )の形の積分にこの方法を適用している.たとえ のち, P と R を特殊化して, (



J



ば,積分 s=



1 のmー1



o



I十 炉dのは展開 1 mり (m+n)門 (m+2n)叶 -=m 十―—+ ・ ・ ・ s I n I n + I n +



をもち,同じやり方を積分



J



かe 心邸に遮用すれば展開



1



1I 2I 3I



ニ =l+ 厄+阿+ば—t . . .



4 1



V 特殊関数の研究



が得られる.



F ) Legendre多項式と球関数 aclaurinと 質点が均質な楕円体から受ける Newton引力の完全な計算は, M Lagrangeによって特殊な位置にある質点について成功しえたにすぎなかった. 8世紀の中頃以後すこしずつ発展してきた Newtonボテンシャルの理論 しかし, 1 egendreと L a p l a c eによって(任意の形の均質な物体が及ぼす引 の枠組の中で, L 7 8 2年ごろに再び問題にされるようになる.すでに 力に関する)一般的な問題が 1 1 7 4 8年 D .B e r n o u l l iは,エネルギーの計算をするときに,質量加の点 Y i(個数は ) 有限とする)から引力を受けている質量μ の点のに関する関数 Q(x)=区 (miμ/ハ i



(れは”と Y iの距離を示す)をもち込んでいる.さらに, L agrangeが す こ し 遅



4 ] ,VI巻 ,3 4 9ページ),これらの質点のルに及ぼす力の成分が,のの座標 れて([ に関して Q(x)を微分することによって得られるということに気づく.このこと



3次元の]物体 V である場合に移行するには,有限和を から,引力を及ぼすのが [ 積分 JJJ:μdm/r(ここで rは点めから V上の動点までの距離)におきかえれば よいことになる.



この積分を評価するために, L egendreは , rを空間内の 2点間



/ rを,固定された原点から 2点への距離の比 p と原点 の距離とするとき,関数 l と 2点を結ぶベクトルのなす角



rの余弦との関数として展開するというアイデア



をうる. これによって, z=cosrとするとき,



1 -=区 p n凡 ( z ) Vl-2pz+p 2 n = O 00



( 2 0 )



が得られる.ここで P n ( Z )は n次の多項式で [ L e g e n d r eの多項式とよばれる], そのいろいろの性質, とりわけ,のちに((直交関係))とよばれる関係式



『 凡(z)Pm(z)dz=0



(mキ nのとき),



ー1



J _ l尻 (z)dz= 2n~1' さらに,ー lszslのとき ¥ P n ( z ) ¥slとなること,および Pn[=OJのすべての根



1 ,+1 ]に含まれるという事実を,かれは得ている. が実数でしかも区間[" このあと L aplaceが,極座標で ( r , O , c p )となる点んでの均質な物体 Vの New00



t o nボテンシャルを級数区 U n ( O ,c p ) /戸に展開し, n = O



第 I章



42



1 8世 紀 の 解 析 学



f f



に( 0 ,c p )= f v r r + 2凡 ( c o sr )s i n0 1 d r幽 d c p 1 と書けることを示す ( [ 5 ] ,X巻 ,3 6 4ページ).ここで ( ri,0 1 ,< p 1 )は V上 の 動 点 叫



o sr =cos0cos0叶 sin( }s i n0 1cos 如— cp) とする. Unは((球面調 の極座標でかつ c 和関数))とよばれ, これも((直交関係))



f f



広 ( O , ' P 応 ( 0 ぶ d崎 =0



(mキ nのとき)



を満足する(同上, 3 8 9ページ).



egendre多項式の表現 かれはさらに,積分の形での L



誓 = 『 は+ v が一 1COSc p ) n d < p







を得ている.やや遅れて, L egendreはかれの多項式と関係の深い別の関数 P C . : ) ( の )



l ) P 心 堕 =(1-研) JJ/2d d x l )



を導入し, n次の球面調和関数が,展開 n



凡( c o sr )= 区 h vP炉( c o s0 ) P炉( c o s0 1 )c o sv如ー c p ) V=O



を利用して一般的な形 n



に( 0 ,c p )= 区 (A . ッcp)P~)(cos 0 J lcos ジcp 十凡 sm ) JJ=O



に表わされるということを証明している. ここで lJ2(1·3·5 ・・・ (2n~1))2



h l )=(1) ,• • 一



( n + l , ) ) ! ( n → ) !



とする.



VI 微 分 方 程 式 すでに 1 7世紀に,幾何学や力学のさまざまな問題が, 1階の微分方程式を積分 すること,つまりそれを解くことに同値な解析学の問題を生んでいた. Newton による力学の公理的定式化と 1 8世紀における直交座標の系統立った使用によれ



n個の ば , n個の質点に関する力学のすべての問題は 3



2階の微分方程式 ( n個 の



V J 微分方程式



43



質点の座標を時間についての末知関数とみる)からなる方程式系の積分に帰着で きることが明らかである.そして, d ' A l e m b e r t ,E u l e r , Lagrangeによる剛体



L a の力学の形成,さらに一般的に有限個のパラメータに依存する系の力学の ( grangeによる)形成によって,ホロノーム系に対する ( ( L a g r a n g e方程式))によっ て表現される類似の問題,あるいはその非ホロノーム系に対する一般化が生み出



[ 1 ] ,[ 7 ] ,(あ)を見よ). されて行く ( この時代に公認されていた関数概念の枠の中で,数学者たちは,末知関数の整 級数展開(ここで,係数は方程式とその初期条件をもちいて帰納的に決定される) を知ることによって,微分方程式系の積分に関する一般的な(陰関数を表示する



7世 紀 の 数 学 者 場合のような)方法を, Newton以来,手にしていた.しかし, 1 たちは,もはやこのやり方には満足せず,((初等関数))をもちいて解を表わすか,ぁ るいは少なくとも方程式から直接得られる関数の原始関数をもちいて解を表現す る(いわゆる((求積法によって))積分する)ことを求めるようになる.そういうこと



e r n o u l l i兄 が可能な少数の 1階の方程式(とくに 1階の線形方程式)は,すでに B i c c a t iが,そうした古典的なもの以外に,いくつか 弟が知っていた.そして, R の指数 nについて



y'+ay2=b 叩



( a ,b ,nは定数)



の型の特殊な方程式を 1 7 2 2年に追加する. また,



P ( x ,y)dx十 Q( の ,y )dy=0 の型の 1階の微分方程式については, 1 734年 に C l a i r a u tが , MPd の+MQdy が完全微分 d V(x,y )となるような関数 M(x,y )を選んで与えられた方程式に掛



( x ,y)=一定の形に書ける)という ける(こうすれば方程式の解は((陰関数))的に V u l e rはこの((乗法因子))の方法をさらにおし進め(これは特に アイデアをうる. E ydy+(A(x)y+B ( x ) ) d の=0の型の方程式の((求積法による))積分の例を与えてく れる),このアイデアを階数が 2以上の方程式や複数個の未知関数を含む微分方 程式系の場合に一般化している. この時期には,((解けない))一般微分方程式 F ( x ,y ,y')=Oに つ い て も 調 べ ら れ ている.最初にあらわれたもののひとつに C l a i r a u tの 方 程 式 ( 1 7 3 4 )yーのy '



+!(砂 =0がある.ここでは((特異解))という現象がみられる.つまり,この方程



第 I章



44



1 8世 紀 の 解 析 学



式のすべての(解析的な)解を得るためには, この方程式の((一般))積分曲線を構成



ぉ+f(C)(ここで Cは任意定数)の他に,この直線族の包絡線を する直線族 y=C 7 4 8年に,同じ性質をもつさらに一 追加することが必要である. d'Alembertは 1 般的な方程式



x f ( y ' )+y g ( y ' )+h ( y ' )= 0 を考察している. Eulerと Lagrangeは,二つの方程式 F=O,oF/oy'=Oから y ' を消去して得られる方程式 R (x,y)=Oによって表わされる曲線が必ずしも積分



( x ,y)= 曲線とはならず,一般には((一般))積分曲線の特異点の軌跡となる(曲線 R 紐 =0も満たせば((特異))積分曲線となる)ことを示す Oが方程式 y'(oF/oy)+aF/



ことによって,一般的に起きる現象を明らかにした.



1 7 6 0年ごろから任意階数の線形方程式 L(y)三 y⑰ )+a1( ぉ )y < nー1 ) +…+ a n ( x ) y= b ( x )



( 2 1 )



の一般的な研究が始まる. d'Alembertは , ( 2 1 )の 特 殊 解 と 同 次 方 程 式 L(y)=O の一般解を知ればそれらを加えることによって ( 2 1 )の一般解が得られることを指 摘したこれからすこしあとに, Lagrangeは,同次方程式 L(y)=Oの一般解が, 任意定数らと適当に選んだ特殊解 Ykを 用 い て 区 Ckykと書けることを証明す k = l る([ 4 ] ,I巻 474ページ).さらに,有名な((定数変化))法([ 4 ] ,IV巻 ,1 5 9ページ)に



2 1 )の一 よってかれは,同次方程式の一般解区 Ckykが わ か れ ば 非 同 次 方 程 式 ( k = l 般解が n回の求積によって得られることを示した.すなわち (n-1)個の線形条 件 n



区Z 加 炉 =0 k = l



(OS:vS:n-2)



( 2 2 )



n



を満たす関数 Z kを用いて y=区 Z k Y kの形で解を探すとする.この条件から y < V ) n k = I = 区 ZkY炉 ( 0 : : : ; ;ぷ n-l)がでる.また, ( 2 1 )で y と 区 Z k Y kを入れかえることに k = l k = l よって,苓に関する n番目の方程式 n



区各Y k n i )=b



k = l



( 2 3 )



が得られる. ( 2 2 )と( 2 3 )の合計 n個の方程式から (Cramerの公式を用いて) z iを



kを得るためには,あとは求積を n回行なえばよい. 導けば, Z 1がみつか 同次方程式 L(y)=Oについては, d'Alembertが,ひとつの特殊解 Y



VI 微 分 方 程 式



45



れば y=y1zとおいて zに関する ( n-1)階の方程式が得られることに気づいてい る. L agrangeは , ( 2 1 )の型の任意の線形微分作用素 L に対して, y,zお よ び そ



n-1)階以下の導関数について双線形的であるような B ( y ,z )が存在して れらの ( zL(y)-yM(z)= d ,( B ( y ,z ) ) . dの となるような随伴作用素 M を導入した([4 ] ,I巻 4 7 1ページ).このとき,随伴方



1がわかれば, L(y)=Oを解くことを ( n 1 )階の 程式 M(z)=Oのひとつの特殊解 Z ( y ,Z 1 ) =一定を解くことに還元できる. 方程式 B 2 1 )の特殊なものはずっと以前から, 線形方程式 (



とくに力学におけるさまざま



な問題に関連して, とりあげられていた.たとえば,定数係数の 2階の線形方程 式が一般に,指数関数あるいは三角関数の一次結合を解としてもつという事実は 非常に早くから知られていた.



7 3 9年ごろに E u l e rが,棒の振動の問題 しかし, 1



に関連して定数係数の 4階の方程式に出くわしたとき,かれはすぐにその一般解 を書き表わすことができなかった.かれが,指数関数解 y=erxの 指 数 rを与え る特性方程式を作って,定数係数の方程式の解法についての一般的な定理をもの



7 4 3年になってからにすぎない.やや遅れてかれは,特性方程式が にするのは 1 重根をもつときにもとの微分方程式のすべての解を得る方法を与えている







心の形の解(((指数・単項式)) ( e x p o n e n t i e l l e m o n o m e ) )を導入 の場合には y=企 e



[ 2 ] ,( 1 ) ,XXII巻 ,1 0 8 1 4 9ページ).そして,最終的に することが必要になる ( Lagrangeが,系 ( s y s tらme)の平衡状態付近での微小運動の理論の中で,定数係 u l e rの結果をこの場合に拡張した. 数の線形微分方程式系に出くわし, E u l e rの研究について 級数展開を利用して解く特別な線形微分方程式に関する E



§ V ,C )を見よ).かれは,一般に必ずしも整数とは限らない はすでに言及した (







"(ao+a1x+ +an 血+…)の形の級数を考える必要があること 指数えについて x を理解している ( [ 2 ] ,( 1 ) ,X II巻 1 7 8ページ).2階の(後に Fuchsが考察を加える



I I I章 ,§ I I I ,A)を見よ)ことになる型の)方程式の場合について,かれは, ( 第V えを決めるための二次方程式を求め,さらに,この二次方程式の解の差が整数と なるときはもとの微分方程式の第 2の解は一般に対数関数の項をもつことにも気



8 2ページ). づいている(同上, 1



2階の線形方程式について,パラメータのに依存する積分の→ J bF(x,t ) d tを



46



用いて,







I章 18世 紀 の 解 析 学



とりわけの→『 e X t j ( f ) d fの形の積分を用いて,解を表示することをは



じめて試みたのもまた E ulerである ( [ 2 ] ,( 1 ) ,X I I巻 ,2 2 1 2 4 5ページ).L a p l a c eは 一般的な方程式



( a。 の 十b o ) y < n > +( a 1 x十b i ) y < n 1 > +…+(an の十加) y=O に対してこのアイデアを適用し ( [ 5 ] ,X巻 ,2 5 1ページ),この場合に解を表現する



( L a ことのできる関数 fを具体的に決定しうるということを示したが,これは ( p l a c e変換))の最初の例とみなすことができる. , 2階の同次線形方程式が z=y'/yとおくことによって一般 一方, Eulerは



R i c c a t i方程式 z'=A(x)が+B( の )z+C ( x )



( 2 4 )



に帰着でき,したがって方程式 ( 2 4 )が解ければ 1回の求積で yが得られることを 知っていた.またかれは,方程式 ( 2 4 )が,のについての任意の関数 P ,Q ,P i ,Q1 を係数とする z 1=(Pz+Q ) / ( P 1 z十Q 1 )の型の関数の変換によって,類似の方程式



2 4 )が初等関数によって解 に変換されることも知っている.そしてこれを用いて ( [ 2 ] ,( 1 ) ,XIV巻 ,2 0 8ページ)と, けるいくつかの場合を求めている.かれ自身 ( [ 4 ] ,IV巻 ,3 1 0ページ) すこし遅れてより一般的なやり方であったが Lagrange( 2 4 )の連分数による解法にも行きついた: ( 2 4 )のひと は,この注意をもとにして ( つの解 zの x=Oの近傍での展開の初項を a x ) .とするとき, Lagrangeは z=a ぶI



(1+叫とおいて Z 1に関する R i c c a t i方程式をつくり,これを無限にくり返す.こ の方法の応用例として, E ulerによって得られた連分数



」 1 _ _ l _ ] 1 I 1I 1 1 1 I el/X=l+_ L +1 十—+-+ ・ ・ ・ l のー1 J T+l1+ 1 3 かー1 I 1 1 1 l 5 xー 1+ をあげることができる. 天体力学を形成することになる非常に広範な数学的発展にも言及しておく必要 がある.これは本質的に ( ( n体問題))に関係している:すなわち Newtonの法則 (質量 mi,m1の 2質点間に働く力は,一般定数を G , 2質点間の距離を r i Jとする とき Gm孤1/r~ りに従って相互に引きあう質量が正の質点とみなした n個 の 物 体



について考察するのである.この n点の運動を支配する 3n個の 2階の微分方程 式系の(少なくとも近似的な)解を求めることが問題になる.これによって太陽系 の惑星やその衛星そして彗星の運動が詳しくわかることが期待される.一般的ア



V I I 1階の偏微分方程式



47



イデアは,ひとつの質量(太陽の質量)が他のものに比べてきわめて大きいという 事実にもとづく.そこで他の天体の作用を無視して二つの天体(ひとつは太陽)の みを考えることから始める.このとき,運動方程式はすぐに解くことができ,



K e p l e rの法則が得られる.つぎに,他の天体の影響が,微分方程式中の,一般 には十分小さいがその天体に依存する係数をもった補正項を付加することによっ



e p l e r運動にかかわる 6個のパラメータを級数(各項はその係数 て表現される. K に依存する)に展開するのが一般的なやり方である.この級数の定数項は,太陽 以外の天体の作用を無視したときに得られるもので,残りの各項についても簡単



l a i r a u t ,d ' A l e m b e r t ,E u l e r ,L a g r a n g e , そし な微分方程式の列が得られる. C a p l a c eは数多くのそして非常に長い論文を,いろいろなやり方でこの展開式 てL を導くためにもっぱらあてている(とくに解の中に時間に関するいわゆる((永年



( s e c u l a i r e ) ) )非周期項が出現することをできる限り避けようと努めた).こうした 8世紀 努力の結果は,観測と驚くべき一致をみたが,数学的な観点からすると, 1 においては,考察する展開式を意味のはっきりした項に限ることからくる誤差の 上限を評価することはまったく問題にされなかったということは注意しておくべ きである.天体力学の大問題,つまり太陽系の安定性は,かくしてもっともらし くはなったが,まだ証明されてはいない. 最後に,微分方程式の中に現われるパラメータに関連することで,のちに



( ( S t u r m L i o uv i l l eの問題))(第 V I I I章 ,§ VI,A)を見よ)とよばれるようになるも のの最初の例を紹介しておく必要がある.一様でない弦の振動の研究の中で



d ' A l e m b e r tは,線形方程式 y"= A < p ( X ) yにでくわし,この方程式の恒等的に 0で 0 ,a ]の両端で 0となるには,パラメータえがどういう値であれ はない解が区間 [ ばよいかということを調べることが必要になった.かれは,さらに yにこの区間



' / yが満たす R i c c a t i方程式を の内点では 0にならないという条件を追加して, y 考察し,不完全な,



しかし厳密化可能な推論によって,題意にかなったえがただ



[ 2 ] ,( 2 ) ,XL巻 ,3 1 1ページ). ひとつ存在することを証明した (



VII 1階の偏微分方程式 偏導関数の概念は 1 7世紀末にすでに知られていたが,偏微分方程式は 1 7 4 0年 より前には現われなかった.最初に登場するのは力学の問題に関連したもので



第 I章



48



1 8世 紀 の 解 析 学



( § V I I Iを見よ), 2階以上の方程式である. 1階の偏微分方程式が一般的な形で 研究され始めるのは 1 7 7 0年ごろになってからのことにすぎない. E u l e rは,ニ つのパラメータ a , bをもった関数 z = f ( x ,y ,a ,b )の族が, zと 偏 導 関 数 o z / 紐 ,



o z / o yの式から a , bを消去して得られる方程式を満たすことを示した.さらにか れは,逆に,得られた方程式が 1個の((任意))関数を含む解をもつことを指摘した (かれがはっきり注意しているように,この((任意))関数は必ずしもかれの意味で ((連続))(つまり解析的)である必要はない).いろいろな技巧を使ってかれは,さ まざまな形の 1階の方程式



o z



(ここで P= 紐 —,



F ( x ,y ,z , P ,q )=0 o z q=―; u l e r自身が導入した記号)を解くことに成功してい o y E



る . 興味深いことにこの計算においてかれは, x,yを((独立))変数とし他のものをそ の関数として,形どおりに考えるというよりもむしろ, x , y , z , p , qを関係 F ( x ,y ,



z , p ,q)=Oと微分の間の関係 dz-pdx―qdy=Oの み に よ っ て し ば ら れ た 五 つ の 変数として取り扱っている.この方法によって,もはや”と yであるとは限らな い適当な二つの独立変数によってすべてを表わすことが可能になっているのが認 められる.たとえば,方程式 pq=lを解くために ( [ 2 ] ,( 1 ) ,X I I I巻 ,6 3ページ),



z j J d X一qdy=Oから yとPを独立変数とみることに かれは,この関係と関係 d よって



d(z-pの一



f )= -(x —瓜)dp



( 2 5 )



を導き,の一竺が p Pだけによる関数の場合にのみ, (25)の右辺が完全微分になり うるということを確かめる.そして,この関数を導関数 f ' ( P )と書いて,かれは



x =均+ ' ( P ) , p f



z=加 +1 L-j(p) p



という形の一般解を得た.解曲面は直線族によって生成されるものとして現われ ている. この話の進め方の中には,のちに L egendreによって定義される接触変 ,§ I I I ,D )を見よ)の応用の特別な場合が認められる. 換(第 IX章



1 7 4 0年から, C l a i r a u tは , Pdx+Qdy=Oの形に書かれる微分方程式との類似 によって,全微分方程式



VII 1階の偏微分方程式



49



P( , のy ,z ) d の十 Q ( ぉ,Y ,z )dy+R(x,y ,z ) d z= 0 を研究し,もし曲面族 V( , のy ,z)=C(ここで Cは任意の定数とする)がこの方程 式を満足すれば dVは Pdx+Qdy+Rdzに比例しなければならない.つまり,い いかえると M(Pdx十Qdy+Rdz)が完全微分となるような因子 M が 存 在 し な け ればならないことを明らかにした.このことからただちに条件



P(詈—闘)+Q(翌—誓)+R(闘—喜) =0



. ( 2 6 )



が得られるが,これは 1 9世紀になって J a c o b i ,C l e b s c h ,F r o b e n i u sによって一



I I I章 ,§ I I , 般的な形で定式化される積分可能条件の最初の例となっている(第 V B)を見よ). こない場合, E u l e rは全微分方程式が解を持たな この条件が恒等的には成り立 f いものと考えたが, Mongeは見方を拡げ,方程式を満たす曲面がないとしても, の十 Qdy+Rdz=Oを満たすような曲線があると考えるこ それに沿って微分が Pd



f a f f方程式系の積分の一般的考え方への第一歩である(第 とにした.これは P



V I I I章 ,§ I I ,B )を見よ). 1階の微分方程式 F(の,Y ,z , p ,q)=Oの理論における決定的な前進は Lagrange によってなされる. 1 7 7 2年に,微分方程式の特異解に関するアイデアにもとづい てかれはつぎのことを示した.解の二つのパラメータをもった族



g ( , のy , z , a , b )= 0 (かれはこれを((完全積分))とよぶ)[今は((完全解))とよばれる]がわかると,これら



aと bの間に任意の関係をもたせて得られる)ひとつのパラメータの族 の曲面の ( の包絡面が再び方程式の積分曲面となる.この曲面は任意関数に従属するという 意味で((一般的))である. したがって,完全解をひとつみつけさえすればよい. それを行なうために,たとえば q=A( の,y ,z , p )



( 2 7 )



の形の偏微分方程式が与えられたとして, L agrangeは,ひとつのパラメータ a を含む関数 B( , のy ,z ,a )において全微分方程式



B ( x ,y ,z ,a ) d の十 A( , のy ,z ,B( , のy ,z ,a ) ) d y=0



( 2 8 )



を満たす曲面族 V ( x ,. y ,z ,a)-b=Oが存在したとすると,この曲面族が ( 2 7 )のひ



4 ] ,I I I巻 ,5 4 9 5 7 5ページ).条 とつの完全積分である,ということをみつけた([



第 1章



50



1 8世紀の解析学



件( 2 6 )を用いて,かれは, B が満たすべき



aB aB aB R— +so —— 紐 y+To z+U=O



( 2 9 )



の形の方程式を得た.ここで,



誓(x,y,z,B),



R=



S=1 ,







T= A ( x ,y ,z ,B)-B ( x ,y ,z ,B ) ,



aA aA , z , B ) U= --(x,y ,z ,B)-B一(の, y な: c o z とする.方程式 ( 2 9 )は未知関数 Bの偏導関数を線形項として含むにすぎない.



7 7 9年に ( [ 4 ] ,IV巻 ,6 24ページ)かれは,この形の偏微分方程式 ところで, 1



o z ミ ふ(X1,・・・,叫, z)— a +An+1⑰,…,叫, z) =0



i=l







( 3 0 )



が,常微分方程式系



d x 1= . x n= d z. .= d Ai ふ A n + i



( 3 1 )



を考えることによって簡単に解けるということに注目している.この方程式系の 一般解が,独立な関数 G 1 ,G 2 ,…,伝と任意定数らを用いて



Gj( 叩,…,叫, z )=ら



(1~j~n)



( 3 2 )



と書けたとすると, ( 3 0 )の((一般))解は任意関数のを用いて



@ ( G 1 ( 叩,…,叫, z ) ,…,Gn⑮ ,…,叫, z ) )= 0 として得られる.



したがって L agrangeは方程式 ( 2 7 )すべてを解く方法をうるた



めにただちにこの結果を特別な方程式 ( 2 9 )にも適用しただろうと誰しも思うが, 意外なことに,かれはこの可能性に気づかなかったようである.この結論は 1 7 8 4 年に,若くして死んだ青年数学者 C h a r p i tによって Lagrangeの仕事から導かれ たらしい(しかし,かれの手稿はまだ見つけ出されていない).



[ 6 ] ,[ 8 ] )が,幾何学の多 いずれにしても,それからしばらくたってから Monge( くの問題に L agrangeの方法を応用した(第 IX章を見よ)ばかりでなく,特別な 3 1 )の解の非常に簡単な幾何学的表現を発見 方程式 ( 2 9 )に対応する微分方程式系 (



する:の, Y , ・ z , pおよび q=A(x,y ,z , p )をパラメータ tと積分定数を用いて表わ したとすると,曲線



5 1



V I I I 高階の偏微分方程式



x= x ( t ,C 1 ,C 2 ,C a ) ,



y= y ( t ,C i ,C 2 ,C a ) ,



z= z ( t ,C 1 ,C 2 ,C a )



は , 1個のパラメータをもった族として変化する積分曲面 V( , のy ,z ,a ) c p ( a ) =



0のひとつとその包絡面との接触曲線で,関係 P=P(t,C 1 ,C 2 ,Cふ q = q ( t ,C i , し ,C a )はこの曲線に沿う(その曲面と包絡面の[共通の])接平面を決定する.こ れは, Cauchy以後偏微分方程式論で支配的となる基本概念,((特性帯))である(第



V I I I章 ,§ I I ,B )を見よ).



VIII 高階の偏微分方程式 1階の偏微分方程式は(幾何学を除くと)解析学の応用とほとんど関係がない. 8世紀の初め以後,変形体 これに反して,高階方程式による定式化とその解法は, 1 の力学や弾性理論や流体力学の問題に取り組み,次の世紀には光学や電気学でそ の成果を問うことになる数学者たちが使いこなすことを少しずつ学んでゆかなけ ればならなかった,本質的なテクニックである.その困難さは剛体以外の物体, つまり(それについてほとんど何も分らない)((凝集))力によって結びつけられた質 点系について, Newtonによって提出された力学の法則を数学的に言い表わすこ



e r n o u l l i兄弟, とにある. この問題に取り組んだ最初の数学者たち,すなわち B BrookT a y l o r , それに 1 7 4 0年 以 前 の D a n i e lB e r n o u l l iと Eulerらは,もっと も一般的な運動を支配する偏微分方程式をまだ得ておらず,いくつかの特殊な



a dh o c )幾何学的推論による取り扱いに限られている. 問題についての個別的な ( d'Alembertが力学における最初の偏微分方程式を記述するのは 1743年になっ てからのことにすぎない.それは,鉛直の平衡位置の近くでの重い鎖の振動の方 程式



立=弦ー ( l s )四 a t 2 a s a s 2 であった. これ以後ただちに競争相手たちがかれに続き, 1 8世紀の中頃には,流 体力学の方程式(阻 u / a吋)+(炉u伶が) +( a 2 u / a が ) =0( [ 4 ] ,I巻 , 4 4 4ページ),音の伝



1 / cり ( 笞u / a t 2 ) = ( 笠u / a 研 ) +( a 2 u / a yり+(笞u / a が),膜の振動に 播に関する波動方程式 ( 1 / cり ( 笠u / a tり=(笠u / a が)+(笞u / a yりなどが得られる. さらに 関する類似の方程式 ( a p l a c eがでくわした方程式 複雑な 2階の方程式として,潮汐の理論の中で L







52



I章



1 8世紀の解析学







笠z 密z o z ( m 2s i n 20-a) ― -=asin2f}茄 +as i nf }c o sf } 紐 ;2 祁



ゃE u l e rによって得られた棒の振動方程式 1笞 y がy 戸 苛+ a x 4=0 などの 4階の方程式も知られる. E u l e rはまた,非常に複雑な線形系の形で糸の



agrangeは波の理論に関連して同じような計 運動の一般方程式を得ているし, L [ 2 ] ,( 2 ) ,XL,X I I ,X I I I巻 ) . 算を行なっている ( 力学のこうしたすべての問題において,与えられた問題のなくてはならない部 分をなしている((境界条件))や((初期条件))を満たす解さえ求まれば,与えられた方 程式の((一般})解を見出すことは問題でないということに注意する必要がある.こ れらの問題の大部分に本格的に取り組むためには,この時代の解析学の技術的手



9世紀の終わり頃になってようやく数学的 段はまったく不十分なものにすぎず, 1



I I I章 ,§ V I ,C)を見よ).たっ な処理への道が開かれはじめるにすぎない(第 V 8世紀に詳しく研究されたものがある.それは振動弦の問題で, 1 7 4 6 たひとつ 1 年に d ' A l e m b e r tによって(別の記号が用いられていたが)最初に記述された方程



式 1密Y a 2 y 戸記=面召 によって支配される(ここで



( 3 3 )



C は弦が一様でなければ,定数ではなくのの関数と



' A l e m b e r tはさらに, なる).同じ論文の中で d



C が定数である場合に



( 3 3 )の一般



解を,((任意))関数 F,Gを使って



y=F(ct+x)+G(ct-x)



( 3 4 )



で与えている.そして,この計算の結果と実験の結果を比べる問題がすぐに登場 する(この時代には両端を固定して張られた弦の振動の問題を考えていたにすぎ



7 1 5年に B .T a y l o rは,方程式 ( 3 3 )を作らずに,直接この問題の ない).実際, 1 ひとつの解



y=s i na のs i nc a t



( 3 5 )



(ここで吋aは弦の長さで,((基音))に実験的に対応している)を与えた. しかし誰 でもよく(実験的にも)知っているように,弦の形は正弦波になるとは限らず,弦



V I I I 高階の偏微分方程式



5 3



の振動によって生じる複雑な音の中には((倍音))も識別される. E ulerが((機械的))



Iを見よ)とよぶ関数に市民権を与えるようになる理由のひとつはおそらく ( 釘I こうした事実が確かめられたことにあるのだろう. d 'Alembertの著作の発表か



ulerは,弦に勝手な初期形と初期速度を与えたときに観察され らすこし後に, E 3 4 )から導き出す方法を詳しく説明した.初期形が弦の長 る現象の周期性を公式 ( さの約数を周期とする正弦波形の場合,それは((倍音))の現象を含んでいる.のの 周期解が無限に存在するという事実は,まず類似の問題(棒の振動の問題)に関連



7 3 0年ごろに D .B e r n o u l l iによっても確認されている.また, 2変数 : x ; ,t して, 1 の偏微分方程式の((変数分離))というアイデア,つまり T aylorによって得られた



3 5 )のような c p ( x ) ¢ ( t )の形の解を探すことは, 1 7 5 0年ごろには数学者たちによ 解( く知られたものになる.



.B e r n o u l l iは,正弦解の重ね合わせによってこ しかも D



の問題の最も一般的な解が得られるだろうという確信に到達していた.これは,



( 3 4 )を考えに入れれば,任意の((機械的))関数を三角級数に展開するという可能性 を含んでいる.



9世紀の初めまで,かれの見解は孤立を続けね しかし不幸にも, 1



ulerは公式 ( 3 4 )の F と G として((機械的))関数を許している ばならなかった. E .B e r n o u l l iの方法によって得られる解が最も一般的だということは決して が , D 'Alembertと Lagrangeは F と G として解析関数し 納得しなかった;さらに d 2 ] ,( 2 ) ,X I 2巻 ,2 3 7 3 0 0ページを見よ). か許容していない(これらについては [ 特殊な問題の研究の他に一般論の試み(少なくとも 2変数の 2階 線 形 方 程 式 に



a p l a c eは,(変数に虚数値を与えることをためらわず, ついての)が現われてくる. L



I I I章 , §VI したがって楕円型方程式と双曲型方程式を区別しなかったので(第 V 密z を見よ))変数変換によって一般に 2 階の項を一―—だけにできることを観察した. 紐



o y-



かれは, 1 8世紀においては応用分野中にまだ顔を出していない例外的な方程式



炉z . z . =o な炉 a tを調べているが, e +btの形をした解を決定するだけにとどまっている ば



( [ 5 ] ,IX巻 ,2 1 2 6ページ).



2変数の一般双曲型線形方程式 四 紐



o z



o z



— +Cz+D =0 o y+A-+B 紐 o y



については, E ulerが , A,Bの一方と Cが 0となる場合(これは常微分方程式に 帰着できる)を考察したにすぎない.かれはこの場合に帰着させるために,すこ



54



第 I章



1 8世 紀 の 解 析 学



し遅れて L a p l a c eが発達させる方法(同上, 2 9ページ),



a v z=M 冠 +Nvの形の方程



8世紀の終わりに, 1階の方程式の理論と同じ幾何学 式の変換を示唆している. 1 的な精神で, Mongeはひとつの理論に到達する.



ここでかれは((特性))曲面の概



念を導入しているが, これによってたとえば極小曲面の方程式の一般解を与える ,§ I I I ,D )を見よ). ことが可能になる(第 IX章



8世紀の解析学者たちによってなされた有限差分方程式に関する数多 最後に, 1 y n )に対して帰納的に差分列 ( L l yふ くの研究について述べておこう.無限数列 ( ( L f 2 Y n ) ,… を Lfyn=Yn-Yn-1, がy戸 =L f( L fy n ) , 以下同様,によって定義し,同じよ



うに,二重数列あるいはさらに多重数列に対しても帰納的に((偏))差分列を定義す



c a l c u li n f i n i t e s i m a l )の登場以来,微分法 ( c a l c u ld i f f e r e n t i e l )は る.微積分学 ( 差分法の((極限の場合))だと考えられていたが,逆に,微分方程式の解法がしばし .... ば有限差分方程式に対してもそのままうまく適用されるということも気づかれた.



u l e r , Lagrange( [ 4 ] ,I巻 ,2 3ページ, IV巻 ,1 5 1ページ, V巻 ,6 2 7 これはとくに E ページ),そして L a p l a c e( [ 5 ] ,VII巻 7ページ, VIII巻 5ページと 6 9ページ)が 発展させたが, とりわけ確率論への応用という立場でなされ,そして多くの場合, 単純数列についての a」 。ky+a1」← ly+…+aky= b



の形の線形方程式に限られていた.



IX 変 分 法 微分法形成の動機のひとつは,関数の極大・極小を調べることであった. 1 7世 紀末の新しい解析学の輝かしい勝利のひとつはさまざまな極値問題(ここでは, 極大・極小を探す量が 1個または複数個のパラメータに依存するのではなく,ひ とつの変化する血縁に依存している)の解決である(微分法の性質から,和対的な 極値[最大•最小でなくて極大・極小]の決定が問題となるにすぎないことがわか



る(下を見よ)).昔からある等周問題(平面上で,与えられた長さの閉曲線でかこ む面積をできるだけ大きくする問題)の解に加え多くのものが得られた.たとえ ば , J ohannB e r n o u l l iは曲面上の長さが極小の曲線(のちにこれは測地線とよば , §V,B)を見よ))を決定し, Newtonは極小抵抗をもっ れるようになる(第 IX章 立体の問題(これは空気中の自由落下に関して抵抗が極小となる立体を鉛直軸の



lX 変 分 法



5 5



まわりの回転によって生み出す平面曲線を求めるのが問題である)を解く.また, 最急降下線 ( b r a c h i s t o c h r o n e )(鉛直面上に与えられた 2点を結ぶ曲線で, 1点 が それに沿って摩擦なしで最小の時間内に落ちてゆくようなもの)の問題は,この 時期に,最も有名な数学者たちの間に競争を引き起こしている.



Eulerは , このタイプの問題に初期の仕事のころから取り組み,早いうちに先 人たちの結果を一般化し体系化するひとつの方法に達している.彼は極値を求め る関数を



『F(x,y,y',炉,…, y)dx a



の形に表わす.



( 3 6 )



ここで yは mの未知関数である.上にのべたすべての問題はこ



の形に書き表わすことができる.かれの方法は,積分区間を点叩,叫,…,叩によ ) (ただし Y1=Y( 叩))を って小さな区間の和に分割し,曲線 y=y(x)を点(叩渾 j



l y 1 / 頂点とする折れ線で置き換えるというものである.かれはさらにが(叩)を L



J叩,炉(叩)をが Y1 / ( L l叩 )2 ,等々によって置き換え,それによって ( 3 6 )のかわり i改 に K変数 Y



2 ,



…,Ykの関数を得る.かれはつぎに, YJに関する導関数が 0と



なるとして,得られた条件の中で,分割点の数を無限に増加させる.このように



( E u l e r方程式)) して未知関数 yに関する有名な (



闘—Ix(『)+晶(尉—… =0 が得られる.



( 3 7 )



これによってかれは,以前に知られていたすべての結果を再確認す



[ 2 ] ,( 1 ) ,XXIV巻 ) . るとともに新しい類似の問題をいくつも解いている (



Eulerの方法はやがて Lagrangeによって著しく単純化される([4 ] ,I巻 ,3 3 5ペ ージ).かれは曲線自体を変化させることによって,折れ線によって曲線を近似す ることを避ける.つまり,パラメータ tを含み y( , の O)=y(x)と な る 関 数 y( , のt )



をy(の)のかわりに採用するのである(これはのちのホモトピー(第 X章)の最初 のアイデアである).このとき,((変分))oyは 関 数砂 一( x ,0 )であり, a ( y ' )=( o y ) ' ,



a t



i J ( y " ) = ( i J y )汽等々が得られる.すると,積分 ( 3 6 )の中の y(x)を y(x,t )に置き換



え,得られた tの関数が t=Oにおいて 0となる導関数をもつということを書き



ulerのたいていいつでも無視していた境界条件と,部分積 表わしさえすれば, E uler方程式が得られる.さらに, Lagrangeの方法は本質的な変更 分によって E



第 I章



56



1 8世紀の解析学



を加えずに二重積分やさらに多重積分に応用できる.彼はそのことからたとえば 極小曲面の偏微分方程式を導き出している(第 IX章 ,§ I I I ,D )を見よ). 条件/'(叩) =0が,関数 f(x)が点叩で極大または極小となるための十分条件 でないということは, 1 7世紀以来よく知られている; Lagrange自身もはじめの ころの論文のひとつを, 2変数あるいはさらに多変数の関数がある点で極大また



4 ] ,I巻 , 3ページ). は極小となるための十分条件を与えることにあてている([







u l e r方程式の解 yが考えている積分 ( 3 6 )を極大ある たがっていうまでもなく, E いは極小にするとはかぎらない.



とはいってもこの時点では((極値))の概念さえ明



8世紀末以後になってようやく,別の関数に((近い))関数という概 らかではなく, 1 念にはたくさんの解釈がありうることがわかってくる.変分法をしっかりした土 台の上に築きあげるためには以後まるまる 1世紀の反省の時期が必要となるであ ろう(第 V I I I章 , §VIIを見よ).



X 数値計算 1 8世紀の数学者たちが数値計算によせた関心についてはすでにふれておいた E u l e rは数冗の近似計算に関する半ダース以上もの論文を書き, Lagrangeは論 文ひとつを代数方程式の解法にあてているが, ここでは解の近似計算が大部分を しめている ( [ 4 ] ,V I I I巻).かれらは先人たちの伝統を継承したにすぎない.微積



a y l o rの公式によって得られる近似的表 分学とは本来,複雑な関数のかわりに T 現を与えるものであり,したがってそれはあらゆる種類の近似計算(たとえば関 数の数値表を作ること)に役立つのである. 代数方程式の解法については, Newtonが近似的な方法を与えているが,これ は , f(x)=Oの解のひとつ叩の近傍で曲線 y=f(x)を叩の近傍内の点のひとつ y



゜ X



X 数値計算



57



における接線によって置き換えることからなっている.もとめる解にすでに十分 近い点 m から出発する限り,一般にこの方法は非常にうまく行く.したがって, まず解を“分離’する,つまり,おのおのの中にただ 1個の根しか含まないような 十分小さな区間を定めることから始める必要がある . Pを実係数の n次多項式と するとき,代数方程式 P(x)=Oについて, P の係数の関数の形で表わされた根の 限界値をあらかじめ求めることによって,必要な手順の回数を減らすための方法 も知られている. さらに, Lagrangeが示したように, 1/(Xi-叩 )2 ,i = l = j , を根と してもつ n(n-1)/2次の代数方程式にこの方法を適用することもできる(ここで



Xiは P(x)=Oの根とする). 1 9世紀全体にわたる数多くの代数学者や解析学者



( S t u r m ,H e r m i t e ,S y l v e s t e r ,Cauchy,Kroneckerなど)の努力によって,複素 平面上に与えられた領域の中に存在する多項式の零点の個数を(多少とも理論的 な仕方で)決定する判定条件が得られる ( [ D J ,6 1 6 9 ,2 4 4 2 4 9ページを見よ).



D .B e r n o u l l iによって導入された方法を用いると絶対値が最大の根がひとつし / ののべきによる P ' ( x ) / P ( x )の展開を かないときにはそれが計算できる: 1



n a 1 a 2



am



・ ・ ・ —+—+—+…+: x ; : x ; 2 : x ; a : x ; m + 1+



とするとき, am+damの極限値を求めればよい. E ulerはためらうことなく,



J o ( 2 v 亙)が無限積 Cn 1 ] 1(1 — t)



の形で書けるものとして, Bessel 関数の最小の



零点を求めるために,同じアイデアを使っている ( [ 2 ] ,( 2 ) ,XL巻 ,3 07-323ページ,



XL巻 318ページ). Lagrangeが推奨してやまなかった, P( の ) =Oの根邸の近似値を求めるための もうひとつの方法は,まず整数部分 m をみつけ,つぎにの o=m+(l/ 叩)とおいて (これで叫の方程式がえられる)叩の整数部分をみつけ,これをくり返して



Xoの



連分数展開を得ようというものである. 級数の和の計算については,すでに, E u l e r -Maclaurinの和公式によって(級



§ I V ,C ) ) . 数の収束が遅い場合でも)近似値が得られるということをのべておいた ( これは, E ulerが級数の収束速度を改良するのに考案した数多くの方法のうちの たったひとつにすぎない.整級数について最もよく知られているものは 00



00



xn+l



区a n 血=区 ( かa )(l-x)n+1 n=l n=。



58



第 I章



1 8世 紀 の 解 析 学



(ここでか aは係数の列 ( a 1 ,a 2 ,・・・)の第 n階差分列の初項を示し, 4切 =a1とす る)とあらわされる. x=ー1とするとき, Linaが有界だとすれば,右辺は(公比



1 / 2の幾何級数が収束することから)収束することがわかる.たとえば,収束速度 の遅い級数



1 1 1



l o g2= 1ー百十百―可+・・・



1 1 1 f=1-百十百― 7十 ・ ・ ・ にこれを適用すれば



1



1



1



log2=百十鐸十 3·2叶••• 冗 1 1・2., n 1 +~ 可=2 n = 1 1 ・ 3 ・ 5…(2n+1 )百 00



が得られる. Euler-Maclaurinの和公式は,逆に,有限和による積分の評価を可能にする.



この特殊な場合として Simpsonの公式



5



ib知)心 =~(!Ca)+4!(デ) +f(b))-(誓 罰 乃(さ)



(a~ 芦 b )



がある.積分を評価するこれ以外の方法として,適当に選んだ多項式で被積分関 数を近似するやり方がある.これはつぎの世紀になってとくに発展する. 最後に, Eulerが微分方程式の解の数値的な評価のために 1 9世紀に ((CauchyLipschitzの方法))として知られるようになる区分線形近似をすでに利用してい



ることをいいそえておこう(第 V I I I章 ,§ I I ,A)を見よ).



参考文献



[ I ] P .B r o u s s e ,M e c a n i q u e ,A.C o l i n ,P a r i s ,1 9 6 8 . [ 2 ] L .E u l e r ,Operao m n i a ,4シリーズ, Teubnerおよび 0 .F i i s s l i ,L e i p z i g B e r l i n 9 8 3 . Z i i r i c h ,1911-1 [ 3 ] G .H.Hardy,D i v e r g e n ts e r i e s ,C l a r e n d o nP r e s s ,O x f o r d ,1 9 4 9 .



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9



5 9



参考文献



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( え )



L . ランダウ, E .



リフシッツ,理論物理学教程,広重徹•水戸巌訳,力学;竹内均



訳,流体力学, 2巻;佐藤常三訳,弾性理論,東京図書, 1 9 6 0 ,1 9 7 0 1 9 7 2 . ( お )



湯川秀樹編,古典物理学 I , 岩波講座,現代物理学の基礎,第 2版 , 1 , 岩波書店, 1 9 7 8 .



(山下純一訳)



60



第I I章



1 8 4 0年までの代数学と幾何学 JeanGuerindon, JeanDieudonnも



I序 本章は 1 7世紀の終わりの 3分の 1からほぼ 1 8 4 0年までの代数学と幾何学との



8 4 0年 ご ろ と い う 時 期 の H a m i l t o n ,B o o l e ,C a y l e yお よ び 歴史を扱う.この 1 Grassmannの仕事が代数学およびそれと関連した幾何学についての考え方にお いてひとつの転機を画している[*].



A) 1 7世紀中葉の代数学と幾何学の状況 代数の問題は,バビロニアの時代から提出され,解かれていたのだが,厳密な



7世紀 意味での代数学の進歩は,主として使いやすい記号表記がなかったため 1 末までは,はなはだしく遅く,難渋していた.方程式にあらわれる既知量や未知 量,あるいは代数的演算やべきに関して我々のものと近い記法が広まったのはよ



iらt eと D e s c a r t e sの 時 代 の こ と で あ る . 添 え 字 は L e i b n i zゃ Newton うやく V 以前にはほとんど用いられていない.(後者は添え字をしばしばべきのように文 字の右上に書いたり,あるいは文字の左側に書いたりしている ( [ 2 8 ] ,IV巻 ,6 0 4 -



615ページ).) 8 5 0年ごろまで,すべての数学者にとって代数学とは(単独あるいは連 およそ 1 立の)代数方程式の研究のことであり,それを解くために工夫された方法のこと



iらt e以 前 は 方 程 であった.((未知のもの))として求められた値は((数))であって, V 式の係数は具体的に与えられた数であった.((数))の概念は,はじめは正の実数の みであったが,ついで零と負数を,そして最後に虚数を含むものとなった.正の 実数の明確な理解は(((大きさの比))の名のもとに)ギリシアに遡る.零と負数の使



9世紀以前は経験的なものにとどまっていたとはいえ[**],長いためらいの 用は 1 [ 3 ] )の記述と重なるところが多い. [*)本章の内容については Bourbakiの「数学史」 ( [ * * ) これはヨーロッパの話であって,中国およびインドではずっと早く負数および零



l序



6 1



のち(たとえば Vi らt eにおける,使用の方針への反対を見よ), D e s c a r t e sにはじ



7世紀イタリアの代数学者達の大胆な まる頻繁な使用で結着がついた.虚数は 1 8 0 0年ごろまで神秘的なものにとどまってい 創出にかかるもので,その性格は 1



7世紀以降,代数学と解析学(第 IV章を見よ)で,その使用が計算 たとはいえ, 1 を単純にするという理由から徐々に使われるようになる.



( 3数法 ( rらg l e 連立一次方程式を,その末知数を次々に((消去))して問題を一連の (



d et r o i s ) ) ) , つまりただ 1個の未知数の方程式 a ば = bに帰着させて解くことは,バ 7 5 0年ごろまで,この消去がどの ビロニア時代から知られていた.しかしほぼ 1 場合に可能かを誰も特徴づけようとせず,消去がうまくゆかない時には,その問 題は((不能))であるとか((不定))であると言って済ませていた. 二次以上の(未知数 1個の)方程式に関していえば,(バビロニア時代に実質的に



6世紀イタリア人の二つの偉大 知られていた)二次方程式の根の公式に, さらに 1 の十 q=Oの根を与える(いわゆ な発見が加えられることになった.つまりが +P



( C a r d a n oの)))公式 る(



~-俗+J(f)2+(t)3+~-t-J(患)2 + ( t Y ,



c 1 )



それに 4次方程式を解くことを 1個の 3次方程式を解くことと幾つかの平方根を



7世紀には根の重複度の概念が引 求めることに帰着させる方法の二つである. 1 き出され, n次方程式は((実または虚の,相異なるかまたは重なり合う))n個 の 根 を持つことを正しいと認めている.しかし 1 8世紀半ばに至るまで(((代数学の基・ 本定理))と呼ばれることになる)この命題の証明を試みた者はなかった.最後に,



1 7世紀初頭に至って代数方程式の係数と,根の対称式との関係が知られるように 3 ] , 邦訳 8 8ページ以下をも参照.] なった.[以上のテーマについては [



7世紀初頭にそれと言えば, E u c l e i d e s (ユークリッド), A r c h i ((幾何学))は, 1 m e d e s ,A p o l l o n i u s ,Pappusから伝来のギリシアの幾何学のことであった.幾何 学は,((大きさ))(長さ,面積,体積,角度)に関するあらゆる問題について,代数



p o l l o n i u sの円錐曲線の研究では 学と縁を切ったことは一度もない.たとえば A 共役 2直径に関する方程式が他にまさって用いられている ( [ 1 6 ] ) .D e s c a r t e sと



の概念が確立していた.



62







I I章



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



Fermatによる ( 1 8世紀末に((解析幾何学))と名付けられる)直交座標を用いる方法 の案出は,幾何学の問題における代数学の役割を著しく拡大し,特に円錐曲線あ るいは二次曲面より一般の代数曲線および代数曲面の概念を考えることを可能に した.



6 8 0年ごろまでは一般的概念として目立つのは平面曲線の次数の しかし 1



概念のみであり,平面曲線の研究もいくつかの特殊例の研究を越えていない.だ が一方,平面曲線の交わりを求めて代数方程式を解く方法――それはギリシア以 来非常に高い価値を与えられていた一ーは,代数曲線の方程式を扱って,代数曲 線の交点を求めるために方程式系から未知数の((消去))を実行するものとして普及 した. B) 諸 問 題



1 8世紀数学の大きな出来事は,何と言っても微分積分学の概念の発展と,あら e i b n i zによっ ゆる種類の数多くの問題へのその応用であり,それは Newtonと L て生み出された(第 I章を見よ).その結果前半世紀の間代数学と整数論はほぼ全 く無視されている. この時期には,連立一次方程式を解くことが数学者に新しい問題を与えるとは みられていない.なぜなら,



ともかく具体的な数を係数に持つ方程式系に対して



は,これを解く定まった方法があってそれを用いることができたからである.ゃ



7 5 0年ごろになって,代数幾何学と力学の問題で,係数自身が変動パラメー っと 1 タを含む関数であるような連立一次方程式があらわれた時に,一般論が進歩し始 め,具体的に解をそのパラメータの関数として表わすことを追求するようになる. そこで判別式の理論が生まれて,方程式の数と未知数の数が等しく,方程式系の 判別式が 0でない時には問題が明快に解かれる. しかし(何と驚くべきことに)こ の段階で 1世紀以上も本質的には足踏みしていたのであって,連立方程式の一般 論が完成するのは,やっと 1 8 7 0年ごろのことになる(第 I I I章 ,§ I I I ,B)参照). 我々が今日線形および多重線形代数学の一部をなすとみなしている諸概念:一



8世 次独立性,線形変換,固有値,双対性,双一次形式と二次形式については, 1 紀に入ってから,数学とその応用における実にさまざまの領域から由来した数多 くの問題の中で,散発的に生じて来るのが見られる.



8 4 0年ごろまでは, しかし 1



これらの概念が役割を演ずる問題に数学者が手をつける時,彼は相変わらずその



a dh o c )方法を用い,他の問題と結びつけることは顧慮しない.判別式 場限りの (



I I 線形および多重線形代数学



63



の理論を別にすれば,今我々が考察の対象としている期間における線形および多 重線形代数学は,一般論としてまとめあげてゆこうとは誰も考えそうにない,渾 沌とした脈絡のない諸結果の集まりでしかないと言ってよい. 未知数 1個の 5次以上の方程式の理論については事情が全く異なる.その理論 が 1730 年以後新しい研究を生み始めた時,それは~16,



7世紀の代数学者から受け



継いだ二つの問題すなわち虚根の存在と((根号による》根の表示の可能性とを軸 としていた.数学者達は自らの研究の一般的性格を十分に自覚し,その成果は次 から次へとたゆみない進歩をみせている. この二つの問題の完全な解決は,その 後 1世紀にわたる努力を要するが,後代の数学の発展に最も重要な影響を与え, ,§ I I I参照),他方では群と体という基 一方では虚数の幾何学的表示を(第 IV章 本概念を生み出すことになる.



8世紀の非常に早い時期に,代 幾何学においては,一般化への傾向が,やはり 1 数曲線と代数曲面の分類への最初の試みとして現われ,そこから徐々に不変量あ



9世紀になると,((純))幾何学の研究が再 るいは不変式の概念が出てくる.次いで 1 び時代的関心の的となって,多くの人々が,ユークリッドとその後継者達に伝統 すべ



的に見られる数多くの((図形による場合わけ))の考察を回避する術を探し始める.



8 2 0年ごろに19世紀の偉大な創造のひとつ,複素射影幾何学に到達 この努力は 1 0 0年の間代数幾何学を枠づけることにな する.その目ざましい成功は,その後 1 る.今日の数学での二つの中心的概念,変換の概念と双対性の概念が浮かび上っ てくるのは,



この輝かしい発展の過程においてである.距離空間の((計量的 (mも



t r i q u e ) ) )性質と((射影的 ( p r o j e c t i f ) ) )性質とを区別するという,数学的構造の概念 8 7 2年 の ( ( E r l a n g e nプログラム))に通じる(第 I I I章 , §V,C )参照) ――それは 1 —の最初の胚胎があらわれるのもまたそこにおいてである.



I I 線形および多重線形代数学 A) 行列式の理論 n個の末知数に関する n個の線形方程式において,その係数が不定元であるよ



うな(したがって係数が文字で表わされているような)ものの解の具体的な計算の



7 4 8年に n=2と n=3の場合について Maclaurinによって実行され 最初の例は 1 る .



しかも彼は任意の nについての解の公式を与える一般的法則を言い表わすこ



64



第I I章



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



とを既に探究している. 2年程遅れて,恐らくは M aclaurinの仕事を知らずに,



G .Cramerは,任意の nについて,方程式の係数に関して多重線形な多項式にな っている二つの式の商の形で解を与える公式を具体的に書いている.この多項式



[ 5 ] ,( 2 ) ,I巻 91-169ページ)以後行列式の名で呼ばれることになる. は Cauchy( しかし Cramerはそれについて詳しい研究はしていない. n次の行列式を nに関 する帰納法で(行または列による((展開))で)定義しようとする考え方があらわれ, そして行列式の基本的性質,たとえば行と列に関して交代多重線形関数になって



7 7 0年以後,ゃ いることや,転置しても行列が等しいことなどが知られたのは, 1 っと Va ndermonde( [ 3 2 ] )と L a p l a c e( [ 2 1 ] ,V I I I巻 395-406ページ)の時である. しかも Cauchy以前のほとんどの代数学者達のように(そして Cauchy以 後 に お いてさえそうであった)彼らはこれらの性質を nの値が小さい場合に確かめるだ けで満足している.



V ,V I ,V I I I章参照),代数学において 解析学においてそうであったように(第 I l e g i s l a t e u r )であったのは Cauchyである[学問的体系,系統 も卓越した立法家 ( 的記述をうちたてるのに長けていたこと].彼はその最初の業績のひとつの中で



( [ 5 ] ,( 2 ) ,I巻 ,9 1-169ページ),行列式についての一般的諸定理を,次のような巧



1 aが・・ a nI T(aj-ai)を n個 の 変 みな手法を用いて完璧に証明している:多項式 a i < j



数a jに関する単項式の和に展開し,次にべき a りを a j kで置きかえれば d e t ( a j k ) が得られる [ Vandermondeの行列式(後出)より明らか l . 彼は先人達の諸結果に



d e tA 加えてさらに,二つの行列式の積を第三の行列式の積で表わす一般公式 [ d e tB=det( A ・ B ) J ( B i n e tも同時にしかも独立にこれを得ている)と,ある与えら れた行列式の`様々の次数の小行列式を用いて作られる行列式の間の関係(それ



I I章 , §VI参照)を得ている. らはずっと後に外積代数から筐接導かれる.第 I それ以降行列式は,たちまち線形および多重線形代数学のあらゆる問題で用い られる一般的な道具となった.それに加えて,手練手管で数多くの代数的恒等式



[ 2 7 ]を見 を導くことがこの世紀の終りまであまたの代数学者達の快楽となった ( よ).行列式を生んだ問題との関連は無視されて,その理論の純形式的側面に重点



auchvに既に認められる),人をあっと言わせるような計 が置かれ(その傾向は C 算の山を作るだけで,そこにひそむ沢山の一般的アイデアを見分けることはなか



I I った.(この発展の様子は後に行列の理論において再現されることになる(第 I



I I 線形および多重線形代数学



6 5



章 ,§ I I I ,B )参照).)特殊な形の行列式の計算をいくつか特に挙げておこう:い わゆる ( (Vandermondeの))行列式 * > d e t (切)り, Cauchyの行列式 d e t( 1 / ( a戸加)),



a c o b iは初めて歪対称行列 (akj=-a心の行列式は次数が奇数なら零で そして J f a f fが 1 8 1 5 あることを証明した.歪対称行列で表わされる連立一次方程式は, P 年に偏微分方程式の問題に関連して遭遇したもので,方程式と末知数の数 nが偶 数の時, P f a f fは Cramerの公式と異なる解公式を(小さい値の nに対して)与え



j kの関数が a j kに関して n / 2次 で し か な た.そこでは分子および分母となる a



ぃ . Jacobi( [ 1 7 ] ,IV巻 , 1 7 2 9ページ)は(後に P f a f f多項式と呼ばれる)その表 現の一般的な定式化の規則を手短に指摘した.そして 1 8 4 9年に Cayleyが ,



d e t( a j k )は実は P f a f f多項式の 2乗であることを示すことになる ( [ 6 ] ,I巻 ,4 1 0 4 1 3ページ). すでに述べたように, 1 8 4 0年以前は線形または多重線形代数学の他の概念は一 般的な検討の対象に全くなっていない.それらのうちのあるものが研究過程で現 われる場合にも,それが行列式の問題と関連がつけば,それで十分とされてしま うのである. B) 一次結合,一次従属性,可換群



一次従属性の最初の例が幾何の問題に関連して現われた事情は次のようなも , の y)=Oは (n+l ) ( n +2 ) / 2個の係数を持 のである. n次平面代数曲線の方程式 P( っている .Pに定数を掛けても曲線は変わらないから,



したがって n次 曲 線 は



n(n+3)/2個のパラメータに依っている.そこで平面内に与えられた n(n+3)/2個 * ) この命名は C auchyによるが歴史的には正当化されない. Vandermondeが こ の よ うな行列式を導入したことは一度もないのである.代数学の研究の中で(特に方程式の((根 号による》解法に関連して,以下の § I I I ,B )参照), V andermondeや特に L a g r a n g eは , aに 叶 aに 叶 … 十 aね叫=b k ( k = O , l ,・ ・ ・ ,n-l) (V) (ただし a ;は互いに相異なる数)の形の連立一次方程式に遭遇する. し か し こ の よ う な 方 程式を解くのに L a g r a n g eは 直 接 的 な 方 法 を 用 い て い る . 多 分 そ れ は 彼 の 補 間 法 の 公 式 ( ( V )の系を転置したものになる)から思いついたのであろう.彼は二つの多項式



P ( z )= (z-a1)(z-q2)…(z-an)= zn+Piznー1+・・・+P n , Q ( z )= ( z a 2 ) ・ ・( z-an)= z n―1+q1znー1+…+qn-1



を考え, q Jを帰納的な公式



q1=a1+Pi,



q2=af+p氾 1 +P 2 ,



q a= a f+Pia~+ P 2 a 1+加,…



で表わしておいて,関係式 ( V)を用いれば



X 1 Q ( a 1 )= 如 q nー1 十 如q n 2十・・・十 b 償



となることに着目して,それから X 1の表示を得ている.



第I I章



66



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



の点 ( X i ,Y i )を通るという条件によって曲線を決定するという問題が自然に提起 される.



しかし,((一般には》二つの n次曲線がが個の相異なる共通点を持つこと



はこの時代に既に知られていた ( §IV,A)参照).



したがって n : ? : 3の時,一定の位



(n+3)/2個の点の系に対しては,これらの点を 2個以上の n次 曲 置関係にある n 線が通り得る.この事実は既に Maclaurinが 1 7 2 0年 に 注 意 し た ( [ 2 2 ] )が,しば



( C r a m e rのパラドクス))の名が冠せられる.それは Cramerが 1 7 4 4年に しば ( Eulerにこの問題を示して意見を求めたからである. Eulerがこの主題について 公けにした論文 ( [ 1 2 ] ,( 1 ) ,XXVI巻 ,3 3 4 5ページ)は,明快さの観点からは申し 分のないもので,与えられた点集合が,ある 2曲線のが個の共通点からなる系に



( X i ,Yi)=Oが一次独 含まれている時には, P の係数を決定する連立一次方程式 P 立にならないことを示した.



しかし彼はそこで止まってしまい,一次従属性の概



念を明らかにすることをそれ以上追求していない. その少し前に,線形微分方程式の理論とともに(第 I章 , §VIを見よ),方程式の 特殊解である関数の一次結合の概念が Eulerに お い て 現 わ れ て い る . し か し n 階同次線形微分方程式の一般解を n個の特殊解の一次結合で得ようとする際,後 者が一次独立であるのを確かめねばならないということを,彼も,同じ問題を扱 った d'Alembertも Lagrangeも誰一人として,はっきり述べていない. この事 実を最初に明白に定式化したのは Cauchyのようである.彼はただちに問題を,



n個の特殊解の一次結合 C1y1+…+CnYnが あ る 点 に お い て , そ れ 自 身 お よ び (n-1)次までのすべての微分について任意の与えられた値をとり得ると表現され [ 2 6 ] ,5 7 3 5 7 4ページ).(この条件はもちろん る,線形系の可能条件に帰着させた ( e t( y伊)が消えないことに他ならない.この行列式は Wronski 対応する行列式 d によって 1 8 1 5年ごろに導入され,以後 n個 の 関 数 Yiの 《Wronski行列式))の名 で呼ばれている.)



1 8世紀末ごろから,整数係数の一次結合と Z上の一次独立性に対応する概念 もさまざまな文脈の中で現われてくる. G a u s s ,A b e l ,J a c o b iさらに彼らの後継



i r i c h r e tにおける 者達における楕円関数, Abel関数の周期(第 VII章を見よ), D , §V,A)を見よ), Gaussにおける二元二次形式の類 代数体の単数の対数(第 V 章 , §IVを見よ),そして最後に G auss, J a c o b i ,D i r i c h l e tおよ の一次結合(第 V 章 びE i s e n s t e i nにおける代数的数の整数係数一次結合である.今日の我々の観点



I I 線形および多重線形代数学



67



からすれば,これらは Z加群の特別な場合であるが, D edekindのイデアルにつ いての仕事(第 I I I章 ,§ IV,A)と第 V章 ,§ V,C ) )以前には,その段階までの((抽 象化))には至らなかった. 事実上,可換群(特に有限可換群)は(もちろん別の用語のもとに)乗法群の形で



Z / n Z ]の乗法群(本質的には E u l e r も現われている: nを法とする整数の剰余環 [ により既に考察されていた), 1のべき根の乗法群,そして正の有理数の乗法群さ えも一一その構造を素因子分解定理が記述しているとみなしうる. これらすべて



aussによって彼の「数論研究」 ( D i s q u i s i t i o n e sa r i t h m e t i c a e )お よ び の問題は G auchyと違って,彼はこれらすべ 数論に関する後の仕事の中で扱われている. C ての結果を一般的原理に結びつけることを追求していないが,それらの親族性に



[ 1 4 ] ,I巻 ,3 7 1ページ).さらに,彼が二元二次形式の類 はちゃんと気付いていた ( [ 1 4 ] ,I巻 ,2 7 3ページ)は,実に現代的な外観を呈して の理論を展開したやり方 ( いて,((二元二次形式の類))という言葉を((可換群の元))と置き換えさえすれば,他 に何の変更を加えることなしにほとんど全部一般論として書き換えられてしまう ほどである.すべての類の次数の最小公倍数を次数として持つ類が存在すること (これは現代流に言えば群の最大単因子を見出すことになる)を証明し,二元二次 形式の類の群が必ずしも巡回群にならない,あるいは彼の言葉でいえば ( ( 1個の基 底〔生成元の意味〕では不十分であって,整数を掛けたり〔加法的に記された〕算法



[ 1 4 ] ,I を施してすべての類を得るために 2個またはそれ以上の類が必要となる)) ( 巻 ,3 74-375ページ)ことに気付いたのはこの研究の過程においてであった.



した



がって彼は有限可換群の構造定理の非常に近くまで行っていたのであり,生前に は出版されなかったが同じ時期の日付のある手稿の中で,現代流に言えば,



Pを



素数として,群の P群への直和分解と同値になる結果の証明をスケッチしている



( [ 1 4 ] ,I I巻 ,2 6 6ページ). C) 線形変換



線形変換の歴史も全く似たようなものである.幾何学とは一義的に((図形))の研



iらt eゃ Fermatにおける反転や, E u l e rの((アフィ 究であると考えられており, V a x ,b y )と表わされるもの)[*]などの変換が知られてはいたが,こ ン性》 ( ( x ,y )→( ] * [ ユークリッド変換にこの変換を加えたものがアフィン変換(古くは‘擬似’変換)と呼 I I章 , §V,C)参照. ばれるものである.第 I



68



第I I章



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



. . れらの変換は曲線に施されたのみで,平面全体に対してではなかった ( [ 1 2 ] ,( 1 ) , 4 0 2 5 0ページ).全体的な変換として考えられていたのは,空間全体を平 IX巻 2 面上に,あるいは平面を直線上に写す射影ぐらいのものである. しかしながら, 直交座標系を取り換える計算法は線形変換の理論での計算と同じことになり,特 に適当なパラメータを用いて変数の変換を記述するのと本質的に同じことになっ



I I ,E )を見よ). ている(以下の § 我々が((線形変換))と呼ぶものは,よりはっきりとした形では(((線形代入 ( s u b -



s t i t u t i o nl i n e a i r e ) ) )の名のもとに)整係数二次形式に関する



2変数の場合は



L a g r a n g e ,3変数の場合は Gaussの一ー仕事の中で現われた. Lagrangeの出発 ( の ,y )に対し,のと yにあらゆる整数値を与えたときの値 F( , のy ) 点は,関数 F の集合が, a ,( 3 ,r 泣を⑩ーf 3 r =土 1であるような整数とした時, Fのかわりに



F(ax十 f 3 Y , rお十 i 3 y )を考えても変わらないということであった ( [ 2 0 ] ,I I I巻 , 6 9 5 795ページ).彼はまさにこの観察の上に二元二次形式の理論を基礎付け,その理 論は G aussがまたさらに著しく発展させることになる(第 V章 , §IVを見よ).



, zを ax+ 後者は同様の方法で三元二次形式の理論にも取りかかっている.況 y 油+ r z , aな +{ 3 ' y +r ' z ,a " x+{ 3 " y +r " zで置き換える((線形代入))を表わすため に彼は初めて((行列的な))記号法 a



( 3



r



a'(3'r' a"



( 3 "



r "



を用い,さらにこれを Sというただ 1個の文字で簡略化して書いている.そして この代入にさらに続けて係数の表が



o



e



/ ;



o'e1



’ ど



o "



! ; "



e 1 1



であるような代入を行なうならば,その結果は表が



a o+( 3 0 ' +r o "



a e+{ 3 e 1+r e "



a ! ; +( 3 1 ; ' +r ! ; "



a ' o +( 3 ' o ' +r ' o "



a ' e +( 3 ' e 1+r ' e 1 1



' t ; " a ' ! ; +( 3 'ざ +r



a "o +( 3 "o ' +r "o "



a "e +( 3 "e 1+r "e 1 1



a " ! ; +( 3 "! ; ' +r "! ; "



となる 1個の線形代入を行なったのと同じものになることをはっきり注意してい



I J 線形および多重線形代数学



69



る( [ 1 4 ] ,I巻 3 0 2 3 0 5ページ).別の言葉で言えば,彼はこの場合に行列の積を得 ているのであり,また彼はさらに付け加えて, これは任意の数の変数の場合に拡 張される結果に関わっていると述べているが,その考えはそれ以上発展させてい ない. Cauchyに行列式の積の法則を示唆したのが Gaussのこの 1行であったの は確からしいが, Gaussののちは射影幾何学で再び出現するまで (§V,D)を見 よ)((線形代入))には誰も興味を引かれなかったようである. D) 固 有 値



自己準同型写像の固有値の一般的概念は 1 8世紀に,線形変換と関連してでは , §VI参照)の中で現われ なく,定数係数同次連立線形微分方程式の理論(第 I章 た. 1 762年 , Lagrangeは , n個のパラメータ系の平衡位置付近での((微小変動)) を調べ, n



巧=区a i k叫



( 1: : : ; : j: : : ; ; n )



( 2 )



k=l



(ただし a i kは定数)の形の連立線形微分方程式を積分する問題に導かれる.



Eulerによって与えられた,任意次数の単独方程式に対する方法にならって, 叩 (t)=yj e P t , ただし Yiは定めるべき定数で, pは複素数,の形の解を求めよう



として,彼は連立一次方程式 n



がyj= 区 ajkYk k=l



(1~j~n)



( 3 )



に到達する. Ykv ますべてが 0であってはならないから,がは(現代流に言えば) 行列 ( a心の固有値でなければならない. Lagrangeは行列式のことにはふれず, 方程式系 ( 3 )から Ykを((消去する))と炉に関する n次方程式が導かれることと, 少なくともこの方程式が単根しか持たない場合には,根をひとつ選ぶと Ykを(定 数倍を除いて)一意的に定めることができることを述べるにとどまっている ( [ 2 0 ] , ,5 2 0 5 3 4ページ). 1 7 7 4年に彼は惑星の((永年 ( s e c u l a i r e ) ) )不等式の理論[惑星 I巻 の軌道等を多体問題のある種の近似解として求める理論]においても類似の方程 式系に遭遇し ( [ 2 0 ] ,VI巻 ,6 5 5 6 6 6ページ), L a p l a c eも ま た こ の 問 題 を 1 7 8 4年 に研究している ( [ 2 1 ] ,XI巻 ,9 1 9 2ページ).これらの問題において,指数 pの虚



f r e q u e n c e ) ) )[「振動数」の意味もある]として 数部分は考えている現象の((頻度数 ( 現われる.振動弦のような,無限個のパラメータに依存する力学系を問題とする



第I I章



70



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



時,その振動数の決定の問題と,我々が今日二次線形微分作用素の((スペクトル))



.B e r n o u l l iに よ っ て 予 測 さ れ て い る . 彼 と呼んでいるものとの親近性は既に D は,全質量を分割して弦上等距離に置いた有限個の質点の系の運動から出発して [ 1 2 ] ,( 2 ) ,X L巻).し ((極限移行))によって振動弦の方程式に到達したからである (



turmかし数学的には,作用素の固有値の一般的概念は解析学において後の S L i o u v i l l eの理論(第 V I I I章 ,§ VI,A)参照)とともに初めて現われてくる. E) 双線形形式,二次形式と双対性



1 8世紀に見出される双線形形式であって,二次形式と直接的関わりを持たない 唯一の例は,純粋の代数学にではなく,実に線形微分方程式の理論に属している. n



n階線形微分方程式 L(x)=O, ただし L(x)=区CjD畑(ここで Cjは区間 [ a ,b ]上 j=O



の変数 tの関数),の研究において, L agrangeはもうひとつの線形作用素 L * ( x ) を,特に名前は与えずに,導入した ( [ 2 0 ] ,I巻 ,4 7 1 6 6 8ページ).それは, [ a ,b ]上 n回連続微分可能で, (n-1)階までのすべての微分が[関数それ自身をふくめ]区



, bで零になる任意の関数 Y ,zに対して成り立つ関係式 間の端点 a i¥L(y)dt= iby L * ( z ) d t



( 4 )



で特徴づけられる.我々の視点からすれば, L*は上のような関数のなすベクト



ル空間上の対称双線形形式 (y,z)~fbyzdt に対する作用素 L の((随伴))作用素で ある.



しかし有限個の変数の二次形式との親近性はもちろんこの時代には気付か



れるべくもなかった.



8世紀には今日の意味での線形代数学がなかったと同様,二次形 実を言えば, 1 agrangeは,ある多変数実関数がある点 式の代数的理論もなかった.解析学で L で極大値または極小値をとる必要十分条件を調べ,その点の近傍での関数』の



Taylor展開の二次の項のなす二次形式に出会う ( [ 2 0 ] ,I巻 ,3 -20ページ).彼は ( 3項式 a が 十b x十 C の aX 吐 dの形への古くから知られた還元法を一般化して) 変数の線形変換によって, どうしたら二次形式を係数が土 1の形の平方の和に還 元できるかを示している.彼は変数変換を選ぶのに任意性が在ることに気付いて はいるが,このようにして得られたすべての形式について不変なものを取り出す



I I章 ,§ I I I ,B )参照). ことまではできなかった(第 I 8世紀に現われるのはほとんど 2変数および 3変数の この問題を別にすれば, 1



7 1



I I 線形および多璽線形代数学



二次形式に限られる.それらはひとつには円錐曲線および二次曲面に関係し,他



i o p h a n t o s方程式についての数論的研究に関係する.円錐曲線を二 方では二次 D ermatによって行なわ 次方程式で定義された平面曲線と同一視することは既に F u l e rがこれに手を着け,直交座標 れていた.二次曲面についての類似の問題は E 吐 Cが十 D=O, ただし ABCキ 0 , の変換によって二次曲面の方程式を Aが +By



の形に帰着させることを探求している ( [ 1 2 ] ,( 1 ) ,IX巻 ,3 7 9ページ).彼は,最初 の二次曲面の方程式を



ax2+a'y2+a "が+2byz+2b'zx+2b"xy+cx+c'y+c"z+d= 0 とすれば,このような変形は数



. J= a が十 a ' b ' 2+a "b " 2-a a ' a "-2 b b ' b "



( 5 )



が零でない場合にのみ可能であることに気付いている ( [ 1 2 ] ,( 1 ) ,IX巻 ,3 8 2ペー



5 )はもちろん二次形式 ジ ) . この表示 (



Q ( x ,y ,z )= a が十 a 'が十 a "牙+2byz+2b'z の+ 2b"呵



( 6 )



を表わす行列の行列式であり(後に S y l v e s t e rにより判別式の名が与えられる), それが零でない時, A,B,Cはこの行列の固有値である.



しかし E u l e rは初めの



zに対する動 3平面 Oぷ y ' z 'の位置を三つの ( ( E u l e rの角)),すな 直交 3平面 O四 y z 'のなす角度(), 0四yおよび Oが y 'の交わり D と Oのとのなす角度 わち Ozと O



¢ , そして最後に Oぶ と D とのなす角度 c p , によって決定するにとどまっている. ,zの座標のが, y ' ,z 'を用いた表現は(),< P ,c pの三角関数を係数としているが, , のy ( x ,y ,z )に代入して得られた二次形式の((直交成分))の項 y ' z ' ,z ' が , この表現を Q 'の係数を 3個の角をうまく選ぶことによって零にできるかどうかを およびぷ y



y



第I I章



72



見ることが問題となる.



1 8 4 0年までの代数学と幾何学



しかし E u l e rは何の証明もなしに,その問題が 3次方程



式によっているという説明を与えることすらせずに,ただそのような選択は可能 であると断言しているのみである.



1 7 6 5年に E u l e rは剛体の慣性主軸の研究に関連して同じ問題に出会っている が,二つの問題が(少なくとも楕円面については)同値であるということに気付か x ,y ,z )が球面生全体を動く時の Q の 極 値 を 見 なかったようである.ここでは ( ,c pのみの関数を考察することになる.今 出すことが問題となるので,二つの角 0



u l e rは具体的な計算を行なって, t a n { )についての実係数 3次 方 程 式 を 見 度は E 出し,



したがってこの方程式のひとつの実根に対応する点で,軸の 1本が球面を



貫くように直交座標を変換できることに注意している.問題はしたがって 2次元 空間内での同じ問題に帰着される.すると解くべき方程式は二次で,



しかもこれ



らの 2根が実であることはすぐ分るから,こうして問題が今度は解かれたことに



8 0 0年に H a c h e t t eと P o i s s o nは同じ方法を任意の非退化な形式 Q につい なる. 1 [ 1 5 ] ) . て用いる ( この間に, L agrangeが剛体の運動に関連して 1 7 7 3年に先の問題と同値なもの



[ 2 0 ] ,I I I巻 ,5 7 9 6 1 6ページ)が,彼は別の仕方で角を使わずにそ に出会っている ( れに取り組んでいる.彼は,求めている新しい座標軸のひとつの上にある点の座 x ,y ,z )が三つの一次方程式 標(



oQ



-=えぶ 紐



aQ



aQ



o y=えY, —— o z=えz







( 7 )



を満足しなければならないことを記している.ここでえも未知数である.そして (判別式のことは言っていないが,この問題と,微小変動に関して彼の出会った問 題との親近性には多分気付いていて),これからえを与える 3次方程式を導いてい



u l e rと同じく根のひとつが実数である事実を用いようとする る.そして彼は E のだが, ここで彼はこの 1根が分れば他の 2根は連立一次方程式で決まると思い 込むという珍しい誤ちを犯している(これらの一次方程式のひとつの係数がすべ



Mecaniquea n a l y t i q u e ) て零になることを彼は見落している).彼の「解析力学」 ( に挿入するため 1 7 8 8年にこの問題を再び取り上げた時に,彼はこの大間違いに 1



気付いたものと見え,そこでは最後まで正しい推論を行なっている.すなわち, 実でない共役な 2虚根があると仮定する.するとそれらには各々連立一次方程式



I I 線形および多重線形代数学



73



( 7 )の解の系 ( x ,y ,z ) ,( 岳 ,y ,z )で 互 い に 共 役 複 素 数 に な っ て い る も の が 対 応 す



る.しかしえの方程式の相異なる 2根 に 対 し て は 対 応 す る 連 立 一 次 方 程 式 の 解 ( ぷ ,y ' ,z ' )と(ば',y " ,z " )が関係式



x 'ぷ '+y'y"+z ' z "=0 を満たすことを先に証明してあるので,関係式ぶ万十 yy+zz=Oが得られ,これ はぉ, y , zのどれかは零でないという事実に矛盾する ( [ 2 0 ] ,XII巻 ,2 3 9ページ).



1 8 2 6年に Cauchyは理工科大学校 ( l ' E c o l eP o l y t e c h n i q u e )の授業のために, 二次曲線をその主軸を用いた形[標準形]で表わす問題を再び取り上げ,二次形式



( 6 )で直交座標の変換を行なっても 3次方程式の根が変わらないことを見出した



( [ 5 ] ,( 2 ) ,V巻 2 5 2ページ).連立一次方程式 ( 7 )の係数の対称性に彼が注目したの 8 2 9年 に ( [ 5 ] ,( 2 ) ,IX巻 ,1 7 4 1 9 5ページ)彼 は多分この機会であろう.なぜなら 1 は(現代の言葉で言えば)任意次数の対称行列の固有値を研究する問題を立て,



Lagrangeの 1 7 8 8年の論法を翻案して,解くべき n次方程式の根が実数であるこ とを示している. 直交座標の変換による判別式 ( 5 )の不変性はもちろん二次形式 Q における任意 の座標の線形変換に関するより一般的な定理の特別な場合である.つまり判別式 は線形変換の行列式の平方を乗じたものになる.この事実はすでに n=2の場合



Lagrangeによって, n=3の場合 Gaussによって ( [ 1 4 ] ,I巻 ,3 0 2ページ)彼らの 整係数二次形式の研究の過程で指摘されていた.それはすぐ後で行列式の積の公



8 4 0年以後になっ 式の単純な系になってしまうのだが,しかしこの((共変性))は, 1 I I章 ,§ I I I ,C ) ) . て,不変式論の出発点のひとつとなるのである(第 I 更に G aussが三元二次形式について(現代流にいえば)最初に与えられた形式 の行列の小行列式を係数とする((随伴))(あるいは((逆)))形式を導入したのもまた彼 の数論研究においてであった.彼は実質的に,最初の二次形式に線形代入 S を行 なうと,得られた形式の随伴形式は,最初の形式の随伴形式に,その行列が Sの



5 1 Jであるような線形代入を行なって導かれた形式にな それの((随伴))[すなわち t っていることに注意している[記号で書けば ( tSQS)ー1= t c ts l ) Q l ( ts l ) J . この概 念の導入にヒントをえて Cauchyが,ある行列の小行列式を係数とする行列の行



§ I I ,A ) )を導いたことは事実らしい. 列式についての諸定理 ( 1 7 7 0年の E u l e rの論文 ( [ 1 2 ] ,( 1 ) ,VI巻 ,2 8 7 3 1 5ページ)は,その中に幾何学的



74



第I I章



1 8 4 0年までの代数学と幾 何 学



考察と数論的考察とが混在しているが,注目すべきものである.それは直交軸の 変換とその一般化の考察にあてられている.直交 3平面のなす 3本の直線の単位



o s i n u sd i r e c t e u r(導余弦)]を,彼にならって四角い表の形に ベクトル成分[原語 c X



Iy Iz



x ' [y ' I' z



( 8 )



x " Iy" Iz " と書いてみると,この表を特徴付ける性質を表わす関係式が+炉+が = 1 , xx'



+yy'+z z ' =0 ,e t c .だけでなく,((転置された))表についての関係式,吋+の1 2 + ぷr 2 = 1 , xy十ぷy'+の" y "=0 ,e t c .もまたなりたち,



したがって関係式ば= y ' z "



z ' y " ,e t c .(これらは現在この行列が転置行列の逆行列である条件として書き表 わされる)が得られることは,多分ここで初めて注意された.一見してさらに驚 ( n次元の幾何学))のことなど一度も考えてみたことはなさそ くべきことは,(彼は (



a j k )に対する結果に拡張されているのが見 うなのに)これが任意次数の平方的表 ( 叩 が こ 功 = 4的となるも られることである.彼は対応する線形代入 Yi=2ajk



j kのパラメータ表示を得ることに専ら心を向けて, のであることを知っており, a ( n 1 ) / 2個の回転 それらの定義する線形代入は n Yi=叩 c o sd ! jk —叩



sinajk,.



Y k= 叩 s i na i叶 叫 c o sd ! j k



のd ! jkを適当に選んでその合成として得られることを示している. しかもまたさ



...



らに注目すべきことには, n=3と n=4に対して彼は a j kの有理的表示を得てい る. - n = 3では 4個の同次パラメータの, n=4では 1個の関係式で結ばれた 8個の同次パラメータの,関数として.それらはずっと後になって C ayleyが四



I I章 ,§ I I I ,D )参照).実はこ 元数の理論から導いたのと全く同じものである(第 I ermatによって予告された 4個の平方の和としての整数の表示 れらの公式は, F , §XI[ L a g r a n g eの定理]参照)を証明すべOである. z=r四 な ら ば



a x= ・1. a Y . o r



r如



となる (((Cauchy-Riemannの条件))の結果)ことに Gaussは注目する.二通りの



れは値



f f翌



r 雰霊



仕方で二重積分 冗



(X(R,< p )



d r d c pを計算し,一方ではそれは 0となり,他方ではそ < p ) )必をとることを彼は示す.したがって







0= X ( O ,c p )= l _ X(R,c p ) d c p 2 冗 o とならねばならないが,これは X(R,c p ) > Oである事実と両立しない.



1 7 4 9 ) . 彼は,多項式 P が 最も((代数的な))証明は Eulerのアイデアに由来する ( -oo と +ooの間で符号を変えれば,



Pは zのある実数値で零になることを明ら



... かなこととして承認する.特に P の次数が奇数であるか,または幻と伽との符



m q , qは奇数, 号が異なっていればよい.そこから出発して,彼は P の次数 nを 2 の形に書き, m=Oの場合は結果が既に正しいと認められているから, m に関す る帰納法で純代数的な仕方の推論を進める.彼の着想は次数 2mーl qの 2個の実係



'78



第I I章



1 8 4 0年までの代数学と幾何学



数多項式の積 P=P1 凡として分解しようというもので,これから結論が得られる.



a o = l ,a1=0としてよい. P 1 ( z ) =が 一 u z rー1 十…,ただし n = 2 r ,と書いて, E u l e rは rの小さい値に対し,関係式 P=P1凡の係数の恒等式を用いてすべての凡と P 2 の末知の係数が U の有理関数として表わされること,これらの係数の((消去))によ って最後に uに関する(次数げ)の)方程式で両端の係数の符号が異なるものに 到達することを示した.それによってこの方程式に少なくともひとつの実根があ ることが肯定され,したがって求める形の分解 P 1凡の存在が得られるわけである. しかし一般の場合には,彼の証明はスケッチ的でしかなく,いくつもの本質的な 点が黙って見過ごされている ( [ 1 2 ] ,( 1 ) ,VI巻 ,7 8 1 4 7ページ).Lagrangeは 1 7 7 2 年にこの問題を再び取り上げ,中でも, あり,しかも凡と凡の他の係数の



U に関する方程式が根



0を持つ可能性が



U の関数としての有理的表示において



u=O



とおいた時に,これらの表示の分栂と分子が同時に 0になる可能性があることに 凡の存在についての E u l e rの主張を厳密に証明 気付く.そこで彼は分解 P=P1 することをもくろむ.彼の着想は未知数として ( a o = lの場合) v=2u十佑をとり, V に関する方程式の((虚根))は Vu=区 Z u < k >一区 Z u (ここで 6 は す べ て の k=l



k=l



{ l ,2 ,



…,2 r }の置換を動く)と表現されることに注目するところにある.加の積が常に



soであることを見るのは容易である.この積が 0になる時に生ずる困難を避け agrangeは約を任意の(実)係数をもつ適当な凡の係数の一次結合 るために, L I I I ,B )を見よ)を用 で置き換え,方程式の根の置換についての彼の結果(以下, § [ 2 0 ] ,I I I巻, 479-516ページ). いることによって,彼は正しい証明を完成する ( aussは 1 8 1 5年に異議を唱えて言う,((……問題があたかも根の しかしながら G 形を決めるだけのことであるかのように受け取られ,根の存在は証明なしに承認 されているが,そうした推論の仕方はここでは全く空しいものであって,まさに 循環論法の誤ち ( p e t i t i op r i n c i p i s )である))( [ 1 4 ] ,I I I巻 ,1 0 5 1 0 6ページ).常に明 晰さと正確さを心がけていた彼は,そこで彼の第 2の証明の中で,どうすれば, 全く((存在))が保証されていない((虚根(仮想根)))に頼ることなく,



u l e rの しかも E



u l e rの帰納的推論のひ 着想をうまく生かすことができるかを示している.実は E 7 5 9年に DeFoncenexが とつの簡易化を再び取り上げているのである.それは 1 ( n 1 ) / 2個の一次結合 示唆したもので, Pの((虚根》の n Ujk=



( z 汁む) +bZJZk



79



I I I 代数方程式の解法



(ここで実数係数 bを適当に選ぶ)を考察することに基づく.



Ujk



はある実係数の



2 m l q ( 2 苅一 1 )次方程式の根なので,帰納法の仮定によってこれらの根の少なく ともひとつは複素数である. もしも bに二つの異なる値 b ' ' b "を与えてしかも向







Z j ,Z kに対して (zj+Zk)+b'ZjZk, ( z戸 Zk)+b"ZJZkがともに複素数であるよ



うにできれば,それから二次方程式を解くことによって Z jと Z kも複素数である ことが帰結される. 直 根 」 を 避 け る た め に Gaussは ( n+2)個の不定元 u ,ぶ Y i ,…,Ynと多項式



加u-(y斤 Y心 + y心



=f(u,x ,ん,…占)を考察する.ただし初は Y iの基本



対称式で,それらが Q 上代数的に独立であることを Gaussは証明している .fを U の多項式とみなした時,その判別式」($,ふ,…,ぇn )はのの多項式である.もし



Pが重根を持たず, ao=lである(これはいつもそう仮定できる)ならば多項式 i l ( お, a i ,a z ,… , (-l)n仰)は恒等的に 0にはならず,したがってのに実数値 Xを 与えて



U についての多項式 f ( u ,X ,-a 1 ,a 2 ,… ,



(-l)n年)が重根を持たないように



切 ーl q ( 2 m q 1 )だから複素数の根 Uを 1個は持つ.そこで Gauss できる .fは次数 2



は具体的に決定される < p J ( U )を用いて P ( z )= (が十 < p n 1 ( U ) z +< p n ( U ) ) ( z n z +< p 1 ( U ) z n s +…+ < p n 2 ( U ) )



と書けることを示し,



したがって結論が得られる ( [ 1 4 ] ,I I I巻 ,3 1 5 6ページ).こ



s p e c i a l i s a t i o n ) ) )の概念が初めて現われることを の証明の中で不定元の((特殊化 ( はっきり見てとれる.この概念は現代代数幾何学で基本的概念となったものであ [ 1 1 ] ,( え ) ) . る(



B) 根号による方程式の解法



n次方程式 P(z)=Oを((根号をとることによって))解こうとする一般的方法の最 初の試みは T schirnhausによって 1 6 8 3年に公けにされた.その方法は新しい未 nー1 z n 1をとるものである. yはしたがってその係数が b j 知数 y=bo+b1z十…十 b



に依存して変わる



n次 方 程 式 凡 (y)=Oを 満 た す . そ こ で 凡(y)が炉ー C の形に



なるように切を決めることが問題になる.これが解ければ,そこで問題は



Zにつ



n-1)次の方程式を解くことに帰着されるのである.この方法は n=3に対 いて ( 1 / b 2に関する二次方程式が得られ,それは 3次方程式の新しい してほ成功して, b



解法を与える.しかし n=5に対しては,的を決定することは,((一般には))次数の



4次の方程式へと導かれる. より低い方程式の積に分解しそうにない 2



80



第I I章



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



1 7 7 0年に至るまでこの問題はほとんど進展がない. E ulerの二度の試みも



Tschirnhausのそれを超えていない.もうひとつ 1762年 の Bezoutの試みは 1 のべき乗根を導入している点で E u l e rのものよりやや興味がある.彼は P(z)=O の根 a を



a=A1p+A忍 + … 十 A正 i p n 1



( 9 )



の形に表わすことを求めている.ここで pは 1の n乗根で,



したがって関係式 1



+p+p吐 … 十 pn-l=Qを満たす. この関係式と ( 9 )とから pを消去すると,その係 n 1の多項式であるような aについての方程式が得られるが,一方, 数がふ,…, A ( z )の係数 a八こ等しくなければならない. その係数は P



しかし n=5に対してはま



たしても, Ajを決定するために消去を行なうと 24次方程式に帰着されてしまう.



1 7 7 0年から 1 7 7 2年にかけてほとんど同時に(しかも独立に)三つの論文があら われ,それらの中で初めて,それまで全く支配的だった経験的ゆき方から脱して,



4次以下の方程式の解法を系統的に分析することによって,それらが成功した理 由と, 5次以上の方程式に拡張する時に直面する困難とを理解しようとする試み が見られる. W aring, L a g r a n g e , Vandermondeは 3人とも皆,枕 s4に対して



(z)=Oの根 a i ,a 2 ,…,知に関する多項式で,のにあらゆる置換を行な は方程式 P ............ !より少ない数の相異なる値をとるものが存在することを見出してい った時に n る.例えば n=4に対して



+C/.3C/.4 は 3個 の 相 異 な る 値 蜘 臨 P aしかとらず,



C l . 1 C l . 2



これらの値はしたがって 3次方程式の根で,その方程式の係数は,



C l . j の対称関数



として, P の係数 Cl.j を用いて計算される.この方程式が解かれたとすれば, と O!sC/.4 とは,積 a西



0 ! 3 C / . 4 が対称関数だから,係数が



程式の根として得られる.次いで同様にして aげ



C l . 2



C l . 1釦



P 1を用いて知られる二次方 と a戸



C / . 4 も得られる.なぜ



aけ a 2 ) ( a叶 a4)=P2+P sとなるからである. ならその和は対称関数であり,積は ( そして最後にもう一度二次方程式を解くことによって



C l . 1



と Cl.2 とが得られる.



agrangeと Vandermondeにお この着想が最もはっきりと進歩をみせるのは L 1 )は見かけ上余分に根を導いている.なぜ いてである. 3次方程式の根の公式 (



u l e rの注意を なら各々の立方根は 3個の値を取りうるからである. この事実は E 引き ( [ 1 2 ] ,( 1 ) ,VI巻 ,1 1 9ページ),彼は, 9個ではなく 3個 の 根 を 得 る よ う に



2個 の 立 方 根 の 積 いかに立方根の選択法を併用しなければならないかを示した (



/ 3に等しくなければならない).さらに進んで Lagrangeは , X 1 ,叫,叫を が 一p



8 1



I I I 代数方程式の解法



1



方程式の 3根 '(J) を 1の立方根とすると,これらの立方根は一 ( X 1+(J)叫+研X s ) 3 と書き表わされることを注意した.言い換えると,根の関数 ( X 1+(J)叩 十 (1)2叫)汀ま 叩 の 6個の可能な置換に対して 2個の値しかとらないのである.恐らくこの結



( L a g r a n g eの分解式 果に導かれて,彼は,任意の n次方程式に対して,有名な ( ( r e s o l v a n t e ) ) )



” Yk=2 wl;叫 h=l



(l~k~n)



( 1 0 )



(ただし W k には順次 n個の 1の n乗根を値として与え,叩は与えられた方程式の 根とする)を導入する.行列式を用いずに ( § Iを見よ), Lagrangeは Ykが既知な ら叩は完全に決定されることを示し,さらに ( Y iは w1=lに対応するとすれば, それは叩に関して対称だから既知) 2~j?n に対する Yi はある (n-1) 次方程式 の根であって, しかもその方程式の係数は,



Pの係数の関数として形が分ってい



る係数を持つ (n-2)1次方程式の根の有理関数であることを示した.



したがって



この一般的方法は 2 ,3 ,4次方程式に対する既知の解公式の説明を与える.



しかし



n=5に対しては別の 6次方程式を解くことに帰着されてしまう.このことから Lagrange は n~5 に対する((根号による))可解性を疑う気持に傾いているが,し



かしこの主題について余りはっきりした形で考えを表明することはせずに,他の



[ 2 0 ] ,I I I巻 , 方法によって目的に到達する可能性をもありうるものとしている ( 2 0 5 4 2 1ページ). Lagrangeの長い論文の中で恐らくさらにずっと重要なものは,与えられた数 や不定元による数式における変数の置換に関して彼が取り入れて行なっている新 しい型の推論であろう.例えば, V がある方程式の n個の根の j (l~j~n) の関数 であるならば,あらゆる可能な仕方で叩の置換を行なった時に V の取りうる値



!の約数であることを彼は証明しているが,その推論は今日でも次数 N の数は n の有限群の部分群の次数が N の約数であることを証明するのに役立っている(こ の結果はしばしば ( ( L a g r a n g eの定理))の名のもとに引用される).さらに一段と著 しいのは,彼の示した,もしいと V 2が叩に関する 2個の有理関数で,しかも



V 2を不変にするようなすべての叩の置換に対していの値が変わらないならば, V2はいと方程式の係数との有理関数であるという定理である.[普通はこの定 ( L a g r a n g eの定理))と呼ぶ.] Zi,… ,Z μ がいの相異なる 理を(方程式論における) (



第I I章



8 2



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



すべての値を,いの値が Zj となる置換に対して広のとる値を Yiとすれば,表



1 Z i +…+YμZ クはすべての置換によって不変であり,したがって方程式の係数 現Y の有理関数であることに彼は注意し, OS:kS:μ-lに対応するμ個の方程式から



Y 2 ,… ,Y μ を消去することによって Y 1を Z 1の有理関数の形で得るのである ( [ 2 0 ] , I I I巻 3 7 4ページ). Vandermondeの論文 ( [ 3 1 ] )は , L agrangeのものほど系統立ってはいないが, ( L a g r a n g eの分解式))を導入する着想を それと多くの点で一致している.例えば ( 独立に含んでいる.そこにはまた, n文字の置換の((巡回))置換の積への分解



( [ G H J ,291ページ)とか,((原始的》置換群についての最初の着想のような,後に 置換群の理論で本質的なものとなる諸概念の糸口も見られる.ある置換群[対称 群 Rnの部分群]が((原始的))であるとは,_n文字の集合が,互いに共通部分のない



n-1)個以下の族の和に分割され,群に属するすべての置 部分集合の 2個以上, ( 換がその分割を全体として保つような置換になる,



というようなことがないこと



である(もちろん, Vandermondeにおいてこの概念が現われるのは, このような 定式化のもとにではない).



Vandermondeの最も美しい結果は方程式砂ー 1=0の根号による解である. deMoivre以来,奇数 n=2m+lに対し,方程式血ー l=Oは,新しい変数とし 1 /ぉ)をとることによって, m 次方程式に帰着されることは知られてい てz=x十 ( た .



したがって n=llに対しては, 5次方程式を解くことが問題になる. 1の n



乗根はそれらのうちのひとつのべきとしてすべて得られるという事実に基づき,



Vandermondeはこの方程式に対する幾つかの Lagrangeの分解式の 5乗 が 有 理 数であることを示すことができたのである.



Vandermondeはさらに,すべての奇素数 nに 対 す る 方 程 式 血 ー 1=0につい 0年 後 初 め て てこの結果は成り立つと述べている.しかしこの一般的定理は 3 Gaussによって, 1のべき乗根を用いて作られる,彼が((周期 ( p e r i o d e ) ) )と名付 ,§ I I I ,D)を見よ)の特 けたものが根号によって表わされるという事実(第 V章



aussの 別な場合として証明された. ここで我々がとっている観点からすれば, G 着想の本質的なところは,ぷn-l=Oの 1でない根が,合同式 z n 1三 1(modn)の 原始根 gをひとつ定めておくと,血ー 1=0の任意の原始根こを用いて,叩=こ叫



0: S : :kS :n-2 ,と書かれるという注意である・ ( ] ) n ( x ) = ( ぷしー 1 ) / ( x一1 )と置けば(この



I I I 代数方程式の解法



8 3



多項式が Q上既約であることを G aussは既に証明していた),上の注意は現代の 用語を用いて Q上の



( / ) nの最小分解体



Kの G a l o i s群 が (n-1)次の巡向群である



と言い換えられ,((周期))を上の形に表わすことは巡回群の部分群に対応する K の部分体の記述に他ならない.方程式が根号によって解けることは, Gaussが ) ) 2 叩+…+ 並べた順序で叩をとると, Lagrangeの 分 解 式 の べ き (xo+mX1十 ( ( J ) n 2幼 n-2)n-l は有理数である事実から結論される*).ある方程式の根がそれらの •











0



う ち の ひ と つ か ら 出 発 し て 有 理 写 像 0の逐次代入の形で x ,0 ( x ) ,0 ( 0 ( x ) ) ,・ ・ , 炉(ぉ),…と表わされるというこの性質こそが((根号によって))根を表わすことがで きる理由の根底なのだということにも,さらに Gaussが気付いていたのは確かで ある. というのは,「数論研究」の中で,彼は証明についての示唆なしにレムニス ケート曲線の(奇素数 nに対する) n等分方程式の根もまた根号によって表わされ



belが 1 8 2 9年に Gaussのこの主張を証明し,そし ると述べているからである. A



II章 ,§ 7 ) , この同じ逐次代入の てすべての楕円関数への拡張を探求した時(第 V 性質に想到し,次のような形でこれを一般化した:もし任意のひとつの根のから



jによる約(の)の形であり, 出発して,すべての他の根は有理関数 o



しかもさらに



a l o i s群 約(仇(ぉ))=仇飢( x ) )である(これは現代の用語でいえば,最小分解体の G が可換であることを意味する)ならば,方程式は(現在 Abel方程式と呼ばれるも



[ 1 ] ,I巻 ,4 7 8ページ). ので)根号によって解かれる (



.R u f f i n iの仕事は全く別の方向へ向っている. 「数論研究」と同時代だが, P Lagrangeのアイデアを用いて,彼があえて予想として述べるには至らなかった u f f i n iは証明し 命題,《一般の)) 5次方程式の根号による解が不可能であることを R 7 9 9年から 1 8 1 3年にかけて彼が公けにした四つの論文は様々に ようと目論む. 1 異なった彼の証明を含んでいる.彼の使いこなした群論の言葉は, Lagrangeや



Vandermonde以上のものではなく,しかも彼の推論は((ある根の関数に対し,ぁ らゆる可能な仕方で根の置換を行なう時にその関数のとる値の数))という風に表 わされているために,それははなはだしく長くかつ複雑なものになっている.







) * 方程式 x11-1=0に対して, V a n d e r m o n d eが対応する分解式に対して同じ結果を得 たのは, xk+x,;1( O : $ ; k : $ ; 4 )を与える 5次方程式の根を G a u s sと 同 じ 順 序 に 並 べ る こ と に よってであった.彼がこれを一般的方法につながることと見ていたのか,それとも彼は試 行錯誤の結果ここに到達したのであって, n~ll に対する方程式 xn ー 1=0 のうちで唯一 この特別な場合のみ取り扱うことができたのかどうかはまず知る由もない.



第 I I章



84



1 8 4 0年 ま で の 代 数 学 と 幾 何 学



かしながら本質的にそれは対称群 Rsについて推し進められた研究に関するもの である.Rsの 1 2 0個の元を彼は具体的に書き表わしている.彼は, Vandermonde による,置換の巡回置換の積への分解を用い,特に,もし Rsの部分群が 5で割 り切れる位数を持つならばそれは 5次の巡回置換を含むことを示している.最初



, 4 , 8の部分群を含まないことを証 のいくつかの証明を見ると,彼は Rsが指数 3 明している.彼の最後の証明はこれらの補題を用いることを避けて,非常に簡単 なひとつの原理を持っている.それは現代の用語で言えば,多項式 xn+x1xn-1 +…+叫の最小分解体は[もし方程式が根号によって解けるならば]増大列



E。 cE1c…cEk-1cEk= F



( 1 1 )



を間に挿める事実を正しいと承認していることになる.ただしここで E。は体



Q ( x 1 ,…,叫)で, E i + iは ム に 方 程 式 砂 = b i ,b 廷瓦,かは奇素数,の 1根 を 付 加して得られる体である.これが不可能であることを示すことが問題になる. k に関する帰納法によって, k=lの場合に帰着される.



ところで,群 R d ま F に作



。を不変にする.もし奇素数 Pとが: Fに対し zP=bとす 用してすべての元 bEE 認,ただし必 =l, であり, Rsの 2元 a ,て れば,すべての aERsに対し a(z)=w に対しては



てである.



Wui-=WuW



したがって Rsが奇素数 Pに 対 し 1のP乗 根 の 群



の中に自明でない準同型像を持たないことを証明すれば十分である.そのために



R u f f i n iは 3個の元 1 : 1=(1 23 ) , て2=(345 ) , 2=て1 1 : 2 = ( 12345 )の像を考察す ( 2 1 : 1 ) 5 = ( え 1 : 2 ) 5=1を用いれば,任意の可換群への 1 : 1 ,て2の準同型に る.関係式だ = よる像は単位元に等しくなければならないことがただちに分る.



u f f i n iの仕事は Cauchyに刺激を与える結果を生み,そこに 置換についての R 8 1 3年 に 見 出 す ( [ 5 ] ,( 2 ) ,I巻 ,6 4 9 0ペー 後者は彼の体系化のオを働かせる場を 1 ジ).そこでは,ある一定の順序に並べられた(必ずしも方程式の根に限らない) 有限個の対象と,それらの対象の順序を変える((置換 ( s u b s t i t u t i o n ) ) )c * Jが問題 となっている.そして彼は, aを aに , bを 0に,…, lをえに置き換える作用を 表わすのに(:~ ~:::



D



と記しており,また省略記号



( 1 )をも使用している.



[ * J ' s u b s t i t u t i o n 'は C a u c h yの 用 語 で , 現 在 用 い ら れ て い る ' p e r m u t a t i o n 'と 意 味 上 は 変わらない(あるものを他のものに取り換えること)ので‘置換’と訳した.前者は数学では 現在「代入」の意味で使われており,化学の方では(化合物における原子または分子の)置 換の意味で使われている.



I I I 代数方程式の解法



8 5



((群))の用語こそまだ導入されないが(それは G a l o i sによって初めてなされる),



Cauchy は置換の合成を考えてその積を (1)(~) で; わし, (t) のK べきを (~r で表わしている.彼はまた推論の中で恒等置換い)を導入している.彼の仕 事で注目されるのは,置換群についての一般的ないくつかの定理を初めて発見し



u f f i n iはそれらを群 Rsに関する特別な場合にしか証明し ていることである. R c y c l e ) ) )( a b c )が交代群別 nを生成する事実,およ ていなかった.特に((サイクル ( び ®n が n~5 に対しては P u < 2 , 2 )…u ( 2 , n ) Jとなり,これを [ u < 1 > u c 2 >… 因子を別にすれば [ u < n > J 2と略記する;これは重みー 2の不変式である. r次の n項 形 式 は そ れ 自 身 とベクトルのの重み 0の共変式だが,その記号表示は〈 u < 1 . o ,x 0 > 〈 〉1 l l . 2 >心:( 2 )〉 ・ ・ ・



u ( l ・ r > ,の< r >〉であり,〈 u ,の 〉 rと略記される. 2個の r , s次二項形式 f,gのヤコビア 〈



1 9 )式の hは ( 1 8 )式の二次形式 f,gのヤコビアンである)の記号表示 ン(例えば, ( は定数因子を別にすれば [ u m u c 2 > ]〈 u < 1 > ,の 〉r 1〈 u c 2 i ,X〉 S 1である. 同じ重みの共変式の商をとることによって重み 0の(絶対不変式とも言われる) 有理共変式が得られることに注意しよう.例えば



c 2の 4個のベクトルの絶対不



変式



[ x m x < 3 > J ・ [ x < 2 ) x c 4 > J / [ の< 2 > x < a ) l・[ x ( l ) x c 4 ) J は射影直線 P1(C)における各ベクトルに対応する点の複比に他ならない(第 I I章 ,



§V,D ) ) . f ) n項形式と



e nのベクトルの与えられた系に対して,記号法は明らかに無限



個の共変式を与えるが,これらの共変式の実際的な計算は小さな数の場合,特に



n=2と n=3に対してしか行なわれていない. n=2に対して,有限個の共変式の c o m p l e t ) ) )系が存在して,すべての他の共変式はこの系の共変式の(複素数 ( ( 完 全(



...



係数)多項式になっていることが,ただちに認識された ( Gordanの定理).例えば



( 1 8 )の 2個の二項二次形式!,gと 1個のベクトル”に対しては, f ,g , ヤコビア



( 1 9 ) , および 3個の不変式 ンh a 1 1 a 2 2-a i 2 ,



b 1 1 b 2 2-b i2 ,



からなる 6個の共変式の完全系が存在する.



a 1 1 b 2 2-2 a 1 2 b 1 2+a 2 2 b 1 1 しかし完全系の計算さえもたちまち



難渋なものになってしまう: 5次の二項形式 fに対しては,



fと 1個 の ベ ク ト ル



6個 の 共 変 式 を 取 ら ね ば ののみの共変式に限ったとしても,完全系を得るには 2 8次である. 9次以上の二項形式に対し ならず,そのうちの 1個 は 四 に 関 し て 1 [ 1 8 ] ) . ては計算が最後まで遂行されたことはない ( もちろん,完全系の共変式ら ( 1S : k勾 n)の数は一般に変数の数より多い(例え



第I I I章



1 2 0



ば , 5次の二項形式 1個と



1 8 4 0年以降の代数学



c 2の 1個のベクトルの共変式に対しては 6個の非同次



C C i ,C 2 ,…,Cm)=O(ここで出は複素数 変数しかない)から,それらの共変式は SJ 係数の多項式)の形の関係式によって結びつけられている;これらの関係式は伝



y l v e s t e rによって) s y z y g y c * Jと名付けられている. syzygy 統的に(もちろん S の具体的な形を決定することは,共変式の完全系を決定することよりさらに一層 複雑で,ほんの少数の場合にしかなされていない(特に線形形式とベクトルの任 意の系の多重線形共変式に対して.それが不変式論の第 2基本定理と呼ばれるも



[ 4 6 ] ,7 0ページ)). のの内容をなす ( g ) H i l b e r tによって 1 8 9 0 1 8 9 3年に理論は頂点に達する.この時期に公けに された二つの論文は彼の名を有名にしたと同時に,特に多項式のイデアル論の端



0 ) J . 最初の論文において, Hilbertはまず Gordanの定理を,任意 緒となった([4 の整数 nに対する, n項形式と



e nのベクトルの任意の有限個の系 2 の 場 合 に 拡



...



張する:すなわち,常に,この有限個の共変式 Cいからなる((完全系))が存在して 他のすべての〗の共変式は ck に関する複素数係数多項式になる.第 2 に, ck の



間のすべての多項式関係 S ( l ) ( C i ,C 2 ,…,Cm)=O( ( ( 第 1種の s y z y g y ) ) )の中に,有



) り( 1: : : ; ; j : : : ; ; ;加)があって,他のものはすべて 瞑餌の S 5 c 1 >=



凡 S炉+凡Sザ十… +F l s 出



(凡はこの共変式)の形になっている.







( 2 4 )



しかし多項式 S伊 は 独 立 で は な い ; 一 般



にはそれらは関係式



X魯 + … + ぶ 躙 =0



( 2 5 )



(Xjは Iの共変式で,どれかは 0でない)を満たす.これらの関係は((第 2種の



...



s y z y g y ) )と呼ばれる. H i l b e r tの方法によれば,再び有限個の共変式の系 S炉= (X 和,…, X尉 )( 1幻三加)があって,他のすべての ( 2 5 )を満たす共変式の系は 2 の共変式を係数とする S伊達の一次結合になることが示される.するとまた一般 に S炉の間にはこの共変式を係数とする一次関係がある;これが((第 3種の



s y z y g y ) )であり,それについて同じ手順を繰り返すことができる.しかし H i l b e r tの最後の定理は, この手順が有限回(たかだかこの元の個数に等しい)の段



. . 階でついに止むということである(この定理は現在ホモロジ一代数学(第 X章参 [*] 固定した訳語はない.原義はギリシア語で「ひとつに集まること」.普通は,太陽と 地球と月が一直線になる状態(朔望)の意で用いられ, S y l v e s t e rの命名もそれに由来する.



I I I 線形および多重線形代数学



1 2 1



照)に組み込まれているが,その分野における定理で歴史に現われた最初の例で



3 ] ) . ある [ h ) 既に a )で我々は(複素射影空間における)代数幾何学にとって興味ある事 実を不変式論が与えることに注意を促しておいた.特に P2(C) (および Pa(C))内 の代数曲線(および代数曲面)の分類の原理がもたらされた; P o n c e l e tの 考 え 方 に従って, 2個の代数曲線は,それらの[定義]方程式が同次座標の線形変換によっ て互いに移り合う時に,同じ類に属するものと数えることにすれば,曲線の方程 式の左辺をなす同次多項式の次数 0の絶対不変式の値は,同じ類に属するすべて



..



の曲線に対して同一である. しかし逆は必ずしも正しくない.実際,ある与えら ... れた次数の異なる三項形式で,すべての不変式が 0であるものが,射影的に同値 でない曲線を定義することが確かにありうるという事実がある.例えば 5次の既 約曲線で 1個の四重点を持つものは,ただひとつの接線しかない 1個の三重点を



i l b e r t 持つものとは,不変式の計算では区別がつかない.不変式論についての H の第 2の長い論文はこの((零形式 (N u l l f o r m ) ) )の研究に充てられており,現代の研 究において非常に重要なものとなったひとつの判定法によって,彼はこの形式を 特徴づけることができた ( [ 1 2 ] ,[ 2 9 ] ) ; さらに彼はこれらの諸結果を用いて有限性 定理を補い,(少なくとも理論的には)いかなる場合でも,具体的に算出可能な数 の回数の操作によって共変式の完全系を決定できることを示した. D) 四元数と超複素数系



W.R .H amiltonは 1 8 3 3年に,彼以前の多くの人々と同様,((恒久性の原理))を保 ちつつ((演算))を 3次元に拡張すること(現代流にいえば,すなわち, R3上に R 代 数の構造であって,可換体となり,しかも Rsのベクトル空間としての構造は通 常のものであるようなものを定義すること)を求めることから出発した.



したが



x ,y ,z ) って(複素数に対して彼自身が発展させたモデルにならって)実数の 3対 (



に適当な積を定義することが問題となる.このような積に対する逆元の存在を得



amiltonは積 るために, H ( の ,Y ,z ) ・ ( ぷ ,y ' ,z ' )=( X ,Y ,Z) (ここで X ,Y,Zは x,y,zおよびぷ, y ' ,z 'についてそれぞれ線形な多項式),す なわち双線形形式で,さらに, Rゃ C=R2の積に対して存在するものと類似な ((ノルム))恒等式



第I I I章



1 2 2



1 8 4 0年 以 降 の 代 数 学



=



(吋+炉十z り(炉 +y'吐 z ' 2 ) x2+y彗 z2 を満たすものを求めようという着想を得た.



( 2 6 )



ところでこの種の恒等式で,左辺は



( 2 6 )の形であるが,右辺が 4個の平方の和のものは確かに存在する(第 I I章 ,§ I I ,



E ) ) ; 恐らくこの事実にヒントを得て, Hamiltonは実数の 4対 ( s ,x ,y ,z )上,あ るいは(同じことであるが)一次結合



S十の



i+yj+zk(ただし i = ( O ,I ,0 ,0 ) , j=



( 0 ,0 ,I ,O ) , k=(O,0 ,0 ,1 ) )上に演算を定義することを試みる;しかしそうすると



.... ( 2 6 )と類似の公式は非可換な積に対してしか成立せず,そのため彼は長く足踏み



8 4 3年最後の一線が突破され,四元数 ( q u a t e r n i o n ) したままであった.だが遂に 1 は積の表



i2=j2=k2=-1,



ij=-ji=k,



jk=-kj=i,



ki=-ik=j ( 2 7 )



によって定義される.積のすべての性質は可換性を除き ( ( s ,x ,y ,z )キ 0に対する 逆元の存在をも含めて)保たれる.



amiltonの周 この発見は大きな反響を,特に英国で呼び起すことになった; H 囲には,文字通り((四元数派))の一派が形成され,四元数を数学のあらゆる分野に 応用することに専心した.



しかしその最も直接的な結果は,((恒久性の原理))のタ



ブーを打ち壊すことによって空間 R門こおいて可能なあらゆる((演算))についての



ravesによって 1844 一連の研究を生ぜしめたことである.最初に現われたのは G 年にもう発見された(そして C ayleyが独立に 1845年に再発見した)八元数 ( o c -



t o n i o n ,o c t a v e )[日本では普通 ' C a y l e y数’と呼ばれる]の演算である:四元数に 対し((共役))q→りを,



q=s十 xi+yj+z k に対して (j=s ー両ー yj-zk と定義すると,



qq=(jq=s2+ 研+炉十 z2~0 となる.



この数 q りは N ( q )( qの((ノルム)))と記され,任意の四元数 2個に対して N(q屯 2 ) = 如)となる;したがって 0でない四元数 qの逆元を q -i=q/N(q)の形に書 N(qi)N



= ( q 1 ,q 2 )であって,積算法を くことができる.すると八元数は四元数の対 r ( q 1 ,q 2 ) ( q i ,q~) = ( q i q i-ij~ 伍, q 2叶 十 q仏7 i ) とすることによって定義される;今度は,もはや可換でも結合的でもなく,ただ より弱い性質 r 記= r 1 ( r 1 r 2 )と r心 = ( r 1 r 2 ) r 2が成り立つだけである.再び,共役



r曰アを r = ( q 1 ,q 2 )に対し f= ( i f 1 ,ー q 2 )として定義すると, rf=fr(再 び N ( r )と



I I I 線形および多重線形代数学



1 2 3



記す)は非負の数で, N (r)=N(q1)+N ( q 2 )と な る ; 再 び 恒 等 式 N ( r 1れ)=



N ( r 1 ) N ( rりが任意の 2個の八元数に対して成り立ち,したがって 0でないすべて / N ( r )である ( [ 3 2 ] ) . (/)八元数の逆元は r しかしながら,これらの性質は例外的なものであることがすぐに明らかになっ



urwitzは 1 8 9 8年に,実数の間の た ; H



( ± x } ) ( ± Y )ぅ= ± x } j=l



の形の恒等式で,各



.i=l



( 2 8 )



j=l



x jが叩, yバこついての実係数双線形多項式であるようなも



のは nが 1 ,2 ,4 ,8の い ず れ か で な け れ ば 存 在 し え な い こ と を 証 明 し た . 他 方



F r o b e n i u s (そして独立に C .S .P e i r c e )は,(現代の用語で言えば)四元数体が, R



... 上有限次元であるような非可換体として唯一のものであることを証明した.



した



amiltonやその弟子達の期待 がって代数学における四元数や八元数の有用さは H よりずっと限られたものになり,



i e群や微分位相幾 これらの重要性はもっぱら L



何学との関連に由来している ( [ 3 2 ] ,[ D J ,第 XXI章 ) . ... 1850年以降の仕事は,積の結合性を保つ(そしてもちろんベクトルの加法に関 する分配則も保つ) Rn上の可能な演算の研究にもっぱら向けられる;結合性を



....



保つかわりに 0でない元の逆元の存在の条件を断念するのである.最初の例のひ とつは正方行列の演算で,そこでは Xキ 0 , y= I =〇であっても関係式 XY=O(また は Xk=O)が成り立ちうる.これらは零因子(またはべき零元)と言われる.



l i f f o r d代数と呼ばれているもので与えられる.それは四元数を 別の例は今日 C ermiteを 導 い た ア イ デ ア 批張したもので直交変換と密接に結びついている. H のひとつは R2 内の回転が絶対値 1 の複素数 (J) による積 Z~u迄によつて与えられ



ることの類似で, Raのベクトルの((演算))の助けを借りた回転の解釈を得ようと



amiltonと Cayleyは独立に次のようなこの種の解釈を いうことだった.事実, H 得た: Rsのベクトルを四元数 u=xi+yj+zkと同一視する一ーこれは関係式 g ~-u で特徴づけられ,純四元数と呼ばれる;するとすべての Rs 内の回転は, 0 でないスカラー倍を除いて一意的に定まる四元数 q を用いて u~quq-1 と書かれ る.同様に R4 の回転は,



R4 のベクトルと四元数を同一視すると,写像 q~aqb



とみなすことができるー~ は四元数で



N(a)N(b)=lとなる. W.C l i f -



[ 8 ] )によって 1 8 7 8年に定義された(そして 4年後に L i p s c h i t zによって再発 f o r d(



第I I I章



1 2 4



1 8 4 0年以降の代数学



見された) { { C l i f f o r d数 ) ) は , R 2 "のベクトルであって,その勿個の単位ベクトル



H , ただし H は集合 { l ,2 ,… ,n }の勿個の部分集合のひとつ,の形の標準基底 をe ¢ , = l ,e う=ー 1 , lsjsn( e ( j )のかわりに e 1と で書いたとき,そこでの積を条件 e 1幻=ー e 認J , lsjlからただちに従う.



V 代数的数論 かなめ



代数的数論は 1 9世紀数学の要の土台石をなすもののひとつである.可換代数 学と 1変数代数関数の代数的理論が派生したのはここからである.主題が広大で しかも専門的なので,その理論の発展を詳述することははじめから問題にならな ぃ.ここでは主要な定理の幾つかを部分的に検討するにとどめよう.このような 控えめなもくろみでも,読者は,得られた結果の美しさとその魅力的な側面を識 る基礎は得られるであろう. まず,代数的数とは何であろうか?答は簡単である.代数的数とは方程式



( x )EZ[ の],を満たす数のことである ! ( お ) =0, f ,, 冗 ような数は代数的であるが, e



.v 百 ,



v



(3113+5+ 二行)1 / 2 7の



C v 百)”のような数は代数的ではない(超越数



についての説明は § VIIを参照). 代数的数は,数学者達が低い次数の方程式を解くときに自然に現われたが,代



8 3 1年頃 G a u s s 数的数それ自身としての研究(およびその取り扱い)は,ょうやく 1 によって始められたように思われる.彼は四次相互法則の研究 ( § I I I ,C )参照)お よび楕円関数の研究(第 V II章参照)の中で,ば十 i y ,x ,yE Z , の形の数の数論的



aussと E u l e rはまた Fermatの最後の定理 [Fermat予想]の n 性質を用いた. G =3の場合の証明にの十 v 二3 yの形の数を使った.その後 1844年 に Eisenstein



218



第 V章 数







呻h



は三次相互法則の研究のために x+py, が= l , の形の数を用いた.



[ i ]と Z[p]に対しては,数論的に有理整数と似ていることが確かめられた. 環Z [ i ]と Z[p]には環のすべての元を割る整数(環の((単数)))が 唯一の違いは,環 Z 士1以外にも存在することである.環 Z [ 0 ]の数論が有理数の数論とは根本的に



違うような代数的数 0が存在することに長い間誰も気づかなかったらしいのは,' も そ し て お そ ら く は Kumこれらの環の((よい》挙動のゆえであろう.事実 Lam



mer自身も, Z[こ],び = l , の数論は Zのそれに似ているという仮定に基づいて Fermatの最後の定理の誤った証明を与えた. Kummerが 代 数 的 数 論 を 発 展 さ せたのはこの間違いを正すためであったというのはほとんど確かであろうから,



Fermatの最後の定理の典型的な誤った証明の骨子を以下で与えよう.確かにこ れは Fermatの最初の原((証明))であったのではないかとの示唆もあるが,この仮 説を正当化する客観的な根拠は何もない. もし n>2の 時 か + 炉 =znが整数解を持たないことを証明しようとするなら ば,奇素数 Pに対して方程式研+炉=呼を考えれば十分である [n=4について は既に証明されている].((証明))の第 1段 階 は か 守 yPを P-1



研 + 炉 =I IC の+ぐ y )=z P k=O



の形に分解することである.ここでこは 1の 原 始 P乗 根 , す な わ ち び =1かつ



OOで あ る 店 Kが存在して a = ( 2 ) ' 6で あ る 時 旺のイデアル a



に,狭義に同値であるとする.狭義の同値類は群をなし,狭義のイデアル類群と ) え>Oであるので, 呼ばれる. dOならば, 阪 の 基 本 単 数 eのノルムによって,狭義のイデアル類群は,通常のイデアル類群 よりも大きくなることがある.



もし Norm(e)=-1であれば, この二つの類群は,



) えOとなるからである. しかし Norm(e)=+1の ) えOであ 時 , Norm(



= ( μ ) ' 6とも書けたとすると,(μ)=(え)となり, るμ によって a



したがって



Norm(μ) Norm( ) え = Norm(f)= -1 となるが,これは起りえない.こうして Norm( ) え>Oであるえによって a=( ) えb になるということはできず, この場合には通常の意味のイデアル類のちょうど倍 の狭義のイデアル類がある. さて,前に述べた対応の典型的な例を考えてみよう.ひとつの簡単な場合は,



2の二次形式の場合である.判別式 1 2の二元二次形式の類数を見出すた 判 別 式1 2のすべての簡約形式を構成することから始めよう ( § I V ,A ¥参 めに,判別式 1



V 代数的数論



2 4 1



照).このような形式は, 2個あり,それらはがー 3 y 2 , ーが +3がである.したが って,たかだか 2個の類がある.最初の二次形式は 1を表現するが, もし



1=ーが十 3 y 2 であれば 1= —吋 (mod



3 )となり,これは不可能であって,ゆえに 2個の形式は



同値ではない;したがって類数はちょうど 2である. 判別式 1 2の二次形式に対応する二次体は Q(v'3)=Kで あ る . こ の 体 の 類 数 は 1であることが示せる.なぜならすべての整イデアルは単項であるから. さら



l ,v ' す}は阪の Z基底であり, c=2+v '百が基本単数で, N(c)=lであるこ に{ l 1 = ( v ' 3 )を考えよう. { 3 ,v ' 百}が 0 1の Z基底であ とを証明出来る.イデア JレC り,上に述べたイデアルと二次形式との類の対応を書くと, N(ら ) - = ー が 十3 y 2



N ( o 1 )



mは,二次形式ーが +3がの類に対応する.同様にして,イデ



となる.こうして



アル Cl2=(v'百ー 3) は Z 基底として {v'百— 3, 3 3 v ' 百}を持ち,



N 知) - = 研 ー3 y 2 N ( a 2 ) となる;こうして伍は二次形式がー 3 がの類に対応する. しかしもちろん l C1 と 0 2は通常の意味で同値である.なぜなら, 単項イデアルだからで,事実 C l 2 = ( l v ' 百 )0 1である.



これらは共に



しかし Norm(l-v' 百)=



-2で , したがって伍は 0 1に狭義同値ではない.こうして, Q(v' 百)の通常の類 数は 1であるが,狭義の類数は 2であることが分かる.



CIO) 相対拡大 1 8 8 2年に出版された重要な論文で Dedekindは相対拡大の研究を開始した.す なわち彼は, Qの有限次拡大 K,Lで KcLとなる情況を考察した.この論文の 中で彼の解いた問題は,阪の素イデアル Pが虹の中でどのように素イデアルの 積氾?••瞑r に分解するかを記述することである.以前の研究との類似によって,



e i > Iの 時 地 を P上の分岐素イデアルと彼はいう.この場合, Pは L/Kで分岐 するという.以前の研究と同様にして,彼は, L/Kの相対共役差積と呼ばれ,



割 !K と記される



OLのあるイデアルを構成した.相対共役差積は上述した絶対共



役差積と似た性質をもち,次の定理が成立する:



242







V章 数







「知の素イデアル氾が . ¥ : J C旺上分岐するための必要十分条件は氾¥S ' . ) L / Kであ る . 」



Dedekindは 1 8 8 2年の論文において,もうひとつ重要な結果を証明している. それについて述べる前に,補助的な技術的考察を挿入する必要がある.読者は望 むなら C ll)にとんでもよい.



Pと氾が,それぞれ旺, 0 Lの素イデアルであるとし,沿 l . ¥ : Jと仮定する.すでに O x / . ¥ : ) ,o L / 氾が体(剰余体)であることは注意したが, 0 幻Pは 0 L / 氾の部分体と考え . . L / 沿の O 幻P上の拡大次数が考えられ, られることも容易に分かる. したがって O これを f (氾/ . ¥ : J )と記す; f (沿/.¥:))を沿の P上の相対次数という. ... ここで O Lのイデアル上のノルム関数 NL/Kを NL;K( 沿 ) =.¥:)/(第/j)) で定義し, 0 L のすべての分数イデアル上に線形に拡張する.



a 1 ,…,四}が旺加群としての虹の基 本節の最後に,相対判別式を定義する. { 1 ,…,四 E肛がとれたと仮定する.(これは常に可能とは限らな 底であるように a いが,非常に多くの場合にそうなるので注目に値する.)すると相対判別式



D L ; x ( a i ,…,四)を K=Qの場合に上で定義したのとまったく同様に定義するこ とが出来る.しかしより複雑な点もある. a i ,…,四と必,…, ( 3 dが 共 に 旺 加 群



0 Lの基底であるとすると D L 1 x ( a 1 ,…,四)と D L ; x ( / 3 1 ,…,( 3 d )とは,土 1以外の単 数の 2乗だけ異なりうる.しかも, Oxは単項イデアル環とは限らない.これらの 理由により DL/K如,…,四)から生成されるイデアルを考え,それを ( D L 1 K )と記 そう.すると ( D L 1 K )は選んだ基底のとり方によらないことが示せる.これらの 記号法を用いて Dedekindは次の定理を証明した:



(DL;x)=N L ! K ( S ' . ) L ! K )であり,したがって阪の素イデア]レ.¥:)が分岐するため 「 の必要かつ十分条件は糾 ( DL;x)である.」 このようにして,相対整基底が存在する場合は,比較的扱いやすい方法によっ て分岐する素イデアルを決定することが出来る. しかし,このような相対整基底 が存在しない時(旺が単項イデアル環でなければこの場合の方が普通である)に は,他のやり方が必要となる.



L/Kは r次であり, LIQは n次であるとしよう.すると虹は Z上の基底ふ, . ; . ,! l nで,各 Qd ま n次の代数的数であり,



したがって各 !Jd ま Q上 L を生成す



るものが存在することを示せる.各 Qiが K上 Lを生成することは明らかであり,



V 代数的数論



243



したがって Q d ま xr+a1ixrー 1+…



+ 年 =0 ,



< 1 . j i E OK,



の形の既約方程式を満足する , Q訊…, 9や を ム の 満 た す 方 程 式 の す べ て の 根 l



’ ' 、 ・ 四四: .勾一



•••• ,



. . .



_1-1



~~~



ヽ~`~



12r



r ノ , ‘



11-9 . .



( 2 ( 2・・・ ’ (2 ' ` o igg



ヽ~‘,’



12



︱ . .



1・・・ ( 1 g( lo( i g



として,行列



l



を考えよう.さてすべての r次小行列式を考え,それらの行列式のおのおのが生 成するイデアルを考えよう.相対判別式 ()L/K をこれらのイデアルの最大公約因 子の 2乗として定義する.虹の旺加群としての基底が存在する時は,ふたつの



edekindは,上述の定理が新たに定義された判 定義は一致することが示せる. D 別式に対しても正しいことを証明した.



C11) 不分岐拡大 与えられた代数体 K の不分岐拡大について解説して相対拡大に関する項を終



....



えよう . K キQ とし, Lは Kの有限次拡大としよう;すると K のすべての素イ デアルが Lで不分岐なことが起りうる.この時 Lは K の不分岐拡大であるとい



,b=I( m o d 4 ) ,( a ,b )=Iの時 K=Q(v 面 ) , L=K(V 万)とすると L ぅ.例えば, a は K の不分岐拡大であることが示せる. K=Qの時は,このような状況は起らな ぃ .



8 9 1年 , Minkowskiが DL1Q>Iを示し,したがって少なくとも というのは 1



ひとつの素数は分岐するからである. K roneckerは 1882年にすでにこの結果を 報告しているが,証明はついに与えなかった. 後に見るように,体 K の不分岐拡大を知ることは,数多くの問題で重要であり, このような体の詳しい研究が類体論の生じるひとつの機縁となった.



Dedekindは相対拡大に関して,ここで略述した以外にも,ずっと多くの研究を 行なっていたが,それらは彼の生前にはまったく発表されず, 1 9 3 2年に, D e d e -



k i n dの全集の中で初めて発表された. Dedekindを非常に賞讃し,彼の業績の真 価を認めた最初の人達の一人である H i l b e r tは,彼の「数論報告」 ( Z a h lb er i c ht )



(§V,E)参照)において相対拡大に関し多くの紙数をさいているが,「数論報告」 の中で展開されたアイデアの多くは,はるか以前に D edekindによって発見され



i l b e r tが通じていたかどうか知ることは難しい. ていたという事実に H



第 V章 数







244



D) Kroneckerと代数的数 roneckerの仕事の重要性を評価す 数論一般,とりわけ代数的数論における K roneckerが非常に偉大な数学者であったことは論を待たな ることは難しい. K いが,残念ながら,自分の仕事を説明する才能は,数学的才能よりはるかに劣って いて,その結果,彼の深く独創的な著作は一―最も控え目ないい方をすれば—―­



きわめて読みにくい.それまで無視されてきた彼の長い論文が再び研究されるよ



roneckerの著作の大部分は, うになったのは,ごく最近のことでしかない. K 複素関数論を数論と密接に絡み合った形で扱っており,



ronecker したがって K



の数論における実際的な寄与についてはここで概説しようとすることさえ問題外 である.二つの主題に限ろう: A b e l方程式(その定義については以下でもう一度 述べる)の記述と,代数的数論の基礎についてとである.



DI) A b e l方程式 Abel方程式とは,以下の条件を満足する有理数係数の n次 ( n > l )既 約 多 項 式 f ( x )による方程式 f(x)=Oであることを思い起こそう(第 I I章 , § I I I ,B)): その 条件とは, C 内で f(x)=(x-0か••はー 0n) と分解したとして f(x)=O の Q 上の



G a l o i s群が A b e l群となることである.この場合 Q上 ど の 仇 も 同 じ 体 を 生 成 す bel的であるといわれる. ( K r o n e c k e rの時代には,群はまだ るが,この体も A 形式的な仕方では定義されていなかった.) 1 8 4 6年に「L i o u v i l l e誌」 [ J o u r n a ld e



a l o i sの仕事を読んで初め MathematiquesP u r e se tA p p l i q u e e s ]に発表された G て彼が A b e l方程式に興味を持ったというのは考えられないことではない.さら に彼は A b e lも読んでいた. Kronecker自身の証言するところによれば,代数的 数論の発展にきわめて重要な役割を果した A b e l方程式に関する二つの予想を彼



8 4 0年代の終り頃であった.最初の予想は 1 8 5 3年の論 が定式化しはじめたのは 1 8 7 7年に至るまで発表されなかった. 文にあらわれたが第 2の予想は 1 第 1の予想は次の形に述べることが出来る: 「 Abel方程式のすべての根は, 1のべき根の有理函数であり,逆に, 1のべき根 の有理函数はある A b e l方程式の根である.」 今日の用語を使えば,これは次のようにいえる:



b e l拡大は,ある体 Q(こ),ぐ = l , こキ土 1 , すなわち 「有理数体上のすべての A bel拡大であ 円分体の部分体である;逆に,円分体のすべての部分体は Q上の A



V 代数的数論



245



る . 」 この形にすると,定理が Q上のすべての Abel拡大をあざやかに分類している ことが分る.逆は簡単に証明できるが,順命題の方を証明することは別問題であ る. Kronecker自身は,この命題の証明をついに発表せず,最初の証明は 1 8 8 6 年 , Weberによって与えられた.この結果は,今日 Kronecker-Weberの定理 の名で知られている. §V,F )で見るように, Weberが類体論の出発点となった 基本概念を定式化する際にこの定理は非常に有用であった.



Abel方程式に関する Kroneckerの第 2の予想は,ある意味では,第 1の予想 の帰結である.すなわち,ある種の虚二次体 QCv 二d )に係数を持ちこの体に関 して Abel的である多項式の根を特徴づけることを可能にするやり方をみてとっ たのである.彼が Abel方程式に興味をもった同じ時期に Kroneckerは ま た 楕 円関数の虚数乗法も研究していた (§V,F)参照).おそらくこの時期の一致から



Kroneckerは虚二次体を考察するようになったのであろう. Abel方程式と虚二 次体の間の関係については §V,F)でていねいに述べることを考慮して,ここで は Kroneckerが最愛の青春の夢 ( l i e b s t e rJ ugendtraum)と呼んだ彼の予想に関 してのみ簡単にふれることとする.完全に正確ないい方ではないが,それは次の ようである.



「 K=Q(v 二d )を虚二次体とし, f ( x )EK[ ぉ]を,方程式 f(x)=Oが K 上 Abel 的である多項式とすると,方程式 f(x)=Oのすべての根は v = r lといくつかの 1 のべき根とモジュラー関数 jのいくつかの値 j ( c i )の (Kに関する)有理式として 表わすことができる(第 V I I章 ,§ 16参照).」 後にみるように,



J ugendtraum(青春の夢)は,そのままでは正しくなかった;



Weberは , 1 9 0 8年,部分的な証明を与え,完全な正しい定理は 1 9 2 0年高木によ って証明された.



Kroneckerによる上記の二つの予想に刺激されて, H i l b e r tは彼の第 1 2問題を 定式化した ( § V ,E)参照).それは,あらっぽくいうと,次のように述べられる.



「 Kを , Q上の有限次代数拡大とし, K を K上の有限次 Abel拡大とする.この



… ,においては ( P ) = . ) ) z a ,. ) ) z = . ) )nK z c p > , かっ aは加を割らない,を示せる. ( . ) ) z / ( p ) ) = lも示せる.かくして Qから K z c 1 1 iへの拡大に対しては さらに, f



Pに



対応する素数を分解すると,ここでは分岐は現われず剰余体の拡大もない.さら に , K z c μ >から K への拡大において, . ) ) zは相異なる素イデアルの積に分解されな



z c 1 1 >は Pの分解体と呼ばれる.また [ K z c 1 1 i:Q]=gも示 ぃ.この理由によって K P ) = ( 柘 …P がとする. せる.ただしここで, K内では ( H i l b e r tの次の段階は K z c p >から Kへの拡大に際して剰余体の拡大があるとい う情況の輪郭を把握することにあった.そのために彼は群



T ( , μ )= { aEG a l( K / Q )¥ a a三 a ( m o d , μ ) ,¥ ; / a E O x } を考察した.この群に対応する部分体を K T ( p )と記すと, K T ( p )から K へ の 拡 大 において,素イデアル妬 = , l ) n K T c μ Jの剰余体には拡大がないことが容易に分か







第 V章 数



252



る.よって剰余体の拡大はすべて Kz ゅ)から K r c i , >で生じることとなり,したが って分岐はすべて K r c i , >から K への拡大において生じることとなる. K z c p lから



K T ( p )への拡大において + l z c p lは,本質的には変わらないので,体 I くT ( p lは Pの慣 ( l : > )は慣性群と呼ばれる. T ( + i )は Z ( + i )の 位 数 eの正規部分群であり, 性体, T Z ( + i ) / T ( , I J )は位数 f= [ K r c i , l :K z c i , i Jの巡回群であることが示せる. ( e ( + J / ( p ) ) =1の 場合 T ( + i ) = { l }であり,したがって Z ( + i )自身が位数 fの巡回群である. この事実



r o b e n i u sの仕事を論じる時に必要となる.) は §V,H)で F さて, I くT < i , >から K への拡大に際して生じる分岐,特に野生的な分岐を調べる べき段階に至った.そのために H i l b e r tは高次分岐群と呼ばれる群



V心) = { aEG a l( K / Q )¥ a年 頭 (mod+ J n + 1 ) , ' i faE阪}, を導入した.



n2 1 ,



しばしば V o ( + i ) = T ( + i ) ,V 1 ( + i ) = Z ( + i )と記す. Hilbert は, p〖e の時



には n2lに対して V n = { l } , そして p ¥ eの時には V。 / V 1は巡回群であり,また



VdVi+lは Abel群であることを示した.十分大きなある iに対しては, Vi={l} となり,自明でない分岐群の列は有限で止まる.群 v iの位数を巧と記す時 H i l -



b e r tは次の定理を証明した:



「 K/Qが G a l o i s拡大で,その判別式を Dxとする ,pが K で分岐するならば, Dxを割る Pのべきは f g { ( v o V 1 ) +2 ( v 1v 2 ) + 3 ( v 2 V a ) + ・ ・ ・ } である.」 以下の図式は我々が考察して来た種々の体の間の関係を要約したものである. 巡回的 巡回的 Abel的 Abel的 . . . . . . ., " , , -・,・-、一 IL—— l f次 e次



Q CK z c μ >C K T c μ >C Kv1CKv2C …cKv,C…cK, I, , ,



g次



. . ここで K v,は v iの不変体である. H i l b e r tは多かれ少なかれ以上の考察の結果



...



として, K は K z c v >の群論における意味での可解拡大(第 I I章 ,§ I I I ,B )参照)で



z c 1 > >上の方程式を満足すること あり,すべての K の元は((根号によって解ける))K を注意している.



H i l b e r tはまた, V i , Kv,のすべての定義とそれらに直接的にかかわる定理と は相対 G a l o i s拡大の場合にもほとんど変更なしに成り立つが,主定理の証明は もはや通用しないことを指摘している.



V 代数的数論



253



E3) 「数論報告」の続き I部の他の数節は, G a l o i s体に関する孤立した一連の結果にあ 「数論報告」第 I てられている.例えば, H i l b e r tはある仕方で分解する有理素数の密度に関する



Kroneckerの予想を研究している(それは Frobeniusによって証明された. §V, H)参照).彼はまた,各イデアル類にはそのすべての素因子が素数次数をもつ(す なわち f=l)イデアルが存在するという定理を証明している.これは, Weberが



i r i c h l e t D e d e k i n dの定理の第一次近似である (§V,F ) 証明したいと望んだ, D 参照).また,第 I I部の最後の方の節では有名な H i l b e r tの定理 9 0を見出せる. それは類体論のコホモロジー的解釈において重要であることが明らかになった.



0とは,次の結果のことである:「K/kを , aより生成される巡回 G a l o i s群 定理 9 a l o i s拡大とする. aEK が NK1k(a)=lを 満 足 す れ ば a = { J / を持つ有限次相対 G JE} くが存在する.」 a ( { J )となる { a l o i s体の最も簡単な三つの例と考えられるも 「数論報告」の最後の 3部は, G i l b e r tが,最も単純でしかも最も特別な場 のの詳細な研究にあてられている. H 合を出来るだけ完全かつ一般化の余地のある方法を用いて研究して始めて一般の 問題を定式化し,それにとりかかることが出来ると考えていたことを思い起そう.



( H i l b e r tが((巧妙な))証明をしばしばしりぞけて,一般化の余地のある他の証明を I I部では二次拡大,すなわち二次 採用したのはこの理由による.)かくして,第 I a l o i s群として持つ G a l o i s拡大にあてられている.第 IV部 で は 円 の巡回群を G ( ( ) , (は 1の複素 n乗根,の形をした体である.この体 分体を扱う.すなわち Q



a l o i s群 は Abel群である.(一般に G a l o i s群 が Abel群 で あ る G a l o i s体 を のG Abel的であると言い, G a l o i s群が巡回群の時は,巡回体と呼ばれる.) i l b e r tは円分体の巡回拡大を研究している.それに 最後に,第 V部において H ついて以下に述べよう. すでに見たように,最後の 3部での定理に,ほとんど新しいものはない.新味 があるのは H i l b e r tによるそれらの取り扱い方である.



H i l b e r tも,約 1 0 0年程前の Gaussと同じく,まったく新しい((言葉))を使って 知られた結呆を定式化し,その結果諸定理がずっと分かり易くなった.すなわち,



H i l b e r tによる二次体と Kummer体の記述には((ノルム剰余記号)),((積公式)),((ノ



0世紀の最初の四半世紀におい ルム定理))が初めて登場する.これらの概念は, 2







第 V章 数



254



て代数的数論に少なからざる影響を与えた. 第I I I部の最初の数節は,当然のことながら D e d e k i n dによる展開に従ったニ 次体の理論にあてられている.第 I I I部の残りは,体論の言葉でもって Gauss の二次形式論全体を記述するのにあてられている. ( D e d e k i n dがすでに二次形式 の類と狭義イデアル類との形式的対応を証明していたことを思い起そう.) H i l -



b e r tが用いた体論の言葉のもつ長所は,ひどいとしか言いようのなかった Gauss の証明の大部分を驚く程簡易化出来る点にある. ( G a u s sで約 2 5 0ページかかっ た記述が H i l b e r tの本文ではわずか 2 5ページですんでいる.) 第I I I部の最後の数節には,他の結果に混って D e d e k i n dの記述法による D i r i -



c h l e tの類数公式と二次拡大の整環の短い研究がある. しかしここでの主たる目 a u s sの仕事の H i l b e r tによる見方を記述することである. 的は二次形式に関する G すでにみたように,二次形式によって整数を表わす問題に関する最も重要な (かつ,ある意味では最良の)結果は種の概念と結びついていた.(これは曲線の種 数とは何の関係もない C*J !)§IVでは,二次形式の種に関してきわめてあいまい に述べたが,それは G aussによって与えられた定義を多少なりとも納得いく形で 述べることは不可能だったからである.それに反して H i l b e r tによる Gaussの 定義の体論の言葉への翻訳は少しもむずかしくない. しかし,まず二次体に関す るノルム剰余記号を定義し,そのいくつかの性質を与えておく必要がある.



§IVにおいて,すでに記号(り)を定義した.すなわち ( ab



+1, ー l ,



p ) = {



a三 吋 ー b y 2(modが)がすべての r2lに対して解を持つ時, それ以外の時.



ここで Pは素数で, a ,bEZ . bが平方数でない時は, この記号を次のように解釈 出来る.



( ¥ ) = {+l, -1,



a三 N ( a )(modが)がすべての r z : 1に対して解を持つ時, それ以外の時.



ここで N ( a )は QCv 万)のノルムである.



l bであれば(旦) もし P p =1であり,もし Plbであれば Legendre記号を使っ て [ * ]



日本語では通常「種」と「種数」と用語を変えるが欧米では g e n u s (英 ) , g e n r e (仏 ) ,



G e s c h l e c h t(独)と同一の用語を使っている.







255



V 代数的数論



( ¥ )=( t ) を得ることを示すのはさしてむずかしくない[*].二元二次形式の研究において,



Legendre記 号 と 二 次 相 互 法 則 が 重 要 で あ る こ と は す で に 見 た ; H i l b e r tは Legendre記号をノルム剰余記号におきかえるという,深い着想を得た.ノルム 剰余記号は 号)=(笠)'(芋)=(デ)



( ¥ )



等の初等的な性質をいくつか持っている.



Legendreの二次相互法則をノルム剰余記号を用いて明確に言い表わすために H i l b e r tは,無限素点の考えを導入するに至った(これに対し素数は有限素点とも 呼ばれる); (翌)



={+l, a=吋 -by'が R で解を持つ時, -1,



それ以外の時,



H i l b e r tは , とおき,(号)と記す時 Pは有限にも無限にもなりうるものとする. ( この記号を実は「数論報告」の発表後何年もたってから初めて導入したのである



§V,G)を参照),便利なのでここでもこの記号を使う.)上の記号を使うと が( ... H i l b e r tは,次の積公式:



[ 2 0 ] ,I巻 , 162ページ,定理 9 8 )にしたがっ ] * [ この主張は誤っている. Hilbertの記述 ( て書き直すと次のようになる: a ,bを Pで割れない整数とする. pが奇素数ならば



( デ ) =1, (デ)=(デ)=(長);



P=2ならば (呈)=(ー l)



が成立することを示すのはさして難しくない. A r t i nと Whaplesは 単 数 に 関 す



i r i c h l e tの定理やイデアル類数の有限性に関する定理などの諸定理の証明は るD つまるところ Kの絶対値のある種の性質と上の公式に基づいていることを見出し た . より正確にいうと,これらの定理の証明を遂行するのに用いられる条件は次 の通りである:



( 1 ) k上の絶対値



I¥ pの族 J . l 1 kで , aEがに対して有限個の peMkを除いて



V 代数的数論



305



l 叫 =1かつ itlalp=lであるものが存在する. ( 2 ) M心



Archimedes付値で K を R または Cの中へ埋め込むものか,ある



rchimedes付値で剰余体は有限体であり,集合 { ! a l叫aE炉 , l a l p < l } いは非 A は極大元をもつものかのいずれかの性質をもつ素点 Pを少なくともひとつ含む. これらの条件を満たす体が Q ま た は 凡 ( t )( q個の元よりなる有限体 F q上 の 有



.....



理関数体)上の有限次代数拡大体に限られることは著しい. F q ( t )に関して,絶対



=P(t)E凡 ( t )は最高次の係数が 1の既約多項式とすると 値は次のようである: P 任意の有理式



叫 =p(f)vcm/r ( t ) n ) _ n ( t )



s ( t ) '



ここで r ( t ) ,s ( t )はり ( t )と素, に対して



戸 ) I=q n ( t )



-vcm/n)deg





p c t >



とおく.((無限絶対値))は



戸 ) I n ( t ) =q



deg(n)-deg( m >



oo



.



で定義される.これらの絶対値が A rtin-Whaplesの公理を満足することを示す



9 5 0年から 1 9 6 0年にかけて A r t i nは T a t eと共同して上述の のは容易である. 1 公理だけを用いてまず局所類体論の諸定理を,続いて大域理論の諸定理を証明し したがって類体論を凡 ( t )の有限次拡大体に拡張したことにもなる.またこ



た .



れは代数体論と ( ( 1次元))代数幾何学の諸定理を同時に証明しようという K r o n e c k -



e rのプログラムの一部を遂行したことにもなる. A r t i nの別の着想に基づいて 1 9 5 0年 Tateは学位論文の主題として Weberの L関数の関数等式に関する Heckeの 1 9 1 7年の仕事の結果の別証明を取りあげた. h e v a l l e yが高木の結果に対して行なったような,局所的考察から大域的 それは C a t eは 主 要 考察に移るという観点を再び取りあげることであった.学位論文で T aar測度を導入し,数論に調和解析学の な道具のひとつとして群的と Jk上に H 諸定理を適用できるようにしたことは興味深い C*J, [ * ]



同じ時期に T ateとまったく独立に岩澤健吉も同様の手法で Tateと 同 じ 結 果 を 得



ている.







306



第 V章 数



最後に, ここでは述べることができないが,類体論にコホモロジー論を適用す るようになったのも,主として A r t i nと Tateがこれに携った結果である ( [ 1 ] , ( う ) ) .



VI 素 数 `ー,二の孤立した結果を除き,素数の理論は主に



1 9世紀に作られた.正確にい



うと,それは 1 8 3 7年頃 D i r i c h l e tが数論の問題に解析の手段を応用し始めた時に



9 0 0年以前に得られた主な結果については十分に完全な説明 始まった.我々は 1 9 0 0年以後については,主題の専門性がこの本の水準を越え を与える.しかし 1 るので,話題は厳しく選択せざるを得ない.また,素数理論に関連した若干の話 題については,加法的整数論の節 ( §XI)において論ずることとする. 整数とその整除性についての最初の組織的な取り扱いは,ユークリッドの「幾 何原論」の中に見出される.ユークリッドが二つの正整数の最大公約数を見つけ



b るアルゴリズムを与えたのは,この本においてである.彼はまた,素数 Pが積 a を割るなら,



Pは aまたは bを割ることも示した.さらにユークリッドは,素数



が無限にあることも示した.その証明は次のようなものである . Pを素数有限個 の積とし, Q=P+lとおく.もし P と Qが同じ素数を因子として持つなら,こ の素数は Q'-P=lを割ることになり矛盾する.しかし Qは 1より大であるから, 何か素数で割れる;したがって,少なくとも P の因子として現われない素数が一 つは存在する.もし素数が有限個しかないとすると, P としてそれらすべての素 数の積を取ることが出来,これは上の事実に矛盾する.



( E r a t o s t h e n e sのふるい))の名で知られる,与 またユークリッドの本の中には ( § X I ,A)参照).E r a t o s えられた整数 N 以下の素数全体を見つける方法がある ( t h e n e s ( 彼は,地球の周囲の長さを最初に計算した人でもある)は,







,2 , ,Nなる列から 間に含まれる素数は, 1



vNとN の



V刃以下の整数の倍数をすべて取り



除くことによって取り出せることを指摘した. これ程進んでいたのに,ユークリッドが((数論の基本定理)),すなわち,任意の 正整数は素数の積に書け,この書き方は順序の違いを除いて一意的に定まる, と いうことを証明していないのは奇妙に見えよう. しかしこれを欠いた理由は単純 である;ユークリッドは,乗法やべきを取る時一度も[具体的な数値を含まない]











VI



307



形式的な計算をしたことがない.したがって,彼は定理を言い表わすことが出来 なかったので,いわんや証明することなど出来なかった.(この定理は,何世紀も の間数学的常識のひとつとなっていたにもかかわらず,その証明が最初に文献に



a u s sの「数論研究」 ( D i s q u i s it i o n e sArit h m e t i c a e )においてで 記されたのは, G ある.) ユークリッドの後, E u l e rが素数が無限にあるということの別証明を与えた



1 7 3 7年まで,素数分布についてはほとんど何の発見もなかった. さて以下述べる この E u l e rの別証明は,離散的な量を扱う学問である数論を,連続的な量を扱う 学問である解析に結びつけた最初の企てであった点で,数論にとってきわめて重 要である.この時代には, この混じり合いに対してある数学者達が懸念を表明し



8 3 7年には, D i r i c h l e tがこの難路を乗り越えた.それ以後解 たが, 1批紀後の 1 析と数論はまったく分ち難く混じり合っている.以下 E u l e rの証明の主な点を 述べる. ' か , P 2 ,… ,PNが素数の全体の一覧表であると仮定する.s >lに対して積



ifil(1 —責)ー1 =i f i l(l+羞+¾,+…) を考える.すべての素数のべき積はこの等式の右辺の項としてちょうど一度ずつ 現われる. ところが任意の正の整数は素数のべき積として一意的に表現できるか ら,すべての正整数 n に対して 1/が (s~l) という分数がちょうど一度ずつ現われ



る(ここで数論の基本定理が使われるが, E u l e rはそれを明文化した形では証明 していない). したがって,



屈責)ー1=~鑓 を得る. ここで s=lとおくと,等式の左辺は有限な値をとるが右辺は発散級数 となる. これは矛盾だから,無限個の素数が存在する. E u l e rの証明において重 要な点は, ( 1 )数論の基本定理が素数が無限に存在することと結びつけられてい 2 ) 解析の定理,すなわち調和級数が発散するという事実が数論の定 ることと, (



理を証明するために使われていることである.



E u l e rは単に素数が無限個存在することを証明しただけではない.彼は, pが



素数全体を動く時,和 ~(1/p) が発散することを示した.上の最後の等式の対数







第 V章



308







をとれば



=翌年わ



l o gし紅}=ー吝 log(1-p) 1



1



00



=吝?卜吝 m吝面 2



を得る. 二重級数



区 ミ上 p m=2mpms は s~l なら収束するから,



S →1 とした時



log は彗—上 n=lが PP ~8



は有界であることが分かる. s → 1の時,第 1項は無限大に近づくから,区 ( 1 / が ) も無限大に近づき,よって ~(1/p) は発散する.



この E u l e rの仕事の後,素数の分布は,正確な予想が定式化されるまで,数多



7 5 1年になって, E u l e r自身も次のように書いてい くの思索の対象であった.後 1 る:((数学者は素数の列の中に何か規則を発見しようとして来たが今まで成功し ていない.これは,人間の精神の決してうかがい知ることのできない神秘ではな いかと考えてもけだしもっともである.そのことを納得しようと思うなら,何人



0万以上まで作った素数の表に目をむけさえすれば良い.ただち かが苦労して 1 にそこに何の秩序も規則もないことを認めるだろう.))*)



u l e rの見解からすれば,冗@)で m以下の素 当時一般に認められていた,この E 7 8 5年頃 Legendreが冗@)に対する近似公式を与えた 数の個数を表わすとき, 1 egendreは素数の内部構造を説 ことは,まさにいっそう驚くべきことである. L 明しようとは試みなかった;彼は,古典的な立場を放棄して素数の平均的ふるま いの中に何らかの規則性があるかどうかを問うたのである.一度問題が提起され



egendre さえすれば,冗@)に対する近似公式を見つけることは余り難しくない. L の公式は 4万以下の素数の表に基づくもので, A,B,Cをある定数として,冗@) は近似的に A叫( B l o gx十 C)に等しいといっている. Legendreは,彼の「整数



* >



E u l e r全 集 ( 1 ) ,2巻 ,2 4 1ページ.本文はフランス語で書かれている.







VI 素



309



論試論」 ( E s s a is u rl at h e o r i ed e sn o m b r e s )の第 2版において,数値例を補いそ れに基づいて,次の改良された公式を与えた:



冗 @ ) : : : : : :l o gx 1 . 0 8 3 6 6 ・ ” 似ているが別種の公式が,同様に数値例の観察に基づき, G aussによって与え られた. G aussの着想は,連続する 1 0 0 0個の整数をひとつのブロックとして,各 ブロックに入る素数の数を数えるというものであった.彼は,十分大きい,のの



/ l o g: x ;であることを見つけた.し 近傍における素数の平均密度のよい近似値が 1 x )に対する近似公式として, たがって彼は,冗 (



心)::::: :『 虹u 2 l o g を与えた.



i(の)で表わされる(((対数積分 ( l o g a r i t h m ei n t e g r a l ) ) ) ) . 上記の積分は,普通 l 部分積分によれば,



i x 畠=晶『ふ+fxo。『~)戸~+叫ふ) である.よって G aussと Legendreの公式は,漸近的には同値である.



Gaussがこの研究を始めたのは, 1 7 9 2年頃,つまり彼が 1 4歳の時のようである が,彼はこの研究を一生の間続けた. 1 8 4 9年に天文学者 Enckeへ宛てた手紙の 中で, G aussは , 1 5分近くかそこら素数を数えて過すことをいかに好んでいるか,



0 0万までいったことを物語っている. もちろん, そしてこのことを止める前に 3 aussは Enckeに関数 l i( x )との関係についても話している. 同じ手紙の中で, G しかしながら彼は存命中には, これらの結果を公表しなかった.そしてこのこと がはじめて発表された 1 8 6 3年には,既に D i r i c h l e tゃ Cebysev等 の 他 の 数 学 者 達が独立に 1 i( x )の重要性を発見していた.



Legendreと Gaussが素数表から得た吠x )の近似式をどう解釈していたのか, 実際のところは分からない.二人共,各々冗@)と彼らの公式との差を計算して いるが,これは,彼らがその差は有界だと思ったからに過ぎない.



しかし G auss



は常に冗( x ) < I i(の)であろうと予想した(この予想は正しくなく,我々は後に再び このことにふれる).最終的にいえることは,彼らが共に,彼らの公式が漸近的に







310



V章 数







亨)と同値である,つまり



― -



冗 ( ぉ ) )( =1 l o gx 1 . 0 8 3 6 6 )=→o 1 , l i m l i m心 お→ の $ o 1( x ) 00



であると考えていたとみなしうることである.この形にすると,この二つの命題 はより簡単な主張



lim~訂 。炉 =1 お→ 00







を導く. この式は特に素数定理の名のもとに知られるようになった.この定理を 証明するため以後 1 0 0年の間,世界の多くの数学者の努力が傾注された. 整数の中での素数の分布を考えたのと同じ頃, L egendreは 1 7 8 5年に次の予想



k n + l } , n=I,2 ,… , をたてた:もし lと Kが互いに素な整数であるなら算術数列 { egendreは数論におけるこの定理の重要性を認め,ニ は無限個の素数を含む. L 次相互法則の証明にこれを用いてさえいるが,この事実を証明することが出来て いないことも認めている.発見的推論によって, L egendreは与えられた数列に 含まれるの以下の素数の個数に対する近似式として, Kを法とする既約剰余類の 個数を c p ( k )で表わす時,公式 冗



( x ;k ,l ) : : : : : : :-1







c p ( k )xl o gx 1 . 0 8 3 6 6



を提案した. ユークリッドの論法を修正することにより,特殊な幾つかの Kと lの値につい



k n + l }という算術数列の中に無限個の素数が存在するのを証明することが ては { 可能である. しかし一般の場合の証明は,多くの試みがあったにもかかわらず,



1 8 3 7年と 1 8 3 9年に D i r i c h l e tが完全な証明を与えるまで得られなかった.この しる



D i r i c h l e tの論文は非常に重要で,解析的数論の真の始まりを印すものである. D i r i c h l e t自身もいっているように,彼の出発点は級数区 ( 1 / p )の発散について のE u l e rの証明であった. D i r i c h l e tの目標は, ( k ,l)=lなら P三 l(modk )なる素 数 Pに制限してもこの級数ミ ( 1ゆ)が発散することを証明することであった.数 列{ k n + l }の中の素数を見つけるために, D i r i c h l e tは二つの新しい着想をえた.



IV,D2)で 述 べ た D i r i c h l e t指 標 を 導 まず第一に彼は,二元二次形式について § 入した. D i r i c h l e tの第二の着想は,各指標 xに対して,まずすべての実数 s>l











VI



3 1 1



に対し



f紐



L ( s ,x)=



n=l が



で定義される関数 L ( s ,x)を付随させることであった. E u l e rの考え方にそのま ま従えば, s>lの時



g(1-~)



L ( s ,x)= を示せ,



—1



したがって対数をとることにより



=—吝 log (1-~『 )=~え輩 が得られる.右辺において和 盗 k l sを取り出すため, Dirichletは,等式に x C t ) l o gL ( s ,x )



p



を掛けすべての指標 xについて和を取り,



x ( l ) x ( p m ) Z : x ( l ) L ( s ,x )=2区 区 X X P 1 m pms 00







を作る. D i r i c h l e t指標が真に重要であることは証明のこの段階でわかる. それ らは次の関係式を満たすように構成されているからである:



1 ,



n司 ( k )のとき,



三互 ( l ) x ( n )={ < p ( k ) 0 ,



その他のとき.



X



この等式を使うと



1



00



ーms



-~x(l) l o gL ( s ,x )= 区 p-s+区 区 と c p ( k )X p司 ( k ) m=2pm司 C k ) m



が得られる.右辺の二重級数が s~l で収束することは比較的容易に示される.



よって和区 x ( l )l o gL ( s ,x)が S→ 1としたとき無限大に近づけば,定理は証明さ れる.



ところで xが自明な指標 X oであるとき, L ( s ,x o )はゼータ関数 00



1



こ ( s )= 区 っ n=ln



の[ kを割る Pについての積



I I C l p→)という]倍数に等しく,ゆえに S→1とする



と無限大に近づく.したがって



l i mみ( l )l o gL ( s ,x o )=+oo S→ 1



第 V章 数



312







p l f f l



であり,よって証明を完成するには, X = I =X oのとき各項 l o gL ( s ,x )がS→1の時有



( D i r i c h l e tの判定法))を導入す 界であることさえ示せばよい.無限級数に対する ( ることにより, D i r i c h l e tは , X = I =X oのとき L ( s ,x )は s>Oで[条件]収束し連続関 数となることを示した. したがって, l o gL ( s ,x )カ ・ ミs → 1らとさ肴界もおらことと,



L ( l ,x )= I =〇なることとは同値である.二元二次形式に関する項 (§IV,D ) )におい て,我々は, D i r i c h l e tが類数公式の証明の途中でこの結果を証明したことを既 に見た.このようにして, E u l e rの証明におけると同様に,我々は数論の定理を 解析の結果の帰結として得たのである. さて素数定理の証明の方向に向けてなされた進歩のことに話を戻そう.最初の



8 4 8年で, Cebysevはもし 結果が得られたのは 1



lim~l。gx X



.......



: r ;. . . .oo



が存在するなら,その値は 1となることを示した. しかし, C ebysev自身がよく 自覚していたように,彼の議論はこの極限値の存在を証明するものではなかった.



2年後に彼は,非常に巧みな組合せ的推論により,



l o gの l o g: x ; 0.92129~lim inf 心)一一 ~1~limsup 傘―― ~1.105548 お → 00



→ ”







00



: x ;



を示すに至った.これは極限値が存在しそうなことを示す. S y l v e s t e r等の人々 は , C ebysevの方法を改良することにより,上極限と下極限の間の差を小さくし たが, しかし組合せ的な方法によっては決してこの極限値の存在が得られそうに ないことに気づいた.(後日未発表の論文において E r d o sは次の超定理 ( m e t a -



y l v e s t e rの方法を t h e o rらme)を証明した: e>Oが与えられたとき, cebysevと S いくら改良しても



l o gの ogx u pr c ( x ) 1-e~lim i n f心) ー― ~lim s -~l+e X →00



X



X->00



X



なる結果が得られるのみである. しかも E rdosはこのことを示すのに素数定理 を使わねばならなかった.)



Cebysevがこの定理の証明の過程で到達しえた目標のひとつはすべての整数 n>Iに対して, nと2 nの間に少なくとも素数が一つは存在するという,有名な B e r t r a n dの公準と呼ばれた問題の肯定的解決である. B e r t r a n dは 1 8 4 5年にこ



VI 素



3 1 3







のことを予想し,置換群の研究に自由に使っていたが, この仮説を証明すること はまったく出来なかった. この問題を解くため C ebysevは , n>Iなら冗 ( 2 n )ー冗( n ) > Oを証明しようと企 てた. もしすべての x >のoに対して



a : : : ; ; ;冗 ( お )



I ogの : : : ; ; ; A : x ;



の型の不等式が得られるなら,容易に, n>叫に対し, 冗



( 2 n )→ (n)~I嘉詑a-A)



が導かれる.ゆえにもし 2a>Aなら n>珈 の 時 求 め る 結 果 が 得 ら れ る . c e -



b y s e vはこのような不等式を証明し,さらに叩より小なる nに 対 し て も , 数 値 e r t r a n dの公準を証明することができた. 計算を行なうことによって, B E u l e rゃ D i r i c h l e tと全く同様に, Cebysevもその研究の出発点として,



Sを



実委薮とする関係式



知 )



=~鉗 心=』( 1 -羞 ) ー1



を取り上げた.この関数 r ; , ( s )と素数との間に密接な関係が存在することは明ら かであった. 1 8 5 9年 , R iemannは,素数について発表された文献のうちおそら



.....



く一番重要なものと思われる論文の中で,この関係を深く理解する鍵は,こ( s )を 複素変数の



S の関数として考える所にあることを示した.



Riemannが素数定理



の証明を目標としていたことはほぼ確実である.彼はこのことには成功しなかっ たし,実際この論文においてもほとんど何も証明しなかったが,彼はそこで注目 すべき予想をいくつか与えた.これらの予想は,証明されさえすれば,冗@)のき



iemannの予想のどれひと わめてよい近似公式を与えるものであった.しかし R iemannの示唆した筋道に沿っては素数について何 つとして証明されず,また R ら特別な結果もえられずに 3 5年以上の年が過ぎ去った. この論文において R iemannは次の二つの結果を証明した:



( a ) r ; , ( s )は全複素平面上の有理型関数に解析接続でき,その特異点は s=lに おける留数 1の 1位の極のみである.



( b ) この関数は関数等式



第 V章 数



314 ,



冗ー







p f f l l



も ) こ(s)=冗ー(l-S)/2r(½ —f),c1-s)



s 1 2 r (



を満たす. この二つの結果を Riemannは , E u l e rの公式



心 ) =J""戸 f(S/2)-ldt ゜



から出発して tを冗が tで置き換え,がで割り, nについての和を取り,関数 00



f J ( x )= 区 e-n2,c:x; n=l



の古典的変換法則を使って得た積分表示 冗―



S / 2 r ( f ) , ( s )=S(S~l)+ Joocx(S/2)-l+X―(S/2)ー(1/2>)し合 C的~;)心



から導いている. D i r i c h l e tも 1 8 3 7年の論文において, L ( s ,x )に対する積分表示 を得るために非常によく似た技巧を使っているが,彼は Sを実変数としてのみ考 えていた.



u l e rも特殊な場合に関数等式を得ていた.彼は, Sが正の偶数と, 実は既に E s )の値を計算し,後者の場合のこ ( s )の 然 る べ き 値 を 決 定 す 負の奇数におけるこ ( る方法を見つけた.そして彼は ( ( 2 n )と ( ( 1 2 n )の間の関係に気付き,すべての 実数 S に対してこの関数等式が成り立つだろうと予想した. しかしいくつかの特 殊な場合を除いては証明を与えることが出来なかった. ( E u l e rの 仕 事 に つ い て



.Ayoub[3]の素晴しい記事を参照されたい.) のより詳しい情報については, R



Riemannは E u l e rの仕事を知っていてその影響を受けた. Riemannは次の主張を述べた. ( a ) こ( s )は無限個の複素零点[実数でない零点]を持ち,それらは 2直 線 R e ( s ) =1/2と Im(s)=Oに関して対称に分布している. ( b )



関数 ~(s)=(l/2)s(s-1) 冗― 812I'(s/2)(:(s) は



~(s) = e A + B s l } ( 1 f ) e s f p という形に書ける.ここで A,Bは定数で, pが ( ( s )の複素零点すべてを動くと きの積をとる.



( c ) が( T )を,長方形 0 : 5 : R e ( s ) : 5 : l ,l l m ( s ) I: : 5 : Tの中にある ( ( s )の零点の個数



VI 素







315



とする.このとき



T



T



T



が( T )= 妬 l o gに)—玩 +O(log T ) .



( d ) すべての複素零点は Re( s ) = l / 2なる直線上にある.



( e ) x>lのとき,関数 I I ( x )を I I ( の)=区



1 "'一



p m : : ; ;の m



で定義する.



1 I I ( x )= 冗 (x)+ 冗( : x ; l / 2 ) +ー1冗( : x ; l / 3 )+ ・ ・ 2



=冗



3



(x)+O(v 五 )



であるから,この関数は吠x )と密接に結びついている. Riemannは,のが整数 でないとき,具体的な公式



J o o(u2-ld)uulogu-log2



I I ( の )=l i(x) ー ~li ( 吋 )+ P



o



が成り立つと予想した.ただしここで pはこ ( s )の複素零点全体を動くものとす



s )の零点と 1 e ( x )の値の間に密接な関係があらわれてい る.この公式において,こ ( ることが見てとれる.



Hadamardやその他の人々に 1変数複素関数論, とくに整関数論の研究を始め させた動機は,この論文で Riemannの提出した問題を解きたいという希望であ る.主張 ( a ) ,( b )は 1893年 Hadamardによって初めて証明され,後に素数定理の



c )は , v onMangoldtによって 最初の証明において重要な役割を果した.主張 ( 1 8 9 5年に一一少し誤りがあったが一一証明され,ついで 1 9 0 5年 に は 同 じ von Mangoldtによって完全に証明された. I I ( x )に対する具体的公式を 1 8 9 5年 に 証 angoldtである. 明したのは,またもや vonM なお証明されていない唯一の主張は ( d )である.これは Riemann予想 ( h y p o -



t h e s edeR i e m a n n ) C * Jの名で呼ばれ,数学における末解決の問題の中で最も有名 なもののひとつである.地味ながら,この問題の解決への第一歩は Riemann自



[ * ]



寵訳すれば



' R i e m a n n仮説'. 以下の記事については(こ)も参照されたい.







第 V章 数



316



身による.彼はこ ( s )が直線 Re( s ) = l / 2上に無限個の零点を持ち,かつ((ほとんど すべて))の < : ( s )の零点はこの直線に((近い))ことを示した.しかし Riemannはこ



9 3 5年 S i e g e lが Riemann の結果を公表せず,それが初めて世に知られたのは 1 の未発表の原稿の中にそれらを発見したときであった. 1 9 1 4年に, Hardyは無 s )の零点がこの直線上にあるという事実の証明を公表した.少し遅れて 限個のこ (



1 9 2 1年には, HardyとL i t t l e w o o dが,ある定数 A>Oに対して, I m ( s )の絶対 値が Tより小さい,虹線 Re( s ) = l / 2上の零点の個数は少なくとも ATあること c )によれば,これはこ ( s )の複素零点のうち真に正の比率 B を持 を示した.主張 (



9 7 4年には L e v i n s o nが つ部分は少なくともこの直線上にあることを意味する. 1 B>2/3であることを示した. 1 8 9 0年代に複素変数関数論においてなされた発見は,素数の理論の急速な発 el a 展の土壌を準備した.素数定理自身, Hadamardにより,そして独立に d 0 0年以上も V a l l e eP o u s s i nにより証明された.(素数定理の証明を得るために 1 必要だったということは,それを証明した人々を不滅にするものと思われた.こ



9 6 2年に d el a の伝説は長い間真実味があった;しかし残念ながら,それは 1 V a l l e eP o u s s i nが 9 6歳で死んだときにぐらつき, 1 9 6 3年に Hadamardが 9 8 歳で死んだときに完全に崩れ去った.)素数定理が証明された 3年後に, d el a



i(の)と対logxによる吠の)近似の精度についての V a l l e eP o u s s i nは二つの関数 I 詳しい研究を発表した.この結果によれば I i( x )の方がよい近似を与え,実際 冗



( x ) l i ( x )= O(xexp(-c-V 后i 亙 ) )



el aV a l l e eP o u s s i nが具体的に与えたある小さな正定 が成り立つ.ここで C は d 数である.



d el aV a l l e eP o u s s i nによる冗@)一 I i( x )の評価の証明において決定的な点は, < : ( s )が((零点を持たない領域))の構成である.それは次のようにして得られる:彼 はt 。 と aという定数,を次ページの第一の図において,斜線部分で ( ( s )が零とな らないように,決定した.



1 9 3 0年に, Inghamはこの結果を拡張し, c p ( t )がある余りきびしくない正則条 s )が零とならないな 件を満たし,かつ次の第二の図の斜線をほどこした領域でこ (



i( x )の , c p ( t )の関数としての具体的評価が得られることを示し ら,誤差吠の)ー I た.特に,もし Riemann予想が正しければ,任意の s>Oに対して c p ( t )三 ( 1 / 2 ) + s



VI 素







317



O I



を取ることができ,



i ( : x ; )=0(の(l/2)+S) 冗@)ー l がえられる.(この形の結果を Riemann予 想 を 仮 定 し た 上 で 最 初 に 得 た の は



vonKochで , 1 9 0 1年のことである.) Inghamの仕事を見れば,誤差吠: x ; ) l i ( の)の具体的な評価から出発して,こ ( s ) の零点を持たない領域の存在を導けるかどうか問うのは自然である.



しかしこの



9 5 1年に Tur紐 に ようなことが可能であるとの証明はきわめて難しOが存在して任意の有理数 p / qに対して ¥ a ( p / q ) ¥> c ( a ) q 2が成り



立つ ( § V I I I参照).



1 8 4 4年には L i o u v i l l eが Lagrangeの定理の次のような一般化を証明した: aが次数 n>1の整係数既約多項式の根ならば,定数 c ( a )が存在して任意の有 理数 p / qに対し ¥ a ( p / q ) ¥> c ( a ) q→ を満たす. この定理自身は証明が難しいわけでも,極端にすばらしいわけでもない.その 重要性は, このような c ( a )が存在しないような数 aの存在を L i o u v i l l eが注意し た点にある.古典的な例を上げよう. ~=0.11000100 …= 1 0 1 1+1 0 2 1+1 0 3 !+ … とし,もが n次整係数既約多項式の零点となったと仮定する.この級数の最初の r 項までの部分和をらで表わす;このときら =P/lW1=p/q かっ O 1



...



十…O に対し,十分大きな



r をとれば c(~)q-n>2q ー cr+l> となる.このことは有理数 p/q で\,;



c(~)/炉を満たすものが無限個存在することを意味する.



―( p / q ) ¥
2-Vnと取れることを示した. S i e g e lの結果は Dysonにより多少改良され



........ .... .



K>亭 と な っ た ( 1 9 4 7 ) . しかし 1 9 5 5年には Rothによる実に目ざましい結果が 得られた:彼は aの次数についての条件なしに K>2と取れることを示した. ある意味で Rothの結果はこの型で可能な最良のものである.なぜなら先に見 たように, l a ( p / q ) IOですべての有理数 p / qに対し I a : _ _( p / q )I > c ( a ) / がを満たすもの











336



V章 数



が存在することを示せる. しかしこの予想は, aが二次の場合を除けばまった< 末解決である.



D i r i c h l e tが複数個数の実数の近似を考えたのと同様に,共通分母を持つ有理 数達による K個の代数的数の同時近似に注目することが出来る.この一般化は, 予想するのは簡単だが,証明するのはきわめて難しいことが明らかになった.そ



9 7 0年 W.Schmidtによりついになされた.彼は次の結果を証明した. れは 1



「 a 1 ,…,mを 1 ,a 1 ,…,匹が Q上一次独立となる代数的数とし, e>Oとすれば, 整数 q >O,P i ,…,かで



q l十 叶q a 1-PiI …!qak-PklOで不等式



jai —糾< 1 + ( 1 / k ) + s : , q q1



1sisk ,



を満足するものは有限個しか存在しないことが分かる. これは次のように言い換 えられる:



「 a 1 ,… , mがS chmidtの定理の仮定を満たすものとする.もし K>l+(l/k)な ( a 1 ,…,a k )で任意の整数 P i ,… ,P k , q>Oに対し ら,定数 c j a i _ h _ ,> c ( a 1 ,…,叫 q



qに



9



1~i~k,



となるものが存在する.」 上記の諸定理に出て来る定数が原理的に計算不可能なことは, §IXで見るよう に,不定方程式の研究にそれらを応用する場合に問題を引きおこす.ひとつの重



i o u v i l l eの定理における定数を原理的には少なくとも計算可能な 要な問題は L ( e f f e c t i f ) C * Jように改良することであった.このような結果の一つが 1 9 7 1年 Fel'dmanにより得られた. Bakerの方法 (§VII参照)を改良することにより, 彼は, aが n次の代数的数なら,原理的には計算可能な定数 c ( a ) ,K ( a )で , K ( a ) < n かつすべての有理数 p / qに対し



[ * 1e f fe c t i fの意味は,実際上は大変でも,少なくとも原理的には定まった計算さえ行な えば計算できるという意味である.例えば 1 0 1 0 0 0番 目 の 素 数 と い う の は e f f e c t i fな 概 念 で ある.



IX 不 定 方 程 式



337



l a p _ >q望 q となることを示した.この定数 K ( a )は 1よりほんのわずか小さいだけで,例えば



Thueの定理の定数を原理的計算可能にするまでの道はまだ遠いように見える. F e l ' d m a nの証明において, Thueのもとの議論の順序が逆にされたことは興味 深い. F e l ' d m a nは,ある不定方程式系の解の原理的に計算可能な上界を得るた



akerの方法を改良したものを利用し,つづいて,この不定方程式に対す めに B る結果を使って定理を原理的には計算可能な定数を含む形で証明した.



IX 不 定 方 程 式 A) 一 般 論 不定方程式C*Jとは,



fを整係数多項式として,単に方程式 f ( x 1 ,叩,…,叫) =0



のことをいう.不定方程式の研究の主要な問題は,このような方程式の組が整数 または有理数から成る解を持つかどうかを知ることにある.



1 9世紀の中頃まで,不定方程式の研究は二元二次形式の理論の一部であり,混 沌とした特殊な結果の山であった.各々の方程式は,たとえほんのわずか違うだ けでも,他にはまず使えない特別の方法により解かれていた.この状態は,孤立 した方程式ではなくむしろ方程式の類全体を扱う技術が発達してくるに至って, ゆっくりと変化しだした.



§IX,B )において,一次不定方程式系を完全に解いた H . J .S .Smithの結果を 手短かに述べる. S mithはまた二次不定方程式の一般論にも重要な寄与をしたが, これについては §Xで説明する.



1 8 9 0年頃代数幾何学から生まれた諸概念が不定方程式に応用され始めたが,こ の方面からの研究は現在もなお盛んである.これについては § IX,C )をあてる. 最初のそして最も簡単な例は Rungeによるひとつの方法である.我々はまず代 数幾何学に由来する諸概念,双有理同値や種数などについて語り,つづいて代数 曲線に対応する方程式について知られている主要な結果について述べる.



c * 1 D i o p h a n t o s方程式ということもある.



第 V章 数







338



2変数不定方程式論の発展と研究に非常に役立ったもうひとつの道具は,無理



数の近似理論である;この応用については § IX,D )で語る. ((沢山の))変数を持った不定方程式の広い類が解を持つことを示すための技術が 発見されたことは非常に注目するに値する.この方法については § IX,E)で説



IX,F)において,我々は,数学基礎論から来たアイデアを応 明する.最後に § i l b e r tの第 1 0問題が解決されたか,すなわ 用することにより,どのようにして H ち,ある与えられた不定方程式が解を持つか否かを決定するアルゴリズム[計算 手順]はありえないという結果を示す.



B) 線形方程式



mithが発達させたが,それは系 整係数の線形[一次]方程式系を解く技術は, S I I章 ,§ I I I ,B ) ) ; 単因子が分かれば,あら の行列を((簡約する))ことから成る(第 I かじめ簡約しなくても系の可解性を決定できる. S mith自ら,彼の仕事が創造的 というよりむしろ教育的性格をもつという印象を与えていて,実際彼は H eger によるほんのわずか前の仕事を完成したにすぎない;多分, S mithは n変数二次 形式についての彼の仕事に引用するために問題の完全な取り扱いが必要となり, それでこの論文を書いたのである.



C) 非線形方程式



Cl) Rungeの結果 2変数の非線形不定方程式へ代数幾何学を最初に応用したのは Rungeである ( 1 8 8 7 ) . 彼は不定方程式 f ( x ,y)=Oが複素射影平面内の代数曲線を定めるものと 考え,これらの平面代数曲線の理論について当時既に知られていた十分広い知識 を応用した. 彼の基礎とした着想は非常に巧みである:それは B e z o u tの定理(第 I I章 ,



. ..... ...



§IV,A ) )の応用である.もしもうひとつの方程式 h=Oで f=Oと h=Oとが共通 の既約成分(第 I I I章 ,§ IV,A ) )を持たず,さらに fの整数[を座標に持つ]疇点



.... ......



がすべて hの零点となるようなものが構成できるなら, B ezoutの定理により



)は具体的に定められる有限個の整数点しか持たない.さらに,(ある定数 c ! ( の ,y に対し)有界領城 I 叫< c ,¥ y ¥ < cの外にある



fの整数を座標に持つ零点がすべて



hの零点であるような hを構成できれば十分である. 二つの代数曲線が共通の既約成分を持たないことを保証する判定条件はいろい



IX 不 定 方 程 式



339



ろある.例えば, f=Oが既約で yに関して n次なら,前の性質を持ち yに関し て次数 ~n となる h を構成すればよい.



このことは fに対するいろいろな条件を



付け加えれば可能となる.その典型的な条件のひとつは次のとおりである:



f ( の ,y )=A o ( X )炉+ふ(の)ynー1 +…+ふ(x) (A心)



EZ [x])と書くとき,



Rungeは ふ( x )が定数でないとすれば求める多項式



hが構成できることを示した[*];彼は hの構成を可能とする他の条件をおくこと により,



fが既約と限らない場合をも含めて他にもいくつか同様の定理を示した.



. .......



これらの構成法は, どの知られている場合をとってみても,非常に複雑であるが, それは常に原理的に計算可能である.つまり Rungeの条件を満たす fが与えら れたとき, f=Oの整数点をいつも具体的に求められることがわかる.



C2) 双有理同値と種数 C と D を各々既約方程式 f ( x ,y)=Oと g ( u ,v)=Oで定義された 2曲線とする. ここで fと gとは(同じ次数を持つとは限らない)有理数係数の多項式である.こ のとき有理数係数の多項式郷四冷 1,伽が存在して,



c p ( x ,y )= < p 1 ( x ,y ) / c p 2 ( x ,y ) ,



c p ( x ,y )=¢1(x,y ) / ¢ 2 ( x ,y )



が次の条件を満たすなら, Cから Dへの有理写像が存在するという: 1 ) もし(ぶ y )が C 上の点なら,((例外的な))(意味については以下を見よ)有限



個の点を除き,点 ( c p ( x ,y ) ,c p ( x ,y ) )は D上にある. 2 ) 多項式 f ( x ,y )は < p 2も伽も割り切らない(そうでないと,条件 1 )は意味を



持たない).



Bezoutの定理により,一方では f=0, < p 2 = 0 , 他方では f=O, 伽 =0という 2 曲線は,例外的と呼ばれる有限個の共通点しかなl,n>Iとなる整数解(お, y , m ,



Y I ,m ,n )に対して(非 n )を有限個しか持たないことを示し,その解の max(!副, I 常に大きいが)具体的な上界を求めた;これの唯一知られている解は 3 2-23=1の みである. S c h i n z e lは Tijdemanの 着 想 を 炉 =f(x)の形の方程式に拡張した. ここで!(ぉ)は整数係数の n次多項式で,未知数はの, y,mである.



D2) ノルムについての方程式 i o p h a n t o s近似の不定方程式へのまったく別の応用について簡単にふ 我々は D れよう. 1 9 7 0年に W.Schmidtは Rothの定理 ( § V I I I参照)の n次元への拡張を



§ V ,A ) )としたとき, N(x)=mの形の 使って, N をある代数体におけるノルム ( 方程式を研究した;彼は次の定理を証明している:



「 K を代数体, M を K の部分 Z加群とする.このとき方程式 N(x)=mが,ぁ , る m に対し無限個の解 XEMを持っためには, M が



K の Q でも虚二次体でも



ないある部分体の格子*)となることが必要十分である.」 この定理をよりよく理解するのに役立つ応用を二,三上げよう. aが K=Q(a) * > M が K の部分体 Lの格子であるとは, M が Lの拡大次数 [L:Q]個 の 生 成 元 を も っ Lの部分自由 Z加群となることをいう.



IX 不 定 方 程 式



347



を生成する代数的数とし,その次数 nを n>2とする. a c 1 , ,… ,a 炉 ) 1を a以外の a の共役とし,有理整数 x,yに対し



! ( お ,y )= ( x一a y ) ( x一a < l l y )…( x a < n l ) y ) とおく.このとき f ( x ,y)=N(x-ay)であり, N(x一ay)=kは Thueの型の方程 式となる(逆に Thue型の方程式はすべてこのように書ける).aは K の真の部分



1 ,a )で生成される Z加群は K のどの部分体の 体には入らず, n>2であるから, ( 格子ともなり得ない.



したがって S chmidtの定理により N(x-ay)=kはたかだ



か有限個の解しか持ち得ない.しかし S chmidtの定理は原理的に計算を可能と するものではないので, Thueの定理のこの別証も原理的に計算を可能にすると いう性質を持つものではない.



Schmidtの定理を使った第 2の例として, 吋



+2が 十 4 が一 1 0 四y 3z+l0 研y z 2= N(x十 y屈 +z汀) =1



という方程式はたかだか有限個しか解を持たないことが示せる;この方程式の解 としては



( 1 ,0 ,0 ) ,



( 1 ,1 ,0 ) ,



( 1 ,2 ,1 )



の三つが知られている.



N(x)=kという型の方程式を解くことは,少なくとも Lagrangeまでさかのぼ i r i c h l e tの単数定理 ( § V ,A)参照)はこの型の問題の例である. 1935年以来 り , D Skolemは一連の論文を発表し,その中で Schmidtの定理の特別な場合を証明し ている.



E) 2変数以上の不定方程式 2変数の不定方程式に関する問題が非常に難しいことが明らかになった事実か ら見れば,我々が 3変数以上の不定方程式について,いかなることにもせよ何か をいえるというのは驚くべきことである.



もちろん, 2変数の方程式の場合のよ



うな完全な結果は期待できず,単にひとつの解が存在することが証明出来れば, たとえ具体的に決められずとも,またすべての解を記述できなくとも,普通それ は非常に満足すべきことである. 任 意 n変数の不定方程式の研究に使う手段は,今まで述べて来たものとはかな り異なる.方程式 f (x)=O(x=( 叫,…,の砂)を整数の範囲で解く第一歩は,次の



( x )EZ [ x i ,…, m』なら,すべ 必要条件が満たされるのを見ることである:もし f







第 V章 数



348



ての素数べきがに対し合同式 / (x)=O(modが)が解を持ち,しかも f(x)=Oが実 数の中でも解を持たねばならない.この視点からの最初の重要な結果は 1 9世 紀 の末に M inkowskiにより得られた: 「/(叫,…,叫)を整係数二次形式とする.すべての素数べきがについて合同 式/(叩,…,叫)三 O(modが)が自明でない解を持ち,かつ!(お, 1…泣; n ) = Oという



… ,Xn)=Oという方程式は自明でな



( x 1 , 方程式が自明でない実数解を持つなら, f い整数解をもっ.」



ここでは n変数二次形式に関するこの結果に限ることにしよう.これは特別に



(x)=Oの実数解の存在と,合同式 f ( x )三0 扱うに値する (§X参照).この場合, f (modが)の解の存在とが, f(x)=Oの整数解の存在を意味するという事実は,非 常に著しいことである.一般に,あるいは何かより拡張された方程式の類に対し てさえも,((局所的))な解の存在が((大域的))な解の存在を導くことを期待してはな



a s s eのノルム らない.これまで見出されたこの種類の結果はすべて本質的に H 定理 ( §V,J ) )の帰結である.この理由から,((局所的》な解の存在が((大域的))な解



( H a s s eの原理))が証明されたという慣わしである.この の存在を意味するなら, ( 原理が成り立つ他の例として:



( 1 )f ( x ,y)=Oが種数 0の曲線. ( 2 ) 三次曲面 a が十 b y吐



CZ 吐



d炉 = 0 , ただし a ,b ,c ,dEZ ,a c = b d .



しかし種数が 1より大きい曲線や,一般の三次曲面に対しては,普通 H a s s eの 原理は成り立たない.



Minkowskiの後, HardyとRamanujanが今日 H a r d y L i t t l e w o o dの円周法 と呼ばれる方法 (§XI参照)を展開し始めた 1 9 1 8年までは,ごくわずかの結果し か得られなかった;ここでは,円周法を使うと aゅ t +…+仰叫 =bという((対角)} 型の方程式が整数解を持つための条件を与えることが出来るというにとどめよう. 合同式 f ( x )三O(modが)の解の存在については, E .A r t i nが 1 9 3 0年 の 初 め に 次の予想を提出した:



/ i ( X )(l~i~s) を n 変数の整係数同次多項式とする.このとき,もし Ii の次 「 数 山 が n>区d わを満たすなら,合同式系 f i ( x )三O(modが)はすべての素数べき i=l



がに対して自明でない解をもっ.」



: aという条件が課せられたのは, n=~d: 変数の合同式系で,どんな rに



n>区



IX 不 定 方 程 式



349



対しても自明な解しか持たない例がかなり容易に作れる事実による. Artinの予 想は多くの特殊な場合に対して確かめられたが, 1 9 6 6年 TerjanianとBrowkin は予想が成り立たないことを示した;しかしこの予想が((ほとんど))成り立つこと も以下で分かる.



1 9 4 5年 R .Brauerは Artinの予想の解決へむけて重要な第一歩を踏み出した. 簡単な変数変換と巧妙な技巧により,彼は合同式系 f i ( X )三O(modが)は,次の型 の系に変換できることを示した:



ai1Yf+… +a i t y f i+g i ( Y t + 1 ,… ,Y n )= 0 (mod が),



1~i~s,



こ こ で 如 戸 Z とし, gd ま整係数の次数 d i次の同次多項式とする; tは n ,s ,



d 1 ,… ,d sの具体的な関数で, nと共に増大する. Brauerは,この変換された系に 自明でない零点が存在すれば, もとの系にも自明でない解が存在することを示し た . ところで, Y t + i三 ・ ・ ・ 三 Yn=Oとおけば, tについての((対角))型の合同式を解く



(ふ,…, d s )があって, t>えo ( d 1 ,…,d s )なら, ことに帰着される. Brauerは関数えo 任意のがを法とする t変数対角型合同式が自明でない解を持つことを証明した. 関数え( d i ,・ ・ ,d s )で n > J . ( d 1 ,… ,d s )なら t>ぇ 。 ( ふ , … ,d s )となるものの存在がいえ るから,これにより, n>入( d 1 ,… ,d s )ならもとの合同式系が自明でない零点を持 つことが結果として得られる. Brauerの求めたえoとえは極端に大きい.



Artinの予想に対する現在の最良の結果は, 1 9 6 5年に Axと Kochenにより見



I I I章 , §V,F ) )の技法を使って,彼らは 出された.数学基礎論とモデル理論(第 X [ 7 ] ) : 次の定理を証明した (



「 f i ( X )(l~i~s)



を整係数同次多項式とし,それらの次数を各々 d1, ・ ・ ,d sとす



( d 1 ,…,d s )が存在して, P>A(d1,…, ds) かつ n> 区 d~ なら, る.このとき整数 A 合同式系 f i ( X )三O(modが ) (1 幻 ~s) は任意の r:2:'.l に対し自明でない解を持つ.」



Axと Kochenの証明は, A ( d 1 ,…ふ)を具体的に計算する方法を与えない; P . Cohenは 1 9 6 9年にこの不都合を取り除いた別証明を与えたが,そこで得られる 定数は非常に大きく,その方法に従って計算することはほとんど不可能である. 例えば A ( 4 )の 最 良 の 値 で す ら 妥 当 な 時 間 内 で は 計 算 で き な い . Browkinは



limsupA(d)=+ooを証明した. d→OO



一般の不定方程式系 f i ( x ) = O , l~i~s, に戻ろう. Brauerの対角化の技巧の 応用を考えることは出来るが,それはそのままではうまくいかないようである.



き n~



令血



第 V章 数



350



しかしながら,代数的数論の結果をさらに使うことにより, Lewisは 1 9 5 7年に, 有理数係数の十分沢山変数を持つ 3次同次式は,常に自明でない有理零点を持つ ことを示した. これと独立に, 1 9 5 7年 Birchは Brauerの方法をある種の方程式 系に拡張した; I iが奇数次数 d iの同次多項式であると仮定する;このとき Brau-



e rのアイデアを巧妙に修正することにより, Birchはこの方程式の系を a i 1 Yや十…十 a i t y 1 ;+ g i ( y t + 1 ,…,Y n )=0 ,



1~i~s,



という系に変換できることを示した.ここで g iは次数山の同次式とする.



Hardy-Littlewoodの円周法を援用して対角型の系について得られた結果を使っ irchは次の定理を得た: て , B ,sに 対 し 整 数 n o ( k ,s) があり, Ii を奇数次数 di~k で n~ 「整数の任意の組 k n o ( k ,s )個変数から成る有理数係数の任意の



S 個の同次式とするとき,方程式系



ふ(x)=O,… , fs(x)=Oは自明でない整数解を持つ.」 実は,これは d iの奇偶についてもはや何も仮定しない,より一般な定理へ近づ



9 6 2年に証明したものだが,それについて いた第一歩である.それは Birchが 1 は後で述べる. 同じ年 1 9 5 7年に, Davenportは,完全に別の方法により, 3次の単独方程式の



ittlewoodの方法を独創的に変えたものを使うこ 問題にとりかかった: Hardy-L とにより,彼は整係数 3次同次方程式 C ( x 1 ,・ ・ ・ , 叫 ) =0 が n~32 なら常に自明で ない整数解を持つことを示した.さらに 1 9 6 2年にはこの方法を精密化して条件 を n~l6 に下げた;



9変数の三次形式で自明な零点しか持たないものが存在する



ことは,昔から知られており, 1 0変数の整係数三次形式は常に自明でない零点を 持つと予想されている.



Davenportのアイデアは, Rn中の立方体$を原点を中心として P倍に相似拡 大したものを PfBとし, P が整数で十 00 に近づくとき, PfB内の方程式 C ( x 1 ,・ ・ , 叫 ) =0の整数解の個数を評価するというものである.任意の実数 aに対し



S ( a )=区 exp(2冗 i a C ( 叫,…,叫)) PIB



とおく.ここで和は pgJに入る整数点すべてにわたる;



f1exp(2冗 i a m ) d a= O , 。 {I ,



m = I =〇のとき, m=Oのとき,



3 5 1



IX 不 定 方 程 式



なので求める数が( P )は



『S(a)da=副f1exp(2foC(x1,…,叩)da=が (P) 冗



0



0



で与えられる. P!Bに入る整数点の個数は大体 P門こ比例する. Waringの問題



(§XI)の研究から得られた経験によれば, C ( x 1 ,…逗; n ) = O上のこのような点の個 数は大体 p n 3に比例すると期待できる.そこで Davenportは f1s(a)daの漸近 公式で主項が p n 3の定数倍となるものを得ようと努力した.







しかし得ることが



.. ..... .



できたこの型の公式は, n~16 という条件の他, C(x1, …,X n)=Oが自明でない整



数解をまったく持たないとの仮定を必要とした!



Davenportの方法を本質的に一般化し, 1 9 6 1年 B i r c hは遂にこの分野の研究 [ 5 ] ) : での最終的成果と見なせる次の定理を得た (



「 / 1 ,…, fr



を整係数 n 変数 k 次同次式とし, n>k~l とする .v を方程式



/ 1 ( x )= 0 ,. . .,f r ( x )= 0 で定義される代数多様体とし, Vの次元は n-rと仮定する.



sを Vの特異点の



集合, s=dimSとする.さらに V は実数体上定義された非特異点を含み,任意



§V,I ) )上有理的な非特異点を持つと仮定する.このとき の素数 Pに対し P進体 ( n-s> r ( r + l ) ( k 1 ) 2 k i ならば, Vは 0でない整数点を含む.」



F ) Hilbertの第 10問題



.. . .



特別な型の不定方程式を解くのに使われる方法の多様性を前にすれば,具体的 に与えられたすべての不定方程式に対し,その方程式が整数解を持つか否かを有 限回の操作で判定できる((規則的な手続き))が存在するかどうか問うのは自然であ



i l b e r tは , 1 9 0 0年における国際数学者会議の講演において,この問題を彼の る. H 第1 0問題として定式化した. しかし彼は((規則的な手続き))が正確には何を意味 するかについて何も特定しなかった.そのとき以来数学基礎論の研究者達はこの あいまいな概念に対する数学的概念を形式的にととのった形で定義することに成



...



功し,この定義を使って H i l b e r tの問題に対する答は否定的であることを示した. 技術的な細かい所には立ち入らずに, この結果へと至る進展のおよその考え方を 与えてみることにしよう.



1 9 4 0年頃までは,((規則的な手続き))が何であるべきかについて数学基礎論の研







第 V章 数



352



究者達の間で意見の一致がほとんどなかったが,だんだんと大多数は問題を次の ように定式化するのが妥当と考えるに至った: すべての不定方程式に対して使える計算機のプログラムで,有限回の操作の後, もし方程式が解を持てば({整数解が存在する)),そうでなければ((整数解が存在し ない))という結果を出して必ず終るものが存在するか? 例えば,整数の組を(ある順序に並べて)それが方程式を満たすかどうか順に確 かめて行くというプログラムは,整数解がない場合は決して終らないから,先の



I I I章 , §V,E ) )を使っ 条件を満たさない.先の定式化は帰納的関数の理論(第 X て数学的に厳密な形とすることが出来るが,ここでは((素朴な))形で満足しておく.



Fl) 計算可能な集合と計算半可能な集合



g が,あるただひとつの整数に対して適用可能な有限個の操作から成る計算機 のプログラムであるとし,その目的はこの整数がある与えられた性質を持つかど うか調べることであるとする. もし調べる整数が問題となっている性質を持つな ら,計算機は((はい))という答を出す. このとき Sぼ)



={nl空を nに使うと((はい))と答える}



s e m i c a l c u l a b l e )であるという.さらにそのプロ という形の集合を計算半可能 ( e f f e c t i f )で グラムが常に((はい))または((いいえ))という答で終るとき,岱は有効 ( c a l c u l a b l e )であるという. あるといい,集合 Sぼ)は計算可能 ( 例えば吋+が =nの解をすべての整数の組(の, y)の中から捜せというプログラ ムは,もし解があるなら((はい))という答を与えるがそうでないなら無限にチェッ クが続く.したがって g は有効ではなく, S(岱)は計算半可能である. れでは Sぼ)が計算可能なことは証明していない.集合 S(空)は,



しかしこ



1 副 ~n,



IYI~



nであるような整数の組 ( x ,y)について[研+が =nを満たすかどうか]たしかめ, もしこれらの組の中に解がないなら((いいえ))と答えるプログラム岱’でも与えら



( 岱 ) =S( 岱')は計算可能である.計算可能な集合の他の例と れる;したがって S しては,素数の集合や平方数の集合などがある. ((計算可能性))に関して鍵となる結果は,次の二つである:



a ) 負でない整数から成る集合が,計算可能である必要十分条件はその集合と



N でのその補集合とが共に計算半可能なことである. b ) 計算半可能だが計算可能でない集合 D が存在する.



r x -不 定 方 程 式



3 5 3



a )の証明は簡単である. b )の証明は次のような着想に基づく.各プログラムは



有限個の命令からなり,各命令は有限個の記号から成る言葉で書かれるから,フ゜ ログラムの集合は可算であり g。占凡,…と番号をつけることが出来る.各整数 n に対し年はあるプログラムであり,すべてのプログラム空に対しある整数 nで



fP=年なるものが存在する.. S ( f P k )をプログラム g > kで 定 義 さ れ る 計 算 半 可 能 な集合とし,



D ={nlnES(岱 n ) } なる集合を考える.各整数 nに対しプログラム f f >n を書き nに適用できるから,



D は計算半可能である.しかし Dは計算可能でない.実際もし計算可能だとす ると a )により D の補集合 l 5は計算半可能となり,適当に定めた整数 Kに対して



D=S( 年)となる.この整数!?を考える;もし kEDならか=S (岱心となり kED となるから矛盾する;もし kEDなら如=S(fPk)=Dとなり再び矛盾する.よっ て Dは計算可能ではない.



F2) 不定方程式型集合



i l b e r tの第 1 0問題とを結びつける巧妙な着想は J u l i a 以上に述べた概念と H e n s e m b l e Robinsonによる.彼女はこのため新しい概念,不定方程式型集合 ( d i o p h a nt i e n )を導入した: N の部分集合 Sは,ある整数係数の多項式 f(y;叩, , f ( a ;叫,…,叫) =0が zn内に解(叩,…,叫)を持つ ・・・,叫)が存在して, aESと



.Robinsonと M a t i j a s e v iとに ことが互いに同値のとき,このように呼ばれる. J よる基本定理は次のものである:「すべての計算半可能な集合は不定方程式型で あ る 」 [ * ] .



H i l b e r tの第 1 0問題を解くことが不可能なことは,この驚くべき定理の簡単な 系であることを示そう.この定理により,上で定義された集合 D に対し, n+I 変数の整数係数の多項式 P(y;叩,・・・,叫)で, P(a;X 1 ,・ ・ ・ ,Xn)=Oが zn内で解を 持つ必要十分条件が aESとなるものが存在する.もし任意の不定方程式が解を 持つかどうかを定めるプログラムがあれば,このプログラムを P(a;の1, …,Xn)に 対して使え,これにより D は計算可能となる.[これは矛盾である.]



1 9 5 2年すでに J u l i aRobinsonは,上の基本定理が二段階に分けて証明される ] * [ 不定方程式型なら計算半可能なのは明らかだから,結局この二つの概念は一致する.



第 V章 数







354



べきだと考えた.第 1段階で,計算半可能な集合は指数不定方程式型 ( e x p o n e n t -



i e l l e m e ntd i o p h a n t i e n )の集合,つまり前の不定方程式型の集合の定義である変 数 叩 が fの中に指数として現われることを許したものであることを示さねばな らない.そして第 2段階は,指数不定方程式型なら実は不定方程式型となること



9 5 2年 J .Robinsonは最終の[不定方程式型という]性質を導 を示すことである. 1 くいくつかの条件を得, 1 9 6 1年には M.D a v i sと H.Putnamと共同して証明の第



1段階を乗り越えた.しかし, 1 9 5 2年の J .Robinsonの論文の条件が満たされる ことを示し,



a t i j a s e v i cで,やっ したがって基本定理の証明を完了させたのは M



9 7 0年になってのことである. と1 F3) R o b i n s o n M a t i j a s e v iもの定理の他の応用 R o b i n s o n M a t i j a s e v i cの定理の証明は構成的である:計算半可能な集合 S(よ り正確には S を定義するプログラム)が与えられたとき,対応する不定方程式を (原理的には)実際に構成することができる.この構成法を多少変更すれば,整数 係数の多項式 g ( 叩,・・・心%)で, (X1,…,叫)が z nを 動 い た と き の g(叫 ,…,叫)の .... 値で,正になるものの全体がちょうど S となるものを構成できる. とくに,素数



1変数の多項式で,この多項式の の集合 Sに対し, 2



上の値で正となるもの



z21



全体がちょうど S となるものを書き下すことができる.



R o b i n s o n M a t i j a s e v iもの定理の恐らく最も驚くべき応用は,((普遍方程式 ( e q u a t i o nu n i v e r s e l l e ) ) )と呼ばれるものの存在であろう.任意個数変数の整係数 多項式の全体を F。,凡,…と一列に並べることが出来る.このとき 臼 ={n¥Fn=Oは整数解をもつ}



という集合は計算半可能で,したがって不定方程式型である.よって多項式



... .



P(y;X1,・・・心枷)で, aEqである必要十分条件が P(a;叩 , ・ ・ ・ , 妬 m)=Oが整数解を 持つことであるようなものが存在する.別の言葉でいえば,すべての不定方程式



)の研究に帰着する. の解の研究は, yをバラメータとする,多項式 P(y;Xi,…,の m この多項式は実際に書き下すことが可能で,



J .RobinsonとMatijasevicは m=



.Robinsonは m=3であるこのような多項式が見出 1 3ととれることを示した; J せるだろうとさえ予想している.



G o d e lの不完全性定理(第刃 I I章 , §V,C ) )を強めた次の命題も得られる:「自 然数のどのような公理系に対しても,解を持たない不定方程式で,その公理のみ



355



X n変数二次形式



では解を持たないことが証明出来ないものが存在する.」もし J .Robinsonの予想 が成り立つなら 3変数のこのような方程式が存在する[*].



X n変数二次形式 1 8世紀末における二元二次形式の理論の大きな進展 (§IV参照)の後, 3変数以 上の二次形式に対する拡張を求めるのは当然であった. !(叩,…心%)を整係数の



9世紀の間にこの分野でなされたすべての研究の動機とな 二次形式とするとき, 1 ったのは次の二つの基本的問題である: ( 1 ) いっ!(叩,・・・,叫) = Nは整数解を持つか?



( 2 ) どれだけ沢山 ! ( x i ,…心;n)=Nは解を持つか? このテーマは広大で,



しかもいろいろ違った概念があり,また理解しやすい現



代的な取り扱いが欠けているのでその研究は煩雑である.



もし n変数の二次形式



を詳しく研究しようと思うなら,現在の文献をそこで何がなされているかある程



ermite,S m i t h ,Minkowski,S i e g e lらの全 度理解して読めるようになるには, H 集を読んでおかねばならない.本節では, Smithと Minkowskiの仕事について 簡単に述べ,それから容易に説明できる一,二の結果についてふれるにとどめる.



1 8 0 1年まで n>2なる変数をもつ二次形式について考察されたことはほとんど なく, されたとしても非常に特別な場合だけであった.その頃知られていた主な 結果は次のようなものである:



( a ) 叫十岱参+函十 x !がすべての正の整数を表現するという Lagrangeの定理. ( b ) 吋+ぉ臣+ぉt は4 r ( 8 n + 7 )の形でないすべての正の整数を表現する,という Legendreの定理



( c ) a 妍十 b y2+cz2=0が自明でない整数解を持つのは a ,b ,C が同じ符号でなく



( 『 ) =( i )=( ― 号 ) = +1 のとき,



しかもそのときに限る,



という L egendreの定理.



その著書「数論研究」 ( D i s q u i s it ionesArit h m e t i c a e )において Gaussは三元二 次形式の組織的な研究を始めた.彼の目標は,二元二次形式の理論において生じ



[ * ]



したがって 3変数の不定方程式の一般論は作れない.



356



第 V章 数







n 曲



たいくつかの問題を解くために使うことが出来る所まで,この理論を発展させよ うというものであった.以下三元二次形式についての G aussの 主 な 結 果 に つ い てみるが,それ以上はほとんど立ち入らない. 二元二次形式の場合と同様に,二つの整係数三元二次形式 f ( x i ,叫,叫)と



g ( y 1 ,Y 2 ,Y a )は,変換 Yi=ail叩 + 叩 叫 + a i a叩 ( a i 1EZ ,< l e t( a i 1 ) =士1 )で , gをf に移すものが存在するとき (Z上)同値であるという. G aussは,与えられた判別 式 dをもつ三元二次形式の Z上の[同値]類の個数は有限であることを示した.



r e d u i t ) ) )な形式(つまり係数がある条件を満たす形式; 彼の証明は,各類は((被約 ( 二元の場合は §IV参照)を有限個含むことを示し,またある与えられた判別式に 対しては有限個の((被約))形式しか存在しないことを示すものである.



1 8 4 7年に E i s e n s t e i nは,三元二次形式についての Gaussの仕事を引き継ぎ, n 変数二次形式の理論を得ようと試みた.例えば,判別式が定められたとき, n変 数の二次形式は Z上の[同値]類を有限個しか持たないと主張した.残念ながら,



E i s e n s t e i nの論文は(あるものは正しくない)結果をいくつか主張しただけで彼 i s e n s t e i nの主張の証明のいくつかが最初に発表 は何の証明も与えなかった. E



8 5 0年で,この年 Hermiteは被約形式の概念を n変数の場合に拡張 されたのは 1 i s e n s t e i n することに成功し,類数がつねに有限なことを示した.しかしながら E の他の主張については, 1 8 6 7年になって初めて, H.J.Smithが完全で正確な報 告を公けにした.また彼自身によるいくつかの重要な追加が同じ論文で行なわれ た.以下この Smithの仕事について簡単に述べよう. 二元二次形式の場合と同様に,種の概念を導入することが必要である.つまり, 与えられた判別式 dを持つ n元二次形式の類の全体を互いに共通部分のない部分 集合{伝,・・・, Gr}の和に分け,任意の整数 nに対し, nを表現するすべての二次形 式は同じ部分集合らに入るようにするのである.このような類の集合は種とよ ばれる.このように類の集合を種に分けられるというのは驚くべき定理であ る[*].



種を定義するため, Smithは与えられた判別式 dをもつ類の集合の上に,種指 標( c a r a c tらr edeg e n r e )とよばれる関数の集合 { g i ¥ l s i s s ( d ) }を定義した.これ [ * ) この段落の数学的内容は明らかに正しくない. S mithの 種 の 概 念 の 定 義 に つ い て 著 者に誤解がある.次の段落からの記事は正しい.



X n変数二次形式



357



らの関数は類の集合上定義され, +1または一 1を値に持つ;正確な定義は非常 にこみいっているのでここでは与えない.もし fがある二次形式の類なら, 指標系とは,



fの



Iでの種指標の値の集合 {gi(/)}をいう.種とは同じ指標系を持つ類



I Jの集合とし,



したがってこの指標系を種の指標系 ( s y s tらm d ec a r a c tらr e )と呼



んでよい.種指標の定義の仕方により,種 Giは前に述べた性質を持つことが結 論される.



Smithは二元二次形式に対する種の存在に関する Gaussの定理を一般化して 1: s ;i : s ;s ( d ) )なる列{叫が与えられた 次のことを証明した:「ai=+lまたは一 1( とき, ijai=+lとなるなら{叫を指標系として持つ種が存在する.」



Smithはまた種を変換の言葉で特徴づける重要な定理を得た,すなわち: 「判別式 dを持つ n元二次形式 fとgが同じ種に属する必要十分条件は fをg へ移す有理数係数の変換であって,行列成分の分母が 2 dと素で,判別式が 1の ものが存在することである.」



inkowskiの仕事を論ずるとき,さらに述べる. この種の特徴づけについては, M 種の指標の系を使って, S mithは表現の間題について出来そうなことはすべて なしとげた;任意の整数 nが与えられたとき,どの種が nを表現するかを記述す ることに成功し,また判別式 dの二次形式が与えられたとき,それがある特定の 種に入るかどうかを決める方法を与えた. しかし彼は,もちろん特別な場合や種 がただひとつの類からなる場合を除き,ある種の中のどの二次形式が与えられた



.. .



整数を表現するかは決められなかった.



一般 n元二次形式の種のこの特徴づけの後, S mithは与えられた正定値二次形 式がある与えられた整数を表わす方法が何通りあるかの研究に興味をむけた. これについて一般的な結果が存在しそうなことを示唆した最初の定理は,



Lagrangeの 4平方の定理の一一J a c o b iによる一一次の精密化である. 1 8 2 9年 Jacobi は, n>O で, n= 吋+の~+俎十戒の整数解の個数を R(n) で表わせば,



R ( n )=



{ 釘 ぷ ),.cu+1) 2 4 区 (2d+1 ) C2d+l)ln



n=1 ( m o d 2 ) のとき, n三 0 ( m o d 2 ) のとき



a c o b iの証明は 'FundamentaN o v a 'に発表され,楕円関数論(第 VII を示した. J 章参照)に基づいていた.出発点となった考え方は次の通りである.



! q iIのとき, N=lのとき



という性質である.この性質は,((ふるい P を通った》 A の元からなる部分集合の {(特性関数))を定義するのに使われる.



XI 加 法 的 整 数 論 冗



365



P I J , P



( P )=



とおく;このときこの特性関数 a→S 0 ( a )は



S 0 ( a )= 区



μ ( d )



d!Ca,冗 CP))



と書ける. したがって



S ( A ,P)=区 S 0 ( a v )= 区 ( 区 vs;n



μ ( d ) )= 区 ( 区 1 )



vs;n dl(a~ ぶ ( P ) )



dI 冗( P) vs;n,dl邸



となる.次の段階は,和



区1



vS:n,d!a"



の使いやすい表現を見つけることである.これは h ( v )三 0(modd ) ,1 : : : ; ;v : : : ; ;d , とい う合同式の解の個数を計算することに帰着する; N(d)をこの数とする;このと き N(d)は dに関する乗法的関数となる.もし,ある PEPに対し N(P)=Pなら,



Aのすべての整数が((ふるわれる}}ことになるから,そうではないとする.他方, N(P)=Oとなる素数はふるいの操作に何もつけ加えず, したがって無視すること :5:N(P)2



I ' 8 ( l+( I l k ) ) (S/k)-1 r s ( A k ,n ) S s ( n ) n I ' ( s / k ) ,-.J



—一ここで I'(x) は Euler のガンマ関数,



Ss(n) は次の条件を満たす非常に複雑



な数論的関数である:原理的に計算可能な 2定数 C 1 ( k ,s )とら( k ,s )があって,す べての nに対し O2 梵 +1かつ n >no(k) 上の結果は,原理的に計算可能な定数 n なら r s ( A ,n)>Oとなることを意味する.



Goldbachの予想に関しては, Hardy-Littlewoodの方法は部分的な成功しか 得られなかった.優弧上での被積分関数の近似式と,劣弧上での被積分関数の評



i r i c h l e tの L関数 (§IV,D ) )が現われる. Hardyと Littlewoodは , 価の過程で D どの L関数も半平面 Re(s)~3/4 内に零点を持たないという仮定,すなわち一種 の一般化された Riemann予想 (§VI)のもとでハ ( P ,2n+l)に対する漸近公式を







第 V章 数



372



証明出来たのみであった.この [ Riemann予想の]結果を認めた上で,彼らは次 の式を示した:



(2n+1 ) 2



「r a ( P ,2n+1 ) S(2n+1 )( l o g(2n+1 ) ) 3 ' ,-..J



ここで再び S(2n+1 )は複雑な数論的関数で,すべての nに対し O0を意味する. r 2 ( P ,Z n )につ いては Hardyと L i t t l e w o o dは,一般化された Riemann予想を認めてもなお, 漸近公式を得ることもハ( P ,2n)>Oを示すことも出来なかった.一般化された



Riemann予想を認めた上で彼らが証明するに至ることが出来たのは, E(x)で 2 個の素数の和とならない m以下の偶数の数を表わすとき,任意の固定された e>O に対し E(x)=O(お (l/2l+E) となることまでであった.



1 9 2 4年頃 Vinogradovは円周法を別のやり方で使い始め, Waringの問題につ いて Hardyと L i t t l e w o o dよりよい結果をえた.彼は非常に沢山の技術面での単



i n o g r a 純化を行なったが,我々はその最も簡単なものについてしか述べない. V dovは , nを Kべき数の和として書くとき,その中の最大の整数はたかだか N = [ nい]であるので,級数 f 8 ( z )= 2 …区 00



00



m1=0



m,=O



Z切



1k十..,+叫



を扱う代りに有限和 N



N



m1=0



m,=O



f 点( z )= 区 … 区



zmり+.・ + m , k



を考えれば十分であることに注目した.前のようにして



叫L 厚但



r s (ふ , n)=



を得るが, ここでは収束の問題はもはや存在しない.



よって C として単位円



=1が取れ, したがって



= 『 ( 全e



r s (ふ ,n )







0 m=O



を得る.



i 0 ) 8 e 2が n 0 d ( J



l z l



3 7 3



XI 加 法 的 整 数 論



Vinogradovは,優弧と劣弧として HardyとL i t t l e w o o dとは別のものを選ん N



だ;そして彼は,劣弧上でとる積分のよい評価を得るためには,三角和区 e紐 im•O m=O



に対し, H .Weylが 1 9 1 6年にこのような和を最初に考えたときに得た評価より



inogradovは非常に よいものが必要であることに気がついた.これについて, V 洗練された技巧を導入し,それを後に ( 1 9 4 0年代に),



N+M



区e 2豆 flOk 可能な定数 no(k) があって, n~no(k) ならハ(Ak,



n)>Oである. kの大きな値に対



して,これは HardyL i t t l e w o o dよりずっとよい結果である. 1934 年 Vinogradov は,ある原理的に計算できる定数 n。があって, n~no とな



る奇数 nはすべて 3個の素数の和として書けることを証明した;しかもここで一



o 般化された Riemann予想は使われない.ついでに注意しておくが,今日なお n の値は計算されていないが, もし V inogradovによって示された方法に従ってそ れを計算したとしても,極端に大きな数が得られるであろう.この方法は War-



i n gの問題に使われたものと多少異なる. r a ( P ,2n+1 )の漸近公式を直接得よう ( P ,2n+1 )で,ぇa>Oとなる必要 とする代りに,技術上の理由により,補助の関数えa 十分条件は ra>Oであり,さらに一方の関数の漸近公式を知れば他方の漸近公式 も得られるような関数を彼は導入した.



しかしながら,円周法は再び使わねばな



らず,彼は問題を有限和以外取り扱わなくてすむように定式化した. 円周法の以後の応用ではすべて有限和のみが使われる;したがって,分割数の 問題の場合,無限和と無限積の言葉を使った方がより扱いやすいということは奇 妙に見えるかもしれない.これは F (z)=I I(1ーが)ー 1 という関数がモジュラー関 r=l



数(第 V II章 ,§ 1 6 )と密接な関係を持っているからである. 1 9 3 7年 Rademacher はこの F ( z )の性質を使って p ( n )を収束級数に展開した.本質的には,彼の論文 は HardyとRamanujanの論文から着想を得たものだが,彼は複数個の優弧と劣



( z )のより深い解析的性質を応用した.,Rademacherの展開を 弧を用い,また F ( n )の正確な値が比較的容易に計算できる.例えば Lehmerはこのよう 使うと, P にして







第 V章 数



374



p ( 5 9 9 )= 4 3 5 3 5 0 2 0 7 8 4 0 3 1 7 3 4 8 2 7 0 0 0 0 という値を得た c * 1 . Rademacherの公式は,円周法が漸近公式以外の物を与えた 恐らく唯一の場合であるという点で興味深い. ‘ ‘udakovは ハ ( 1 9 4 0年代に, Linnikと C P ,2n+l)に対する Hardy-Littlewood



の元来の方法に新しい研究をつけ加えた;彼らは, L関数の零点(が存在する時) の((密度定理))を使うことにより,その零点に対する Riemann予想に依存するこ



P ,2n+l)に対する定理を証明していたので, とを避けた. Vinogradovが既にハ( この関数に対する彼らの結果それ自身は余り興味がない;しかし彼らの密度定理 とその変形は他の問題にも使われて成功した;例えば, Vinogradovの考えた型 N+M



のある種の和区 e 2 i i ; i f ( m ) f Jの評価ができた.とくに, Montgomeryと Vaughan m=N



は , 1 9 7 3年にそれらを応用して,何らの仮定なしに, 2個の素数の和と書けない, の以下の偶数の個数 E(x)は,か>Oをある原理的には計算可能な小さな数として, 0(お 1-りであることを証明した.



C ) 一般の整数列 加法的整数論の一般的間題の一つとして次のものがある.正整数から成る数列



A が与えられたとき,定数 s ( A )があって,十分大きな正の整数 nはすべて A の



元佑を使って n=aけ…+佑, s~s(A), と書けるか;もしそうなら A は正整数 の基底であるという.そこで A が基底となるための十分簡単な条件があるかど うかを問うのは自然である.



1 9 3 0年近辺に Schnirelmannはこのようなひとつの条件を得た:



「 A(x)を { aEA\a~x}



の個数とし, a(A)~inf A (x) はとおく;このとき a ( A ) ぉ: 2 : 1



>Oなら A は基底となる.」 残念ながら素数の列 P は a(P)=Oとなる.



しかし 2Pでたかだか二つの素数の



和と書ける整数の列を表わすと, Schnirelmannは a(2P)>Oで あ る こ と を 証 明



( 2 P )という正の した;彼はこのために Brunのふるいを使った. このことは, s ( 2 P )個の素数の和と書けるものが存在す 整数で,すべての正の整数はたかだか s ることを意味する.これは Vinogradovにより [ GoldbachのJ3素 数 の 問 題 が 解 かれる前に証明されたという点で,歴史的に興味ある結果である.



[ * J ' T a b l e so fP a r t i t i o n s ' ( R o y a lS o c i e t yM a t h e m a t i c a lT a b l e s ,4 .U n i v .P r e s s ,Camb r i d g e ,1 9 5 8 )に p ( l O O O )までの表がある.



X I I 有 限 体 上 の 1変 数 代 数 関 数 体



375



XII 有 限 体 上 の 1変 数 代 数 関 数 体 既に見たように(第 I I I章 ,§ I I ,§IVB ) ,§VA ) )Gaussや G a l o i s以来有限体は 数論や群論において重要な役割を果して来た一—ーもっとも Dedekind までは,







れらは合同式の計算の形でしか行なわれていなかったが. 1 9 2 0年以来いろいろ な問題によって,多くの点に関し,有限体凡上の



i 変数有理関数体凡(X)の代



数拡大は代数体のように振舞うことが明らかになった;しかし他方では,これら の体と, C(X)の代数拡大との間に明らかな類似が存在する.後者は R iemann 面の理論(第 VII章 ,§ 21)における((代数曲線上の有理関数))体に他ならない.こ れらの観点の対比により,古典的代数幾何学における体 Cが任意の体 Kで置き換 えられた,((抽象代数幾何学))の一般概念が生れた. kとして有限体を取ったとき,



aussの仕事 この理論の諸結果は数論における重要な結果をもたらす.例えば, G i , l~i~r, の 以来,いろいろな機会に次のような問題と出会って来た:次数 d i (叩,…,叫)を考え,素数 Pに対し, N (p)で合同式系 整係数同次方程式 J



f i ( X 1 ,…,のn )=0 ( m o d p ) ,



1~i~r,



の( pを法とする)解の個数を表わす; Pが十 0 0 に近づくとき N(p)の出来る限り 正確な漸近公式を得ることが問題になる.話を最も簡単な場合に限り,((有限体上 の代数幾何学))の考え方によってこの問題がどのように満足すべき仕方で解決さ



[ 1 2 ]を見よ). れたかを読者が理解できるよう試みる (



A) A r t i nの学位論文 D e d e k i n dと Weberの仕事 ( 1 8 8 2 )以来, Kが有限体なら, K上の 1変数多項式 環 k[X]とその商体 k(X)とは,整数環 Z とその商体 Q とに似た性質を持ってい ることがわかっていた;もし K が k(X)の有限次代数拡大なら, K においても((代 数的整数))を, Z を k[X]でおき換え,代数体と同様に定義すると, K の整元全体 のなす環旺は,代数体の整数環のように,任意のイデアルが素イデアルの積に



§V,C 4 ) ) .E .A r t i nは 1 9 2 1年に書かれた 一意的に分解されるという性質を持つ (



ゆZ で , K が二次拡大 K n=Fp(x,vD(x)) その学位論文において, Kが素体 Fp=Z, (D(x)EFP位])である特殊な場合に,ずっと進んだ研究を行なった;数論との類 似はここでもまた非常に緊密であった:イデアル類の数は有限であり,二次相互



r t i nは,学位論文の第 1部において, D e d e k i n dと 法則があり,そしてさらに A



376







V章 数







呻h



H i l b e r tが Q の二次拡大について証明したすべての性質を KDに拡張した. 学位論文の第 2部は,体 K=KDのゼータ関数丘 ( s )の解析的性質の研究にあ てられている;それは R e(s)>lのとき, D e d e k i n dのゼータ関数 ( § V ,CS))と同 様 ,



1 丘( s )= 区 aキ( O ) N ( a ) 8 で定義される—―ーただし(代数体の場合と同様に) N ( a )は o x / aなる環の元の個数



である;また E u l e r積



, x ( s )=的—畜)―1 もえられる一一ここで積は,阪のすべての素イデアル上を動く. そこで, Riemannゃ D edekindのゼータ関数のように,この関数丘 ( s )の関数 等式を証明し,その零点の位置を定めようとするのは当然である ( § V I ,§V,



s )が,む ( s )と 丘( 1 s )を結びつける関数等式を満た H 2 ) ) .A r t i nは実際に丘 ( し,丘 ( s )の実でない零点はすべて直線 Re( s ) = l / 2と Im(s)=Oに関して対称的 に存在することを示した.これにより Riemann予想 ( § V I )の類似がまた成り立 っ,すなわち丘 ( s )の実でない零点が直線 Re( s ) = l / 2上にあるだろうという予



. .. .. ..



想に自然に導かれる.



他方,状況を詳しく調べることにより, A r t i nは,こx ( s )が p sの有理関数であ る , より正確には



I m C x ( s )=1-pl-SV T I 1-f 3 v p s ) = l( となり,出はある有理数係数の代数方程式の根となるという,注目すべき(思い



s )の零点はしたがって がけない)結果に至った.む (



s= l o gI P 』 i 叩虚 Iogp + Iogp 1 2



で与えられ,む ( s )に対する ( ( R i e m a n n予想))は,関係式 l o gI 糾=ー I o g p , すな わ ち 洛I = P 1 1 2 , I~v~m, と同値となる.



A r t i nは , Pが小さな値で多項式 D ( : x ; )をさまざまに選んだとき ( ( R i e m a n n予想)) が成り立つことを確かめたが,一般の場合の証明を与えることには成功しなかっ



X I I 有限体上の 1変数代数関数体



377



た;彼は 1 9 4 0年までもうこの問題に立ち戻らない.その年に始めた研究につい ては §V,L)を参照されたい.



B) Davenportの問題 1 9 3 0年 L i t t l e w o o dは Davenportに平方剰余の分布に関するかなり特殊な問 9 0 6年 J a c o b s t h a lは , n,n+lという連続する数が共に Pを法とす 題を出した. 1 る平方剰余となる組の数は,(素数 Pが十 0 0 に近づくとき)漸近公式



p



R 幼)=—+ O ( p 1 1 2 )



4



で与えられ,同様に三つの連続する数 n ,n+l,n+2が Pを法として平方剰余とな る数は



p



R a ( P )=— +O(p112) 8



で与えられることを示していた. L i t t l e w o o dの出した問題は,連続する n個 の 平方剰余の系の個数に対し



p



R n ( p )= n+O(p0) 2 という型の公式を,指数 0n 。に対し Un>Oとなるものとして定義できる.す



' . .• • .



p



P+l ると,測定可能な量あるいは数とは, S = ( s n ) , nEN で, Sn= — +P1.n=-­ q q P 2 . nと書けるものとなる.ただし列 ( P 1 . n )および ( P 2 . n )はこれらの等式で定義す るのである.



... ..



B a l z a n oは続いて,すべての有理数は測定可能なことを証明し ( [ 8 9 ] ,2 0ペー



IV 実数,関数の一般論および集合に対する最初の反省



4 1 5



ジ),無限小の概念を Cauchyのそれに対応していると思われる形で導入してい る( 2 7 2 9ページ).次いで彼は,二つの測定可能な数の和が測定可能になるとい う定理を述べている ( 3 8ページ)が,その証明は不完全であり,前述の解釈では二



[ 8 8 ] ,1 7 5 1 7 7ページ);し つの測定可能な数の和は必ずしも測定可能にならない ( かも,二つの測定可能量の相等性に対する B o l z a h oの定義の仕方 ( 5 6ページ)で



は,無限小を,すべての項が 0 である列と同一視せねばならない—―ーそして彼は これを既に 1 8 1 6年に行なっている ( [ 6 ] ,§ 2 7 ,2 7ページ)のに, 1 8 4 7年に書いた 本の中では,それを誤りと考えている ( [ 8 ] ,1 0ページ).同様に,二つの測定可能 な数 A,Bで , A=Bでも, A>Bでも,また A( [ 4 . 6 ] ;2 .2 ,2 .3 , .4 .1 .1 ) . さらに a,bEN, b = ! =〇に 対し, aが bで割り切れないとき商 a / bを定義するため, Ohmぱ b・( 1 / b ) = lとな



d i v i s i v e rA ¥ . l s d r u c k )あるいは除数 ( d i v i s i v eZ a h l )1 / bを導入す るような除表示 ( 7 2 7 3ページ).無理数に関しては,その体系的研究は る(



a 1 1 b , .aEQ十,が有理数



....



とならぬような場合に限られている ( 1 8 7ページ). 再版第 2 巻の序において Ohmは,傑出した Cauchyもまた彼なりに((解析学 の不完全で非科学的な状態に注意を向けた))が,一般的かつ堅固な体系を構築す るには到らなかった,と指摘し,さらに,特に Cauchyは抽象的数の一般論を作 ろうとしていないが,((しかしこれなくしては解析学は存立し得ないのである))と している ( [ 8 1 ] ,V I-VIIページ).Ohmは同時に ((Cauchyおよび Gaussによる級 数の収束に関する美しい諸定理))に言及し ( V I I Iページ),それらを自分の「体系」 の中で随所に用いている. しかし強調しておかねばならぬが,彼の論著は厳密さ



1 2 4ページ),ぉ の点でいくらかの不満を残している.特に,その導関数の定義 ( よび級数の収束の定義 ( 2 6 1ページ)は全く厳密性を欠いている.これに反して, 彼が与えた連続性の定義 ( 1 3 8ページ)は Balzanoや Cauchyのものに大変近い. 数学全体を一つにまとめた論著を作ろうというもう一つの試みは B alzanoの 「量の理論」である.これは末完に終わったが, 1 8 3 0年頃書かれたその一部「関



9 3 0年に出版された.この本の第一部「連続および不連続関数」にお 数論」が 1 いて B alzanoは , Cauchyおよび Ohmの連続性の定義を引用し ( [ 9 ] ,1 5ページ),



alzano-Weierstrassの定理と呼ばれる次の命題に対応するものを証 また,後に B 明なしで用いている ( 2 8ページ):実数の有界な無限集合はすべて集積点を持つ.



alzanoのこの非公刊の仕事が出版される以前に, しかも Balzano この定理が, B の他の出版物の中にはこの命題がどこにも現われないにもかかわらず, B alzano-



W e i e r s t r a s sの定理と呼ばれるようになったことは注意してよい ( [ 9 ] ;An.merkungen,5 ) . この本の中には大変奇妙な誤りが見出される ( , 3 9ページ):級数 1 ・ . .







1 .



が十―—+…+ ・ ・ 1-y . n-y+



* )



その証明は考えている各表示が同じ個数の単位元からなるという事実に帰着される.



IV 実数,関数の一般論および集合に対する最初の反省



4 1 7



を考察して, B alzanoは,これが y豆V*に対し yの連続関数を表わすと断定し



/(n-y)の級数が収束さえしないことに考慮を払っていない. ているが,一般項 1 O ,1 ]上の連続関数で,この区間において無限個の極大および極 彼はまたここで [ 小を持つものを構成している.この関数構成は驚くほど現代的な心遣いと精神を 用いてなされている.また B alzanoも Cauchyと同様,次の不正確な定理を述べ



6 8 6 9ペ ていることが注目される:連続関数の単純収束極限は連続関数となる ( ージ).



.......



(第二部「導函数」において,彼は師範学校の生徒 E v a r i s t eG a l o i sが 1 8歳で



....



1830年に出版した一命題 [ 5 5 ]を批判している ( 9 6ページ).後者は任意の関数に 対し((その導函数の存在を,先験的に ( ap r i o r i )証明している))のである. Balzano は続いて,区間 [a~b] 上の連続関数で[a, b J内の稲密な集合(すなわち, ' [ a , b ]内の



集合であって, [a~b] のどんな開部分区間もこの集合の点を含むようなもの)の上



で微分できないようなものの例を与えている ( 9 8ページ).注意すべきは Bblzano が,この関数が [ a ,b ]の各点で微分できないことまでは主張していないことであ る—しばしばそう書かれているが.しかし実は Balzano が構成した関数は,



, a=O,.b=lととるとき,.J O ,1 ]のどの点でも有限あるいは定符号無限の微分係数 [ 9 ] ;Anmerkungen; 1 6 ) ;点 ぉ : : : : :0では,それは十 00 に等しい右微 を持たない ( 分係数を持つ. ,いくつかの弱点はさておき, B alzanoがその論考において解析学の基礎に取り 組んだやり方は,当時としては全く新しいものであった. C) 無限の逆理



Balzanoが1 8 4 7年,すなわちその死の 1年前に書いた書物「無限の逆理」 8 5 1年に現われた.しかしそれは H.Hankelが,この書物には((無限の考え は , 1 [ 6 4 ] ,・ 1 8 9ペ 方に関するいくつものすぐれた注意))が載っていることを指摘する ( ージ)までは,全く注目されない. この本の冒頭からして ( [ 8 ] , 1ページ), B o l z a r i oは,,'無限の問題に対し最も深 <沈潜した者であることが知られる.彼は実際次のように書いている:((確かに, 我々が数学の領域において出会う逆理的主張の大部分は,無限の概念を含む定理 である.これらの定理は,無限の概念を寵接に含むか,あるいは少なくとも,人 がそれを証明しようとするとき,何らかの仕方で無限の概念に頼っている)).そ



418



第 VI章 解 析 学 の 基 礎



れ故にこそ Balzanoはこの概念を解明しようと試みるのである.この本は主に



Balzanoの哲学的思想を述べているものであるとはいえ,その純数学的影響力は いささかも無視できない. そこに ( 1 3 1 4ページ),後に Dedekindにより再び取り上げられた無限集合*)の



alzanoは((本来的な ( a ns i c h ) [は 存在に関する命題が見出される.そのために, B じめから正しい]事実あるいは命題の集合))(数学的定義,あるいは論理的定義さ えもが困難と思えるものの集合)が無限であることを((証明))する.実際――



Balzanoは論を進めている一ーMか事実が在ることを主張する一つの事実あるい は命題があったとし,これを命題 A と記す. ( ( Aは正しい))という命題は, A と異 なる新しい命題 Bとなる.なぜなら,これが A と異なる主語を,すなわち命題



A 自身を主語として有するから. (Aが本当に B と異なるかどうかという((哲学 的))議論にここで立ち入るのは目的を外れる.) Bから同様にしてさらに命題 Cが 得られ,以下同様に続く.これらすべての命題の集合は,如何なる有限集合より



alzanoはここで結局,古典的な無限の概念と,整数列の直観 も大きい.従って B alzanoの((証明))の哲学的諸前提を議論しようとし 的構成に立ち戻るのである. B なければ,これは明らかに正整数の集合が無限であることを仮定することになる. しかしこの著作で最も重要なことは, R の互いに異なる二つの無限部分集合の 間に一対一対応を定め得る可能性を B alzanoが殊によく具体的に示している点で あり ( 28-29ページ),これは集合の等濃度の概念([ 4 6 ] ;1 .1 6 .1 )の定義へ向けての 1 2 最初の一歩である.すなわち,彼は全単射な写像 m→y =す力を用いて, [ 0 ,5 ]の 任意の点を一意的に [ O ,1 2 ]の或る点に対応させ,またその逆にも対応させ得るこ とを示した.ここから,無限集合に対する相等性の概念を再定義する必要が起こ り,これは Cantorによってなされる.彼は B alzanoのこの本に非常な感嘆の念 を抱いていた.



Balzanoのこの著作の価値は**),無限集合を定義しその性質を研究するという alzanoは先駆者であった. 試みにあり,まさにこの点においても, B



B o l z a n oは((集合))に対して ' M e n g e 'というドイツ語を用いた. * ) 多くの不備な推論にもかかわらず.



* l



V



実数の構成



4 1 9



V 実数の構成 極限の概念が関与する諸問題に関連してすでに指摘した様々な困難から,集合



Rの厳密な定義が要求されるようになっていた.これに加え,諸々の基礎を熟慮 反省していた数学者たちに実数の集合を((構成すること))を示唆したと思われる理 由として,さらに次の二つ,なかんずくその後者が挙げられよう:まず第一に無 理数に関するより多くの知識がえられていた.それはひとつには,代数方程式が 一般には根号により解けないという事実の証明から,もうひとつには超越数の集



i o u v i l l eの証明に負う.次には,整数か 合が無限である(第 V章を見よ)という L ら出発して解析学全体を構成し,その結果として解析学を算術化しようという一 般的な傾向があった*).このように基礎を厳密化したいという解析学に内在した 要求から,三つの異なる実数論が生まれることになる.以下それらをその数学的, 歴史的文脈の中に再配置しつつ吟味してゆくことにしよう.



A) KarlW e i e r s t r a s s W e i e r s t r a s sの実数論は考え出された厳密な理論の最初のものでもないし,公 にされた最初のものでもない. しかし,これを核として解析学の広大な改革が結 晶してゆき,ついには今日我々が知っているような形を,解析学に与えるに至ら せた最初の理論であった. W e i e r s t r a s sは M i l n s t e rで Gudermannの も と で 大



8 4 2年から 1 8 5 5年まで地方の名もない都市で中等教育に従 学教育を受けた後, 1



e i e r s t r a s sが当時の数学者と持った唯一の接触は,彼が 事しており,この間に W 1 8 4 4年の 8月から 1 0月にかけて B e r l i nに滞在していたときの D i r i c h l e tとの出



a c o b iが 1846年 1 2月 2 1日に書いた ( [ 4 9 } ,5 0ページ), 会いであった.ここで J D i r i c h l e tに関する話題を紹介しておくのは面白いだろう:彼は自分も Cauchy もG a u s sも完全に厳密な数学的証明というものが如何なるものかをわかってお らず,ただ D i r i c h l e tだけがそれを知っているといい,次のように述べている.



( ( G a u s sが何ごとかを証明したというとき,それは私には大変確からしいものに見 auchyがそういうとき,逆の主張も同じくらい確かに思える . ・ D i r i c h l e t える. C がそういうときは,主張は全く確実である)).W e i e r s t r a s sは 1856年に B e r l i n大 * > D i r i c h l e tは代数や解析のあらゆる定理を((整数に対する定理として述べ得る))と主 張していた ( [ 3 9 ] , VIページ).



420



第V I 章解析学の基礎



学に採用され,この時以来,解析学の基礎として当時確立されていたものに対す る組織的な問いかけを実行に移し始めたのである.



W e i e r s t r a s sが実数論を作り上げたのは 1 8 6 3年頃と推定される ( [ 4 9 ] ,5 7ペー e i e r s t r a s sの 1 8 6 5 1 8 6 6年における冬学期の講義「解析函数 ジ).この理論は, W .Kossak[ 7 4 ]により 1 8 7 2年に初めて の一般理論」でとられたノートをもとに, E e i e r s t r a s sは本質においては 2 0年以上もの間,同じ実数論を講義 出版された. W 8 7 8年夏学期の「解析函数論入門」と題された W e i e r s t r a s s し続ける;ここでは 1 の講義の A dolfHurwitzによる非公刊の記録に従って見てゆこう.



i e r s t t a s sは認めているので,彼は, 正または 0の整数の集合 N の存在を We その実数論において基本的役割を果たすことになる,相等の概念を定義すること から始める ( [ 4 9 ] ,9 6ページ).彼は,二つの整数が等しいとは,それらが同じ個 数の単位元よりなることをいうとし,この((関係を a=bで表わすとき, a=bかつ



b=cならばまた a=cでもある))と主張している.正の有理数を定義するのに



W e i e r s t r a s sは単位元の完全部分という概念を導入する ( 9 8ページ): l / nが単位 元の第 n完全部分であるとは, n ・ ( l / n ) = lが成り立つことをいう (Ohmのそれに 近い定義).有理数とは,この新しい数(単位元の完全部分)の整係数有限一次結



e i e r s t r a s sはこ 合のことであるが,二つの有理数の相等の定義を与えるため, W の新しい数に対して適用できる次のような変換を利用した: 1°1/nの形の数が n 個集まると単位元で置き換えられる.



z o任意の数はこれをその完全部分のいく



・ ( l / p )で)置き換えられる.すると有理数は一つの集合体, つかで(例えば 1をP すなわち Q十の元よりなる一つの有限集合で表現されることになる.例えば 4 百は,集合体{½,½,½,½}で表現される(これは t を表現する無限の可能性の



うちの一つである).さて今や我々は二つの有理数の相等を定義することができ



, bが等しいとは,集合体 aを上述の初等的変換により別の a ' る:二つの有理数 a に変換し,このがは bと同じ要素を,同じ個数だけ含むようにできることをい



. ぅ 単位元とその完全部分――それらは無限個ある—から出発すれば,無限個の



要素よりなる集合体(すなわち有理数の無限列)も構成できるわけである. しかし, 無限個の要素よりなるこのような新しい数を厳密に定義するためには,((これら の要素が実在の数(すなわち単位元とその完全部分)の領域から一定の法則に従っ



V 実数の構成



4 2 1



て採られなければならない))( [ 4 9 ] ,1 0 1ページ).この新しい数の定義,すなわち



'という集合論的概念の 正の有理数の拡張へむけての第一歩は, aの部分たる数 a



( a 'が aの部分であるとは, a 'を a "に変換し, a "の各要素がすべ 導入であった: ( "におけると同じ回数だけ aにも現われるようにできることをいう)). この際 てa



aの方は他の要素を含んでいてもよい. a 'が aの部分というとき, a 'は ( ( aの要 素のうちの有限個))しか含まないことに注意せねばならない. これにより Q十の 無限個の要素からなるような二つの集合体の相等を定義することが可能となる.



e i e r s t r a s sは相等性の新しい定義を与えることができた:《二 この概念により W 数 a,bが等しいとは, aの任意の部分が, bの或る部分に変換され,また逆に b の任意の部分が aの或る部分に変換され得ることをいう)).このように定義され た相等性は対称律と推移律とを満たす ( [ 4 9 ] ,1 0 3ページ).相等性のこの新しい定 義は,二数 a ,bの間の大小関係に対する新しい定義をももたらす: b>aとは, a の任意の部分が bの或る部分となり,また bの或る部分 cで aの部分とはならな いものが存在することをいう.



e i e r s t r a s sは有限値の さて無限個の要素よりなる新しい数を定義するため, W 基準を導入する:((数 aが有限値を持つとは, aより大きな数 bで (Q十の)有限個



e i e r s t r a s sは , の要素よりなるものが存在することをいう)). この基準を用いて W 無限個の要素よりなる新しい数を定義し,算術の初等演算がこれらの新しい数に 対しても意味を持つことを示すことができた.これらの新しい数に対して減法を 定義すれば ( 1 0 8ページ),実数の集合 Rが得られる.



e i e r s t r a s sの実数とは,有限性の基準を満たす集合 つまり要約していえば, W 体を,相等関係から定まる同値関係によって類別した類集合のことである.この とき,一つの類を代表する或る集合体について,これに対応する数が Q の中に存 在するか,あるいはこれが新しい数,すなわち一つの無理数を定義するかのいず れかである.



B) R i c h a r dDedekind D e d e k i n dは 1 8 5 4年に Gaussの支持をえて大学教授資格論文に合格した.し かし彼の数学形成に決定的であったのは, 1 8 5 5年に死んだ Gaussの後を継ぐた



i r i c h l e tが G o t t i n g e nにやってきたことである. Dedekind自身が書いて めに D [ 5 0 ] ;・ 1 .4 .1 ) , 彼にとって ( ( D i r i c h l e tの深遠で洞察に富んだ講義を聴 いるように (



4 2 2



第 VI章 解 析 学 の 基 礎



くのは非常に大きな喜び))となった;((私は実際,その後,整数論,ボテンシャル



i r i c h l e tは , 論,定積分論,偏微分方程式論と,彼のあらゆる講義に出席した. D 彼の薫陶および回を重ねる毎に親密になっていった多くの個人的会話を通じて, 私を全く新しい人間に変えてしまった)).この時代, D edekindに影響を及ぼした もう一人に Riemannがいる. 1 8 5 6年 9月 1 6日付の Riemannへの手紙で ( [ 5 0 ] ;



1 .4 .2 ) , Dedekindは((一年間恩恵を蒙った多くの講義に対し))彼に感謝している.



1 8 5 8年に Z u r i c h工科大学の教授に任命された彼は, 1 8 5 8 1 8 5 9年 の 冬 学 期 用 に「微分積分学初歩」を準備しているう知実数論をきちんと作る必要を痛感す る( [ 5 0 ] ;1 .6 ) .( D e d e k i n dは , B e r l i nに来る前の W e i e r s t r a s sのように,これ 以前に解析学の初歩を教えたことは全くなかった.) 1 8 6 2年 ( G a u s sと同じ)故郷



Braunschweigに戻り,そこの工科大学で教えることになった彼は, 1 8 6 2 1 8 6 3 年の冬学期の間微分積分学の講義を持ち ( [ 5 0 ] ; 付録 IVページ),その序の §1は 「実数城•その連続性」と題されている.彼が極限の定義を導入し,任意の有界な



単調増加列が極限を持つという定理を証明するのは §4においてであり,従って,



4 6 ] ;1 4 .3 .2 ) . しかし Dedekindが「連続と 実数を定義したあとのことである([ 無理数」を出版したのはやっと 1 8 7 2年のことであった.(もっとも彼は少なくと



8 7 0年以来ずっと,自分の理論を公刊しようと考えてはいたのだが ( [ 5 0 ] ;3 . も1 1 .1 ) . ) この書物の序文冒頭においてすでに ( [ 3 8 ] ,3 4ページ), Dedekindは以下に述 べようとする考察が 1 8 5 8年秋になされたものであり,それは彼が((算術に真に学 問的な基礎が欠けていること))を感じたのがまさにこの頃であったからだと明言 している.この欠如は特に極限の問題において,とりわけ,有界な単調増加列が ... 極限を有するという定理を証明しようとするとき現われる. ここで人々は幾何学 ..... edekindが解析学の講義を初めて行なう 的直観証明に頼っていたわけである. D ことになったとき,その((不満の感情はあまりにも強く,無限小解析学の諸原理 に対して純算術的かつ完全に厳密な基礎付けを見出すまで熟考を続けると断固決 意せずにはいられなかった)).幾何学的方法に対する批判に続けて, D edekindは , 今まで上述の定理,すなわち任意の有界な単調増加列が極限を持つという定理を 証明するのはまさにこの方法によってであったと書く. しかるにこの定理,ある いはこれと同値な諸定理は,((或る程度まで無限小解析学の基礎として十分なも



V 実数の構成



423



のとみなしうるであろう)).この点に関して彼の意見は Meray( [ 4 8 ] , .3 3 9ペー



e i e r s t r a s sと同じであり,後者における有限性の判定条件は上の定理 ジ)や W の主張と同値である.((算術の基礎の中にこの定理の起源を発見した))のは D e d e -



kindに帰せられる.これに彼は 1 8 5 8年 1 1月 2 4日に成功した.(日付がこのよう に正確なのは驚くには当たらない. D edekindは日記をっけており,それを死ぬ 前に破棄したらしい.)



,§ 1 ( 5 7ページ)「有理数の性質」において, Dedekindは有理数の集合 Q が体 8 7 1年に彼が導入していたものである ( [ 3 7 ] ,2 2 4ページ))をなし算 (この概念も 1 術的に構成されたものと仮定するとはっきりいう. D edekindにとっては Q の性



w o h l g e o r d n e t )無限領域 ( G e b i e t )として規定することが重 質を全順序のついた ( . a>b 要である . Qにおけるこの順序関係に関しては,次のような性質がある: I かつ b>cならば a >c. I I . aキ bならば aと bの間に無限個の有理数が存在する.



( D e d e k i n dが有理数の稲密性をかくもはっきり活用し,これにより解析学の基礎 に重要な位相的性質を導入しているのは注目すべきことである.) I I I . aを Q の 元とするとき, [ a以外の ]Qの 元 全 体 を 二 つ の 組 ふ お よ び ふ に 分 け , 任 意 の



a 1EA1に対し a1aとできる.(有理数の集合 におけるこの切断の定義は, Q を 2個の部分集合に分割するという操作を用い,



Dedekind流の数の定義を集合の概念そのものの上に基礎づけるものである.さ らに,この第三性質には,有理数の全体,すなわち,或る無限集合の元全体とい う概念が現われている.)



§ 4 ( 1 1ページ)は「無理数の創造」と題されている.つまり読者は前もって数 edekindは,始めに任意の を((創造する))話であることを予告されるのである. D 有理数 aが有理数全体の集合を上に述べたような二つの組ふ, A2に分割し得る ことに注意する.そして彼は Q の二つの組ふ,ふへの勝手な分割で,ふのどの 元もふのどの元よりも小さいようなものを考える;このような分割は切断



( S c h n i t t )と呼ばれ(ふ,ふ)と記される.すると,一つの有理数は一つの切断を生 成するということができる.あるいはむしろ二つの切断であるが,((それらは本 質的に異なるものとは見なさないことにする)).さらにこの切断は次の性質を持 っ:ふが最大の元を有するか,ふが最小の元を有するかのいずれかである.逆 9



に( 1 2ページ)もし或る切断がこの性質を持てば,これはふの最大元かまたは



424



第V I章 解 析 学 の 基 礎



ふの最小元によって生成される. D edekindは続いて有理数によっては生成され ないような無限個の切断を例示する([ 4 6 ] ;E .X I I I .8 ) . Dedekindにおいては, 切断が必ずしも有理数によっては生成されないという事実のうちにこそ有理数域 の非完備性あるいは不連続性が存するのである.((さて,有理数によっては生成



A i ,ふ)が存在すれば,その度に一つの新しい数が創造され されないような切断 ( る一ーすなわち無理数 aで , これは切断(ふ, A2)によって完全に定義されると見 な す ) )( 1 3ページ).この定義から,各切断には一つ,しかもただ一つの有理数ま たは無理数が対応し, D edekindは,二つの数が((異なっている,あるいは等しく ないとは,対応する切断が本質的に異なったものであるとき,かつこのときに限 る))とする.



Dedekindは次いで, Q の順序関係が Rへ延長され ( 1 5ページ),後者は連続(す なわち,現代の用語でいえば連結)となること ( 1 6ページ)を示す.



C )C h a r l e sMerayの理論と GeorgC a n t o rの理論 無理数の厳密な理論を初めて発表したのは C h a r l e sMerayであり, 1869年の ことである [ 7 9 ] . Merayは,彼にとって解析に対する把え方の基礎をなし,かつ 統一的道具でもあった考え方,すなわち関数の T a y l o r級数展開を徹底的に適用 してゆくうち,この理論へと導かれたのである.この考え方は解析学の代数化を 展望した L agrangeにより最初に表明されたのであるが, Mもr a yは 1868年にそ れを展開し [ 7 8 ] , さらにその後の仕事の中で研究を深めてゆく. . . 無理数に関する論文の中で Merayはまず,二つの原理が,当時極限の概念の 関与する数学のあらゆる分野で,本質的基盤をなしていることを指摘する ( [ 7 9 ] ,



280-281ページ).第一の原理は,上に有界な単調増加列(あるいは下に有界な減



( C a u c h y列))が 少列)が或る極限に収束するというものであった.第二の原理は, ( 或る極限に収束するというものであった.((現在までこれらの命題は公理と見な されてきた)).しかし,このようなやり方では((無理数 ( n o m b r e ' i n c o m m e n s u r a -



.. .. . .. ..



b l e )に関する非常にあいまいな概念が推論に入り込む必然性を避けることができ なかった)).まさにこの故に Merayはまわり道だがより確実な道をとることを決 意し,そのために彼はまず無理数を定義して,そのことにより極限の概念を明確 化する.



v a r i a b l ep r o g r e s s i v e )(すなわち数列) v= 或る極限 VEQ に収束する進行変量 (



V 実数の構成



425



( v n ) , nEN, V nEQ, をとる ( 2 8 4 2 8 5ページ)と,このとき Vは ( ( C a u c h y列))であ 4 6 ] ;1 3 .2 .2 ) . 今もし Vが ( ( C a u c h y列))で,それの収束先となる有理数が存 る([



.. ...



l i m i t ef i c t i v e )に収束するとい 在しなければ,このような列は,或る架空の極限 ( うことにしよう.この新しい数,架空の極限の導入により, Merayは Q を完備 化することができた.実際, Merayはまず,互いに同値な有理数の列という概念



4 6 ] ;1 3 .2 .3 ) , ((ついで,二つの変量が,或る第三の変量にそれぞれ同 を定義し([ 値ならば,もとの二つは互いに同値となることがわかる)).すなわち,今日の言い 方によれば,これは同値関係となる. Merayによる無理数の定義はこの同値関



.. ...



係による((商集合への移行))( [ 4 6 ] ;1 3 .2 .5 )に対応する.実際,彼の主張するとこ ろによれば,列 vに対するこの架空の極限を表わすのに任意の記号を用いること ... ができ,また vに同値なあらゆる列が((同じ一つの記号により表わされる》.こう



2 8 8ページ),もし aが正の有理数で, a = ( P / q ) 2となる P ,qEZ*が存在しな して ( ければ, ( ( v 万は上記の言葉でいえばこの架空のべき根を表わし,また実際の計 算では平方したものが aに収束するような任意の進行変量を表わす)).



Merayはまた, ( ( C a u c h y列))を用いて構成した集合 R ( [ 4 6 ] ; 第 幻I I章)がQ の全順序を保つことを示している.



antorによっても作り上げられた.こちらは 1 8 7 2 これに似た理論は GeorgC 年にまず E .Heineにより発表され ( [ 7 1 ] ,1 7 6 1 8 0ページ),次いで Cantor自身 により出版された [ 1 8 ] .( C a n t o rは 1 8 6 3年から 1 8 6 6年にかけてB e r l i nで,まさ にW e i e r s t r a s sがその実数論を講義していた頃そこに学んでいることが注意さ れる.)三角級数に対する一意性定理を証明するのに, C antorは((有限または無 限個の数よりなる数量が与えられることによって生ずる様々な状況に光を当てる 目的で))何がしかの説明から話を始める必要を感じる ( 9 2ページ).この論文につ



VII, VIIIで再び論じよう; ここでは Cantorの実数論を説明するにと いては § どめる.



A=Qとし ( 1 )



.







a i ,a 2 ,・ ・ , ・a n ,・ ・ ・



を有理数の Cauchy列とする.列 ( 1 )の性質を C antorは次のような仕方で表現 している ( 9 3ページ):((列 ( 1 )は一定の極限 bを持つ)),((この bは数列 ( 1 )に関連し た特別の記号))以外の何ものでもない.さて次に第二の列



4 2 6



第 VI章 解 析 学 の 基 礎



( 1 ' )



a i , a~, ・ ・ , ・ a~, ・ ・ ・



..... 'を持つものを考える.もし ( 1 )と( 1 ' )とが同値ならば, C a n t o rは で一定の極限 b



b=b'とおく;そうでない時はこれらの列の間には関係 b > b 'または b: fが連続で Y aE[ y i ,y』に対し叫 E[叩,叫]で Ya=f(xa)となるものが存在する.続いて 意の Y * ) この前に,有界閉区間上のあらゆる連続関数は必ず上限および下限に到達すること が証明されている.



428



第 VI章 解 析 学 の 基 礎



W e i e r s t r a s sは与えられた点叩の近傍 ( N a c h b a r s c h a f t [ * J )の概念を導入する: これは((差の一叩の絶対値が或る一定の限界を越えないような))すべての点 X よ t



りなるものである. W e i e r s t r a s sはこの節を(現代風にいえば)コンパクト集合の



4 7 ] ;4 6 .1 .4 )という主張で結んでいる. 連続像がまたコンパクトになる([ 興味深いことに, W e i e r s t r a s sは導関数の古典的な定義の他に,公式 /(の十 h )=f ( x ) + h f ' ( x ) + h ( h ) ここに



h ( h )=a ( l )



による定義をも与えており,差 f (x+h)-f(x)が二つの部分,すなわち, hにつ いて線形な,すなわち hとhによらぬ要素との積である,第一の部分と, hで割 ってもなお Oに近づく第二の部分との和からなることを浮き彫りにしている.



8 6 1年の講義の多変数関数に関する章において, W e i e r s t r a s sは ,.fおよ この 1 びその 1階と 2階の偏導関数が連続ならば



犯f' . ・ ・ ・ = 祖f 紐



a y a y紐



が成り立つことを証明している.この定理は 1 8 7 3年 , H .A .Schwarzにより ¢一般化された ( U e b e re i nv o l l s t a n d i g e sSystemvone i n a n d e ru n a b h a n g i g e r



Vo r a u s s e t z u n g e nzumBeweised e sS a t z e s



只 f ( x ,y ) )= 只 げ(o x ,y ) ) o yo y , 紐 紐



Gesam.m a t h .A b h a n d . , 第 2巻 , 2 7 5 2 8 4ページ, S p r i n g e r ,B e r l i n ) . そこで 吋・of 祖f はf , ―ーおよび一―ーが連続と仮定されている ( 2 8 4ページ). 紐 'ay・ay 紐



無限小の定義は,今日行なわれているもの([ 4 6 ] ;1 4 .7 .1 )と完全に等しい:無 pであつて ' ( ( s; り江和ぇられれぱ'或る 限小とは,変数 hの関数
r



となる,ここで aは 1の原始 n乗根で, m o o ,m1( O : : ; ; j: : ; ; n l )はこの m についての 方程式の根である ( [ 3 4 ] , I巻 , 2 6 1ページ).Kroneckerも乗法因子方程式の数論



1 8 8 6 )( [ 4 4 ] , IV巻 的性質をいくつか証明した (



4 2 8 4 5 8ページ).



「 AugusteC h e v a l i e rへの手紙」 ( L e t t r ea AugusteC h e v a l i e r )( 1 8 3 2 )の中で, G a l o i sはモジュラ一方程式についてのいくつかの結果を述べている;すなわち, G a l o i s群(第 I I章 , § I I I ,B )を見よ)は PGL(2,Fn)であること, PSL(2,Fn)はそ の指数 2 ,位数 n ( n 2 -1 ) / 2の部分群であること等. n=5,7 ,1 1のとき, P S L ( 2 ,F n ) は指数 nの部分群を含むが,その他の nではこのようなことは起こらない;



G a l o i sはこれから,これら三つの場合,モジュラ一方程式は n次方程式に帰着さ e t t iが公にした ( 1 8 5 3 ) . Hermiteはモジュ れることを導く.この結果の証明は B 1 8 5 8 )( [ 3 6 ] ,I I巻 , 5 2 1 ラ一方程式を四次および五次方程式を解くために用いた ( ページ):一般の四次方程式は次数 3のモジュラ一方程式(または乗法因子方程 式)に帰着される(これは P GL(2,Fa)と対称群 @54との同型に関係している);五



ermiteが B r i n g J e r r a r d型 吋 ー x-a=O(全ての五次方 次方程式については, H 程式は平方根または立方根のみを含む演算によってこれに帰着させることができ る)を用い,これがが十 A甲 +2 がーがk+l =O, A = ( a / 2 ) 5 5 1 4 ,の解を母数 Kとす る五次のモジュラ一方程式に帰着されることを示す. K roneckerと B r i o s c h iは 楕円関数を用いた五次方程式の別の解法を完成した ( 1 8 5 8 )( [ 4 4 ] , IV巻 , 4 3 6 2 ページ):対称群 R s内の 6個の位数 5の巡回群には一般の五次方程式の根の 6個 の((巡回関数))が対応する(これらの関数のおのおのはこれら位数 5の部分群のひ



roneckerが示したように,これら とつをその不変部分群として持つ).そして K の関数の平方を根とする六次方程式は,次数 5の変換の乗法因子方程式に帰着さ れる; 5を法とする整数のつくる体凡の R sへの作用についての B e t t iに よ る 公



ermiteはさらに Rsが PGL(2,F s )に同型であることを証明した 式を用いて, H ( 1 8 6 6 )( [ 3 6 ] ,I I巻 3 8 7ページ).Kroneckerはまた位数 7のモジュラ一方程式 SL(2,F1)に興味を持った と群 P



後者は位数 1 6 8の単純群である;彼は,こ



の群を G a l o i s群として持つすべての代数方程式は楕円関数を用いて解けること を予想した. この予想は K l e i nによって証明された ( 1 8 7 9 )( [ 4 7 ] ,I I I巻 , 1 3 1 6 8



第 1部



9モ ジ ュ ラ 一 方 程 式



4 9 1



ページおよび I I巻 3 9 0 4 3 8ページ);モジュラー関数 ( § 1 6 )についての K l e i nの 仕事の出発点は,他でもない,直次方程式を解くための H ermiteと Kronecker の方法の研究と,彼の二十面体についての仕事とそこでの方法との比較なのであ



l e i nは W e i e r s t r a s sの記号法と, Legendreの母数 Kの か わ り に 不 変 量 る. K J ( § 4 )を使っている;彼は]を基本周期の比ての関数とみなす ( § 1 6を見よ):モ ジュラ一方程式は f n = f ( て I n )を](て)に関係づける.媒介変数てによって f nの



I



の関数としての分岐が調べられ,この代数関数の Riemann面が分かる;計算を



l e i nは n=2,3 ,5 ,7または 1 3ならばこの Riemann面は((種数)) 0である 経ずに, K こと,すなわち]と



f nを 1個のパラメータの有理関数として表わせること(第 2



部 , § 21を見よ)を示す



ただしこの事実は F .Mullerがすでに証明していた



( 1 8 6 7 ) : n=3に対しては, ]=一



( t 1 ) ( 9 t l ) 3 6 4 t



でf nは tを 1 / tに置き換えて得られ ( § 8の位数 3の変換についての Legendreの 公式参照),これに対し n=5に対しては



O t+5 ) 3 ( t 2-l ] =1 7 2 8 t



でf nは tを 1 2 5 / tで置き換えて得られる,等々.パラメータ tは単純な仕方で乗



=3,5 ,7 ,1 3に対し,その値は各々ー 2 7 M 6 ,・-125M3, 法因子と結びついている: n 4 9 M 2 , 13Mである;二相補変換(その合成が n倍変換を与える)の乗法因子を 結び付ける関係式 MM'=l/nをいい換えたものが, tを C /t(Cはおのおの 1 ,



1 2 5 ,4 9 ,1 3 )に変えることによって]から f nに移るという事実である. n=ll, l e i nは]と f nとは 1個のパラメータについての楕円関数を用 1 7 , 1 9に対して K いて表わせることを示す.モジュラ一方程式の G a l o i s分解式(その任意の一根に よって,モジュラ一方程式のすべての根をふくむ体が生成されるもの)は, n=2,



3 ,4 ,5についてのみ種数 0の Riemann面を与える; G a l o i s群は二面体と正多面 体(四面体,八面体,二十面体)の合同変換の群である ( [ 4 7 ] ,I I I巻 , 5 2 6 4ペー ジ ).K l e i nは任意の奇数 nに対する G a l o i s分解式のパラメータ表示を ( n 3 ) / 2 次元射影空間中の曲線として与えた;同次座標は Aで,これは J a c o b iによっ て与えられた乗法因子方程式の根の表示の中にあらわれるものである(本節冒頭







勺 第V II章楕円関数と A b も 1 積分



r n



を見よ) ( ' [ 4 1 J ; , 巻 1 8 6 ' 1 9 7ペ ー ジ ) . r o楕円関数の級数展開および無限積表示 楕円関数は(三角関数が整関数であるのど異なって) C 上肴謹痘であって,その T a y l o r展開は全平面で収束する訳ではない. Jacobiは snuとそのべきの Tai1 o r級数を計算する方法を与えた ('Fundameritanova'):([34],・I巻 169ページ): s h ' i tの展開での u2ri+1の係数は ド



9







-~'.



1 a n



妖 の ) ー e n + 1 ) !d研 ..、●



.,.・..



,"'',



n-1



のの ~o での値である一ーここで



心)=函。己□訊祭)字応 1)2, r=以k+-¼); 従ってがの(有理数係数)多項式を係数として 2



u s 3 !



4



u s 5 !



snu=u ー (l+k)-— +(1+14が十 k)―-…,



Gudermannはsnuが(1/vr:+P)s i n(uv戸手)と五次の項で初めて異なること,



および四次の項を法とすれば c t i ' uは c o s ・ u, で dnuはcoskuでおきかえてよい ことを注意した ( 1 8 3 8 ) .W e i e r s t r a s sの引関数については, Laurent展開の最初



の項が



=f f e +膨 + 尉 + ・ ・ ・



怨( u )



と書かれる. A b e lとJacobiが約 3 0年遅れて再発見することとなった楕円関数の展開の大 部分は既に, 18 世紀に迄遡る G~uss のノート中にある (1868年全集中で公刊). Gaussはレムニスケート関数に対する単純な形の項による級数展開と無限積展開



とを,関数の零点と極とを用いて構成する ( E u l e " rによる sinuの無限積展開,第 I , 章§ : V ,A )参照); 彼はまたそれらの三角級数展開を与える,例えば



( デ ) =~(eは図竺冗/2―ea冗~2i〗’紐12+ …);



s l



これほ二級数











第 1部



l f f楕円関数の級数展開および無限積表示



4 9 : 3 .



2a14~(e—冗14 s i n< p一e 91 4s i n3 c p十…) -m 冗



および 2-1/4F-0+2 戸 c o s2cp+2 戸 ・m



c o s4 c p +・ ・ ・ )



の商として書かれる.これらの展開から, F - =1~2戸 +2e-4:n:-2戸+…= 2 ( e →l 4 + e 9冗; 4 + e 2 s冗/4+… ) ~







が導かれる;一方 Gaussは ( 1 7 9 : t t年に), p ( x )= 1+2区ぶ叫 q ( x )= 1+2区 (-l)n ぶn 2 n;2:1·n~l



とすれば, p ( の )z+q ( x ) 2= 2 P (が )2 ,



p (の )q ( の ) =q ( が )2



となり,従って算術幾何平均の手順によって l 叫く 1なら M(p(呼, q(x)2)=lと なることを,見出していた配より一般的に, a=μP 位 )¥ b=μq(x)2ならば, M(a,b ) a u s s ;は c=va2ーがおよび,すべての nに対して =μ;となる; G



1( c < n + l )=一 a < n ) _ b ( n > )= ( ( a < n + 1 > ) 2 ( b < n + 1 ) ) 2 ) 1 / 2 2 を導入し,彼の計算手順を完成する; r(x)4=p( の )4-q( ) の4ならば,



e -==µr(~ が お よ び c e n r= μ . r ( 炉)2 、



を得,これから 2 r (が ) =P(x)ーq ( : : a > ( n = 2とおけ)および r(x)=2区ぷn + < l / 2 ) ) 2とな n ; ; ; : ; o



る.~



逆に a と bから出発してヵを決めることもできる,なぜなら



の=凹(が国n)l/2n-2ー ) = 凹 ( 伝 )112n-1,= exp(—喜位:腐) であるから; Gaussはこの極限を公式 limM(l,s )l o g4/s=冗/ 2を用いて計算し, E→ O



この公式自身は : E ' t r l e rによって得られた楕円の弧長についての展開 ( 0 ) , ( § 2 )から a u s s ・ ぱレムニスケー 証明したらしい(証明は手稿にない).この理論によって G



ト関数の結果を一般の場合に拡張して u=J 必i vi十炉 s I 1 2< p



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積 分



494



の逆としての楕円関数 S(u)=sinc pに至る道をたどる; Gaussは積分の((多価))性



( u )を間接的方法で,すなわち ( s l( u )のそれと類似 による困難を認識しており, S の)三角級数



虎 戸3 /2叶 ・ ・ ・ ) ,



s(cpf)=農(夜’冗/2叶し竺rd'冗/2筍―戸’冗/~ 冗



m= M(l,Vl十正)’



ここで



研 冗







m'= μM(l,Vl+ ( 1 /砂)



を用いて定義している.彼はこの級数を, s l( u )の場合と同様, 2個の到る所収束



(u)/W(u)に変換している;すなわち する三角級数の商: S(u)=T 2 s i n< p一e 9 f i i '/ 4s i n3 c p十…), r ( ) 匹 =~mい μ 町1+μ) w ( 亨 )=~1./コニ(1+2e予直 cos 2 c p十2 e 4 M ' c o s 4 c p十…) m 1+μ 2(e—研冗 i4m



冗 筍







冗 / 筍



を得る.最後に, Gaussは S ( u )が実際に楕円積分の逆関数であることを証明す るに至る(「日記」 (Tagebuch)によると 1 8 0 0年;証明は 1 8 2 5年のノートに見出さ



[ 3 2 J , れる) (



x 1巻,



1 9 4 2 0 8ページ).彼は級数 T と W をそれらの零点が現われ



る無限積に変換する;形式的手順で ( [ 3 2 ] ,I I I巻 , 4 3 3 4 6 9ページ)



I ICl+aの加 +1)(1+(の加+1/a))=n 区a n ( x ) a n E Z



n~o



と書き,ここで aを a吋で置き換える時に,左辺の積には



( 1+(1/a の ) )(l+ax) ー1 が乗ぜられることに注意すると, a n(X)=a-n(X)=ao(X) ぷn zが得られる.最後に,



a=-1とおいて, Gaussがいくつもの証明を与えている公式*) q ( x )= 』/1ー :x;n)2(1-正)ー1 を用いて, a o ( x ) =』1( 1 : x ;加戸を見出す;かくして後に ( 1 8 2 8 )J a c o b iが 再 発 見



.....



することになる基本恒等式 * )



この公式は E u l e rの恒等式 ( 1 7 5 0 ) :



r< 1ーか)=区 ( l ) nn ( 3 n + l ) / 2 n E Z



n~l に関連する.







( § 1 1を見よ)



第 1部



1 0楕円関数の級数展開および無限積表示



4 9 5



1+~苓x n 2 c a n十 a→)= 』1(1ー の2n)』/l+ax加 +1)(1+(の加 +1/a))



( 1 1 )



を得る*). Gaussは,続いて,後に J a c o b iによって導入されるテータ関数に対応 する 4個の関数を次の記号のもとに導入した:



P( , のy )= 1+~苔か(炉 +y―n ) ,



Q ( x ,y )= 1+~吝~(- l ) n x n 2 c炉十 y n ) ,



R( , の y)= 区ぷn + < l / 2 ) l 2 ( y n + < l / 2 )+y―n ー( 1 / 2 ) ) n~O



および



S ( , のy )= 区 ( l ) n : x ; < n + C l / 2 ≫ 2 ( y n + < l / 2 ) _Y― 几 ー( 1 / 2 ) ) ; n ; ; , ; o P ( x ,l)=P( の ) , Q ( , のl ) = q ( x ) , R( , のl )=r(x)および S ( x ,1)=0を得る.先の方法 , のy ) 2と Q( , のy ) 2を与える無限積に適用して, Gaussは等式 を P(



P( , のy )吐 Q( ぉ,y ) 2= 2 P ( 吋 )P( が,が), P( ぉ,y ) Q ( x ,y )= q (吋 )Q ( が,が) を(類似の他の公式—それらは位数 2 の変換を表わす—とともに)得ている;



彼はこれから,算術幾何平均の方法と類似の, a =μP(x)2, b=μq( の )2 , A= , おy ) 2 , B=HQ( 叩 y ) 2が与えられたときに,ぶ Yを計算する計算手順(定数 HP(



μと H は計算手順によって与えられる)を導いた ( 1 8 0 9 ) . 1 8 0 8年のノート ( [ 3 2 ] ,I I I巻 , 4 36-445ページ)は P(x,y)の二重積: P ( e i砂



/ C l l ,e 紅 U / C l l )=



I T(1-e-2ni



n~l







I T( 1+e ー< 2 n + 1 ) i 1 C'/Cll), j 几(1-



/ C l l )



n~o







u'



mw十 mw ' )



( m , m 'は奇整数 ; ( J )は実数,屈は純虚数) i s e n s t e i nに よ っ て 詳 し く 研 究 さ れ た への変換を与える.二重積の収束は, E ( 1 8 4 7 , §11を見よ). 1 8 6 8年迄未編集のままだった Gaussのメモ ( [ 3 2 ] ,I I I巻 , 3 6 1 4 9 6ページ, V I I I巻 93-117ページ,文巻, 145-325ページ)は,さらに先 ,5 , の関数 P,Q,R,Sでのをか,が,がにおのおの変えることで定義される位数 3 7の変換論を含んでいる;対応するモジュラ一方程式も計算されている. Gauss のこれらの公式の証明は W.Goringによってなされた (Untersuchungeni l b e r



* lJ a c o b iは F u s sに,この恒等式は((正しく彼の発見した,純粋数学の最も重要かつ最 も実り多いもの))であると書き送っている.



第V I I 章楕円関数と Abel積分



. f 9 ( f



d i e ' f . h e i l w e r t h e… ,Math . .Ann.,第 7巻 1 8 7 4 ) . AbelとJ a c o b iは楕円関数の無限積展開と[三角関数等による]単純な形の項に



ょる展開を n 倍公式あるいは変換公式から出発し極限移行によって得た. A b e t : は u=nv を固定し,(彼の記号法を用いると, §5 参照)方程式R~(i),=·cp(u) (ここ で n は奇数とし, Rn~まc p ( n v ) = R nゆ( v ) )であるような有理関数)の根の和(および



( c p ( u ) )(および B ( c p ( u ) ) )の形に 積)は U に依存しない関数 A(および B)を用いて A 1 8 2 7 )( [ 3 3 ] , I巻 , 3 2 3 3 5 1ページ);根の表示 ( 1 0 )(§7 なることを注意している ( を見よ)を用いて nを無限大にもってゆくと c p ( u )の二重無限積(および二重級数):



belは s i nぉの展開を用いて単純無限積(および三角級 展開が得られ,これを A belの与えた極限への移行の正当化は極めて微妙な問題 数)に変換している. A で あ る ; , . ,



J a c o b iは母数 k を固定する ( 1 8 2 8 J ;( [ 3 4 ] ; I巻 , 1 4 1 , 2 2 4ページ);位数れの第 ーの実変換 ( § 8 )によって,憚数ぱ”無限大で 0に収束する A nへうつされ,乗法 因子 Mnは 2K/ 冗 nと同値である.第二の実変換はえnをKに戻し, s n( u ,k )の



s n .(u/'liMn,,A~) による積または和の形の表示 (§8 を見よ)を与える; J a c o b iは(操 作の正当化を与えることなく)nを 無 限 大 に 近 づ け る : am(v~ ね)は 0 に ,



s·n~冗u f n M n , ヽえ~)は sfo冗 (uj2K)に近づく. こうして彼は s n uの無限積と(単純)級 数への展開を得,他の楕円関数



enu ,



dnu ,



J I . . : : : . . s n u Jl+k'srru l+snu ' l - ksnu



についても同じことを行なっている;彼の記号法を使うと:



1H ( u ) snu= 戸亨,



万Fii(u) cnu=Jk 霞—,



-81(u) dnu= vk'



.亨’



ただし



e ( 平 ) =8(0}n~1IT(1-2q2n-icos2x q4n-2)(1-q2n-l)-2, 十



碍 丘 ) =20(0)汀 冗



B 1 ( u )= B(K-u),



s i nxI T (1-2q血 cos2x 十 q4'n)(1 — rj加ー1戸, n ; ; : ; 1 H 1 ( u )= H(K-u),



→ K'IK. q= e



関数 8,Hはおのおの周期 2K,4Kを持つが 2番目の周期はなく,



4 9 ケ



l : ' 0楕円関数の級数展開および無限積表示



第 1部



知 + 2 i K ' ) .=r/・i冗”炉知)



知 +iK')三 ie→五/2ゞ'Ki—ll4H(u);



となる;最後の等式から 0の F o u ・ r r e r ・ 級数を計算ずることができる (@(6)はその( 係数の最初が 1であるように選ぶ):



碍~) =1+2n~l 区 (-l)n炉



cos2n の ,



H(平) ~2 区 (....::..t)nq .C l e b s c hはこの結果を楕円関数を用いて解釈した ( 1 8 6 3 )( [ 4 6 ] ,第6 3巻 ,



9 4 1 2 1ページ): g ,g ' ,g "が方程式だー 3S-1-2T=Oの根であれば,が =(g"g ' ) / 1 = g ' s n 2u+g"c n 2uとおく; ( g "-g)で定義される母数 Kの楕円関数を用いて Aronholdの微分形式は生 (A=3-V 百( g "g ) )となり,パラメータ表示 A ds 叩 =c p i ( s n 2u)+mai 一( n 2 u ) ( 1: s ;i: s ;3 ) du 炉は有理関数, m は定数)が得られる.同次座標 ( a 1 ,a 2⑳ a )の点は曲線に属し, ある与えられた値えに対応する 2点とこの点とは同一直線上にある;えの選択は



2 ,P a )に対応す 一意的ではなく,同様な別のパラメータ表示μで,曲線の点(か, P るものをかわりに選ぶならば,



dぇ d μ -V2T+3Sぇ—ぇ3 = -V2T+3Sμ 一炉 を得,従って各変数に関し二次の対称多項式 0を用いて ( ) ( , 1 ,μ )=0となる ( E u l e r の定理). C l e b s c hは,こうして三次曲線を,おのおの直線束 a ・ , p内の, ( ) ( , 1 ,μ )=



0で関係づけられた, 2動直線の交点によって表わされたものとして考察してい る . ' 三次曲線のパラメータ表示を用いて C l e b s c hは,この曲線上の 3点の共線[同 一直線上にある]条件を次の形に書き表わすことができた: 3点 に 対 応 す る パ ラ メータ Uの和は(周期を法として)考えている点に無関係な定数,値ー Uoを持つ



( uでの平行移動により Uo=Oとすることができる).これは古典幾何学の多くの 問題の解を与える;例えば,パラメータ



U の点から引いた接線の接点のパラメー



タを u 'とすれば, u+2u'=0を得,従って u'=-(u/2)+加 K+m'iK'(m,m'は 2 を法とする整数)は曲線上の与えられた点 aから引いた 4本の接線を与える.ま * l N ewtonはすでに 1 6 7 6年,平面三次曲線は、常に((分岐放物線)) ( p a r a b o l ad i v e r g e n s ) の射影(方程式炉 =a 炉 十b が +c ぉ十 d )であることを示した.







1部



5 1 1



1 4楕 円 曲 線



た接点に対応する(上で見たように aと関係した)えの値は o o ,g ,g ' ,g "であり, k 2 は aから引いた 4個の接線の複比となっていることが指摘される ( Salmon( 1 8 5 2 ) は 4本の接線の存在を知っており,それらの複比が aに依存しない定数であるこ とを示していた).三次曲線の屈折点 ( p o i n td ' i n f l e x i o n )[そこでの接線が三次以



=(2/3)(mK+m'iK')( m ,m'は 3を法とす 上の接触をする点]は 3u=O, 従って u る整数)で与えられる;それらの数は 9個であり, ( 3個の元からなる体上の平面 の点のように) 3個ずつの 3対が共線である. C l e b s c hはまた三次曲線内に書か



,3 /を交互に通るもの (Steinerによって れた多角形で,その辺が曲線の 2定点 a 1 8 4 6年に定義された多角形)を研究している;この問題と P o n c e l e tの多角形の §3参照)との類似から恐らく C l e b s c hはその研究に楕円関数を利用するこ 問題 ( とに思い至ったらしい.最後に彼は曲線上の 6点が同じ二次曲線上にある条件を 書いている:それらのパラメータ







U の和は一 2 u( 0とできる)でなければならな



ぃ—そこから三次曲線に 3 点で接する二次曲線の 3 個の系の存在が導かれる.



Riemannの Abel積分論(第 2部 , §21を見よ)に導かれて, C l e b s c hは楕円関 [ 4 6 ] ,第6 3巻 , 2 3 5 2 3 7 数によるパラメータ表示を持つ曲線を他にも発見した ( ページ);すなわち((双二次 ( b i q uadra t i q u e ) ) )曲線,三次元空間内の



2個の二次曲



線の交わりがそうである. C l e b s c hはこの曲線に対し平面三次曲線と類似の理論 を展開する:曲線の 4点は対応するパラメータ



U の和が



0ならば同一平面上にあ



m ' i K ' ) / 2( m ,m'は 4を法とする整数)で与えられる り,それから u=(mK+ の超接触平面(四次の接触をする)の存在がわかる;パラメータ



1 6個



U の点からは



9個



の曲線に接触する平面: u'=(u/3)+(2/3)(mK+m'iK')( m ,m'は 3を法とする



4 6 ] ,第6 4巻 , 2 1 0 2 7 0ページ), n ( n 3 ) / 2個 の 二 整数)がとれる等々.さらに([ 重点を持った n次平面代数曲線はすべて楕円パラメータ表示を持つ; C l e b s c hは , 曲線上のすべての二重点と他の与えられた n-2個の固定点を通る n-2次可動曲 線を考えることによってこの結果を得る:動曲線は,パラメータ Aで識別され, 所与の曲線とあと 2点で交わるが,別の一定点とそれらを結ぶことによって,μ 直線が定まる,パラメータえと でパラメータづけられる[定点を通る]直線束の 2 μは A+2μC十炉B=O(A,B,Cはえの n次多項式)の形の関係式で結ばれてい



lebschは (CremonaとHesseの結果を使って),えの 4個の値があってそれ る ; C らに対応する動曲線は与曲線に接し,したがってμの方程式の判別式 C2-AB



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積分



512



は 戸Q(ここで Qは四次)と書かれ,パラメータ表示 Xi=Rけ aivQ(ここで R i はいの n次多項式で佑は定数, i = l ,2 ,3 )が得られることを示す.).に関する一



1ー え )( l-k2 入)の形に帰着され,そこで 次分数変換を施せば, Q はえ(



v ' T=snu ,



二 応 =dnuと お く ; か く し て 遂 に パ ラ メ ー タ 表 示 叩 = vI=l=cnu , vf



ciH(u-a 妙・・H(u-aり)/ぴ( u )が見出される.母数 Kは内在的性質のもので n-2 個の定点の選び方によらない;それは与曲線に接する 4個の n-2次曲線の[パラ メータの]複比の平方根として解釈される.与曲線と m次曲線の mn個の交点は



( n l ) ( n 2 ) / 2個の関係式で結ばれ, C l e b s c hはそれらを具体的に書いている; これらの関係式のひとつとして, よらない定数,



U



U の mn個のパラメータの和が凶+…十 a仰



( iに



を平行移動して 0にできる)に等しくなければならない.これ



belの定理をいい表わしている(第 2部 , §17を見よ).C l e b s c hはさらに特殊 はA な n=4, すなわち 2個の二重点を持った平面四次曲線の場合(これらの点と 2定 点を通る二次曲線を考える)の理論を説明している;曲線は 1 2個の屈折点と 8個 の双接線 [ 2点で同時に接する]を持つ. さて楕円関数によるバラメータ表示を持つ(非特異完備)代数曲線を((楕円曲線)) , § 21参照)一一例えば非特異平 と呼ぼう(これは((種数)) 1の曲線である,第 2部



l e i n( [ 4 7 ] ,I I I巻 , 1 9 8 面三次曲線あるいは非特異双二次曲線のようなもの. K i a n c h i(1880-1885) は各 n~2 2 5 4ページ)と B



に対し ((n 位の))楕円曲線を定義し,



研究した; n~3 に対し,これらは射影空間 Pn→内の,パラメータ表示



…a(u-ain),



叩 =a ( u . . . . : . . a i l )



l~i~n,



を持つ曲線である;叩は同次座標で,和 4a りは iによらない;



6



はW eier-



s t r a : s sの関数 ( § 1 2 )である.同じ位数と同じ楕円周期を持つ二つの曲線は Pnー 1 の自己同型で互いに移り合う;これらの曲線の理論は周期の等分の理論に関連し ている:虚数乗法がない場合,曲線を保っ P正 土u +(2/n)(mm十m ' m ' ) ( 2 mと2 叫とが周期,



1



の自己同型はパラメータ



Uを



m,m'は nを法とする整数)に移す変



換に対応し,これは 2 が個ある;超接触点はが個あり, u = ( 2 / n ) ( m m十m'屈)で与 えられる. 楕円関数のパラメータ表示はこの曲線を周期格子 I 'による Cの商 C / I 'として 表わすものである; Cの加法演算は商に移って曲線上の可換群の算法を定義する. 楕円関数の加法公式によれば,この算法は座標に関し代数的な公式で書き表わさ



第 1部



1 5 楕円関数の応用



5 1 3



れる; K roneckerは楕円関数の乗法公式の研究の中でこの種の算法を考察した



( 1 8 8 3 )( [ 4 4 ] , IV巻 3 3 5 3 4 4ページ).20世紀には,任意基礎体上の楕円曲線の 純代数的理論が進歩した;もはや楕円関数を駆使できないにもかかわらず,理論 のある部分はそっくり成り立つ(ただし完備離散付値体上では, T a t eが 1 9 6 0年 にテータ関数と楕円関数の理論を完成させた).群算法を用いて,楕円曲線上の ((有理点))(方程式の係数が有理数と仮定して,座標が有理数の点)に関する問題を



ermatの((無限降下))( d e s c e nt ei n f i n i e )の方法(第 V章を見よ)を 研究できる; F このように,すなわちある種の楕円曲線が有理点を持たないことを示していると



a c o b iは( E u l e rが死後出版された論文の中で提出した)ある 解釈できる;同じく J 1 8 3 4 )( [ 3 4 ] ,I I巻 , 5 1 5 5ペ 問題を楕円曲線上で n倍することを使って解釈した ( ージ):その問題とは,



fを有理係数四次多項式として, V沢面も有理数となる



ような有理数$を知って,それから他に無限個の同様のものを導きたいというも x ,V 冗x ) )の点ならば, のである; Pが,方程式が=!(の)の曲線上にある座標 (



この曲線の点 nP(nEZ)も有理的で,従って解が得られる.同じ型の考察により,



M a r d e l lは P o i n c a rもの予想,すなわち楕円曲線上の有理点の群は有限個の元で 生成されることを証明しえた ( 1 9 2 2 ) .



1 5 楕円関数の応用 そもそもの歴史の始まり以来,楕円積分は力学の問題に応用されてきた;((平



J a k o bB e r n o u l l i , 面上の弾性体))と側中心等時曲線のことはすでに引用した ( u l e rの論文の対象ともなった;より一般の空間内弾 1 6 9 4 ) [ § 1 ] . 平面弾性体は E i n e tとWantzelによっ 性体(いくつかの力の下にあって平衡したバネの形)は B 1 8 4 4 ) , Hermiteはテータ関数を用いてそのパラメ て楕円積分の求積に帰着され ( 1 8 7 7 )( [ 3 6 ] ,I I I巻 , 3 5 9 : . 3 6 8ページ).我々はまた,二つの固 ータ表示を与えた ( 定中心から Newtonの法則に従って引かれる物体の運動の問題から, E u l e r



1 7 6 6 )( [ 2 9 ] ,I I巻 , 6 8 1 2 1ページ)が楕円積分に導かれたこ ( 1 7 6 0 )とLagrange( ともすでに見た;これは L egendreが彼の「楕円函数概論」の中で楕円積分の応



[ 3 1 ] , I巻 , 4 1 1 5 3 9ページ).E u l e rとL a n 用として扱った問題のひとつである ( d e n ( 1 7 7 1 )は単純振子の運動を楕円積分に帰着させた; Lagrangeは同じことを i c h e l o t( 1 8 5 2 )と 球面振子に対して行ない,それはさらに楕円関数を用いて R H e . r m i t e ( 1 8 7 7 )( [ 3 6 ] ,I I I巻 , 3 7 9 ,4 4 7ページ)によって研究された.球の方程



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積分



514



式,外力の積分および面積の積分からのと yを消去すると(水平面に射影して)



(笥=P(z),



ただし



P ( z )= 2 g ( z + c ) ( lーが)ー 1 2 ,



ここで C と lは初期条件できまる積分定数 ( gは振子の加速度で,質点の置かれた



ermiteはそれから, 球面の半径は 1とする)となることが分かる; H







z=a ( a / 3 )s~



を導いている一ーただし u = n ( t t o ) ,n = J f l l ! . 仁 ヱ, 2が=竺ゴ, a ,/ 3 ,rは三次方



2



a-r



程式 P (z)=Oの 3根(それらは実数で, OOに作用する I



I I巻 , 3 8 6ページ).基本領域の境界上および実軸上の k ' 2の値を調べるこ よび I とにより, G aussは , tが基本領域を動くときこの関数がすべての値を,しかも



0.-:-------------------------i



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積分



524



ただ一度だけとる(値 0 , 1 ,o oは境界上点 t=O,oo,iでとる)ことを示せた;これ によって複素領域での算術幾何平均論が完全なものになり,一般楕円関数論が構 成可能となる ( [ 3 2 ] , VIII巻 , 1 0 0 1 0 5ページ).



P o i s s o nは , tを 1 / tに変えたときの氾( t )の振舞を ( 1 8 2 3 ) , 次いで ( 1 3 )に類似の 公式を ( 1 8 2 7 )再発見した. J a c o b iはこれらの結果を K とK'を交換したときの テータ関数の性質 (§10を見よ)から導いた―ここで t=K'/K(I828)( [ 3 4 ] ,I巻 ,



2 6 0 2 6 3ページ); S L ( 2 ,Z)の任意の元によるより一般の変換は周期格子の基底 の変換に対応し,これによって J a c o b iは((テータ関数の無限個の公式))を得た.



J a c o b iはこの変換を用いて Ret~v3/2, つまり \ql~eーが -VS/2 に帰着させたが, これによって級数は非常に早く収束する ( 1 8 4 5 )( [ 3 4 ] ,I I巻 , 1 1 7ページ);彼は また y=氾( t ) ,O ( t ) , 況( t )を解とする(非線形)三階微分方程式を見出した一ーそ れは



dlog( z 稔") d t



+ー百=0 v r n がz "十 が Z



(ただし z=y→)



と書かれる. z = c p ( t )を



麟)



(a+r t i ) < p (



で置き換えてもがz "は不変であることから, Jacobiは yに対する方程式の一般 解が



(叶 ) r t i



( a + r t i ) ー1 / 2 /at-~i ー:



(ここで (a~) r aは SL(2, R)全体を動き, fはひとつの特解である)の形であるこ とを導く ( [ 3 4 ] ,I I巻 , 1 7 1 1 9 0ページ).E i s e n s t e i nは周期格子の基底を変えた ときのテータ関数の変換公式を,級数あるいは無限積の項の順序を変更するとい う彼の方法によって証明した ( 1 8 4 7 )(同じ方法により,行列式が土 nの整係数行 列の作用に対応する,位数 nの変換公式も得ている, §8参 照 ) ; 行 列ッぐ p りE



GL(2,Z)から導かれる格子の置換は w=mw十 n w 'を 如 =mw叶 nwi(ただし W1= , } ( J ) ' ,( J ) i=μ(/)十 p w ' )に変換する.従って基底の変換 ( w ,w ' ) 1 4 ( w i ,w i )は g23 , t ( J )十 l に対する E i s e n s t e i n級 数 ( g ,: J J )を不変にするが, ( 1 : ,の)を値: a-知 だ け , ま た



( 2 ,の)を bだ け 増 す (§6参照); E i s e n s t e i nは a=Oか っ b=a ( 2 v 1 1 : i / ( J ) ( J ) 1 )(a=



第 1部



5 2 5



1 6モ ジ ュ ラ ー 関 数 と 保 型 関 数



sgnIm( w / w ' ) )であることを見出す.積 f ( の ,



z ) = L J ( l -三 )



には



e x p ( 合 詈z ( の 一 塁 ) ) の乗ぜられることが見られ,それから §11で定義された関数 0とc pに対する変換



[ 3 8 ] , I巻, 3 7 4 3 9 4ページ). 公式が出てくる ( Cauchyは , P o i s s o nとは独立に公式氾( l / t ) = t 1 1 2氾( t )を得ていたが,それから, のを有理数として tを i のに近づけることによって, G auss和についてのある恒等 式を導いた (1840) —この等式を用いて平方剰余の相互法則を証明できる(第 V



章を見よ);逆に K roneckerは Gauss和についての恒等式から出発して氾( t )の



1 8 8 0 )( [ 4 4 ] , IV巻 , 2 7 7 2 9 4ページ)*).ま 変換公式が証明できることを示した ( たH ermiteがテータ関数の変換公式 c f l m . n C ( r て十 i 3 ) のI " ) e i 1 e r < r 1 : + 8 > x 2= 匹戸知,



N ( 叶竺 ra ) て十



(ここで



M =am+rn+ra,



咄(;りeSL(2,Z),



N = 細 +an+



そして







O m , n (咋 ) = 区 c . . . : . . . 1 l sexp 伝 (2s+m)x+ 二 2 s + m ) 2 ) ) , 4( ・ sEZ







とおく. J a c o b iの記号法を使えば O o , o ( X国=ふ(冗の, e 1 C ' C )となり,同様に 0 1 , 0 ,( ) 。 ,1, 釦もむ, , f ) ,ふを用いて表わされる)に現われる 1の八乗根 eを決定した ( 1 8 5 8 )



8 7 4 9 6ページ)のも Gauss和を用いてである; Hermiteはそれから ( [ 3 6 ] , I巻 4 O o . 1 ( 0l ) て kl/4および k'l/4= の変換公式—―ーそれを用いて彼は四次および五次代数



( ) ぃ( 0 1 2 ) て 方程式をモジュラ一方程式に帰着させた一,およびてをー 1 / rに変えても変わ



* >G a u s sはすでに《G a u s s和))とテータ級数の結び付きを識っていた.なぜなら彼がこ 1 8 0 8 )は 級 数 q ( x )の 無 限 積 へ の 変 換 の 一 証 明 を 含 ん で い る か ら で あ 、の和を導入した論文 ( る .



5 2 6



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積 分



らない



( k k ' ) 1 1 1 2= z 1 1 s q 1 1 2 4T ICl+(-l)nqn)= x C ) て n : 2 : : 1 に対する変換公式を導いた.変数て = itの正則関数 k ,k 'の振舞は Hermiteを驚 かせた ( [ 3 6 ] ,I I巻 , 1 6 4ページ):それらを元来定義された半平面 Imて>Oの外に 解析接続することはできない;さらに,虚二次数てoの近くでの T aylor展開は代 数的数を常数項として持つ(虚数乗法, §13を見よ)のに対し,他の(て=てoに対応 する)楕円積分の周期に依存する係数は超越的性格の数である(今ではこれらが実



C u d n o v s k i r ,1 9 7 4 ) ;J a c o b iはすでにてo= 際超越数であることが証明されている ( iの場合を考察して, K と K'を 1-2がのべき級数に展開していた).Riemann



はIm口を 0に近づけたときのモジュラー関数の振舞を調べた(遺稿中の断片) ( [ 4 1 ] ,4 5 5 4 6 5ページ)(おそらく,彼の三角級数についての仕事 ( 1 8 5 2 )と関連し て,到る所稲密な不連続点集合を持つ実変数関数を得るため); W e i e r s t r a s sは これらの関数の性質を利用して,互いに交わらない 2領域での任意の 2個の正則



1 8 8 0 )( [ 4 3 ] ,I I巻 , 2 1 2 2 2 1ペ 関数を同じ有理関数級数で表わせることを示した ( ージ). 公式氾 ( I / t ) = t 1 1 2 沿( t )は , Riemannが関数い叫関数等式(第 V章参照)を証明す るのに役立った ( 1 8 5 9 )( [ 4 1 ] ,1 4 5 1 5 5ページ).Riemannは Gaussの文書類の編 纂を準備していた(しかし出版に至る前に世を去った);その超幾何級数について



1 8 5 8 1 8 5 9 )( [ 4 1 ] , Nachtrage(補遺), 6 9 9 4ページ)の中で彼は,平面 の 講義 ( Ret>Oでの I ' ( 2 )の基本領域の図を再現し,がはこの領域を ( 0と 1とを除く) 平面上に等角的に写すことを示している.そのために彼は初めにがが 0 ,I ,oo( こ れらはがの関数として K,K'が満たす微分方程式の特異点である, §2を見よ) の周りに半円を描くときの半周期 K,K'の 分 岐 を 調 べ る ; こ う し て 彼 は 現 在



P i c a r d L e f s c h e t zの名で知られる公式 ( [ 2 3 ] , 94ページ)の最初の例を得る(遺稿 の中で,彼は超楕円積分に対する P i c a r d L e f s c h e t zの公式も書いていた).次い で Riemannはがの関数としての t=K'/Kの分岐を調べ,これから結果が得ら



III章を見よ)の二つの解の れる;彼はこの研究結果を一般の超幾何方程式(第 V 商 zの場合に拡張した:特異点 x=O,I ,ooでの特性指数はすべて実で,考えてい る解はいずれも 0の近傍で実係数の展開を持つと仮定して,彼は,のが半平面



第 1部



5 2 7



1 ( ? モジュラー関数と保型関数



Imぬ >Oを描くとき, zは一つの曲線三角形(その角度は特性指数の差に冗を乗じ たものであり,また辺は直線か円[の一部]である)を描く;こうして逆に,超幾 の関数とみなせる.このことから(鏡像の原 何級数の変数”をこの三角形内で z 理( [ 3 ] , 344ページ)とあわせて)ある超幾何関数を別のそれに移す代数的変数変



iemann面のある領域を,対称変換で互いに移り合う 換を決定できる:それは R ょうな二通りの仕方で三角形に分割することに帰着される; R iemannは正多面



[ 4 1 ] ,N a c h t r a g e , 82-84 体がこのような変数変換を定めることを注意している ( ページ)(後に Klein がこの事実を再発見し—-Riemann の講義は 1902 年に至る



迄公刊されなかった一,彼のモジュラー関数の研究の中核としている).超幾 何関数についての論文 ( 1 8 5 7 )( [ 4 1 ] ,6 7 8 3ページ)の中で, Riemannがすでに上 記の型の変換,特にモジュラー不変量 Iのがの関数としての表現 (§4を見よ)を 計算していたことに注意しよう.さらに彼は一般的に,孤立特異点を持つ二次線



( z ) 形微分方程式の変数”がその変域全体で,方程式の 2個 の 解 の 商 zの関数 f



であるならば, f(z)=!(;:!~) となる行列(;



!)が存在することに気付いてい



る( [ 4 1 ] ,N a c h t r a g e , 76-78ページ);これらの行列は方程式の特異点のまわりの 解の分岐に対応していて, S L ( 2 ,C )の離散的部分群をなす(しかし Riemannは そのことをいっていない).逆にもしか



= f ( z )がこの型の不変的性質を持つ関数



ならば ( P o i n c a r eは後にこれを ( ( K l e i n ) )関数と呼ぶ),



兄 = ( 皇 )



1/2



および広



= z ( ) 信



1/2



は変数力の微分方程式 y "+a(x)y~O(a はのの代数関数)の解である; Riemann はこれらの考察を等角表現ー一球面多角形の上半平面への表現――•の問題 (1861,



1 8 6 7年に公刊([ 4 1 ] ,3 1 6 3 2 0ページ);多角形は,境界が線分からなる極小曲面 の法線に平行な単位ベクトルの軌跡),互いに外側にある n個の円を境界とする



i r i c h l e t問題(「全集」([4 1 ] ,4 4 0 4 4 4ページ)の中で公刊, 1 8 7 6 ; 領域における D この領域を上半平面上の n葉の分岐被覆上に表現することに帰着される)を解く のに用いた. 超幾何方程式の二つの解の商 zを用いた上半平面の曲線三角形上への等角表現



は Schwarzによって再発見された ( 1 8 6 9 ,1 8 7 2 ) ;彼 は S L ( 2 ,C )の Zへの作用に よって不変な三階の微分作用素:



528



第V II章 楕 円 関 数 と Abel積分



[ z ] x=亨—忙(~Y を定義し,三角形の角度を加,咋,冗 rとすれば, zは微分方程式:



1-a2 +と コ 翌 が+炉一戸ー 1 [ z ] x=2 ( : x ;ー 1 ) 2 2 x 2 2 x ( xー 1 ) の解であることを示した.さらに W e i e r s t r a s sが 1 8 6 3年の講義の中で,円弧を 辺とする多角形の上半平面上への等角表現の問題を扱っていたことが分かってい



chwarzによって研究された. Fuchsは,いかなる場合に二階 る;この問題は S 線形微分方程式の変数が 2個の解の商の一価関数となるかを求める問題を提出し



( 1 8 7 6 ,1 8 8 0 ) , この問題が, P o i n c a r eによる,彼が ( ( F u c h s関数))と名付けた関数 についての仕事(下記参照)の源泉となる. S c h o t t k yは互いに外側にある円で境



L ( 2 ,C)の離散部分群によって不変な関数を再発 界づけられた領域を研究して, S 見した ( 1 8 7 5 ) . 数多くの仕事が 1 8 7 7年以降モジュラー関数に関してなされた;この年は D e d e -



k i n dが関数 1 1 1 2I TC l -q 2 n ) 和) = q n ; ; : : 1



c ここで q=ei t " ) 冗



を研究した論文の出た年である.その当時までに考察されていた主なモジュラー 関数はこの関数を用いて書き表わされる: 砂 =e 冗i / 2 4 y 百 秋2 r )



置==e



刀( ( 1+ r ) / 2 ) ' ・



/ 1 2刀( ( 1十 て )/ 2 ) 2 , 刀( r )



ーが







k , 1 1 ,=e 冗i / 2 4 如/ 2 ) 刀( ( 1+ r ) / 2 ) ' 冗 刀( r ) 3 , { ) i ( O ,q )=2



LI=( 2 冗 )12和)“ (判別式);



Dedekindは変換公式



信 賛 ) =s(rて十 a)叫 (-r)



((~



りeSL(2,Z ) )



に出てくる 1の24乗根 eの数論的性質を注意深く調べている([ 4 1 ] ,466~478 ペー ジ参照).K l e i nは同じ年にモジュラー関数とモジュラ一方程式についての研究



=g払/ i lを用いる. を始めた;彼は周期の比ての関数とみなしたモジュラー不変量 J







1部



1 6 モジュラー関数と保型関数



5 2 9



IIIII p



。 2



. 2



Schwarzの結果に従えば,ては半平面 ImJ>Oを 角 吋2 ,冗/ 3 ,0の曲線三角形: 1 1 ー百 1上に,そして対称性によって全 J平 面 を 三 角 形 ー 百 < 1 RerOなら 1 てl>l上に等角的に表現する一一 その図形を上に図示する(太線の境界の部分は実で 1以下の]に対応するが,実



L ( 2 , 際にはずっと上まで続いている).これは上半平面 Imて>Oに作用する群 S Z)の基本領域そのものである,すなわちこの三角形を群の作用で移したものの 全体は半平面の分割をなす;従ってこの表現の逆関数](て)は半平面 Imて> O上の 正則関数に接続されて



1 ( 声 ) =](1:), (~1)



E



S L ( 2 ,Z ) ,



を満たし,てが基本領域を動くとき,すべての複素数値を一度しかもただ一度だ けとる.関数]は半平面 Imて>Oを Cの分岐被覆として実現し, 2個の分岐点]



=0( て=(-1+v , 3 i ) / 2で与えられる三次の分岐)と J=l( 1 : = iで与えられる二次 の分岐)とを持つ*).(奇素数) n位モジュラ一方程式に対応する Riemann面.を構 成するために K l e i nは,作用て→て十 r ( l r l : : : ; ;l n 1 1 / 2 )および 7 : t 4 1 / 1 : —それら は n 等分割に由来する n+l 個の n 次変換を与える~に対する基本三角形の変



* > P i c a r dは C : { 0 , 1 }の不分岐被覆を彼の有名な定理:「整関数は高々一つの値を除き す べ て の 複 素 数 値 を と る 」 を 証 明 す る の に 用 い た ; も し そ う で な け れ ば こ れ に よ り Cか ら上半平面への,従って単位円板への正則写像が得られるが,これは不可能である ( L i o u v i l l eの定理).



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積分



530



換全体の和のなす曲線多角形を用いた ( [ 4 7 ] ,I I I巻 , 1 3 7 5ページ).有理不変量 J の他に, K l e i nは ( ( n階モジュラー関数))を考察した一ーその S L ( 2 ,Z)内での固定



s t a b i l i s a t e u r )は((合同部分群))I ' ( n ) = K e r( S L ( 2 ,Z)→ S L ( 2 ,Z / n Z ) )である; 群( 例えば複比が(階数 2 ) , 八面体無理関数 o=k'ー i k(階数 4 ) ,k l / 2および k ' l / 2(階数



8 ) ,k l / 4および k ' l / 4(階数 1 6 ) ,a=1 ,2 ,1 / 2 ,1 / 4 ,2 / 3 ,1 / 3 ,1 / 6 , または 1 / 1 2に対する ( k k ' ) 竺不変式論の助けを借りて,種々のモジュラー関数に対するモジュラ一方 程式の形を,関数の具体的形を知らなくとも見出せる;具体的計算は位数 n =23,



1 8 8 0 1 8 8 3 ) ,n=39,5 5 , . 7 1 ,3 1 ,7 9に対して F i e d l e r( 1 8 8 5 )に 47に対して Hurwitz( [ 4 7 ] ,I I I巻 , 2 5 5 2 8 2ページ).G i e r s t e r( 1 8 7 9 1 8 8 3 )と Hurwitz ょつてなされた ( ( 1 8 8 3 1 8 8 5 )は様々の階数のモジュラ一方程式を Kroneckerのそれと類似の類の 関係式 ( § 1 5を見よ)から求めた. K l e i nはさらに一般に,有限指数μ ではあるが



L ( 2 ,Z)の部分群 他は任意の S



rによって固定されるモジュラー関数を考察する



( 1 8 7 9 )( [ 4 7 ] ,I I I巻 , 1 6 9 1 7 8ページ);上半平面における rの基本領域は 2 μ 個の 曲線三角形の和で,その辺は



rの作用によって 2個 ず つ 対 に な っ て 互 い に 対 応



l e i nはモジュラー({形式))をも考察する一ーこ する.モジュラー関数とともに, K w ,w ' )の同次関数で,この対への S L ( 2 ,Z)の部分群 れは周期の対 (



rの作用によ



2 ,g sおよび,より一般的に, E i s e n s t e i n級数 つて不変なものである[*丑例えば g ( 2 n * ,O )( § 6を見よ),判別式 4 周期の商の関数としての怨の値など .fが n次 同次モジュラー形式ならば,て=叫/ wおよび g ( ) て= f ( l ,て)に対し f ( w ,w ' ) = w n g ( r )



となる;作用 (~1) 江は従って g 上に



詞 )



g ( ) て =C rて十 a)ng(



とはたらき,このときまた gは((重み))一 n / 2のモジュラー形式であるという.群



I'=SL(2,Z)の場合, Hurwitzは(上半平面で正則な)モジュラー形式は g 2と g s (おのおの重み 2と 3 )の多項式となることを示した ( 1 8 8 1 ) ( § 4 , 四次多項式の不変 代数参照);モジュラー形式 4は重み 6で,上半平面内に零点を持たず,無限遠 (すなわち q=e 加 i てが 0に近づいたとき)においてのみ 0となる;すべての無限遠



S p i t z e n f o r m ) )は 4で割れる ( [ 1 6 ] ,第 V I I章参照). 、で 0となる形式(((尖点形式》 (



[ * )



さらに



1 : = ( J ) ' ! ( J )の無限大での挙動に条件が付lな ら ば こ の 級



* > P o i n c a r eははじめ, K l e i nの考察していたような,((数論的 ( a r i t h m e t i q u e )部分群))、 のみが F u c h s群であると考えていた([4 9 ] ,5 0ページ参照);今ではバラメータに連続的に 依存する S L ( 2 ,R)の離散部分群の存在は L i e群 論 に お い て 非 常 に 例 外 的 な 現 象 で あ る こ とが知られている ( M a r g u l i s ,1 9 7 5 ) .



532



第V I I章楕円関数と Abel積 分



数が収束することを証明する.与えられた m に対し上半平面で正則な級数 0の なすベクトル空間は有限次元である;級数のおのおのは基本多角形内で有限回し



o i n c a r eは,多角形の((第二類の頂点))(二つの辺が実軸上で接 か 0にならない. P する点)で 0になるすべてのテーターFuchs関数は遮当な H による @(z,H)の形 であり,すべての Fuchs関数は二つのこのような関数の商であることを示す. 彼はまた,のと yが同じ群 G に属する zの Fuchs関数ならば,それらは代数的



関係 c p ( x ,y ) = O ( c pは多項式)によって結ばれていること,そしてすべての他の G に対する Fuchs関数はある有理関数 R によって R( , のy )と書ける[*]ことを証明 する;それから



芯 信



Vi=暑 お よ び V 2= Z



が 微 分 方 程 式 嘉= V < p ( X ,y )( < pは有理関数)を満たすことが結論される.頂点のな すサイクルは方程式の正則特異点を与える(第 V I I I章 , § I I I ,A)参照);もし角度



o i n c a r eは , の和がなならば対応する特異点の特性指数の差はえである.逆に P がv いかなる条件のもとに,ある微分方程式石戸 = V < p ( X ,y )( < pは有理関数)と ¢ ( : x ; ,y ) = 0 ( ¢ は多項式)が与えられたとき,変数$は方程式の二つの解の比 zの Fuchs 関数であるか――このとき方程式は ( ( F u c h s方程式))といわれる(上記参照)ー一



[ 4 8 ] ,I I巻 , 3 1 9 3 2 9ページ);もしそうであれば, yもまた zの を求めている ( Fuchs関数で,代数曲線¢(ぉ, y)=Oはただ 1個の変数 zの一価関数によるパラメ ータづけを得たことになる(((一意化))の問題).与えられた¢(の, y)=O(さらに双 有理変換を許容する,第 2部 , §21参照)に対し, Poincareは同じ特異点(正則と する)と同じ特性指数を持つ二つの微分方程式を同じ((型))として類別する; s個の



,a sは次の条件を満たす; 1 )各 特異点を持つ Fuchs方程式の特性指数の差 に線形に依存する多項式として, ( x ,y)=Oを考える点にある;方程式 x C , の y)=O, 0 ( x ,y)=Oから y 補助関係式 0 を消去すると終結式 r (の ) =0が得られ ( [ 3 ] ,6 1ページを見よ),この方程式の根” に対応する yの有理的な形の値: y=p(x,a < i > )が得られる. Abelは rにおいて



a < i >に依存しない最大の因子 F。をくくり出して F=r/Foとおく;方程式 F(の ) = 0はのを a < i >の代数関数として定義し,その解を咋叫,…,叩 (μ=Fの次数)とす < i >に関する微分を表わす)を得る. f ( x ,y) ると, dx=―贄(ここで旺`は F の a が有理関数ならば,従って



f ( x ,y)d の=一



f ( の ,p ( , のa ) ) i 3 F F(の )



が得られ,これは a =(a 超楕円積分の場合,炉= はおのおの m および n次の多項式 P と Qの係数,ととれる;すると F=P2 ,B < v >の第一種積分 Wに対して成り 立つ関係式



疇炉戸=— ff !gradRewドdT ,b 吟(そこでーと一ーが零になる)に彼は特 紐 a y 異性を量る整数んを対応させ



(r-l)(r-2) 1 ー ~kぇ= ( m-l)(n-l)P= 2 A 2~'kえ を示す(ここで区’は有界なところの特異点についての和を表わす[*]);各えに対 [*] 「有界」は「無限遠でない」という意味ではなく厳密に定義される必要がある.現代 流にいえば上式の前者は p2内での,後者は p1xp1内での種数公式である.



22W e i e r s t r a s sの理論



第 2部



5 6 9



しH の分子の多項式 Gは如個の一次関係式に従う.



W e i e r s t r a s sは,ただ 1個の極(位数 a )を持つ有理関数を求めていて種数 Pの 新しい特徴付けを発見した;このような関数は(定数を除いて)



= 名H(x,y; a,b)aCa



F( , のy )



と書かれ,それが点 ( a a ,加)で極を持たないことを書き下すと C aについての連立



a p C p = Oを 得 る ― こ こ で h a nは中心 ( a ,b )の関数要素を(の, y)と 一次方程式区 h / 3 = 1



してとったときの H(x,Y)adxにおける f nの係数である.一般には,行列式



< l e t( h a p ) 1 ; , ; a , p ; , ; pが零でなH(x,y)心



c=



< x o , Y o l



として



e c / t のようにふるまう)を持つ.



R(x,y )が零点(叫灌 1 ) ,…,(叫, Y s )お よ び



極(の, iy i ) ,…,(必,糾)の有理関数ならば s



R( , ぉy )= R(a。 ,b o )I TE(, のy ; 叫,釦;必,払) lJ=l



で , Weierstrassはこの((素因子))分解を数論での Kummerの理想数の理論が与



;X i ,拓;おo ,Y o )はもちろん えるそれ(第 V章を見よ)と比べている;関数 E(x,y (x , ゜Yo)から (xi,Y1)への積分路に依存するが,(数論の単数と同様)因子 E(x,y) (第三種積分の周期の指数べき)の違いを除けば定義される. Weierstrassは 切 断 線 Ka および K~ での第三種積分の周期の指数べきをおのおの E( , のY ) a ,E ' ( , の



Y ) aと記す; F( , のy )d のが留数 C vの極(のv ,Y v )を持つ有理微分形式であれば,基 本恒等式 ( 1 5 )を使って,



J



F(x,y)d ぉ=C 。+区叫ogE(x,y; 如 釦 ; 珈 Y o ) / )



p



+区 (C~log



-



E(x,Y)a+Cal o gE ' ( , お Y)a)+F(x,y )



a=l



であることを彼は示す――—ここで(おo, Y o )は極(のv ,Y v )と異なる(任意の)点, C。 ,



C~, Caは定数で『は有理関数である.



Abelの定理は有理関数の((素因子))分解の肛接的結果である: R( , のy )が( a a ,加 ) ,Y v )と極(必, yりを持てば,(適当な積分路を選ぶと) と異なる零点(のv



吋 書 ( 叩,y.,>H(x,Y)a心 J J



=0



( 1 6 )



(砂.砂)



である—なぜなら log R (x,y)は ( a a ,加 ) , 1: 5 : a : 5 : p , で特異性を持たないから;



x ≫ ,Y ≫ ) , (必,払)が 1 : 5 : a : 5 : Pに対し ( 1 6 )をみたせば,関数 逆に,点列 C



第 V~I 章楕円関数と Abel 積分



572



T I E ( x ,y ; 如釦;叫,糾) l J



は有理関数で, ( x v ,y砂で零点,(必, yりで極を持つことが分かる.この Abelの



l e b s c hによって発見された ( 1 8 6 3 ;§23を見よ).第三種積分に対し 定理の逆は C ては ( ( 1 6 )におけると同じ積分路をとると)



J



区 l J



( お ) ) ,y ) ) >



(砂.砂)



(H(~ 可 ;



x ,y)-H(~o, 刀o ;x , y ) ) d ぉ =l o gR(~, が



R(~o, 刀o )



を得,それから最も一般の積分に対する A belの定理が導かれる.今ゃ Weier-



s t r a s sは超楕円積分と同じ方法 (§20を見よ)によって, J a c o b iの逆問題を解くこ とができる;微分系



知(Xa,Y心d



叫 =d u f i



( 1: : ;{ 3: : : ; ;P ) p



は , u=(ua)=Oにおける初期条件(のa ,Y a ) = ( a a ,如)で,代数方程式区 P J ( u ) が→ j = O =0の根叫および



1 p ~Q/u)x~-i Ya=Q。 ( u ) j = l (凡と Qjは(いくら大きくてもよい)与えられた C吋勺の[有界]領域で収束する



X a ,Y a )を持つ.係数 P1/P。 ,Q 1/Q。は選んだ収束領域に 整級数)で与えられる解 ( e i e r s t r a s sは,それらの不確定多 依存しない(解析接続の原理[一致の定理]);W 様体(分子と分母とが同時に消えるところ)は CP内で複素余次元 2であることを



a c o b i多様体の例外点を与 示す(不確定点は写像 U:Sー]が一対ーにならない J える, §21を見よ).彼はついで関数



= 』lE(x,y; Xa,釦; a凸)



E(x,y; u )



を導入し, ( x ,y)の関数としての挙動によってそれを特徴づける(それは各 ( X a ,



Y a )での単純零点と,各 ( a a ,如)で e u a / t/ tの よ う に ふ る ま う 真 性 特 異 点 と を 持 つ);これは C 内で U の有理型関数で, 2 w=(wa)を第一種積分の周期系とし,



E ( x ,y¥w)で第三種積分に対応する周期の指数関数を表わすと, E ( x ,y ; u+2w) =E(x,y ;u ) E ( x ,yI w )となる. ( x ,y )として中心 ( a p ,b p )の要素をとったときの, -logE( , のy ;u )の展開における tの係数 J ( u ) pは,点 ( X a ,Y a ) ,1~a~p, までと



った第二種積分



第 2部



f



2 3代 数 曲 線



5 7 3



H ' ( x ,y)心の和である.四および加, Wpa; Wp,的 で ( a。 ,b o )



と( x ,y)の間でとった積分



f



H ( x ,y ) 1 3 心(および [ ( a砂 o )から](砂 Y o ) ,(四ぶ)ま



での同じ積分; ( a o ,b o )から ( x ,y )あるいは ( X o ,Y o )までの積分



f



印 ( x ,y ) 1 3 d の)を



表わし,次の CPでのベクトルを考えよう;幼=(如), w=(wp), Wa=(Wpa)p, w' =(叫),郎=(砂); W e i e r s t r a s sは



fJ(u+Wa)dua



a=l



が GPの整関数 fの対数微分であり,



E ( x ,y ;u ) =f ( u w ) e < w ' , u > E(叫 ,Y o ;u ) f(uー 加 )e 伽,u > となることを証明する.関数 fは 楕 円 関 数 論 に お け る 関 数 a の役割を果し,



W e i e r s t r a s sはそれから,超楕円積分の場合 ( § 2 0を見よ)と同様,テータ関数を 導いている.



2 3 代数曲線 Riemannの A b e l積分論の代数曲線論への応用は 1 8 6 4年,三人の数学者の仕 事の中に現われた. S chwarzは,代数的可展曲面[線織曲面]についての彼の学位



s e c t i o np l a n e )の種 論文の中で,これらの曲面をその(母線を通らない)平面切断 ( 数によって分類するために,種数の双有理不変性を用いた. Rochは,種数 P=3 に対する Riemannによる 2 8個の ( ( A b e l関数))の理論 [ § 2 1 ]を平面 4次曲線への



2 8個の双接線[二点で同時に接する直線]の言葉で解釈した;このような曲線は, 非特異であるとすると,実際種数 3で,第一種積分を与える関数¢は座標に関し て線形である;関数¢の 4個の零点は従って 4次曲線と直線との交点であり,先



bel関数はこれらの零点が 2個ずつ合致した場合,すなわち双接線に対応する. のA l e b s c h この理論がみせることとなる幾何的外観を作り上げたのは主として C である一一彼の楕円曲線に関する仕事はすでに調べた(第 1部 , § 1 4 ) ; 重要な論



bel函数の幾何学における応用に就いて」 (Ue b e rd i eAnwendungd e r 文「A 3巻 1 8 9 2 4 3ページ)にお A b e l s c h e nF u n c t i o n e ni nd e rG e o m e t r i e )( [ 4 6 ] ,第 6 いて彼は, n次(同次)方程式 f ( x i ,叫,叩) =0の平面曲線に関する A b e lの定理を, 与えられた曲線 Cとある m次曲線との mn個の交点に対し(超越的な性質の) P個



b e lの定理の逆 ( § 2 2を見よ)を彼は Cが非 の条件を課すものとして解釈する. A







574



VII章 楕 円 関 数 と Abel積 分



特異(従って f =(n-l)(n-2)/2)と仮定して証明しているが,それはこれらの条件 が , Cの mn個の点がある同一の m次曲線上にあるための十分条件でもあること



( ( C r a m e rのパラドクス))参照,第 I I章 , § I I ,A)を見よ). これらの を示している ( 考察によって彼は次の問題を解くに至る: C の i個の点が与えられたとき, m 次



2:pかつ 曲線で C との交わりがこれらのぇ個の点とμ個の r次の接点(ここで μ え十 μr=mn)からなるようなものをもとめる; Ui,… , Upが(適当に選んだ起点か



bel積分の基本系とすれば, 1 : : ; ; ; k : : ; ; ; pに対し らとった)第一種 A μ







r~uk(Pj)+ 区 uk(Mに 0 j=l



l=l



(mod周期)



でなければならない一~ こで M 1 ,… , Mぇで与えられた点を,



P i ,…,P μ で接点



を表わす.これからふを Ukのある周期として



A 区叫凡)=匹+ユ r



四=一ー ~Uk(Mi) ( ; i . )



がえられる;周期を法として Aたf rは r 2 P個の値をとり,これが問題の解を r 2 P個 の系に類別する.遮当に選んだ Akを用いて上記の等式の r個を加えると,ある



m次曲線が上の系の r-1個に対し,その対応する接点を通るならば,それはも うひとつの系の曲線の接点で再び C を切ることが分かる.興味深い特別な場合 はA . = 0かつ μ=Pのときである;上のようにしてもし n辛 2(mod4)(または n=2



(mod4 ) )ならば,すべての[正]整数 S に対し, C上の P個の点で n s次の接触をす 2 P ( s 2 P l )個の p s次曲線(または ( n / 2 ) s次 の 接 触 を す る ( n / 2 ) 2 P ( s 2 P 1 )個の るn ( p / 2 ) s次曲線)が存在する(公式は s=l, n=4,6のときは正しくない). もう一つ ( n 3 ) / 2個の点で接する (n-3)次曲線である;第一種積分 の特別な場合は C と n の p-l=n(n-3)/2個の接点での値の和は半周期で, Riemannは こ れ が 8関 数



( § 2 1を見よ)の零点に,従って ( ( A b e l関数))の理論に対応していることを示した. C l e b s c hは n=4の場合を具体的に書いて, Hasseと S t e i n e rの平面 4次曲線につ いての主結果を再び得ている.



C l e b s c hは Apel積分論を空間曲線にも応用する;次数がおのおの m とnの 2 曲面の完全交叉の場合に,特異点がなければその種数がか=(mn(m+n-4)/2)+1 であることを彼は見出す. さらに A belの定理を援用して,曲線上の mnk個の点 がある K次曲面上にある条件を書き下し, これらの条件を曲線と一定の接触をす



第 2部



2 3代数曲線



575



る曲面の研究に応用している;例えば曲線と m n(m+n-4)/2個の点で接する m+



( A b e l積分))に対応する. C l e b s c h n-4次曲面は有限個で,それらは Riemannの ( はさらに特別に 2個の二次曲面の場合――このときは種数 1である(第 1部 , § 14 を見よ)一ーと空間 6次曲線の場合 [ m=2, n=3]-―—このときは種数 4 である —を具体的に書いている.



Riemannは(遺稿中で)空間曲線上の A b e l積 分 を



定義していたことを指摘しておこう;彼は代数曲面上の第一種二重積分さえも定



4 1 ] , Nacht r a g e ,9 9 1 0 0ページ)一ーこの理論は P i c a r dによって 義していた([ 1 8 8 5 ) . 展開されることになる ( C l e b s c hは Riemannの諸々の着想を広めるべく多くのことを行なった;不変 量 Pに対する用語種数は彼に帰する. G ordanとともに,彼は種数の双有理変換



1 8 6 6 ) ; この不変性から彼は(曲線がその双 による不変性の代数的証明を与えた ( l u c k e rの公式の一証明を得た.考えて 対と双有理同値であることに着目して) P いる曲面のすべての二重点を通る曲線を表わすのに随伴曲線 ( c o u r b ea d j o i n t e ) c * J の用語を導入したのも彼である.彼の仕事は B r i l lと M.Noetherの そ れ ( 1 8 7 3 ) によってさらに続けられるが,そこでは超越的方法が全く捨てられて純代数的方



r i l lと N o e t h e rは彼らによる種数の代数的定義に結 法を採用している(例えば, B iemann-Rochの定理を代数的に証明する). び付けて, R



さらに一層代数的な道



roneckerによって ( 1 8 6 2 ,1 8 8 1 ) ,他方では D e d e k i n dとWeber が,一方では K によって ( 1 8 8 2 )とられた;これらの主導者達は一変数代数関数論の代数的理論の 建設に力を注ぐのである ( [ 2 3 ] , 第 VI章参照)[**]. 重要な代数曲線の例がモジュラ一方程式論およびモジュラー関数論によって与



§ 1 6を見よ);これらの曲線は特に[自己同型のなす]対称群のゆえに興 えられた ( Riemann面のそれ自 味深い. これと関連して種数 2以上の代数曲線の自己同型 ( chwarzがまずそれ 身への等角表現)群は常に有限であることが知られている; S 1 8 7 5 ) , ついで H e t t n e rが こ の 結 果 を 証 明 す る の に らの離散的なことを示し ( W e i e r s t r a s s点を使うという着想を得た ( 1 8 8 0 ) . 定理自身はこの着想から出発し [*]一般に n重点は n-1重に通る. [ * * ] ー変数代数関数論の発展の詳しい記述を欠くことは,代数的数論の記述がかなり 詳しい(第V章)だけに著しく均衡を欠いた印象を与える.幸いこれについては,(二)岩澤 健吉「代数函数論」(岩波書店)の序文に見事な歴史の叙述があるのでそれを一読されたい.



576



第V I I章楕円関数と Abel積 分



てM .Noetherによって証明された ( 1 8 8 2 ) ;K l e i nは代数曲面の[同型]類が依存 する((モジュラス))の類が, Pを種数, p を曲線の自己同型が依存する(複素)パラ



1 8 8 2 )(この公式は P=O,1 メータの数とすれば, 3p-3+pであることを注意した ( に対しても成り立つ).



P o i n c a r eは Fuchs関数の一意化を用いる別の証明を与えた ( 1 8 8 4 )( 第 1部 , §16参照; [ 4 8 ] ,I I巻 1 0 5ページ). Hurwitz



は種数 P~2 の代数曲線 X の自己



同型 Sは位数が高々 l O ( p 1 )であることを示せた ( 1 8 8 7 ) ; このために,彼は X の種数 Pと Sによって生成される群による X の商 X 'のそれとを比較する.同じ 方法を X の[全]自己同型群 Gによる商 X"に適用することにより,彼は Gの位



4(p-l)であることを示せた一一この上限に達するのは X"が種数 0 , 数が高々 8 X が X"上の三点で分岐し,おのおのの分岐指数が 2 ,3 ,7の場合のみである(し かもこれは実際に次数 7のモジュラ一方程式の G a l o i s分 解 式 に 対 し て 生 ず る ――それは種数 3で,位数 1 68=84(p-l)の自己同型群 [ P S L ( 4 ,凡)]を持つ,第



1部 , §9参照) ( 1 8 9 3 ) . 2 4 Abel多様体 Riemannは , n複素変数の有理型関数が一次独立な周期を 2 n個より多くは持 てないことを証明した ( 1 8 5 9 ) ;Hermiteによれば ( 1 8 6 2 ) , 彼はこれらの周期が第 一種 A bel積分の周期と同じ双一次関係式によって結びつけられていること,ぉ よびテータ関数をそれらから構成するのに必要な不等式を満たすことをも証明し ていたことが知られる.



W e i e r s t r a s sは n変数の 2n重周期関数に関していくつかの論文を書いている ( 1 8 6 9 ,1 8 7 6 ,1 8 7 9 )( [ 4 3 ] ,I I巻 , 4 5 4 8 ,5 5 6 9 ,1 2 5 1 3 3ページ);彼はそこで n =lの場合に対応する L i o u v i l l eの理論(第 1部 , §6参照)を一般化する次のよう な性質を述べている:このような関数とその n個の偏微分とは 1個の代数関係式 で結び付けられている;与えられた周期の群に対し,これらの周期を持つすべて の関数は,それらのうちのひとつとその [ n個の]偏微分との有理関数になる.現



'を持つ関数全体は C上 の 超 越 次 数 が 高 代の用語でいえば,与えられた周期群 I 々 nであり[*],それからこれらの関数に対する代数的加法定理が結果として出 ] * [ さらに有限個の生成元を持つ,すなわち C上の代数関数体であることまでいって い る .



第 2部



2 4Abel多様体



577



る ; W e i e r s t r a s sは,彼の目的がこれらの関数を n変数テータ関数の商で表現す



i r t i n g e rによる るに至ることだと明言している;この性質の最初の証明は W ( 1 8 9 5 )が,その証明には欠陥があった;別の証明は, n+I個の I '周 期 関 数 に 'から ( P 1 ) n + 1への有理型写像を用いるものであるが, よって定義される C刃I



P o i n c a r e( 1 9 0 2 )( [ 4 8 ] ,IV巻 , 4 7 3 5 2 6ページ), B l u m e n t h a l( 1 9 0 4 )および Thimm ( 1 9 3 9 )によって完成された.困難な点は複素多変数有理型関数における不確定点 集合の存在(第 IV章を見よ)にある.これらの難しい結果はさらに他の証明もあ る( L e f s c h e t z ,S i e g e l ,B o c h n e r ) .



n変数テータ関数論とその 2 n重周期関数の表現への応用とは P i c a r d ,. f ¥ . p p e l l ( 1 8 9 1 ) ,P o i n c a r e( i 8 9 9 ,1 9 0 2 ) ,F r o b e n i u s( 1 8 8 4 )の研究対象となった;主結果は, C刃I 'の任意の複素超曲面が適当なテータ関数の零点集合であるというものであ



9 4 0年代に A .W e i l [ 2 0 Jと C o n f o r t oによって装いを新たにした. る . この理論は 1



I 'が ,



I '周期的な関数で n変数より少ない変数では表わせないものが存在する



( I 'の基底に関し Riemannの条件[等式と不等式]が満たされるといっても同じで ある)ようなもののとき,



c n ; rの型の商は Abel多様体と呼ばれる;それは可換



群の構造を持った射影的代数多様体で,楕円曲線の一般化とみなせる.曲線の



J a c o b i多様体は特殊な A b e l多様体である(それらは 3p-3個の((モジュラス))に bel多様体は p ( p + l ) / 2個の((モジュラス))に依存する).楕 しか依存しないが, A 円曲線の同種 ( i s o g e n i e )の理論は Abel多様体に拡張され,その解析への翻訳が テータ関数の変換論である ( § 1 9を見よ);同種とは核 [ k e r n e l ]が有限の全射準同 型写像 C叶I ' → C叶I ' 'のことで,これは



e nの部分群几で,指数有限部分群とし



てI 'を含み, C叶几もまた A b e l多様体となる[この最後の条件は自動的に満たさ れる]ものを与えることに対応する. I ' 1の基底を用いて I 'の基底を書き表わすこ とにより,ある行列でそのシンプレクティック群を法とする類が同種を特徴づけ るようなものが求まる.虚数乗法論は A b e l多様体に拡張され,数論への応用を



9 5 5 )[ 8b i s ] . さらに,今では任意の体で定義された(従っても 持つ(志村[-谷山], 1 はやベクトル空間の商と考えることはできない) A b e l多様体の純代数的理論が存



.Weilによって建設された ( 1 9 4 9 )( [ 1 9 ]と[ 2 0b i s ]を見よ)[*]. 在する一一それは A ] * [ 標 数 2以外の一般の体上におけるテータ関数の代数的理論も Mumfordに よ っ て 構 成された ( 2 0t e r ) . ここではテータ関係式の現代理論が主題となってい(次ページヘ続く)



第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積分



5 7 8



参考文献 I) 使用概念についての参照文献 [ 1 ] S .L a n g ,A l g e b r a ,A d d i s o n W e s l e y ,B o s t o n ,1 9 6 5 . ( 一 )



岩波数学辞典,第 2版,日本数学会編,岩波書店, 1 9 6 8 .



I I ) ここでふれた主題についての補足を与える著作 A) 楕円関数論



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参考文献



5 7 9



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( 二 )



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小泉正二,テータ函数,紀伊国屋書店, 1 9 8 2 .



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第V I I章 楕 円 関 数 と Abel積分



5 8 0



[ 2 6b i s ] C .L .S i e g e l ,ZurV o r g e s c h i c h t ed e sE u l e r s c h e nA d d i t i o n s t h e o r e m ,Sammel-



bandzuEhrend e s2 5 0 .G e b u r t s t a g e sLeonhardE u l e r s ,315—317 ページ, Berlin, 1 9 5 9 ;GesammelteA b h a n d l u n g e n ,第 3巻 2 4 9 2 5 1ページ, S p r i n g e r ,B e r l i n R e i 9 6 6 . delberg-NewY o r k ,1 ( 四 )



高木貞治,近世数学史談,第 3版,共立全書, 1 9 7 0 .



I V ) 原典 [ 2 7 ] C .G .F a g n a n o ,P r o d u z i o n im a t e m a t i c h e , 2巻 P e s a r o ,1 7 5 0;再版増補, Opere



i l a n o R o m a N a p o l i ,1 9 1 1 1 9 1 2 . m a t e m a t i c h e ,3巻 M [ 2 8 ] L .E u l e r , Operao m n i a ,4シリーズ,既刊 6 9巻 Teubnerおよび 0 .F i l s s l i ,L e i p 9 1 1 1 9 8 3 . z i g B e r l i n Z i l r i c h ,1



.L .L a g r a n g e ,O e u v r e s ,1 4巻 G a u t h i e r V i l l a r s ,P a r i s ,1 8 6 7 1 8 9 2 . [ 2 9 ] J [ 3 0 ] J .L .L a g r a n g e ,T h e o r i ed e sf o n c t i o n sa n a l y t i q u e s ,P a r i s ,1 7 9 7 ;=[ 2 9 ] ,第 9巻 . [ 3 1 ] A .M.L e g e n d r e ,T r a i t ed e sf o n c t i o n se l l i p t i q u e s ,3巻 P a r i s ,1 8 2 5 1 8 2 8 . [ 3 2 ] C .F .G a u s s ,Werke,1 2巻 G o t t i n g e n ,1 8 6 3 1 9 3 3 ; リプリント, O l m s . [ 3 3 ] N .H.A b e l ,O e u v r e s ,2巻 Sylowおよび L i e編 Grnndahl& S 0 n ,C h r i s t i a n i a , 1 8 8 1 ; リプリント, J o h n s o n ,NewY o r k ,1 9 6 5 .



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G a u t h i e r V i l l a r s ,



9 0 5 . P a r i s ,1



.E i s e n s t e i n ,MathematischeWerke,2巻 C h e l s e a ,NewY o r k ,1 9 7 5 . [ 3 8 ] G r i o t ,M.B o u q u e t ,T h e o r i ed e sf o n c t i o n sd o u b l e m e n tp e r i o d i q u e s ,M a l l e t [ 3 9 ] M.B 8 5 9 . B a c h e l i e r ,P a r i s ,1



.R iemann,E l l i p t i s c h eF u n c t i o n e n(講義‘屯b e rF u n c t i o n e ne i n e rv e r 且n d e r l i c h e n [ 4 0 ] B



t a h l編 , complexen G r o s s e ,i n s b e s o n d e r ee l l i p t i s c h e und A b e l ' s c h e "の一部), S T e u b n e r ,L e i p z i g ,1 8 9 9 . .Riemann,Gesammeltem a t h e m a t i s c h eWerkeundw i s s e n s c h a f t l i c h e rNach[ 4 1 ] B ,T e u b n e r ,L e i p z i g , -1 8 9 2 ; リプリント, C h e l s e a ,NewY o r k . l a s s ,第 2版



[ 42]・K.W e i e r s t r a s s ,FormelnundLehrs 且t z ezumGebrauched e re l l i p t i s c h e nFunk,B e r l i n ,1 8 9 3 . t i o n e n ,H.A .Schwarz編 第 2版



[ 4 3 ] K.W e i e r s t r a s s ,MathematischeWerke,7 巻



Mayer~nd



M U i l e r ,B e r l i n ,1 8 9 4 -



1 9 2 7 . .K r o n e c k e r ,Werke,5巻 T e u b n e r ,L e i p z i g ,1 8 9 5 1 9 3 1 ; リプリント, C h e l s e a , [ 4 4 ] L



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5 8 1



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j e n i g e ne b e n e nC u r v e n ,d e r e nC o o r d i n a t e nr a t i o n a l eF u n c t i o n e ne i n e sP a r a m e t e r s s i n d ,同上,第 64 巻,



43—65 ページ, 1865;



c )Ueberd i e j e n i g e nC u r v e n ,d e r e nC o -



o r d i n a t e ns i c ha l se l l i p t i s c h eF u n c t i o n e ne i n e sP a r a m e t e r sd a r s t e l l e n! a s s e n ,同上, 第 64巻 , 2 1 0 2 7 0ページ, 1 8 6 5 .



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(浪川幸彦訳)



582



第V I I I章 関 数 解 析 学 J e a nD i e u d o n n e I序 現代関数解析学は, 1 9憔紀の解析学者たちの主たる研究対象であったもの,す なわち関数を未知数とする方程式の解法をめぐって生まれ,発展してきた.すで



8世紀には研究の始められた常微分および偏微分方程式(第 I章を見よ)に加 に1 ぇ , 1 9批紀になると積分方程式が,ついで積分微分方程式を始めとして更に多様 な関数方程式が登場してくる.この長い発展の過程に現われたさまざまな考え方 のうち最も重要で,かつ現代的思考法の基礎ともなったのは次のものである:



1 ) 関数方程式の((一般解))の研究が, 1 9世紀初頭以来,物理学への応用の影響 も一部あって,((初期条件))や((境界条件))などの補足的条件に従う解の研究に取っ て替わられる.



2 ) Cauchyの仕事以来,方程式およびその解の局所的性質と大域的性質の区 別がはっきり行なわれるようになる ( § I Iを見よ).



3 ) 基礎となる考え方として,方程式の概念が作用素や汎関数の概念に次第に その地位を譲り始める;これは,[連立方程式より]行列の(さらに線形写像の)概 念にますます優越した役割を与えた線形代数学の発展(第 I I I章を見よ)と平行し ており,これら二つの理論は相互に影響し合う.



4 ) 関数に関し((値の変化))と結びついた進行的展開の観念から次第に解放され, 空間の点などと同様の,ある意味で((元素的な》数学的対象としてそれを取り扱わ ねばならないという考え方が徐々に慣用のものとなる;さらに,((集合論的))用語 が普及し始めるとともに,関数を構成要素とする集合が組織的に考察され始める.



5 ) (古代より受け継がれた,形の((静的))熟考と対照的に)解析学の((動的な))性 格はすでに無限小解析学において生まれていたが,ここでそれが強調されまたあ らゆる方向に多様化される;特に連続変分の使徒ともいうべき二人の数学者,



I I 局所的存在定理



5 8 3



RiemannとPoincareの影響の下に.今や変動するものはもはや数ばかりではな く,((関数空間))の((点))と考えられた関数もまた変数なのである. 1 9世紀の末頃に は,関数の列の極限関数への((収束))に関し様々の種類の区別が必要となり,それ が関数の集合の位相の一般的観念へと発展し,その拡張として一般位相幾何学の 誕生をみることになる.



1 8世紀におけると同様力学および位置天文学の諸問題は常微分および偏微分 方程式に対し数多くの問題を提出し続ける.そこに理論物理学の発展から招来さ れるあらゆる問題が付け加えられねばならない;すなわち熱理論,弾性論,流体



9 1 5年からは一般相対論と量子力学[*]. 力学,光学,電磁気学,さらに 1



I I 局所的存在定理 A) 微分方程式に対する存在定理 ) , 1 8世紀の数学者達は常微分方程式や偏微分方程式 すでに見たように(第 I章 に解が存在することを議論なしに認めていたし,解の定義域を厳密に決めること も普通追求していない.せいぜい彼等は,与えられた方程式を形式的に満たす整 級数の係数を決めてみせることにより,その信念を正当化していたにすぎない. この手続きは特に, n階の微分方程式



y < n )=f ( x ,Y ,y ' ,・ ・ ・ ,y < nー1 ) )



( 1 )



については,ある点叩における末知関数とその n-l階以下の導関数の値 Y o ,Y~,



… ,Y b n 1 )から,この点における残りのすべての導関数の値が決まり,従って (Taylor級数の収束を認めているのだから)未知関数自身が決まることを示して , 1 8 2 0年から始めた講 いる.この問題を初めて厳密に取り扱ったのは Cauchyで 義の中でのことである ( [ S J ,( 2 ) , XI巻 , 3 9 9 4 6 5ページ):連続的微分可能な関 数 fにより一階の方程式



y'=f ( x ,y )



( 2 )



が与えられたとき,ぉ, yの与えられた値叩, Y oに対し,のoを中心とする十分小さ [ * ] この章は D i e u d o n n eの 好 み で 微 分 方 程 式 の 歴 史 が 関 数 解 析 の 歴 史 に 埋 没 し て い る が,前者を詳しく扱ったものとして他に訳者追加文献 ( 3 3 )などがある.また最近の発展に 3 8 ) ,( 3 4 ) ,( 3 7 )などに含まれる歴史的展望部分を読み合わすならば大筋がわかる ついては (



でぁろう.



第V I I I章 関 数 解 析 学



584



い区間において定義された, u(xo)=yoを満たす一意的な解 y=u(x)が存在する ことを証明するのが問題である. ここで恐らく歴史上初めて解の局所的な研究が 現われたのである一ーすなわち,ここでは解の存在と一意性を m のある近傍で しか主張しておらず,それがどこまで延長できるかという大域的な研究には何も 言及していない.



:.~-------!Y!,//n I I I I I I



0 1



I I I I



L.-.l--l..--L-1



X o xo+2hxo+nhxo+(n+l)h x xo+h



Cauchyの着想は,解の近似計算のために Eulerが導入した方法(第 I章 , §X) を再び取り上げたものである.叩から始まる区間を点のo+nhにより分割する ――ここに h>Oは任意の微小量であり, nは非負整数値をとる.折れ線状の連 続関数 Un を, n に関する帰納法を用いて,各区間叩十 nh~ 如 こ 印 o +(n+l)hの上



では y=un( の)が傾き f(xo+nh,U n(Xo+nh))の線分となるように決めてゆく.



Cauchyの新しいところは,平均値の定理を用いて(!と(叩, Y o )には依存するが



hには依存しないような)十分小さいある定まった区間において差知一 u 見を十分 小さな h , h 'に対して評価しえたことである;こうして彼は, hが 0に近づくとき,



U n ( X )がこの定区間の各点においてある関数 u ( x )に近づくこと,そしてそれが u ( おo )=yoを満たす ( 2 )の一意的な解となることを証明できた.彼はまた,この手 続きが微分方程式系に対してもうまく適用されることを注意している一一微分方 程式系を我々はやはり ( 2 )の形に書くが,ただしこのときは yゃfはある R門こ 値をとるベクトル値関数となる;方程式 ( 1 )も簡単にそのような系に帰着される.



1 8 6 8年に Lipschitzは,恐らく Cauchyの仕事を知らずにこの方法を再発見し ている [ 2 2 ] ; 彼は,



fの導関数の連続性までは必要ないことをも注意している:



x o ,Y o )のある近傍において,爾来 ( ( L i p s c h i t zの条件))と呼ばれる, すなわち, fが ( 次の条件を満たせば十分である:定数 k>Oが存在し,この近傍において



l f ( x ,Yi)-f ( お , Y 2 ) l : : ; ;kly1-Y2l.



( 3 )



n 局所的存在定理



585



微分方程式の解の局所的存在を証明するためのもう一つの手続きは,二階線形 方程式という特別な場合について, L i o u v i l l eにより 1 8 3 7年に最初に用いられた



[ 2 1 ] ,1 9ページ).それは,いわゆる反復法(または((逐次近似法)))で, ようである ( o)=Yoの下に帰納法で 関 数 の 列 約 を 条 件 u瓜X U o ( の )



=Y。



u如) =!(の, Unー, ( x ) )}



( 4 )



から次々に求積して定めてゆくものである.もしも L i p s c h i t zの 条 件 ( 3 )が満た



( 叩 ) されていれば,各妬は叩の十分小さい近傍において定義され,この近傍で u



=yoであるような方程式の解 U に一様に収束する. Moigno神父の証言によれば, Cauchyもほぼ同じころ彼の講義において同じ くこの方法を用いていたようである;しかしこの方法はその後解析学者たちに無



8 7 0年 以 降 の C a r lNeu視されてしまったらし ) を未知関数としてとれば ( 1 7 )の形になる. これらの方程式に対する基本的な結果 は , ( 1 7 )(または ( 1 8 ) )の解の特異点が,高々関数 A (または如)の特異点に限ると いうことである;これは Fuchsにより 1 8 6 5年に初めて発表されたが,すでに



Riemannにより 1 8 5 7年には知られていた. Riemannは 1 8 5 9年に,いわゆるモノドロミーの問題(第 VII章を見よ)に重点 をおいた超幾何方程式(第 I章 , §V,C ) )の解の詳細な研究を発表していた ( [ 2 6 ] ,



67ページ):



a を( 1 8 )における少なくとも一つの関数んに対する特異点とし,



Wi,



… ・ ,Wnをある点 Zoの近傍における ( 1 8 )の一次独立な n個の解の系として, zを a の周りに動かして



Zoを始点および終点とする閉じた道を描かせる;



zが Zoに戻っ



てきたときの Wi,…,Wnの値は,同じ点におけるこれらのもとの値から る線形準同型 La,z。によって計算され, この



enのあ



La,z。を決定することが問題となる.



" ' ' " " " '







z



Fuchsは Riemannのこの論文に刺激され,方程式 ( 1 8 )の あ る 簡 単 で 特 別 な 場合として, a の近傍において l~j~n に対し a で正則なある関数 P1 を用い



て如(z)=(z-a)-1P点)と書けるときに事態の解明を行なった;このような場



1 8 )に対して確定 ( r e g u l i e r )[特異]点[*]であるといわれる. 合,点 aは方程式 (



. . . .. .



この語および次に出てくる不確定特異点なる語は本文のように方程式の見かけの形 ieudonneも混同している事だ からではなく解の性質によって定義されるものであるが, D し日本語で他に慣用語がないのでこう訳しておく. [ * ]



I I I 複素領城における微分方程式



5 9 3



Fuchsは E u l e rのエ夫(第 I章 , §VI)を再び採用し, ( 1 8 )の解で点 aの近傍にお z a )物 ( z )の形に書けるものを求める;そして,この いてある正則関数 V を以て ( とき pは必然的に次の rに関する方程式の根とならねばならないことを示す:



r(r-1)…(r-n+l) +凡( O ) r ( r 1 )… (r-n+2)+…+Pn ー1 ( 0 ) r +凡 ( 0 )= 0 . P iがこの方程式の単根で,他の如何なる根 P k = I =P iに対しても差 pj-pkが正整 数とならなければ,点 aにおける



Vの T aylor展開の係数を



v ( a ) = lなる条件の



もとに一意に定められる. F uchsは優級数の方法により,こうして得られる展開 が aの近傍で確かに収束することを示した. 差 pj-pkのどれかが正整数となるか,あるいは重根が存在するときに点 aの 近傍で一次独立な n個の解の系をなすような他の解を得るためには,一般に点 a で正則な c pと正整数 Kで定まる関数 ( z a ) P ( l o g( z a ) ? c p ( z )の一次結合の形の解 を考える必要があることを F uchsは示した.すべての確定[特異]点 aにおいて



[ 1 2 ]および [ 1 5 ] ) . はモノドロミーの問題はこうして具体的に解かれる (



Fuchsの仕事の後,この結果は二,三の数学者により方程式系 ( 1 7 )の場合に拡 張された.ただし点店 Cが確定[特異]点[*]とは行列 A の各要素が点 aにおいて



高々 1位の極しか持たないことをいう. 他の仕事の多くはさらに特別に二階の場合の方程式 (18) を調べている—それ



は,数理物理学の問題に起源を持つ方程式の多くがこの形をしていることによる.



K l e i nとBacherはこの種の方程式がすべて,ただ一つの一般形



互 +l(翌_l__冑 + ふ + ふz+…+APs z P 3y =o , dが







2 i=1z-ai d z ( z a 1 ) ( z a 2 )・ ・( z-apー1 )



.( 1 9 )



にまとめられることを示した一ーここに a j , lsjsp-1, および定数 A k , Osk



sp-4, は Cの任意の元であり, Apーs=(p-2)(p-4)/16である [ 1 5 ] ; もし a iが 互いに異なるときは,これらはこの方程式の確定[特異]点となる.このことは



z=ooにおいても同様である(その意味は, z ' = l / zという変数変換で Oが変換後 の方程式の確定[特異]点となることである).パラメータ a iおよび Akを適当に 選び ( a iのいくつかが 1点に重なってもよいが,このときこの点は((不確定) ) ( i r r e -



[ * ]



前ページの訳注参照.



594







V I I I章 関 数 解 析 学



g u l i e r )[特異]点となる),適当な変数の変換を行なえば,多くの古典的な方程式



i l lの方程式 が得られる一一例えば,月の運動の理論における H



信+(C。 +C1c o s 2 z十・・・+ら c o s2 p z ) y= 0 ,



( 2 0 )



および,ここで P=lとおいた特別な場合である M athieuの方程式,また Lame の方程式(第 VII章 , § 15を見よ)



窒— (h+n(n+l)怨(z))y = 0



( 2 1 )



ここに怨は W e i e r s t r a s sの楕円関数,など他にも数多い. 方程式 ( 1 8 )の不確定[特異]点の研究は 1 8 8 5年に H.P o i n c a r eによって始めら



[ 2 5 ] , I巻 2 2 5 3 3 2ページ),この問題に対する基本的な考え方はすべて彼に れ( .D.B i r k h o f f( [ 6 ] , I巻 , 2 0 1ペ ー ジ お よ び 2 5 2 負っている.彼の仕事はその後 G ページ)により続行・完成され,後者は方程式系 ( 1 7 )の最も一般的な場合,すなわ ち aが単に行列 A の極というだけの仮定の下でこれを解明した.変数変換によ



i r k h o f fは,このとき無限遠点の近傍 りaは無限遠点と仮定すると都合が良い. B で正則かつ可逆な行列 B ( z )が存在して, Y ( z )E e nを以て y(z)=B(z)Y(z)とおけ



1 7 )が次の形に変換されることを示す: ば,方程式系 (



督 =P(z)・Y(z),



( 2 2 )



ここに P は zの多項式を要素とする行列である;これらの多項式の次数の最大値 が q+lのとき,無限遠点は階数 q+lの[不確定特異]点であるという.一般性を 失うことなく,行列 P の対角線外の成分は次数が q以下の多項式で,かつ対角線 上の成分の z q + 1の係数は互いに異なる場合に限ってよい.



2 2 )を((形式的に))満たすような関数を次の形で求める: このとき方程式系 ( e x p ( Q ( z ) ) 呼( Bo+B1炉 + … +B 区― k+ … ) ,



( 2 3 )



ここに



=吋乳 +a匂+…十 aq+1Z



Q ( z )



( 2 4 )



jはスカラー, Bkは e nのベクトルである. a 1は P の対角成分の q+I次の で , a 項の係数の一つでなければならぬことがわかる;この係数を選ぶと,他の係数お



I I I 複素領域における微分方程式



595



よび指数 p , ベクトル Bkは ( B oに対するスカラー因子の不定性を除き)方程式か らきまってしまう.



しかし,確定[特異]点(すなわち q=-1)の場合を除き級数



ご 止Z― はもはや一般には l z lの値を大きくしても収束しない. . . K



P o i n c a r eの創意は,平面をいくつかの扇形



釘 Oについて o ( CI 叫十 I yl ) P )を満たす; 1 9世紀の末までは殆ど常に !1ふは解析関数に限られている一—18 世紀から受け継がれた伝統はその優位を



譲りつつあったとはいえ,まだかように強くあったのである. 原点の近傍における積分曲線の形は実行列



( adb )の固有値に依存する;もし C



これらが共役複素数なら,渦状点(または((漸近点)))となるか,あるいは例外的に



IV 実領域における微分方程式



599



(無限個の閉じた積分曲線に取り巻かれた)渦心点となる:



逆に固有値が実で,かつ互いに異なっていれば,これらが同符号のとき結節点が, また異符号のとき鞍点が得られる:



二つの固有値が一致するか,または係数 a ,b ,c ,dがすべて 0のときには,また別 の形ができる ( [ 1 9 ] ,[ 2 ] ) .



...



以上が 1 8 8 1年における理論の状況で(従って本質的に局所的な性質のもので) あった.まさにこの年,何の前ぶれも無く, H .P o i n c a r eのおびただしい研究論 ... 文が現われ始める.彼は実領城における微分方程式の大域的理論をまさに無から ( e xn i h i l o )創造する.その冒頭で P o i n c a r釘ま,今日までこの理論全体を統制し



ている考え方や方法をすでに導入している.まず最初は方程式 ( 3 0 )において X,



Yが多項式の場合に限り,彼は積分曲線の全体を((定性的))に記述するという最も 一般的な問題を一挙に目標として掲げる.これらの曲線の無限分枝を取り扱うた め,彼は 0四y平面を(中心がこの平面の外にある)球面の上に射影するという優 れた着想を得,これにより彼は球面上の接ベクトル場(第 IX章)の積分曲線の研 究へと導かれる ( [ 2 5 ] , I巻 , 1 2 2 1ページ).



600



第V I I I章 関 数 解 析 学



このような記述に対して本質的な要素となるのが,方程式系 ( 3 0 )の危点 ( p o i n t



c r i t i q u e ) , すなわち X=Y=Oの共通解の点と, ( ( 3 1 )の周期解に対応した)危点 を通らぬ閉じた積分曲線である. ここにはすでに X,Yが多項式のとき,方程式



( 3 0 )についてそれまで認められてきた考え方との間の最初の断絶が見られる.古 典的な例でみれば,解析関数([)を用い f こ( [ J ( : x ; 湿)=定数の形の積分曲線に対する 局所表示が大域的にも有効だと思えるであろう.



しかし P o i n c a r eはその反対に,



このような状況は例外的な方程式,すなわち危点の中に結節点も渦状点も含まれ ないときにしか起こり得ないことを示す.一般の方程式に対しては,渦心点がな .<,有限個の結節点,鞍点,または渦状点のみが存在する.また,閉じた積分曲 線も(球面上では)高々有限個しかなく,残りの積分曲線は二つの危点を結ぶか, あるいは一つの危点から(例えば t=-ooで)出発し, t=+ooにおいて((漸近曲 線》たる閉じた積分曲線のまわりに巻き付くか,あるいはまた後者の現象が t= -00



においても起こっているかのいずれかとなる [ 2 ] .



1 9 0 1年に Bendixon[ 5 ]は X,Yが多項式という仮定をとりはずし,また ( 3 1 ) の周期解の存在に関する一般的条件を初めて与えて,これらの結果を補足•一般



化した.最近この最後の問題は電子工学の発展とともに大きな関心を集めた一一 そこでは,ある種の現象における永久振動の存在が二階非線形微分方程式の周期



e rP o lの方程式 解の存在に帰着されるのである.この種の最初の例は Vand ( 1 9 2 2 )



u . "+a(u2-1)u'+( 3 u=0 . ( a ,( 3は定数) であり,後に L i e n a r dによって次のように一般化された:方程式



( 3 3 )



IV 実領域における微分方程式



u"+ h ( u ) u ' + g ( u )=0



6 0 1



( 3 4 )



において,(これを ( 3 0 )の形に書き寵したとき)もし次の諸条件が満たされていれ



( u ) = h ( u ) , かつ ば,ただ一つの閉じた積分曲線の存在が確かめられる: h



i u



H ( u )=



h ( t ) d t



は OOに対しヨ i J > Oをとれば I y ( t o ) x ( t o )I



VI 線形偏微分方程式とスペクトル理論



6 1 1



q氏x ) , かつ u ( x i ) = u ( 叫 ) =0, の1くxOならば,



V はこの区間



S J . この結 において少なくとも 1回は 0にならなければならないことを導いた [ 4 9 )の 解 約 で 条 件 u ; . ( a ) = 果と,これに類似の他の諸結果を用いて, Sturmは ( b ) / u ; . ( b )のえの関数としての変動を調 h i ,u~(a)=l を満たすものを考察する; u知( 2 n )の存在を証明するのに成功する. べて彼は無限列 (



さらに,



Uぇ”を妬と書き庫



5 2 )において q i ,q 2をそれぞれ q―心, qー えnで,また X i ,叫 を a ,bで置き換 し , (



えれば,((直交))関係



『 知Und a



ぉ =0 ,



m キ nのとき,



( 5 3 )



を得る.



Fourier級数との類似性をさらに追求するため, Sturmと L i o u v i l l eは [ a ,b ] 上の実数値連続関数 fに対し,その((係数))



C n=



( i b fUndX)/( i b 此dx)



( 5 4 )



と対応する((展開))区 C n 約を付随させる.その収束を調べるため, L i o u v i l l eは ,



a ,b ] = [ O ,冗]の場合に帰着させ,十分大きなえに対して方程式 ( 4 9 )を方程式 まず [ y"+え y=Oの((摂動))とみるという着想を得る.それによって,入=がとおけば, Lagrangeの((定数変化))法(第 I章 , §VI)を用いて, ( 4 9 )の 任 意 の 解 Uが 満 た す べき等式



f



u ( x )= Acosp の+Bsinp の十上



p



xq ( t ) u ( t )s i np ( x一t ) d t



( 5 5 )



0



を得るが,これは後に((第二種 V o l t e r r a型積分方程式))( § V I ,D ) )と呼ばれるも



x )の のの最初の例である.この表現と,それを微分することにより得られるが ( 表現とを用いて,彼は次のような漸近的評価を得る[*セ



=n+o(¼),



pn



( 5 6 )



[ * ] この式は係数がおかしいが本質に影響がないのでそのままにしておく.なお L i o u t u r m L i o u v i l l e型方程式を扱っており,変数変換でそれを v i l l eの原論文はもっと一般の S



区間 [ O ,Z]上の ( 4 9 )に対する問題に帰着させている.(ただし Z=冗とはしていない.)



612







u心)



V I I I章 関 数 解 析 学







=Jf-cos



位 ) ) ) +sin(呵1+0位 ) ) ) .



(1+0



'



( 5 7 )



これにより彼は関数 f の Fourier 級数が収束するとき級数 ~CnUn(X) 自身もま



た収束することを証明できた.



しかしまだこの級数の和が f ( x )に等しいことを



示す問題があり, L i o u v i l l eはそれが系 ( u n )の((完全》性,すなわち恒等的には 0 でない連続関数 gは,すべての nの値に対しては((直交))関係



f 冗



gundx=Oを満た



し得ないことを示すのと同値なことを証明する. しかしながら,彼はこの最後の 点を gが区間 [ O ,冗]において有限回しか 0にならないという仮定の下でしか証明 できず,一般的な証明は 1 9批紀末になって初めて与えられた. 最後に, L i o u v i l l eはすべての整数 N に対して不等式



c~+ …+c~:::;;



『f a







( 5 8 )



が成り立つことを注意している一一これは B e s s e lにより 1 8 2 8年に Fourier級数 に対して証明された不等式の一般化であり,後に 2 0世紀との境の時期にスペク



[ 2 1 ] ,[ S J ) . トル理論となるべきものの本質的主題を完全に提出している ( B) ポテンシャル論, Laplace方程式および D i r i c h l e t問 題 しかしながら,スペクトル理論が開花するためには,それに関する諸問題が



Sturm-L i o u v i l l eの理論よりはもっと一般な枠組の中で提出される必要があっ た;そのような問題を提起することになるのがボテンシャル論と,それに結びつ いた偏微分方程式の理論である. すでに述べた(第 I章 , §V,F ) )ように,密度 pの物体 Vが座標 ( x ,y ,z )を持 つこの物体外の一点に引き起こす Newtonボテンシャルは三重積分



J J J



U(x,y ,z )=



p (ど , 布 こ )d珀 dこ vr ( x ,y ,z ,~'布 r;,)



( 5 9 )



によって定義される一ーここに



r ( の ,Y ,z ,f ; ," I J ,( )=( ( お 一r ; ) z +( y " 1 ) ) 2 +( z ( ) 2 ) 1 1 2 である; Vがこの点 ( x ,Y ,z )に及ぼす引力の成分は, Uのこの点における 3個の 偏導関数に等しい. L aplaceは V の外部で関数 Uが方程式 ( 3 8 )の解となること に気付いた; P oissonはこの結果を補足し, pが 連 続 な ら 積 分 ( 5 9 )は点 ( x ,y ,z ) が V の内部にあってもなお意味を持つことを注意している;このとき L a p l a c e



VI 線 形 偏 微 分 方 程 式 と ス ペ ク ト ル 理 論



613



の方程式はより一般な ( P o i s s o nの方程式と呼ばれる)方程式 △U=4 冗p



( 6 0 )



で置き換えられる[*].



L a p l a c eの方程式はまた 18世紀に流体力学においても現われてはいたのであ 8 2 0年を過ぎてからのことであり, るが,その理論的研究が始まったのはやっと 1 一つには熱理論(そこではこの方程式は((定常))状態を統御する)との,また他方で



oulombによる 静電気学との結びつきにおいてであって,特に後者においては C 1 7 8 5 )以来,ボテンシャルの概念が基本的となっていた. 電荷間引力の法則の発見 ( 実際,ポテンシャル論の端緒を開く初めての数学的な仕事がなされたのは静電



8 2 8年の G .Greenの論文であった ( [ 1 3 ] ,[ S J )(そこ 気学に対してであり,それは 1 5 2 ) で初めて((ボテンシャル関数))なる語が用いられる).彼はまず部分積分公式 ( の三重積分版として公式



』闘 ―u ) 篇da



J J . f v c u △v-v △u ) d w= i ( v



を証明する;ここに 2は開集合 Vの境界をなす曲面,



U,V は閉包



( 6 1 )



Vの近傍で c 2



級であり,また ~vま〗の外法線に関する U の微分, dw および da はそれぞれ体 o n 積要素および 2 の面積要素である ( Lagrangeも す で に 類 似 の 公 式 を 得 て い た



( [ 1 8 ] ,I巻 263ページ)).



Greenは ( 6 1 )から,もし関数 u ( P )が Vのある内点 M 以外でひ級にとどまり (P)-( 1 / MP)が有界な程度の無限大になるならば,関 つつ,この点 M において u 係式



』 ( 疇 ― 曇 )da



4 冗v (M)+JJJ:cu △v-v △u )伽 = i



( 6 2 )



が得られることを導 .



. . > .



aPaP F =OU o v '







) 布



G=(



2



(ただし積はスカラー積) 2 )の右辺は今日曲面の第一基本形式と呼ばれるものである. と書ける. (



続いて G aussは曲線座標の変換 ( u ,v)~cが, v') (これは現代的にいえば座標近傍 の取り換えの概念にあたる)を考える一―ただしその際,変数変換の成り立つ領



s 2の不変性を使って,彼は偏微分 城に関しては一貫して明示していない. d au'au'av'av' • ..''— au'av'au'av'



. . "



変数 u ' ,v 'に対応する同様の関数 E ' ,F ' ,G 'および 4本の座標曲線の間の角の正 弦を使って E,F,Gを書き表わした;彼は二次形式の代数的理論に堪能であった ので(第 I I I章および第 V章参照),]を行列式



o u ' o v ' o u ' o v ' 一'"― O Uo v o vOU



ー一,・••一•



とすると EG-F 呈 J 2 ( E ' G ' F ' 2 )であることを証明する. 天文学と測地学の仕事から着想を得て, G a u s sは曲面の球面表示の概念を導入



第 IX章 微 分 幾 何 学



666



する:すなわち曲面 2cR3の各点(ぶ y ,z )に中心 0 , 半 径 1の 球 ふ の 点 (X,Y, Z) を対応させる—ここで X,Y,Z は 2 に垂直な単位ベクトルの成分である(垂



線の二方向に対応して球面の対心的な ( d i a m e t r a l e m e n to p p o s e )[ 英a n t i p o d a l ]2 点が対応する);ぶ上に向きを選ぶと,今日 G auss写像と呼ばれる写像μ:,2→ S 2 を得る. この概念はその後任意次元の多様体に拡張され, ファイバー束の現代理 論に使われている [ S p ] .



2の有界部分 Uに対して, Gaussは Uの((全曲率))もしくは((積分曲率))を球面 の部分 μ(U)の面積として定義する.次に 2の各点 P に対して P の((曲率測度)) すなわち P を含む領域 U の面積が 0に近づくときの商



Uの全曲率 Uの面積 の極限 k ( P )を彼は導入する.点 Pでの 2 の接平面と点 μ(P)でのふの接平面と が平行であることに注目すれば,上の商の極限は μ(U)とU を或る同一平面に射



= f ( x ,y)で 影した部分の面積の商の極限と一致することが分かる . 2が方程式 z aussは Kの値 与えられていると仮定して,これから G k=



空空-(立—)2 紐2 a y 2 o 面y



( 3 )



( 1 + ( ) 昌2+ ( 喜 )2 ) 2



を導き,これによって E u l e rによって定義された主曲率 ( § I I I ,B ) )を Kと結びつ けることが可能になり,公式



1 k=• 一 R1R2



( 4 )



を得る(これは O l i n d eR o d r i g u e sによって 1 8 1 5年に証明された結果であったが,



G a u s sはこの仕事を知らなかったようである).今日 k(P)は点 Pでの全曲率ある いは G auss曲率と呼ばれている. ((曲線座標》 U,V を使って kを計算するために, G aussは 三 つ の 新 し い 関 数 D ,



D ' ,D"を導入する一―それらはベクトル解析の記法を使うと,スカラー積として 3 2 p



32p



3 2 p



D'=n•ー― ' ' =n ・ ― ― 、 祝 z , o u o v ' D



D=n , ・—OU2'・, . .



> .



( 5 )



> .



aP aP



と書ける,ここで n はベクトル積ー X 2 の法ベクトルである;後に O U. .ーであり a v



IV 曲面の研究における G a u s sの寄与



667



なって形式 Ddu 叶 2 D ' d u d v+D ' ' d v汀ま曲面の第二基本形式の名で呼ばれる.



Gaussは DD"-D'2



k = EG-F2



( 6 )



であることを示し,その後有名な((基本定理))( t h e o r e m ae g r e g i u m ) C * Jを得た:す なわち,全曲率 Kは関数 E,F,Gとその微分だけを使って表示できる;従って曲 面 2が曲面 2 'に写像可能 (§V,C ) )であれば, 2 と2'とは対応する



2点 で 同 じ



全曲率を有する;特に可展面では k=Oであることが再び見出される.



Gaussはまた曲面の測地線を研究し,主法線が曲面と垂直である曲線として測 ohannB e r n o u l l iの結果を再発見した.測地線の 地線が特徴づけられるという J 微分方程式を使って,彼は((曲面上に,同一の点から(あるいは同一の曲線に直交 する)同じ長さの測地線を無限個引けば,その端点のなす軌跡は各測地線と直交 する))ことを示す.このことから彼は,局所的には((座標曲線))を,同一の点から出 て長さでパラメータづけられその軌線は互いに直交する測地線の組であるように とることができることを導く;このとき E=l, F=Oであり,全曲率は



1 笞v G vGau2



k=-



( 7 )



と表示できる一―—ここで G は U のみの関数である.曲面 2 上に辺が測地線より



なる十分小さい三角形を考え,、この三角形の((積分曲率))ffkdaを計算すること によって, G aussは最も有名な定理のひとつ:((正曲率の曲面上の測地的三角形 の内角の和の 1 8 0度を越えた部分,負曲率の曲面上の測地的三角形の内角の和の



1 8 0度より小さい部分は球面表示の三角形の像のなす球面の部分集合の面積で測 ることができる))を得る.換言すれば, A,B,Cを三角形の内角とすると



A+B+C→



=Jfkda



( 8 )



である.彼はこの定理を測地的多角形に対して拡張し,測地学の実際問題に応用 する.部分展開を用いて,彼は対応する三辺の長さが等しい平面三角形と曲面上



7 8 7年に Legendre の測地的三角形の角度を比較する;球面の場合,彼の公式は 1



[ * ]



ラテン語の意味は「えり抜きの(すばらしい)定理」.



668







IX章 微 分 幾 何 学



によって得られた公式と 3次の位数まで一致する. さらに, この研究が非ユーク リッド幾何に関する Gaussの強い関心と密接に関係していることはほとんど疑



I I I章);これらは,後に非ユークリッド幾何学の((モデル))を う余地がない(第 X §V,C ) ) . 構成することの端緒をなしている ( Gaussが彼の曲面論において,他のあらゆる仕事と同様,彼の先駆者達よりず っと厳密性を目指して努力したこと(彼の全曲率の定義には我々から見ればまだ 正確さが欠けているにせよ)を注意しよう;例えば,彼は接平面の存在を問題に し,《曲率の連続性))は例えば錐の頂点で崩れることを注意している.



V Gaussの後継者達 A) 曲率と動標構



1 8 4 8年 O s s i a nBonnetは測地的三角形の面積に関する Gaussの定理を一般化 した.曲面 2上の曲線 C に対して,彼は Cの点 M での測地的曲率 1 / p gを M で の 2の接平面への Cの直交射影の点 M での曲率として定義した.従って測地線 に対しては各点で 1/pg=O である .u を閉曲線 C で囲まれた〗の部分集合とす



るとき, Bonnetは公式



虞=ffukda



fodw-f



( 9 )



を証明した. ここで Kは Gauss曲率であり, daは Uの面積要素'(J) は固定した 方向と Cの接線のなす角である.測地的三角形に対してはこれより公式 ( 8 )が再



9 )は Gauss-Bonnetの公式と呼ばれる. び得られる;それ故,公式 (



0世紀に大域的な公式に一般化された点にある . 2 この局所公式の重要性は 2 を境界のないコンパクト向きづけ可能曲面としよう; 2上には三角形分割が存在 する.すなわち(測地的とは限らない)曲三角形によって囲まれた領域に分割でき



9 )を適用して,現在 Gauss-Bonnetの定理と呼ば る(第 X章).各三角形に公式 ( れている公式



JLkda=2岱— nけno) を得る一一ここで n 2 ,n i ,n oはそれぞれ,三角形の個数,三角形の辺および頂点の 個数である. この公式の左辺は三角形分割にはよらない数であるから,右辺もそ



V G a u s sの後継者達



669



うである;実は数 x(2)=n2-n 叶 n oは今日 E u l e r -Poincare 標数と呼ばれ,〗の 位相のみによって定まり, d翌にはよらない(第 X章).かくして微分幾何学と代 数的位相幾何学との間の重要な関係が得られた.これには多くの一般化がある ( 第 X章参照).



0 .Bonnetの仕事に戻ろう. Meusnierの定理 ( § I I I ,B ) )を一般化することに よって,彼は曲面の各点における法曲率が同一の接線を有する曲線に対しては同 じである(法曲率は二つの基本形式の商を使って表示できる)こと,測地的曲率は



9 )と Gaussの((基本定理))から 第一基本形式のみを使って表示できる(これは式 ( 導ける)ことを証明した. これらの結果の簡明な解釈はのちに D arbouxによって, 曲面上の曲線の各点に,ひとつの軸がこの曲線の接線であり,他方の軸がこの曲



t r iらd r em o b i l e )[特別な動直交座標]を導入することに 面の垂線である動三面角 ( i b a u c o u r( 1 8 8 6 )によっても独立に発展させら よって与えられた.この着想は, R れたが, 2 0世紀になって E .C a r t a nによって著しく一般化され,彼自身によって



r e pさr em o b i l e ) C * Jの方法の名で) L i e群や可微分多様体の研究に適用さ (動標構 ( れて非常に稔り多い成果を挙げ,最後に C .Ehresmannによって主ファイバー束 と接続の現代的理論として結実した ( [ D J ,第 XVIおよび x x章を見よ).



0 .Bonnetの曲面論へのもうひとつの寄与は与えられた二つの基本形式 (§IV) Eduビ 2Fdudv+Gd 炉 (ただし EG-F2>0 ) ,



Ddu彗 2 D ' d u d v+D ' ' d v 2



を持つ曲面の存在基本定理と呼ばれる定理を証明したことにある. 1 8 5 6年に



M a i n a r d i , ついで 1 8 6 7年 C o d a z z iは 6個の関数 E ,F ,G ,D ,D ' ,D "とその導関 数の間の適合条件を書き表わした; 1 8 6 7年Bonnetは ( G a u s s C o d a z z iの方程式 と呼ばれる)これらの条件は或る局所座標系に対してこれらの関数を係数とする 二つの基本形式を有す曲面が存在するための十分条件であることを証明した;し かもかかる曲面はユークリッド変換を除いて一意的に定まる.この定理の証明は



r o b e n i u sの定理の特別の場合である(第 V I I I章 , 完全積分可能方程式に関する F § I I ,B ) ) . この定理は Rn内の超曲面の場合に一般化され,連結性の仮定のもと で大域的な結果に拡張された.



[ * ]



日本では英語 ' m o v i n gf r a m e 'の訳である「動枠」の語の方を多く使う.



670



第 IX章 微 分 幾 何 学



B) 測 地 線



1 8 3 6年に J a c o b iは,曲面上の 2点 P,P'を結ぶ測地弧 r oがいかなる条件のも とでこれらの点の間の最短路であるかを調べた; t~roCt) がこの弧のパラメータ



表示式であるとき,彼はパラメータ U に依存する ro に((近い))測地線の族 t~ruCt)



a



を考えた. これは r oの各点で, この曲面に接するベクトル J ( t ) =面r u C t )を定め る;今日 ro に沿うこのようなベクトル場 t~J(t) を Jacobi 場という.このベク



トル場はその係数が r oに沿っての曲面の全曲率にのみに依存する二階同次線形 微分方程式を満足し,従ってその結果(測地線の族が変わるとき) 4次元のベクト



,P 'で消える r ovこ ル空間をなすことが証明できる.恒等的に零ではなく, 2点 P 沿っての J a c o b i場が存在するとき, P とP 'とは r o上で共役であるという.直観



a c o b iは 的には共役点の対とは((無限に近い一対の測地線))が通る 2点である. J



.Bonnetによって証明された: r o上 以下の命題を証明なしで述べ,それは後に 0



'間の最短路であるための必要十分条件はこの弧上に P と共 の弧 PP'が P とP [ D J , 第 XVIIIおよび 役な点がひとつもないことである (



xx章).



.Bonnetは J a c o b iの判定法から次の定理を導いた:((或る測地線に沿 続いて 0 って全曲率が条件 O c v )はベクトル空間 T望r)(V)の 双 対 空 間 と



I I章).そこで Uが型 ( r ,q )のテンソル場であれば,型 考えることができる(第 I ( r ,q+1 )のテンソル場



v uを各テンソル h⑧z



E T~q+l,r)(V)



( zE T聾r > ( V ) )の値を



1 1 , ・ U , z 〉である. 与えることによって定義する;その値は定義から〈V



E .C a r t a nの方法は現代的な形に書き直されて,現代の大域的微分幾何学の数 多くの研究の中に,微分幾何学の,微分位相幾何学,複素多様体論,そして代数 幾何学への応用に用いられ,きわめて稔り多いものであることが明らかになって いる.



6 9 0



第 IX章 微 分 幾 何 学



参考文献



[ B G ] M.B e r g e r ,B .G o s t i a u x ,G e o m e t r i ed i f f e r e n t i e l l e ,C o l l e c t i o nU ,A .C o l i n ,P a r i s , 1 9 7 2 . [B-G-M] M.B e r g e r ,P .G a u d u c h o n ,E .M a z e t ,Les p e c t r ed ' u n ev a r i e t er i e m a n n i e n n e , , S p r i n g e r ,B e r l i n H e i d e l b e r g N e wY o r k , L e c t u r eN o t e si nM a t h e m a t i c s ,1 9 4号 1 9 7 1 . [ B o ] N .B o u r b a k i ,E 託m entsd ' h i s t o i r ed e sm a t h e m a t i q u e s , 新版, Hermann,P a r i s , 日版,東京図書, 1 9 7 0 . 1 9 7 4 ; 邦訳,ブルバキ数学史, I .Dieudonne,血 ment sd ' A n a l y s e ,1 9巻 , G a u t h i e r V i l l a r s ,P a r i s ,1 9 6 9 1 9 6 8 . [ D J J u b l i s ho rP e r i s h ,B o s t o n ,1970— 1975. [ S p ] M.S p i v a k ,D i f f e r e n t i a lg e o m e t r y ,1 5巻 P [ 1 ] ・ E .C a r t a n ,O e u v r e sc o m p !紅e s ,6巻 G a u t h i e r V i l l a r s ,P a r i s ,1 9 5 2 1 9 5 5 ; リプリ ,C .N .R .S . ,1 9 8 4 . ント, 4巻 給t e s ,2 7巻 2シリーズ, G a u t h i e r V i l l a r s ,P a r i s ,1 8 8 2 [ 2 ] A .C a u c h y ,O e u v r e scomp 1 9 7 4 .



[ 3 ] G .D a r b o u x ,L e 9 o n ss u rl at h e o r i eg e n e r a l ed e ss u r f a c e s ,4巻 G a u t h i e r V i l l a r s , h e l s e a ,NewY o r k ,1 9 7 2 ( 第1 ,2巻は第 2版 ) . P a r i s ,1 8 8 8 1 8 9 6;リプリント, C [ 4 ] L .E u l e r ,Operaomnia( 4シリーズ), Teubnerおよぴ 0 .F t i s s l i ,L e i p z i g B e r l i n Z t i r i c h ,1 9 1 1 1 9 8 3 . o t t i n g e n ,1 8 6 3 1 9 3 3 ;再版, G .Ohms, H i l d e s h e i m [ 5 ] C .G .G a u s s ,Werke, 1 2巻 G NewY o r k ,1 9 7 3 . .Milnor,Morset h e o r y ,U n i v e r s i t yP r e s s ,P r i n c e t o n ,1 9 6 3 ; リプリント,東京大 [ 6 ] J 学出版会;邦訳,志賀浩二訳,モース理論,吉岡書店, 1 9 6 8 . l aG e o m e t r i e ,新 版 P a r i s ,1 8 0 9 . [ 7 ] G .Monge,A p p l i c a t i o n sd e! ' A n a l y s ea .N i t s c h e ,V o r l e s u n g e nU b e rM i n i m a l f l 且c h e n ,S p r i n g e r ,B e r l i n H e i d e l b e r g N e w [ 8 ] J Y o r k ,1 9 7 5 . q u a t i o n so fe l l i p t i ct y p e ,L .B oron訳 ,N o o r d [ 9 ] A .V .P o g o r e l o v ,Monge-Amp紅 ee h o f f ,G r o n i n g e n ,1 9 6 4 . ,T e u b n e r ,L e i p z i g ,1 8 9 2 ; [ 1 0 ] B .R i e m a n n ,Gesammeltem a t h e m a t i s c h eWerke,第 2版 リプリント, C h e l s e a ,NewY o r k . .Math.PuresA p p l . ,9 ,第 4 1巻 , 1 7 7 [ 1 1 ] R .Thom,Surl at h e o r i ed e se n v e l o p p e s ,J 9 6 2 . 1 9 2ページ, 1



(上野健爾訳)



数学史 I I



( 全 3冊 )



1 9 8 5年 年1 1月 1 1日 第 1刷 刷 発 発 行 行c 1 9 8 6 2 5日 2



定価 6 5 0 0円 の



五 金 訳







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〒1 0 1東京都千代田区ーツ橋 2 5 5 発 行 所 髄 岩 波 書 店 電話 0 3 2 6 5 4 1 1 1 振替東京 6 2 6 2 4 0 印刷・三秀舎 製本・牧製本 落丁本・乱丁本はお取替いたします



P r i n t e di nJapan ISBN4 0 0 0 0 5 5 0 4 6











史III



1700-1900



J .デ ュ ド ネ 編







字 ’ ‘







1700-1900 上野健爾金子晃 浪川幸彦森田康夫訳 山下純一



岩波書店



I I I



,



,



,



ABREGE D'HISTOIRE DES MATHEMATIQUES 2 volumes edited by Jean Dieudonne Copyright©1978 by Herman11, Paris



This Japanese edition is published in 1985 by Iwanami Shoten, Publishers, Tokyo by arrangement with Hermann, Paris.



V



目•



第 X章







位相幾何学 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6 9 1



I序 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6 9 1 I I 一般位相幾何学 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6 9 3



m



組 合 せ 的 位 相 幾 何 学 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6 9 6



A) グラフと 4色問題 B) E u l e rの公式 C ) Riemannの寄 与



IV ホ モ ロ ジ ー の 登 場 ・ ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .7 0 3



A ). P o i n c a r eの仕事



v



B) 複体とホモロジ一



双 対 性 ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・: ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 0 8



A) P o i n c a r eの定理と A l e x a n d e rの定理 B) Hopfの仕事と J







、 VI 不変性, Brouwerの仕事,ベクトル場……………………… 7 1 4



A) 不変性,基本予想 B)Brouwerの仕事,不動点 C )ベ クトル場, S t i e f e l W h i t n e y類 D ) 次元



V I I 積 構 造 ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 2 0 A ) コホモロジーと積構造 B )H空間と Hopf代 数



V I I I 基 本 群 と 被 覆 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .; . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . _ . . . .7 2 4 A) 基本群 B) アルゴリズム C )P o i n c a r e予想 D ) 被覆 IX ホモトヒ゜一群とファイバー束..・・・・・・・• …• ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・• …・ ・ ・ 7 2 9



A) ホモトヒ゜一群 B) 随伴関手 C )E i l e n b e r g M a c L a n e空 間 D) ファイバー束



X 3次元多様体,単純ホモトピー型,



cw複体……………… 738











VI



A) 3次元多様体,



cw複体



レンズ空間



B) 単純ホモトヒ゜ー型



C)



D) 基 本 予 想 区 分 的 線 形 構 造 , 微 分 構 造



XI 結 論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .744



第 XI章 積 分 と 測 度 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .759 分 の 定 義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .759 I積 I I 基本定理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 6 3 I I I S t i e l t j e s測度と Radon測度



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .7 6 5



IV 《抽象的》測度........ _ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ., . 7 6 8



第X I I章 確 率 論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .771 I 序 ・・・・ ~············································································771



I I 創 成 と 古 典 期 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .7 7 3 A) 創 成



B) 古典期



I I I 解 放 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .7 8 0 A) シャム型三つ児



IV 2 0世 紀 A) 確率過程



B) 確率と測度



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 7 8 6



B) 確率的構造



V 分 枝 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .8 0 7



第X I I I章



公 理 論 と 論 理 学 .•• ・・・・・・・・・・・・・・・...… . . . .・・・・・・・・・・・・・・・..8 1 6



l 序 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ヽ . . . .8 1 6



I I 1 9世紀における公理的方法の変遷…………………………… 817 A) 平行線の問題



B) 非ユークリッド幾何学の出現



析的》方法と《総合的》方法の支持者間の論争



C) 《解



D) ユークリッ



ド公理論の批判 E )C a y l e yの総括から E r l a n g e nプログラム



へ F ) Paschにおける幾何学の公理論の構想 G) 1 9世紀最



0年間の公理主義 後の 1



H) H i l b e r tとそれ以後の幾何学の基











. . v n







I I I 19 世紀末までの形式化の発展とその役割の理解••………… ·847 A) 数学の記号法の発展における基本的段階



B) 計算法およ



び数学の意味と範囲に関する見方の変遷



IV 1 9世紀の数理論理学・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 7 7 A)論理の代数と命題計算 B ) 関係の理論 C )Fregeと Peanoによる公理化された論理学



V 20世紀の偉大なる理念 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 9 2 A) 論理主義と型の理論 B ) 集合論 C) H i l b e r tのプログラ ム D) 直観主義とその他の非古典的見解



E) 帰 納 的 関 数



F) モデル理論の登場 G) H i l b e r tの第 1問題の解決



歴 史 人 名 一 覧 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .9 7 1 訳者あとがき ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 0 9



人名索弓 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .1 0 1 2 事項索弓 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .1 0 2 5



. .



Vlll







I巻 目 次



はじめに 原著まえがき



凡 例



序 章 第 I章 第I I章 第I I I章



1 8世紀の解析学 1 8 4 0年までの代数学と幾何学 1 8 4 0年以降の代数学



第 IV章 解 析 関 数



第 V章 数 論



第I I巻 目 次 第 VI章 解 析 学 の 基 礎 第V II章 楕 円 関 数 と Abel積 分



第V I I I章 関 数 解 析 学 第 IX章 微 分 幾 何 学



' 6 9 1



第 X章 位 相 幾 何 学 GuyH i r s c h I序 位相幾何学(とくに代数的位相幾何学)は今なお非常に速い発展をみせており, そのいくつかの章が数十年の間に全く書き改められるということがしばしば起 る;したがって,この章は他の章よりもあつかう主題の選択とそれを組み立てる 方法とが個人的な好みに影響されがちなのは避け難い.以下では,歴史学的な基 準のみに基づいて考慮する形はとらない;数学者の歴史よりも数学的なアイデア の歴史を明らかにしたいので,概念や用語,方法や定理がはじめて示された日付 を詳しく与えて,さまざまな数学者達の優先権を精密に跡づけるべく常に努力し たというわけではない.われわれは,それ以前にあった問題の答が明確にされる とそれに応じて,どのように新しい問題が現れてくるかを示そうと試みた;さら に,そしてとくに,テーマの選択に当っては,近づくことがそう困難ではない豊 かな理論に通ずる諸概念を読者(専門家でない数学者)に呈示すべく留意してこれ を行なった. 事実確かに,位相幾何学の体系的発展はほぼ 1世紀前に始まったにすぎず,し たがってその歴史は数学の歴史の非常に短い一時期を覆っているにすぎない;に もかかわらず,今日さまざまの分野にその成果が見出される抽象化と一般化の傾 向の非常に興味深い例をいくつももたらしている.これらの非常に抽象的な概念 を導入する発端のところにあるのが位相幾何学に由来する諸問題なので,これら の問題について述べることによって,非常に簡単な例による[抽象的な概念の]採 用と応用の記述が可能になるのである.



e i b n i z [ l ]による(しかしおそらく彼は別の性質の計算法 位相幾何学はまず, L のもくろみを問題としていた)位置解析学 ( A n a l y s i sS i t u s )の名で登場した;そ してこの名前は 1 9 3 0年代前半ごろまでフランス語や英語園の国で使われ続ける;



692







X章 位 相 幾 何 学



しかしドイツの数学者 L i s t i n gが 1 8 3 6年に T o p o l o g i e c * J[ 2 ]という名前を創り出 し,これは派生語が作りやすくてやがて次第にとくにドイツ語で「位置解析学」



i l b e r tは,たとえば 1 9 0 0年に,国際数学者会議に にとってかわるようになる. H おける有名な講演の中でこれを使用しているが,この用語の意味を説明すること を必要とは考えていない. . . ここで位相変換とか位相写像というときは,位相幾何学の分野での写像(連続 写像)を表わさず,全単射かつ両連続な写像という特別なものを表わすというこ



o i n c a r eによってはじ とを注意しておくのがいいだろう;それはのちに(恐らく P homeomorphisme)とよばれるようになる;この概 めてもちいられた)同相写像 ( 念は, 1 8 6 0年に M o b i u s [ 3 ]によって初等相反変換 ( E l e m e n t a r v e r w a n d t s c h a f t ) ・ の名で導入された. ' ところで,よく知られているように,[フランス語の]" t o p o l o g i e "という用語は



( ( a l g らb r e ) )という語がもつあいまいさと類似のあいまいさをもっている:位箱義



ィ 蒻 辛( l aT o p o l o g i e )が数学の一分野を示すとすると,位和 ( u n et o p o l o g i e )はイ臼箱



糖 益 (unestructuretopologique, 空間つまり位相をもった集合)の同意語であ る一ー近年この概念はより正確な意味を与えられており,今日では空間の開集合 の集りを示すことが多い.空間上に位相構造が存在することで連続関数(または 連続写像)について語れるようになる. 関数解析学においては非常に短い間に異なった位相をもつことのできる集合が いくつも登場する(第 V I I I章 , § VIIを見よ).たとえば,(とくに区間や直線上 の数値)連続関数の集合で,通常の収束(つまり((単純))収束)と一様収束を考えれ ば,第 1の場合にはその集合内のある元に収束するが第 2の場合には集合内の元 には収束しないような元からなる列にお目にかかるだろう.これは,連続関数の '集合に二つの同値でない位相を与えたことを意味している.こうして,与えられ た集合上に入れることのできるさまざまな位相の問題に直面する.そして,より 一般的なやり方で,豊かな理論を作るために位相構造について何を要請すべきか 明らかにする必要があった.(位相幾何の基礎概念が次第に作りあげられていく ,§ VIIと § V I I Iそして第 V I I I章 , 過程についてのより詳細については第 VI章



[ * ]



語源はギリシア語の



t o p o s (場所) + l o g i a (理論)で「位置の学」の意.



I I 一般位相幾何学



693



§VIIを見よ.) 広い意味では,位相幾何学というのは,位相同型によって不変な性質の研究の



ことである;類似の性質の探究とそれらの関係の研究は,数学者が;シ人 b~'匠



. . とか連結性とか次元とかのような多少とも幾何学的な直観的考え方に正確な定義 と厳密な基礎を与える必要性を感じたときに実行された. 明らかに,位相幾何学は一般位相幾何学(集合論的位相幾何学または解析的位



相幾何学ともいう)[*]と,後に代数的位相幾何学となる組合せ的位相幾何学とい う多かれ少なかれ二つに分離された分野からなっている;これらの名前が示すよ うに,それぞれの方法の特徴によっても区別されるが, さらにそれらは相異なる 起源をもっている.一般位相幾何学は実関数論によって提出された諸問題に関連 して誕生し(第 VI章 , § V I I Iを見よ),とく叫関数解析学,)なかでも変分法やスペ



I I I章 , § V I ,E)を見よ)での必要性に答えるべく発展してきた. クトル理論(第 V 代数的位相幾何学の方は,(曲面の位相的性質の研究へと向った 1変数複素関数に



iemannの仕事(第 I V ,V I I章を見よ)の中に体系的な発展の起源をもっ 関する R ている.)位相幾何学の二つの側面をそれぞれの目標の性質によって特徴づけるこ とはさらに困難であり,[一般に,そうすることは問題にならないようにみえるが, 絶対的とはいえないにせよ,次のことを基準にすればそれらの区別が可能になる ことが多いう概念なり理論なりを空間全体にではなくその点の近傍に適用しよう としたときに,その意味と効力のすべてが保たれるならば,それは一般位相幾何 学にふくまれる;これに反して,それが近傍には適用できないかより不完全な意 義を保つにすぎないときはむしろ代数的位相幾何学に関係している. とはいえこ



§ V I ,D ) )次元論のような雑種 のことは,もちろん,たとえばやがて問題にする ( の理論の存在を妨げるものではないー一次元論では任意の近傍でその意味を保つ 概念を使うが, しかしながらその取扱いは代数的位相幾何学の方法に訴える.



I I 一般位相幾何学 ここでは一般位相幾何学についてのその詳細はほとんど述べない一ーなぜなら, 後に述べる代数的位相幾何学の場合とはちがって,一般位相幾何学は今までのと



[ * )



日本では「位相空間論」の用語が一般的である.



694



第 X章 位 相 幾 何 学



ころ,その発生源となったものとは別の数学の領域で応用可能な新しい方法を創 り出したとは思われない;他方,解析学と関数解析学との発展に結びついたその 主たる様相はすでに他の章で論じられている.したがって,ここではごく簡単な 一般的総括でも満足していただけよう. 一般位相幾何学はその創出を部分的にあるひとつの行きちがいに負うているこ とが認められるというのは何とも皮肉な話である.実 1変数関数の三角級数つま



りF o u r i e r級数による表示を研究していて, GeorgC a n t o rは 1 8 7 0年 ご ろ に 三 角級数の形を不変にしたままで関数値を変えられる点の集合の特徴付けに興味を , § V I I ,B )を見よ).そして,実数直線の部分集合の性質を研究 もった(第 VI章 することになり,(既に W e i e r s t r a s sによって導入されていた集積点の概念の他 に)位相幾何学の基本的な概念のいくつか,とくに導集合,つまり集積点の集合 , § V I I ,B )を見よ);これから出発してかれは((第一 の概念を導入した(第 VI章 類))の集合(導集合を作ることを繰り返すと有限回で空集合に行きつく集合のこ と;第 VI章 , § V I I I , A)を見よ)を定義する.第一類集合は可算で, C a n t o rが 論じようと思った集合の類に属していた;しかし第一類集合以外にもまだそのよ うなものが確かに存在し,一方 C a n t o rはまもなく無限集合の研究と弁護にまっ た<没頭することになって,もともとのかれの問題を解くことを放棄してしまっ た一一この問題は今日でもまだ完全には解かれていない.算術的かつ代数的な考 察を C a n t o rはまったく無視したが,それらが本質的な形でその解答にかかわっ



1 4 8 ] . したがって,やがて解決を他人にまかせることになる一 てくるようである [ つの問題の位相幾何学的な側面を調べてみることによって, C a n t o rが 一 つ の 新 しい分野への第一歩をしるしたというのはちょっとした偶然のいたずらであった. ところで,何十年もの間,位相構造の研究は集合論と不可分であることが多か った一一そのことは数学百科全書[仏語版]の中の R .B a i r eによる項目 ( T h e o r i e



d e se n s e m b l e s )[ 1 5 0 ]や , H a u s d o r f fによって 1 9 1 4年に出版され,そこで近傍の 公理が導入された著作 ( M e n g e n l e h r e )[ 1 5 1 ]の題名が物語っている.(そして,



C a n t o rが考えた最初の集合は,かれの研究が解析の問題から出てきたことから, 明らかに直線や平面の部分集合であった.集合についての抽象的な理論が「属す る」という概念あるいは濃度のそれの考察, さらに順序構造へと向かっていくの は徐々にでしかなかった.ユークリッド空間の部分集合以外の((抽象))空間,つま



I I 一般位相幾何学



6 9 5



り位相構造をもった集合を導入したのは本質的には Frech e t[ 4 ]( 1 9 0 6 )である(第



V I I I章 , § VIIを見よ).)一般位相幾何学が,かなり遅れて独立の分野と認めら れた頃,それは, しばしば集合論的位相幾何学あるいは解析的位相幾何学の名で よばれたが,これらの名称はそれがどういう分野(集合論や解析学への応用)から 誕生したかを想起させる. ここで,一般位相幾何学という名称は(代数的位相幾何学とはちがって)全面的 に正当とは認め難いことにも言及しておく方がいいだろう一ーそのわけは,代数 的位相幾何学も一般位相幾何学と同じくらい一般的だからである;解析学の基礎 構造の一つとして出現するこの分野には基礎位相幾何学という名前を充てた方が 多分よかったのではなかろうか. 一言でいえば,独立した分野と認められて以来,一般位相幾何学は,ぬえ[*刊こ すぎないのではないかとの思いを払拭できないひとつの目標を追求してきた.厳 しすぎる公理系は特定の空間(とくに関数解析学に出てくる空間)への理論の応用 を妨げる.かといって,余りゆるい公理では保たれていてほしいいくつかの定理 (古典解析学の位相幾何学的な定理の類似)の成立が保証されない.それ故に,連 続写像が介入してくる問題を取り扱うためには,もし存在するなら,ぴったりな一 枠組を見出すように公理を適切に選ぶことが大切である.考察に値する位相は少 なくとも分離的でなければならない,つまり相異なる 2点が交わらない近傍をも



ausdorffの公理 (T2ともよばれることがある)を満たすべきであ つことを課す H る,、ということは一般的に受け入れられてきた. したがって一方で, S t o n e [ 5 ]の アイデアをもちいて Z a r i s k iが代数多様体上に(部分多様体を閉集合とする)非分



9 5 0年以降大きく発展していった ( [ 1 5 7 ] ,1 5 0ペ ー 離的な位相を導入し,それが 1 ジを見よ)ことが確認されたのはある意味で驚くべきことである..このことは



Hausdorffの公理が場合によっては強すぎるということを示している;しかし, 一方では,分離空間であっても与えられた任意の 2点でそれぞれ 0と 1の値をと る連続関数がつねに存在するとは限らないのも事実である.(定数以外の連続関 数がない分離空間が(可算としても)存在する [ 6 ] . ) 点あるいは閉集合が交わらな い近傍によるだけでなく連続関数によって分離できるための必要条件は, さまざ [ * ] 原語 ' c h i m 紅e ' (キマエラ).頭は獅子,身は羊,尾は竜の怪獣.転じて,寄せ集め の空しい空想の産物の比喩.



696



第 X章 位 相 幾 何 学



まな分離公理の導入につながっていくが,



とくにその番号付けに場当り的な性格



を見ることができる. (Tむ広という公理—しばしば正則空間とか正規空間と よばれる空間に対応する一ーのあとで提出された Tihonov[ 1 5 2 ]の 公 理 に は 指 数



3 . 5が与えられたりする.)分離に関するこれらの公理は距離空間の場合, さらに, 944年に Dieudonneによって導入されたパラコンパクト*)空間の場合に 一般に 1 も,すべて成り立つ;パラコンパクト空間は実際ほとんどの応用のために十分な 枠組を与えるようにみえるが,しかし今までのところ,位相空間の最も適当な定 義の追究は数学者の満場一致によって受け入れられる結果に到達したとはなお断



§ v r , D))非 常 に よ く 似 た 状 況 が 次 元 に 関 し て も 言できない.(後に見るように C あらわれる.)



I I I 組合せ的位相幾何学 A) グラフと 4色問題 組合せ的位相幾何学の最初の定理を導いたのは本質的に Eulerで あ る . か れ は1 7 3 6年に有名な ( ( K o n i g s b e r gの橋》 [ 7 ]の問題から出発して,グラフ**)が各辺 をちょうど 1回ずつ通って一筆書きできるための必要十分条件を述べた.グラフ の理論はそれ以来非常に著しい発展を続けるが,それは特に,(例えば 1 8 5 9年の



Hamilton[ 8 ]の場合のような遊戯的なものを除けば)導線網中の電流の流れに関 irchhoffの法則 [ 9 ]( 1 8 4 7 )によってもたらされたものを恐らく最初として, する K 以来様々な分野での応用と結びついている.用いられた方法が今までのところ数 学の他の分野に深い影響を与えたとは思えないので,ここではグラフの理論の歴 史にふれることはしないが,ただ一つ,簡単に述べられるという理由で,平面グ ラフに関する Kuratowskiの定理 ( 1 9 3 0 )[ 1 0 ]を挙げておこう. 5点が与えられた ) * 集合 Eの被覆別が同じ集合 Eの被覆氾よりも細かいというのは,任意の AaE別に 対して AacBpとなる少なくとも一つの B pE 氾が存在することである.空間 Eの被覆汎 は , Eの各点が況の有限個の元だけと交わる近傍を持つとき局所有限であるといわれる. さて空間 Eは , H a u s d o r f f空間であってかっ E の任意の開被覆について与えられた被覆 よりも細かい局所有限な E の開被覆がとれるとき,パラコンパクトであるといわれる. (E がH a u s d o r f f空間だという仮定は人によって省く場合もある.) n o e u d )あるいは頂点とよばれる辺(線 * * ) グラフ(向きなし)とは,その両端が結節点 ( 分の位相同型像)からなる集合のことである;どの二つの辺も交わらないか一つまたは二 つの頂点を共有する.グラフは 1次元の多面体や複体 ( § I V , B)を見よ)の例である.



I I I 組合せ的位相幾何学



697



とき,平面からはみ出さずしかも与えられた点以外の点で交わることのない辺だ けでこれらの点をすべて互いに結びつけることは不可能である; 3点ずつの二つ のグループからなる 6点から出発して一つのグループの各点と別のグループの各 点とを結びつけようとしても同様のことがおこる(三つの家と三つの泉の問題). 平面内に構成できないグラフは少なくともこの二つの図形のうちの一方をふくん



uratowskiの定理である. でいるというのが K 4色問題についてもすこし述べておこう一一これはグラフの理論と密接に結び ついている. 地図の着色問題は,与えられた種数 ( [ G H J ,4 4 5ページ)の曲面上に描かれた グラフの辺によって区切られた曲面多角形を一つまたは複数の辺に沿って隣接す る二つの面が決して同色にならないように色分けすることを求める;問題となる のは,与えられた曲面上のあらゆる地図を着色するのに必要な最小の色数を決定 することである.この問題は, F r a n c i sG u t h r i eによると, 1 8 5 2年に d eMorgan が提出した問題を追求する中ではじめて現れたようである [ 1 1 ] : 球面(または平 面)上では,知られているどの地図も 4色で十分だということが確かめられていた. 一般に,与えられた種数 Pの曲面について,この曲面上に n色必要な地図があ り,かつ任意の地図が n色以下で着色可能であることが証明されるなら ( ( n色定 理))がえられたという. n色定理(ここで nは曲面の種数の関数になっている[*])



...



は,球面(または平面)以外の任意の曲面について, 1 8 9 0年に P .J .Heawoodに



1 2 ] . それは相次いでさまざまな種数の場合に確かめられ,っ よって述べられた [ いに 1 9 6 8年 , G .R i n g e lとJ .W.T.Youngsによって完全に証明された [ 1 3 ] .n 色で十分なことを言うために, G .D.B i r k h o町 1 5 5 ]による n+l色既約地図の概 念が導入される:それは,面の数がそれより少ない任意の地図は n色で着色でき るにもかかわらずそれ自身は n+l色必要な地図のことである.ある図形(つまり いくつかの多角形で,場合によっては他の多角形に囲まれあるいはさらに囲まれ るといったもの)が既約地図内に表現されえないことを示すために,辺を一つな くすことによって既約地図の一部としてえられた地図が,仮定から, n色で着色 できること,またある種の図形に対してはしたがってこの着色からはじめの地図



m n~(7+v蒻F汀) / 2(pは種数).



698



第 X章 位 相 幾 何 学



の n色による着色を作ることができるという事実を利用する.最も簡単な例は



n-1辺からなる多角形の場合である: n+l色既約地図中に n-1辺形が現れると き,その n-1辺形の辺の一つを消す;すると,この地図は,仮定から, n色で着 色できるが,その n-1辺形をとりまく面の環の中にはたかだか nー1色しかない のでこの n-1辺形を着色するために使える別の色がたしかに一つ残っている. 一方,与えられた種数 Pの曲面について,この曲面上に描かれた任意の地図が辺



pに依存する) m が存在する.(たと 数 m以下の面を少なくとも一つもつような ( えば,球面なら m の値は 5 ; 円環面や射影平面なら m の値は 6となる.この結 果はあとで問題とする多面体に関する E u l e rの公式 ( § I I I ,B ) )から出る;この



E u l e rの公式からはまた,辺数の多い多角形の個数が相対的に少なく,それらが あれば必ず辺数が 5以下の多角形がそれにみあって存在しなければならないとい うことも示される.) 球面(または平面)の場合については,着色問題は長い間未解決で,いくつかの



Heawood 正しくない「証明」のもとになってきた; 5色で十分だということは ( 以来)知られていたが, 5色必要な地図があるかどうかはわからなかった;また, 面の個数が 4 0以下の地図はすべて 4色で着色可能だということは証明されてい



9 7 6年に A p p e lとHakenが球面についての 4色定理を証明したと言明した た. 1 [ 1 5 6 ] ;. 5色既約地図の中に存在しえないはずの図形を膨大な数記述し,次にこれ らの図形の少なくとも一つが球面または平面上に描かれた任意の地図の中に現れ る(これをかれらは図形の不可避集合とよんでいる)ということを示すというのが, かれらの方法である(詳細は上に引用した文献中では述べられていない[*りまた, 証明の様々の段階の間にコンピューターを使用する.) おしまいに, 3次元空間中には類似の定理が存在しないことを注意しておこう —それぞれが(面に沿って)残りのすべてと隣り合うような n 個の多面体(図 1



を見よ)を構成できることが F r e d e r i cG u t h r i eによって示されている [ 1 4 ] ; また



H .T i e t z eはさらに(もはや位相幾何学には属さない条件だが)凸であることを追 1 5 ] . 加しても同じことが言えることを証明した [



[ * ] 既に発表された. [ 1 5 6 ]の 訳 者 追 加 文 献 参 照 . た だ し 証 明 の 正 し さ を 跡 づ け て 確 認 することは非常に難しい.



699



図 1 各プロックは一方を他方の上に直角に 接合した二つの定木からなっており,ブロッ クごとでその接合部がずれている.上の定木 は南北方向,下の定木は東西方向を向いてい る.下の定木を平面上に並べ,同時に上の定 木も隣り合う二つの定木とぴったりつくよう にする.このとき各ブロックは残りのすべて のプロックと接する.



B) Eulerの公式 位置解析学への E u l e rのもう一つの貢献はわれわれにより大きな利益をもた らしている一ーなぜならそれは位置解析学の歴史の中で重要な位置を占める一般 化につながり,, またそれによって非常に単純な場合の内に位相幾何学へつながる 考え方のゆるやかな進化を見ることができるからである.



, 辺数 a , そして面数 fを も ち い て 分 類 す る こ と を 研 多面体をその頂点数 s u l e rは 1 7 5 0年 に 関 係 s-a+f=2を得た [ 1 6 ] . (この定理はしばしば 究中, E D e s c a r t e sに帰される; D e s c a r t e sは,多面体の立体角の和に関するひとつの定 理を証明した [17] ー~ 曲面の場合に G aussが全曲率とよぶもの(第 i



IX章 , §IVを見よ)と類似する;この研究の中で,かれは,平面角の個数につい aとなることも書いていて,これか て2/+2s-4という表示を導き,この数が 2 u l e rの公式を導ける. しかし, D e s c a r t e sのみならず,かれ らほとんど直ちに E e i b n i zもこの公式にはふれていない. D e s の原文の写しの一つを持っていた L c a r t e sは平面角と立体角という 2種類の用語に興味を集中しており,立体角に関 連して頂点を問題にしたものの,頂点,辺,面,…の列は考察しなかった;また,



E u l e rとはちがって,かれはそれら各々の個数の間の関係は調べなかった.) E u l e r [ 1 8 ]は 1 7 5 1年にかれの定理の証明を与えたが,この証明は正しくなか った.さらに,もし多面体,面,辺という用語の定義の厳密化と限定を行なわな ければ,定理の主張そのものがもはや正しくない.証明は,面をいくつかなくし て(たとえば平面上の三角形のような)明らかに公式が成立する単純な多面体に帰 着するために,ある型の帰納法あるいは還元に基づいている;ところが,はじめ



700



第 X章 位 相 幾 何 学



の多面体の形や面の形の如何にかかわらずこの還元がつねに可能だとは証明でき ない.



E u l e rの定理は,円板に同相な面からなる,球面に同相な多面体に適用される; もし面が平面的で辺が直線的であると仮定しないなら ( E u l e rは 明 ら か に そ う 仮 定している),辺が線分に同相だとしておく必要がある.これらの条件をひとつ でも満たさないとすると E u l e rの主張に対し簡単に反例を作ることができる;



8 1 3年に L h u i l i e rが行なった [ 1 9 ] ;Lhu i l i e rの反例の一つにたとえば, それは 1 穴のあいた多面体,つまり一つの多面体の中に別の多面体が入っているときの二 つの多面体の間の部分があるが,かれはある種の結晶を考察中にこうした反例作 りに導かれたようである. 何人かの数学者たち――その中に L e g e n d r e ,C a u c h y ,L h u i l i e r ,G e r g o n n e ,



vonS t a u d t ,S t e i n e r ,S c h l a f l i ,P o i n s o t ,H e s s e l ,M o b i u s ,L i s t i n g ,J o r d a nら がいる*)—ーが,その証明を試みるとか(最初の満足すべき証明は 1847 年に von



S t a u d t [ 2 0 ]によって与えられた),成立するための条件の明確化など, E u l e rの公 式に首をつっ込んでいる.これらの条件 [ E u l e rの公式が成立するための条件]を 位相幾何学の枠組(上に述べたように,同相の概念だけに頼る)の中に置かずに, 反例(遠ざけたい((怪物》 ( m o n s t r e )と考えられた;((異常》 ( n i o n s t r u o s i t e ) E * Jに対す



9世紀に非常に一般化し,その世紀の後半にはとくに解析学に多 るこの姿勢は 1 く見出される)ができるのを防ごうと努めているのは実に驚くべきことである. Euler の定理が面や辺が曲がっていても成立すること,したがってそれが (Poin~



s o tなどが気付かなかったことだが)計量幾何や射影幾何というよりむしろ位相幾 8 6 1年になって C a y l e yと L i s t i n g 何学に属すことがらであることは,やっと 1 o r d a n )[ 2 1 ]がはじめて注意している. ( 1 8 6 6年には J vonS t a u d t ( 1 8 4 7 )の証明が存在したにもかかわらず, S c h l a f l iによって 1 8 5 2年 に行なわれる一般化 ( n次元の多面体の場合に公式を拡張する [ 2 2 ] )はふたたび同 じ種類の欠陥を呈した.同じようなあいまいさは,組合せ的位相幾何学の発展に 充てられた初期の仕事,とくに P o i n c a r eの仕事の中にも繰り返し現れてくる. * > J . C .P o n tの著書 [ 1 5 8 ]に主な文献が出ている.またより完全な文献表は, D e h n 3 8 ]中にある. H e e g a a r dの報告 [ [ * ]



原義は(先天的かつ不治の)「不具」,



I I I 組合せ的位相幾何学



7 0 1



Gaussは位相幾何学の間題に興味をもった(とくに, 3次元空間内の 2曲線のま つわり数*)の一―—積分で定義された形の一一概念はかれによるものである [23])



が,その影響は全く間接的なもの,



とくにかれの弟子 L i s t i n gによるものにすぎ



なかった—後者は Euler の定理を再考し,(偶数次元の成分の個数の和から奇



数次元の成分の個数の和を引きさることによる) n次元への一般化を予想してい



i s t i n gは,すでに述べたように,位相幾何学 ( T o p o l o g i e )という名称を作り る. L 出しただけでな 5ページ, 1 9 2 1 . 1巻 , 2 2 5 2 5 8ページ, 1 9 2 0 . [ 5 6 ] S .L e f s c h e t z ,Ann.o fM a t h . ,2 ,第 2 [ 5 7 ] S .L e f s c h e t z ,P r o c .N a t .Acad.S c i .USA,第 9巻 , 9 0 9 3ページ, 1 9 2 3 ;T r a n s . 8巻 , 1 4 9ページ, 1 9 2 6 ,第 2 9巻 , 4 2 9 4 6 2ページ, 1 9 2 7 ; Amer.Math.S o c . ,第 2 S e l e c t e dp a p e r s ,1 9 9 2 8 1ページ. [ 5 8 ] H.H o p f ,J b e r .D .M.V. ,第3 4巻 , 1 3 0 1 3 3ページ, 1 9 2 6 ;Math.Z . ,第 2 6巻 , 7 6 2 7 7 4ページ, 1 9 2 7 ;P r o c .N a t .Acad.S c i .USA,第 1 4巻 , 2 0 6 2 1 4ページ, 1 9 2 8 . .R e i ; i . 1 eAngew.M a t h . ,第 1 6 3巻 , 7 1 8 8ページ, 1 9 3 0 ;S e l e c t a ,1 4 3 7ペ [ 5 9 ] とくに J ージを見よ.



[ 6 0 ] S .Eilen~erg, S .MacLane,P r o c .N a t .Acad.S c i .USA,第 2 8巻 , 5 3 7 5 4 3ペー



7 5 2



第 X章 位 相 幾 何 学



ジ , 1 9 4 2 .



[ 6 1 ] S .E i l e n b e r g ,S .MacLane,T r a n s .Amer.Math.S o c . ,第 5 8巻 2 3 1 2 9 4ページ, 1 9 4 5 . [ 6 2 ] H.T i e t z e ,M o n a t s h .f .Math.P h y s . ,第 1 9巻 , 1 1 1 8ページ, 1 9 0 8 .



.W.A l e x a n d e r ,T r a n s .Amer.Math.S o c . ,第 1 6巻 , 1 4 8 1 5 4ページ, 1 9 1 5 . [ 6 3 ] J S .L e f s c h e t z ,T o p o l o g y ,1 9 3 0と , B u l l .Amer.Math.S o c . ,第 3 9巻 , 1 2 4 1 2 9ペ [ 6 4 ]. ージ, 1 9 3 3 ;S e l e c t e dp a p e r s ,479-484ページ.



[ 6 5 ] S .E i l e n b e r g ,Ann.o fM a t h . ,第 45巻 , 4 0 7 4 4 7ページ, 1 9 4 4 . [ 6 6 ] J .W.A l e x a n d e r ,T r a n s .Amer.Math.S o c . ,第 2 8巻 , 3 0 1 3 2 9ページ, 1 9 2 6 .



.E .J .Brouwer,Math.A n n . ,第 7 0巻 , 1 6 1 1 6 5ページ, 1 9 l i ;C o l l .w o r k s ,第 [ 6 7 } L 2巻, 4 3 0 4 3 4ページ. [ 6 8 ] L .E .J .Brouwer,Math.A n n . ,第 7 1巻 9 7 1 1 5ページ, 1 9 1 1 ;C o l l .w o r k s ,第 2巻 , 4 5 4 4 7 2ページ; [ 6 7 ]の中にすでに(暗に)ふくまれている. [ 6 9 ] L .E .J .Bro~wer, N e d e r l . Akad.W e t e n s c h .P r o c . ,第 1 5巻 , 3 5 2 3 6 0ページ, 1 9 1 2 ;C o l l .w o r k s ,第 2巻 527-536ページ; P r o c .I n t .C o n g r e s sMath.Cambridge, 9—10 ページ,



1912;



C o l l .w o r k s ,第 2巻 , 5 3 8 5 3 9ページ.概念は [ 6 8 ]の 1 0 5ページ



で導入されているが,類については明言されていない.



[ 7 0 ] H.H o p f ,J b e r。D.M.V.,第 34巻 , 1 3 0 1 3 3ページ, 1 9 2 5 ;S e l e c t a ,1 4ペ ー ジ お



ath.A n n . ,第 96巻 , 2 09-224ページ, 1 9 2 6 . よび M [ 7 1 ] H.H o p f ,Math.A n n . ,第 9 6巻 , 2 2 5 2 5 0ページ, 1 9 2 6 . [ 7 2 ] L .E .J .Brouwer,[ 6 8 ]を見よ, 1 1 5ページ; C o l l .w o r k s ,第 2巻 , 4 7 2ページ. [ 7 3 ] G.D.B i r k h o f f ,0 .D.K e l l o g g ,T r a n s .Amer.Math.S o c . ,第 2 3巻 , 9 6 1 1 5ペー 9 2 2と , G .D.B i r k h o f f , Dynamical S y s t e m s ,1 9 2 7 .J .L e r a y ,J .S c h a u d e r , ジ , 1 1巻 4 5 7 8ページ, 1 9 3 4 .J .L e r a y ,P r o c .I n t . Ann.S c i .E c o l eNorm.S u p . ,第 5 , 2 0 2 2 0 8ページ, 1 9 5 0 . C o n g r e s sMath.CambridgeM a s s . ,第 2巻



[ 7 4 ] H .P o i n c a r e ,J .Math.P u r e sA p p l . ,4 ,第 1巻 , 1 6 7 2 4 4ページ, 1 8 8 5 ;O e u v r e s , 第 1巻 , 9 0 1 6 1ページ.



[ 7 5 ] S .L e f s c h e t z ,P r o c .N a t .Acad.S c i .USA,第 9巻 , 9 0 9 3ページ, 1 9 2 3 . [ 7 6 ] L .E .J .Brouwer,N e d e r l .Akad.W e t e n s c h .P r o c . ,第 1 1巻 , 8 5 0 8 5 8ページ, 1 9 0 9 ,第 1 2巻 7 1 6 7 3 4ページ, 1 9 1 0 , 第 13 巻 171—186 ページ, 1910; C o l l .w o r k s , 第 2巻 2 7 3 3 1 8ページ; M ath.A n n . ,第 7 1巻 9 7 1 1 5ページ, 1 9 1 1 ;C o l l .w o r k s , 第 2巻 , 4 5 4 4 7 2ページ.



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6 1 7 6 3 5ページ, 1 9 2 8 .



[ 9 0 ] E .C e c h ,T o p o l o g i c a lp a p e r s ,P r a h a ,9 0 1 1 7ページ, 1 9 6 8 . [ 9 1 ] S .L e f s c h e t z ,T o p o l o g y ,第 2版 , C h e l s e a ,NewYork,2 8 2 2 8 6ページ, 1 9 5 6 . 1 4巻 , 7 8 1 7 8 3ページ, 1 9 4 2 ;J . Math. [ 9 2 ] J .L e r a y ,C.R. Acad. S c i .P a r i s ,第 2 、



PuresA p p l . ,9 ,第 2 4巻 , 9 5 2 4 8ページ, 1 9 4 5 .



[ 9 3 ] . H.C a r t a n ,Comment.Math.H e l v . ,第 1 8巻 , 1 1 5ページ, 1 9 4 5 . ;O e u v r e s ,第 3 巻 , 1 1 6 4 1 1 7 8ページ; C o l l .d eT o p o l o g i ea l g e b r i q u e ,CNRS,P a r i s ,1 9 4 7 .1 9 4 9年



1 2ページ)にこれらの研究の起源についての説明がある. に出版された論文 ( [ 9 4 ] S .E i l e n b e r g ,N.S t e e n r o d ,P r o c .N a t .Acad.S c i .USA,第 3 1巻 1 1 7 1 2 0ペー ジ , 1 9 4 5 ;F o u n d a t i o n so fa l g e b r a i ct o p o l o g y ,P r i n c e t o nU n i v .P r e s s ,1 9 5 2 .



[ 9 5 ] S .L e f s c h e t z ,Tran~: Amer.Math.S o c . ,第 2 9巻 ,4 2 9 4 6 2ページ, 1 9 2 7 ;S e l e c t e d 4 82 8 1ページ, 1 9 7 1 . P a p e r s ,~helsea, NewYork,2 ー



.Gordon,Ann.o fM a t h . ,第 3 7巻 , 5 1 9 5 2 5ページ, 1 9 3 6 .J .A l e x a n d e r ,A n n . [ 9 6 ] I 7巻 6 9 8 7 0 8ページ, 1 9 3 6 . o fM a t h . ,第3 7巻 [ 9 7 ] E .C e c h ,Ann.o fM a t h . ,第3



6 8 1 6 9 7ページ, 1 9 3 6 .



7 5 4







X章 位 相 幾 何 学



[ 9 8 ] H.Whitney,P r o c .N a t .Acad.S c i .USA,第 2 3巻 , 2 8 5 2 9 1ページ, 1 9 3 7 ;Ann. 9巻 3 9 7 4 3 2ページ, 1 9 3 8 . o fM a t h . ,第 3 [ 9 9 ] N.S t e e n r o d ,Ann.o fM a t h . ,第 5 6巻 4 7 6 7ページ, 1 9 5 2 . [ 1 0 0 ] N. S t e e n r o d ,D .E p s t e i n , Cohomology o p e r a t i o n s ,U n i v .P r e s s ,P r i n c e t o n , 1 9 6 2 . [ 1 0 1 ] H.H o p f , C.R.Acad.S c i .P a r i s ,第 2 0 8巻 , 1 2 6 6 1 2 6 7ページ, 1 9 3 9 ; Ann.o f 2巻 , 2 2 5 2ページ, 1 9 4 1 . M a t h . ,第 4 [ 1 0 2 ] A.C a y l e y ,C o l l .P a p e r s ,第 2巻 , 1 2 3 1 3 0 ,1 3 1 1 3 2ページ. [ 1 0 3 ] A.C a y l e y ,C o l l .P a p e r s ,第 1 0巻 1 4 9 1 5 2 ,3 2 4 3 3 0 ,4 0 1 4 0 5ページ.: [ 1 0 4 ] M.Dehn,Math.A n n . ,第 71 巻,



116—144 ページ, 1912.



[ 1 0 5 ] I .C .M a t i j a s e v i c ,D o k l .Akad.NaukSSSR,第 1 9 1巻 , 2 7 9 2 8 2ページ, 1 9 7 0 ;英 訳 , S o v i e t . Math. DokL, 第 1 1巻 , 3 5 4 3 5 8ページ, 1 9 7 0 .S e m i n a i r eB o u r b a k i ,



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5 2 1 5 2 8ページ, 1 9 3 5 ;第 3 9巻 , 1 1 7 1 2 6ページおよび 2 1 5 2 2 4ページ, 1 9 3 6 . ( 1 1 4 ] J . P .S e r r e ,Ann.o fM a t h . ,第 5 4巻 , 4 2 5 5 0 5ページ, 1 9 5 1 . [ 1 1 5 ] H.F r e u d e n t h a l ,C o m p o s i t i oM a t h . ,第 5巻 , 2 9 9 3 1 4ページ, 1 9 3 7 . [ 1 1 6 ] D .Kan,T r a n s .Amer.Math.S o c . ,第 8 7巻 , 2 9 4 3 2 9ページ, 1 9 5 8 . [ 1 1 7 ] B .Eckmann,C o l l .d eT o p o l o g i ea l g e b r i q u eduCBRM所収, Louvain1 9 5 6 ,4 1 .Eckmann,P .H i l t o n ,C.R.A c a d .S c i .P a r i s ,第 2 4 6巻 2 4 4 4 2 4 4 7 , 5 3ページ. B



参考文献



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2巻 , 2 0 1 0 4ページ, 1 9 6 0 . M a t h . ,第 7 [ 1 3 2 ] M.M.P o s t n i k o v ,Amer.Math.S o c .T r a n s l . ,2 ,第 7巻 , 1 1 3 4ページ, 1 9 5 7 .¥ [ 1 3 3 ] J .Alexander,Trans.Amer.Math.S o c . ,第2 0巻 , 3 3 9 3 4 2ページ, 1 9 1 9 .



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[ 1 3 8 ].J .Milnor,Ann.o fM a t h . ,第 7 4巻 , 5 7 5ー5 9 0ページ, 1 9 6 1 . [ 1 3 9 ] R .K i r b y ,L . Siebenmann, B u l l . Amer. Math. S o c . ,第 7 5巻 , 7 4 2 7 4 9ペー ジ , 1 9 6 9 .



756



第 X章 位 相 幾 何 学



[ 1 4 0 ] T ._ R a d o ,ActaS c i .Math.S z e g e d . ,第 2巻 , 1 0 1 1 2 1ページ, 1 9 2 4ー1 9 2 6 . [141]・E.M o i s e ,Ann.o fM a t h . ,第 5 4巻 , 5 0 6 5 3 3ページ, 1 9 5 1 ;第 5 5巻 , 1 7 2 1 7 6 , 2 0 3 2 2 2ページ, 1 9 5 2 ;第



56 巻, 96—114 ページ,, 1952.



[ 1 4 2 ] S . S .C a i r n s ,B u l l .Amer.Math.S o c . ,第 4 1巻 , 5 4 9 5 5 2ページ, 1 9 3 5 . [ 1 4 3 ] L .E .J .Brouwer,N e d e r l .Akad.W e t e n s c h .P r o c . ,第 4 2巻 , 7 0 1 7 0 6ページ, 1 9 3 9 ;C o l l .w o r k s ,第 1巻 , 4 5 3 4 5 8ページ. H.F r e u d e n t h a l ;N e d e r l . Akad.Wet e n s c h .P r o c . ,第 4 2巻 8 8 0 9 0 1ページ, 1 9 3 9 .J .H .C.Whitehead,Ann.o fM a t h . , 第4 1巻 , 8 0 9 8 2 4ページ, 1 9 4 0 ;Math.w o r k s ,第 2巻 , 2 0 7 2 2 2ページ.



[ 1 4 4 ] M.K e r v a i r e ,Comment.Math.H e l v . ,第 3 4巻 , 1 2 7 1 3 9ページ, 1 9 6 0 .



.Tamura,J .Math.S o c .J a p a n ,第 1 3巻 , 3 7 7 3 8 2ページ, 1 9 6 1 . [ 1 4 5 ] I [ 1 4 6 ] J .M i l n o r ,Ann.o fM a t h . ;第 6 4巻 , 3 9 9 4 0 5ページ, 1 9 5 6 ; [ 1 4 7 ] R.Thom,C.R.Acad.S c i .P a r i s ,第 2 3 6巻 4 5 3 4 5 4 ,5 7 3 5 7 5 ,1 7 3 3 1 7 3 5ペー ジ ; Comment.M ath.H e l v . ,第 2 8巻 , 1 7 8 6ページ, 1 9 5 4 . r e s s ,O x f o r d , [ 1 4 8 ] N.B a r y ,A t r e a t i s eont r i g o n o m e t r i cs e r i e s ,2巻 PergamonP 第I ,X I I章 , 1 9 6 4 . [ 1 4 9 ] J .D i e u d o n n e , Algebre l i n e a r ee t Geometrie e l e m e n t a i r e , Hermann, P a r i s ,



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1 9 8 0 . 補足的読書のための示唆



I 位相幾何学のいくつかの節の歴史に関する補足資料. § I I J .H.Manheim,T~e G e n e s i so fP o i n tS e tT o p o l o g y ,PergamonP r e s s ,1 9 6 4 . § I I I ,A) N .L .B i g g s ,E .K.L l o y d ,R.W i l s o n ,GraphTheory1 7 3 6 1 9 3 6 ,Clarendon P r e s s ,OxfordU n i v e r s i t yP r e s s ,1 9 7 6 . § I I I ,B ) E u l e rの公式の証明の歴史が(方法論的および哲学的考察とともに) Imre L a k a t o s ,P r o o f sandR e f u t a t i o n s ,CambridgeU n i v e r s i t yP r e s s ,1 9 7 6[邦訳,佐々木カ 訳,数学的発見の論理,共立出版]に見られる.



§ § I I I ,IV MajaB o l l i n g e r ,G e s c h i c h t l i c h e Entwicklung d e sH o m o l o g i e b e g r i f f s ,



7 5 8







X章 位 相 幾 何 学



Archivef o rH i s t o r yo fExactS c i e n c e s9 ,9 4 1 7 0ページ, 1 9 訟 H.Hopfの仕事については, H.H o p f ,EinA b s c h n i t ta u sd e rEntwicklungd e rTopo. l o g i e ,J b e r .D .M.V . ,第 6 8巻 , 1 . 8 2 1 9 2ページ, 1 9 6 6 ,ゃ C o l l o g u ed eT o p o l o g i e du 2 0ページ, 1 9 6 4 , の中に手掛りがある. CBRM,・ B r u x e l l e s ,9 I I いくつかのテーマごとの詳しい(あるいは概説的な)資料. 読者は §XIの中に,位相幾何学に関する教科書の歴史の要約とともに,これらの著作 のうちのいくつかが今日でも入手できることに関する注意を見出せよう.



§IV,B ) 単体的ホモロジーヘの詳細で初等的な解説が Maxk .Agoston,Algebraic



T o p o l o g y ,MarcelD e k k e r ,1 9 7 6 , の中にある. [日本語のものとしては,河田敬義著,位 相数学,共立出版, 1 9 5 8 , がよい.] つの



§V,A) Alexanderの《角つき球面))と ( ( A n t o i n eの首飾り》はとくに [H-Y], 1 7 6およ び1 7 7ページに紹介されている.



§ § V I I I ,IX ここに出てくるいくつかの数の概念に関する非常に初等的な解説が G., H i r s c h ,I n t r o d u c t i o na l at o p o l o g i ea l g e b r i q u e ,I ,B u l l .S o c .Math.B e l g . ,第 XVI巻 1 5 2 1 8 8ページ, 1 9 6 4と I I ,B u l l .S o c .Math.B e l g . ,第 XVIII巻 , 2 2 7 2 4 4ページ, 1 9 6 6 , に見られる. 基本群と被覆の理論の代数学の定理の証明への応用 ( § V I I I ,D ) )についてはとくに (§XI で言及した) Masseyの本に書かれている. [本章の諸概念については ( 1 6 3 )または「岩波数学辞典」(第 2版)を参照されたい.] (山下純一訳)



759



第X I章 積 分 と 測 度 JeanDieudonne



I 積分の定義 すでにみたように(第 VI章 ) , F o u r i e rと D i r i c h l e t以 来 , 解 析 学 の 諸 要 求 に より積分の概念を《ますます不連続な))関数に対しても定義してゆく必要が生じて



きた. 19批紀末まではコンパクトな区間 [ a ,b ]上で定義された 1実 変 数 の 関 数 f に対する積分を定義する唯一の方法は [ a ,b ]の((分割)) a=to t またすべての《過去))よりなる族幽 ( tET) に対し,て(w)~t を満たす wEQ の集合 [て ~t] が幽の元になるという条件を満たすものとしての初循時間 (temps



a l e a -



t o i r e ) C *丑たちを対応させよう;各元 tETは (Q上の定数値関数として)そのよ うな初種時間の例となるが,これは tに退化しているといわれる.このように定



J T時間と呼ぼう.各 g J T時間てにはすべての tETに対し 義された初種時間を g て Brn[て ~t] E傘を満たすような事象 Brの全体よりなる部分族 9 3 ' Cが対応する.



a ,てを二つの 9 J T時間とするとき次の諸性質は直ちに従う:ては ! B r可測となり, 如こてなら 93ac傘,また i n f( a ,て)および sup( a ,て)は再び g J T時間となる.往種 時間は P .Levyによりマルチンゲールに関連して導入された.今日この概念は確 率論において普遍的なものとなっている. 確率過程(ふ,傘, tET)は,次のような意味で部分 a加法族傘に({適合する))



S )を含 確率変数ふの族として定義される:孤ふ)をすべての Se必に対し X戸( むような最小の部分 o加法族とするとき,各 tETについて 孤ふ)



C



幽.



(12)・, -



傘が孤ふ)と一致する場合にはこれを明示せず,このとき確率過程,または確 率関数 ( f o n c t i o na l e a t o i r e )は XT=(ふ , tET)と記され, g J T時間は XT時間と 呼ばれる. 確率関数 XTf ま 9 から数直線の匝積 RTへの写像妍→(ふ ( w ) ) t eTとも考えられ



......



る . ふ を RTの Borel集合族,すなわちすべての({柱集合 ( c y l i n d r e ) ) )SnXRT-Tn



を含むような最小の o 加法族とする一—ここに Tnfま n 個の元よりなる T の任 意の有限部分集合で, Snは有限直積 R T ・ の任意の Borel部分集合である;実際 に は ふ の 元 は T のある可算部分集合 U と RUの Borel部 分 集 合 Suについて



SuxRT-uの形の((柱集合))となる.過程 XTの法則 . . f ( X T )(または XTの分布)



c * 3 Markov時刻あるいは停止時刻ともいう.



788



第X l l章 確 率 論



. .



とは,ふ上の確率 PxTで PxT(S)= P(X 訊S ) ) , .sEふ



( 1 3 )



で定義されるもののことをいう .X年を写像 w~cxゆ))兵 Tn とすれば, PxT の柱



、集合 SnxRT-Tnにおける値は PxT.(Sn)に等しOについ



. f ( ( S n / 加)-an)=エ(X)を満たすようなものとして定義されるところの安定な て. 分布の族と一致することを証明する;正規分布および退化した分布は安定であり, また任意の安定な分布はそれ自身の吸引域に属する.特に,対称な(すなわち ぶ— X)=..f(X) を満たす)安定分布は,特性関数がある C 凶 0,



OOのす べてに対する分布 _f(a+bX) の族である.極限的な場合—すなわち退化型 T(O)—はあらゆる分布に属するものと考えておくと都合がよい.すると Hin­ cin の一定理 (1937) は,実際に,分布の収束とはそれらの型のある型一~すなわ



ち極限分布の型――への収束に他ならないことを意味している.



P.Levyがその極限問題を解決したのと同時に, B e r n o u l l iの図式は(古典的極 限問題および P.Levyの問題に対する図式を含むべく)事象の指標の代わりに確



olmogorovは P o i s s o nの図式を確率変 率変数へと拡張され,その形を変えた. K 数へと拡張した.これは B e r n o u l l iの図式の列であってその n番 目 が 確 率 加 の



o i s s o n型確率変数 Sの 事象 Anの n回の反復試行よりなるようなものである. P P o i s s o n分 布 叙l )は ぇ k



P(S=k)=一e 2 , k l



k= 0 ,l ,2 ,, …



( 2 7 )



で与えられるが,これは Anが実現する(ランダムな)数ふの n 加 →Aのときの極 限分布となる一—それは Bernoulli の公式 ((1),



§ I I ,B ) )を用いて容易にえられ



る. P o i s s o nの一般化図式は独立な確率変数の有限列の列 (Xnk)l::;;k::;;knからなり, ここで柘が nと共に十 0 0 に近づくようなものである.このより一般な図式では 極限分布の問題は分布エ(区 X心の収束の間題となる.



7 ) 正規収束 正規収束の基本的問題は . . f (区 X nサ→が( 0 ,1 )となるための条件を見出すこと となる;今や Xnkの積率には如何なる条件も課されてはいない.しかし古典的



.. .. . . .... ..



な極限問題や Levyの問題で暗に仮定されていた((自然な})条件として,和ら各墳 が一様に漸近的に無視し得べきことがある:これはすべての s>Oに対し



maxP ( IXnkI >s)一→ O となる[一様に 0に確率収束する]ことを意味し,したがって和のうちの任意の有



9 3 4年と 1 9 3 5年に P.Levyおよび 限項を変更しても極限分布は変化しない. 1 F e l l e rは誤差法則の問題を決定的な形で解決する.ここでは P.Levyの解答を



796







X I I章 確 率 論



与えよう:「分布エ(ミ Xnk)が収束するとき,その極限分布が正規分布となる必 要十分条件は .£(max¥ Xnk¥ ) →. £ ( 0 )である.」この条件は注目に値する:それは



G a u s s ,L a p l a c eらによる,観測誤差が正規分布となることの直観的な((正当化)) と深く通じているのである;しかし,それには P.Levyによる必要な技巧の開発 を待たねばならなかった.実際にはその技巧は二種類ある:一つは特性関数で



-Fellerが採用し一ー, もう一つは集中関数: r x ( x )= maxP(XE [ y ,記 十 y ] ) y



( 2 8 )



で Levy自身が用いた.事実彼はその((確率論的直観))が深まるにつれ,特性関数 を用いた一一純粋に解析的な一ー自分の方法に次第に不満を感じ始め,それを徐



o e b l i n( 1 9 3 9 ) , Kolmo々に集中関数の方法で置き換えていった.後者はまた, D gorov( 1 9 5 5 ,1 9 5 8 ,1 9 6 3 ) , Esseen( 1 9 6 6 ) , LeCam( 1 9 6 5 )らの人たちの手により大 変強力なことが明らかにされた.



8 )



現代的極限問題と無限分解可能な分布



上に述べた正規収束は明らかに, P.Levyの問題を P o i s s o nの一般化図式に拡 張した,次のような現代的極限問題の一つの特別な場合である: 現代的極限問題:「..f(~Xnk) の極限分布の族を求めよー一ここに各項 Xnk f ま



一様に漸近的に無視できるものとする.ついでエ(ミ X社)がある与えられた極限 分布に収束するための必要かつ十分な条件を求めよ.」 この解答は無限分解可能な分布の発見と記述に負うている:エ(X)が無限分解 n i ,… ,Xnnで エ(X)= 可能とは,各 nに対し,同等に分布した独立な確率変数 X



瓜 Xn1+…+Xnn)を満たすものが存在することをいう.このような分布は F i 1 9 2 9 )に現れた. 1 9 3 2年に Kolmogorovは二次の積率が有限のとき n e t t iの研究 ( 9 3 5年に Bawlyは各項の二次積率 そのような分布の明確な形を見出している. 1 が有限のとき, X直が一様に漸近的に無視し得ることを保証する,次のような一 条件の下で,現代的極限問題を解決する:各 Xnkの中心をその数学的期待値にそ ろえたとき, maxが(X 心→ 0 , かつ区沢( X n k )は一様に有界たるべきこと. 一方, 1 9 3 4年に P.Levyは一般の無限分解可能な分布に対しその明確な形を



9 3 6年に Hincinは,現代的極限問題に対する極限分布の族が,無限分 与える. 1 9 3 9年に GnedenkoとD o e b l i nは,与えら 解可能な族に他ならないことを示す. 1



IV 2 0



797



世 紀



れた無限分解可能な分布に収束するための必要かつ十分な条件を,前者は集中関



.. .....



数を,後者は特性関数を用いて見出した.ここで現行の確率論に中心的位置を占 める四つの基本定理 (T1 ,T2 ,T3 ,T4 )のうちの最初のものを記そう:



Tl 現代的極限問題の解:







P.Levy: 「無限分解可能な分布エ(X)は Fx=砂,ただし



c p ( u )=fou—長 +(J_Ooo +『)(戸 -1 —星) dL(x)



( 2 9 )



なる三つ組 ( a ,[ 3 2 ,L )により特徴づけられる一一ここで a ,3 /は実数, Lは (-oo,0 )



u( 0 ,+0 0 )で定義され,これら二つの区間の各々において単調増加で L(平 o o )=0 かつ



( L + 『 ) 研 ゜



dL(x)z)→ O ;



r次平均収束: Xn~X, すなわち E¥ふ ー Xド→ 0 ,ただし E¥Xドは有限とする. 概収束が確率論に現れたのは E .B o r e lの有名な論文 ( 1 9 0 9 )においてであった.



B e r n o u l l iから 2世紀を経て, B o r e lは (P=l/2に対し,ついで C a n t e l l iが 1 9 1 7 年に O C .R e i dの本 ( [ 2 4 6 ] ,2 6 4ページ)の中で:H.Weylが そ の こ と を 0 .Blumenthalに Weylの文章は B u l l .Amer.Math.S o c . ,第 5 0巻 , 6 1 2 6 5 4ペ よるとして証言している..[ ージ, 1 9 4 4 , の再録で,これは W匂r lの「全集」第 IV巻にも収録されている.]



I I. 1 9世紀における公理的方法の変遷



8 4 1



この指摘は,基本概念が定義を欠き,かつそれらを決定するための唯一の制限 が根本原理の要求する相互的関係のうちにあることと関連している.百科全書



( E n c y c l o p e d i e[ 2 ] )の「定義」の項で 1 7 5 4年に書かれた d ' A l e m b e r tの,一見よく 似た機知:((通常円とよぶものを三角形と呼ぶことによって,精密な(しかし滑稽 な)幾何学の基礎を厳密に作りうるような意味を言葉に与え芦ことができる》,が 、それは名前の定義において,その定義に際し現われる概念の前もって知 あるが 9 られた意味から出発して一つの概念に一つの意味を与える仕方しか考えていない. 言葉をその通常の意味から分離し,意味をその通常の表現から解放するという この二重運動により,それぞれの仮説・演繹的体系は自立的対象となって,その 可能な理論的発展の一つを説明するための,これが由来したもとの科学とは区別 される.



Padoaは第 3回国際哲学会議 ( P a r i s ,1 9 0 0 )における講演 [ 2 0 5 ]の中で言う:((証 明されない命題の系を,従ってある理論の全命題を満足する定義されない記号の



.. .



. . .



系には複数個の解釈のあることが起こる.そこで定義されない記号の系はこれら あらゆる解釈から得られる抽象化 ( a b s t r a c t i o n )とみなせ,一般論 ( t h e o r i eg e n e -



r i q u e )は定義されない記号の系をこの理論の各解釈によりそれに応じて置き換え



・・。・ t L e o r i es p e c i a l i s e e )から得 ることによって一般論から導かれる全ての特殊理論 (



. ..



られる抽象化とみなせる)). その上同じ一つの科学もいろいろな仕方で仮説・演繹的理論に組織化される;



Peanoは数論に対する,互いに非本質的な差異しかないがともかくいろいろの公 理系をつぎつぎと与えた;しかし何よりも,その性質および数において非常にさ



a s c h ( 4個の特殊基本概 まざまの基本概念から出発する平面幾何学の公理系が, P eano[ 2 1 3 ]( 3:点,線分,運動), P i e r i[ 2 2 9 ]( 2 : 点,運動),そして 念)以来, P Padoa自身 [ 2 0 4 ]( 2 : 点,距離)というように,数多く花盛りであり,上記の講演



.... ......



( 2 0 5 ]で次のように述べられていることが理解できるというものである:((演繹的



.... . .....



理論の定義されない記号の系の選択には一定の任意性がある(というのは,ほと



んどつねに,与えられた理論の特定の記号において定義されるものと定義されな



いものとの役割を交換しうるのである)〔中略〕.われわれは定義されない記号に ついて行なった注意を,((記号)),((定義される》,((観念))そして((単純な))という言葉 をそれぞれ((命題》,((証明される》,((事実))そして((明白な))という言葉で置き換えて,



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



842



再び繰り返すことができる.))



0年間に進んできた道をはっきりさせてく すこしあとで,次の発言が,先立つ 1 れる:



. .



.. ...



((演繹的理論における,定義されない記号と証明されない命題とがそれぞれ観念 と事実とを表現しない(あるいは表現し得ない)とすれば,その理論が実際的な意



.. .



...



...



...



味をまったく持たないことは明白である.このように演繹的理論の心理的起原は 経験的なものである;それに対し,その論理的出発点は約束事だと考えられる.》 しかし, Padoa[205] の最大の貢献—それはまさに,仮説・演繹的体系が解釈



の複数性に直面しているという,知的背景により正当化されうる一ーは,基本概 念の系に対し,公理の独立性を証明してきた方法を転用したことにある: ((証明されない命題の系を満足する,定義されない記号の系のある解釈を決定



. .



した後に,記号のの意味のみを適当に変えたときもこれらの全命題がそのまま正



. .



..



.... .. .



しいと仮定しよう.そのとき,記号のの意味は,いったん他の定義されない記号 の解釈を選んでも,個別化されないのであるから,証明されない命題から,〔他 の定義なしの記号から出発して〕”の定義を〔形作る〕関係を導くことは不可能で あるということができる.))



1 9世紀末の公理的方法の輪郭はこのようなものである.この方法が最も熟練 i l b e r tにおいてで,それは した,最も洞察力に満ちた仕方で再び扱われるのは H ( [ 1 2 1 ]にまとめられた)幾何学の基礎についての仕事の中でなされ,この方法が新 しい科学の対象となる以前のことである.



H) H i l b e r tとそれ以後の幾何学の基礎 H i l b e r t自身,初版が 1 8 9 9年の彼の著書「幾何学の基礎」 [ 1 2 1 ]にある最も有名 なものの様々の変形の他にも,幾何学に対する幾つかの公理系を生み出した



[ 1 2 1 ] * > . * ) 彼は 1 9 0 2年に, ' M a t h e m a t i s c h eA n n a l e n 'の第 5 6巻で論文「幾何学の基礎につい [ 1 2 1 ]に再録)を発表した.この中で彼は連続運動の完備な群の存在と与えられたそれ て 」( ぞれの中心をもつ無数の回転の存在を[公理として]おき,それからその運動群が(自明で ない)不変部分群をもつかどうかに応じてユークリッド幾何学か B o l y a i L ob a c e v s k i r幾 何



。・・・・



学になることを導く. この仕事は,立体の自由可動性 ( l i b r em o b i l i t e )による空間の特徴付 けに関する H e l m h o l t zの関心 [ 1 1 1 ]と一致し,続いて S . L i eによって再び取り上げられ, 現代位相幾何学の最初の業績の一つとなっている;しかしながらそこでの公理的厳密性は



I I 1 9世紀における公理的方法の変遷



843



この著作に叙述されている研究は,基本概念と根本原理の個数を減じ,そのよ



e a n o ,P i e r i ,P a d o aなどの関心とは別の り適正な選択を求めるという同時代の P i l b e r tはこの中で,次のような種類の問題に答え ものに応じてなされている. H ている:従来の研究の中で導入された公理のうちで理論のそれぞれの核心部分



( c h a p it r e c l e f )の展開を可能にするのに十分なものは何か? すでに引用した 1 8 9 1年の講演 [ 3 0 4 ]( § I I , G))-—ここでは射影幾何学の意外 な解釈も導入されているが一一仁おいて



H .Wienerは配景的な三角形に関する



D e s a r g u e sの定理*)と直線の対に関する P a s c a lの定理**)があれば,連続性の考 察にも依存せず,また K l e i nが vonS t a u d tの仕事 ( [ 2 7 7 ] ;§ I I ,C )参照)に追加



a s c h [ 2 0 7 ]が彼の主義に反して廿受せざるを得なか する必要性を認めたものや P p r o c e s s u si n f i n i s )にも依存せずに,平面上の ったものと同じ種類の無限過程 ( 射影幾何学のすべての展開が可能であることを示した



.w 杞n e rはまた,



D e s a r -



g u e sの定理は平面幾何学で線分の加法を含む命題群に達することを可能にする が,その定理自身を証明するために立体幾何学への迂回路が必要であることを注 意している;そして, P a s c a lの定理をそこから導く問題を提出したが,彼は類似 の迂回路も連続性の考察もなしにはどうしたらよいか分からなかった.これらの



i l b e r tは続く幾年かにわたってその情況の批判的検討に 問題が契機になって, H 取りかかることとなった. 「幾何学の基礎」の中で彼は,平面幾何学においていかなる経路により連続公理



a s c a lの定 を介在させずまた平面が空間に埋め込まれていることも仮定せずに, P 理の特殊な場合***)を正しいとすることから比例論と平面多角形の面積理論の再 構成が可能となるかを分析する.また,合同公理と連続公理への依存が全く禁じ 1 8 9 9年の本におけるよりも不明確であり(すべての基本概念およびすべての前提 ( p rもs u p p o s i t i o n )も明白というわけではない),かつこの論文は 19世紀末の公理主義に触れた他の 本とはかなりかけ離れた歴史的方法論的装いを持っている. * ) 二つの三角形 A BC, A ' B ' C 'において,直線 AA', B B ' ,C C 'が 1点を共有すれば, 対応する各辺(それぞれ ABと A ' B ' , ACと A ' C ' ,BCと B ' C ' )の交点は同一直線上にある. * * ) 平面内で,点 A ,B ,Cが直線上にあり,点 A ' ,B ' ,C 'が別の直線上にあるとき――これらはこの 2 直線の交点とは異なるとする一―A B 'と A'Bの 交 点 M, BC'と B'Cの 交 点N , CA'と C'Aの交点 Pは同一直線上にある:これら 6直 線 は も と の 2直 線 に よ っ て 作られる((退化円錐曲線))上に頂点を持つ六角形の向い合った辺となっている. * * * > 3点 M,N,Pが無限遠にあり,まず直線 AB'と A'B; そして B'Cと BC勺 し た が って最後に C'Aと C A'が平行となる.



844







X I I I章公理論と論理学



e s a r g u e sの定理の特殊な場合*)の成り立つことが平面幾何学を られたとして, D ある 3次元空間の幾何学から平面上に誘導されたものと[解釈]できることと同値 になるということを示す.彼は, D e s a r g u e sの定理が成り立たず,合同性を定 める公理群の一つ(下記の I I I 5 )も 成 り 立 た な い よ う な 非 Desargues的 ( n o n -



a r g u e s i e n n e )平面幾何学の例を与えている:したがって,空間幾何学から得ら e s a r g u e sの れた平面幾何学を仮定することをしなければ,これらの公理なしに D 定理を証明することはできない. にの点から見れば, P a s c a lの定理は D e s a r g u e sの定理とは全く違った振舞い



i l b e r tはいう ( [ 1 2 0 ] ,1 0 4ページ[第 2版 , 6 4ページ]).彼は,連続公 をする))と H 理も合同公理も使わずに,前者 [ P a s c a lの定理]から後者 [ D e s a r g u e sの定理](い ずれも上に引用した特殊な場合を問題とする)がいかに導かれるかということに



a s c a l的幾何学も 立ち戻る;一つの例から逆が成立しないことを彼は示す:非 P ( D e s a rg u e sの》定理が成立するのに対して,(制 存在して,そこでは(制限された) { 限された) ( { P a s c a lの))定理は成立しない.ところで,適当な形の Archimedesの



§ I I ,D ) )が,空間においてすでに, P a s c a lの定理を証明するために不可欠 公理 ( H i l b e r tは一つのモデルを用いてそれを示す)が,合同公理群を用いない である ( P a s c a lの定理]を示すのには十分である:非 P a s c a l的 幾 何 学 は 非 A r でもそれ [ c h i m e d e s的**)でもあることが必要である. こうしたいろいろの幾何学の開花はもはや当時の人々を何ら驚かせはしなかっ た;既に F .K l e i n [ 1 4 2 ]が,あまりうまい説明ではないが,非 D e s a r g u e s的幾何 学の可能性をほのめかしていたのに対し,一方非 A rchimedes的幾何学は V e r o -



1 8 9 1 )[ 2 9 6 ]の中に現われている; 1 9 0 0年に,同じ底面と等しい高さ n e s eの仕事 ( p y r a m i d e )が等しい体積をもつとは限らないような幾何学の を持つ二つの角錐 ( 存在を証明することは, H i l b e r tの学生の一人, M.Dehn( 1 8 7 8 1 9 5 2 )に帰せられ



6 4 ] . とはいえ,逆の従属関係とそれを説明する原理を明らかにし ることになる [ たのは H i l b e r tである.彼は主要な公理 ( I I I 5 ,I V ,V-1そして V 2 )に対する独 立性の証明によってそれらを明らかにした.彼によれば,それによりさまざまの ) * 同一平面上の二つの三角形の 2辺ずつが平行なら,対応する頂点を結ぶ直線は 1点 を共有するかまたは平行である. * ) この幾何学は Archimedesの公理の否定と他の公理を満足する.



I I 1 9世紀における公理的方法の変遷



8 4 5



公理群の演じる役割がはっきりし,そこから諸公理の分類へと導かれる;公理が 統御する基本概念に従って,先立つ概念が後に続くものを基礎付けるのに有用で あるような配列の下に;しかしまたさまざまの公理群が条件付ける操作に従って, そして単独であるいはさまざまな組合せで得ることのできる定理の範囲に従って, というふうに.この公理系はかくしてこのような姿を見せる[*].



L 結合公理: a ) 平面: 1 . [与えられた 2点に対し,それらの ] 2点*)をふくむ 直線がつねに存在する; 2 . 2点をふくむ直線は必ず一つしかない; 3 . 1直 線 上 にはつねに少なくとも 2点が存在する. 1直線上にないような少なくとも 3点 が 存在する.



b ) 空間: 4 . [与えられた J3点をふくむ平面がつねに存在する.平面はつね に少なくとも 1点をふくむ; 5 . 同一直線上にない 3点をふくむ平面は必ず一つ しかない; 6 . ある直線が平面上の 2点をふくめばその直線上の点はすべてその



. もし 2平面が 1点を共有すればそれらは別のもう 1点 を 共 有 平面上にある; 7 . 同一平面上にない少なくとも 4個の点が存在する. する; 8



I I . 順序公理(((∼の間))という概念を定義する, 4ページ): a ) 直線: 1 .点B が 2点 A と C の間にあるというときには,点 A ,B,Cは 1直線上にあり,かつ



B は C と A の間にある; 2 . 与えられた 2点の間にそれらを結ぶ直線上の 1点が 必ず存在する[**]; 3 . 1直線上の 3点について他の 2点の間にあるという点は必 ず一つしかない.



b ) 平面: 4 . A,B ,Cが同一直線上にない点, aが平面 ABC上 の 直 線 で こ れ らのどの一つも通らないものであるとき,もし直線 aが線分 ABの 1点を通れば,



aはまた線分 ACの 1点あるいは線分 BCの 1点を通る**). 順序の存在から,直線をその上の点を考えることによって線分に,平面をその 上の直線を考えることによって領域に分解することができ,直線における点のあ ] * [ 岩波数学辞典,「幾何学基礎論」の項参照. * l H i l b e r tは二つというときにはそれらが異なっているときちんと述べている. [ * * ] これは正しくない. H i l b e r t自身は ( ( 2点 A,Cについて直線 AC上の点 Bで CがA とBの間にあるようなものが存在する))と書いている. * ) これは Paschの公理である. H i l b e r tの体系はすでに見たように Paschの体系に 多くを負っており,彼はそこから,多少の差異はあるが,いろいろな公理を借用している; (公理の)変形が必要な差異の一つは,基本概念が Paschにおいては線分だったが H i l b e r t においては直線となっている点にある.



846







X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



ちら側とこちら側,平面における直線のあちら側とこちら側,および単純閉多角 形の内部と外部を区別でき,そして最後に(異なる直線によって作られた半瞑線 のなす)角を定義してその内部と外部を区別することができる.



I I I . 合同公理(((合同の概念を定義する》): a ) 虹線: 1 . A とBを 直 線 a上の 2点 , A 'を同じ直線または別の直線が上の点とするとき, a '上で A'の与えられ た側に線分 ABが線分 A 'B'と合同となる(あるいは((等しい》)ような点 B'をつ ねにとることができる; 2 . 同一の線分に合同な二つの線分は合同である; 3 .



ABとBCが同一直線上の [B以外に]共通点を持たない 2線分のとき, A'B'と B'C'がはじめの直線と同じまたは別の直線上で同じ配置にあり,一方で ABと A'B'が,またもう一方で BCとB℃’が合同であれば, ACと が C 'もまた合同 である.



b ) 平面: 4 . 平面 a内の角 ( h ,k ) , 平面 a '内の直線がと a 'の点 0'そして 0' から出る半直線 h 'があるとせよ;平面 a '内に,角 ( h ' ,k ' )が角 ( h ,k )と合同とな り角 ( h ' ,k ' )の内部の点すべてが [ a '内で]がの与えられた側にあるようなつねに 一つのそしてただ一つの半直線 k 'が存在する.さらに,すべての角はそれ自身



. 二 つ の 三 角 形 ABCと がB℃’について,一方で辺 ABと に合同である; 5



A'訊 他 方 で ACと A'C'そして角 BACと B'A'C'が合同ならば,角 ABCと A'B心についても同じことがいえる.



I V . 平行線公理: 1直線の外部の 1点を通って,はじめの直線と交わらない直 線がたかだか一つ存在する[*](この公理は合同公理への依存が排除されるあらゆ る研究中では存在仮説によって補強される).



V. 連続性公理: 1 . (測定公理または Archimedesの公理): ABと CDを任 1 ,ふ,…, Anで線分 AA1,A1ふ,…, 意の 2線分とするとき,直線 AB上 の 点 A A正 1 ム が 線 分 CDと合同で Bが A と Anの間にあるようなものが存在する; 2 . (直線の完備性公理): 1直線上の点全体は,公理 I 1 ,I 2 ,I I ,I I I 1 ,V-1を保っ たまま〔真に〕拡大することはできないような体系を形成する ( 1 8 9 9年の初版本の



* * J ) . 中にはないこの最後の公理の追加は,その後の研究の結果必要と認められた [ これらの公理系を述べたすぐあとで, H i l b e r tはこの体系が唯一の解釈を持つ I I Iから帰結される. ] * [ 存在は I [**] 1 9 0 3年 の 第 2版にはすでに(やや弱い形で)入っている.



I I I 1 9世紀末までの形式化の発展とその役割の理解



8 4 7



ことを,点,直線,平面の概念,直線あるいは平面上の点の位置などを,座標幾



G e o m e f r i ea n a l y t i q u e )で通常するように解釈することによって,実数体か 何学 ( ら出発して,その解釈を組み立てて示す.完全性公理 V-2を除いたすべての公 理を満足する解釈を得るためには実数体を, 1から始めて加法,減法,乗法,除 法そして



( J J



から



v ' l +研を作る操作の任意の組合せによつて得られる代数的数



体の部分体で置き換えれば十分である.最も重要な諸公理はまた独立性の証明の



I Vのモデルを提出するために H i l 対象となる;公理群 V を満足しない公理群 I ]から出発して上の五つの操作によって[得られるも b e r tが,恒等関数[つまり t のから]生成された代数関数体から,関数 a-b[ 多価だが,そのすべての値]が



+ o oの近傍で真に正となるとき a>bと書いて,類似の構成を利用していること が注意されるのは興味深い.逆に,比例理論を論じるために,先に引用した



D e s a r g u e sと P a s c a lの定理を導くのに必要な公理の部分系およびこれらの定理 自体から導くことのできるものについての研究との関連で,彼は全順序的実体の 公理を述べること,そして直交座標から出発して線分の計算法を導入することに よってそのモデルを樹立することへと進む—ここで和と積は直線の単純な作図



によって定義される.彼はこうして(公理群 I -Vのすべてが満足されるとき)実



rchimedes的な,あるいは(もしさ 数体,(必ずしも V-2が満足されなければ) A y t h a g o r a s的*)な全順序的実体を得る. らに V-1が必ずしも満足されなければ) P 0世紀の最初の三分期の間に豊富な業績を生み出 公理的幾何学はまたさらに, 2 し,中でも V eblen-Youngの著作「射影幾何学」 [ 2 9 5 ]における任意次元での射



e r e k j紅 t 6のもの ( [ 1 3 7b i s ] , 影幾何学の公理論や二つずつ双対な公理からなる K 1 9 4 4 )などが挙げられるが,公理的方法の進歩が行なわれるのはもはやこの分野 においてではない: R u s s e l lとWhiteheadの「数学原理」 ( P r i n c i p i aMathema-



t i c a )[ 3 0 3 ]以後,公理論は数理論理学の対象の一つ,形式的体系の研究という枠 組の中で行なわれることになる.



I I I 1 9世紀末までの形式化の発展とその役割の理解 数学の記号全体は一個の形式的言語を構成しており,式計算の熟練に伴って,



) * 任意の平方数の和がまた平方数となる体のこと.



8 4 8







X J I I章 公 理 論 と 論 理 学



記号体系がきちんとまとまってくるにつれて,徐々にこのような言語のより重要 な要素が,数学的思考の表現に介在してくるようになる.以下では,そのいくつ かの顕著な発展段階について,簡単に想起するだけにとどめておこう;ここで特 に興味深いことは,本書の扱っている時代以降,数学者の用いる記号法そのもの が彼らの省察の糧となりはじめ,この進展が論理学のそれと干渉し合うようにな ることである一ー後者では論理学者たちが彼らの学問分野のある面でのアルゴリ ズム的な性格と数学的なものとの関与とを自覚し,それを数学の一部門として組



織化する~ かくして数学は形式化へと向かう一般的な進展に参与することにな る . A) 数学の記号法の発展における基本的段階 一般的な単位を表わす印と,ある土地の地図を作るときの下書きとしての図形 は,おそら 「全集」というこの標題は,後にみるように正当でない. 「能記」 ( s i g n i f i a n t )は言語における音声や文字等の外的表現,「所記」 ( s i g n i f i e )はそ a u s s u r eの用語. の意味内容. S [*]



I I I 1 9世紀末までの形式化の発展とその役割の理解



8 6 7



った.彼はあらゆる性格の対象間における関係の科学としての結合法 ( c o m b i n a -



t o i r e )を構想する.行列式についての最初の着想も彼に帰する,等々.((特殊な事 柄に対して適用するのではない,順序や大きさに関して研究しうる全ての事を説 明する一般的科学としての,普遍数学 ( mathematiqueu n i v e r s e l l e ) ) )( [ 6 5 ] ,1 8 1 9 ページ[邦訳,著作集, IV巻 2 8-29ページ])という理念を描いていた D e s c a r t e s に範をとって, L e i b n i zは((量についての一般的科学としての特殊数学))に対し, 彼の構想するような数学,すなわち((質についての一般的科学としての普遍数学)),



l o g i c am a t e m a t i c a ,[ 1 6 0 ] ,VII巻 , 4 9 7 6ページ),それに((論証計 {(数理論理学)) ( 算 法 ) )( c a l c u l u sr a t i o c i n a t o r )を対置させる一ーそこでは代数学を手本として, 一切の理念を記号によって表わすという別の普遍的言語,((普遍的特性言語)) ( l i n -



guac a r a c t e r i s t i c au n i v e r s a l i s )の採用が要請される. L e i b n i zは((われわれの精神作用における一切の演算は計算である))という理念 を生むきっかけを与えた人として,哲学者 Th.Hobbesの名を挙げている.さら に,彼は魔術師[ * J R .Lulio( 1 2 3 5 1 3 1 5 )による「偉大な術」 (ArsMagna)の影響を 受けたと証言している一一これはいくつかの概念を組み合わせる一種の操作で,



I、



異教徒の改宗のために考え出され,中批の終りから 1 7泄紀いっぱいにかけて,単 純な人々にもてはやされてきた.この「術」から彼は,あらゆる概念を((人間の思



[ 5 6 ] ,4 3 5ページ)から成る基本的概念に,そしてさらにあ 考のアルファベット))( らゆる推論を何か暗号文解読あるいは定義の許容する諸概念の組合せの列挙のよ うなものに分解するという着想を得る*);「定義の」と言ったのは,また彼の場合 公理は定義から導かれるものと考えていて,正当化を要するものしか許容しなか [*]原語 ' i l l u s i o n n i s t e ' . 彼は錬金術師ではあったが,「他人を惑わす人」ではなく,著 者の偏見がある.彼はむしろその該博な知識のゆえに ' D o c t o : r :i l l u m i n a t u s ' (啓示をうけた 博士)とのあだ名でさえ呼ばれた.なお彼は(スペインの)カタロニア人でカタロニア語に よる美しい詩でも知られる. * > K .F i s c h e r( [ 7 3 ] ,3 9ページ)に引用された次の文章から, L e i b n i zは時の経つにつれ て,当初の素朴な概念を修正していったことがわかる:((人間の思考のアルファベットを 何かしら見つけることが可能であり, しかもこのアルファベットの記号を組合せ,そうし て合成された言葉を分析することによって,一切のことを見出し判断することが可能では ないかという驚くべき考えが私の心に浮かんだ.このすばらしい着想を見出したとき,私 は歓喜したが,これはしかし子供じみた喜びであった;当時は,問題の大きさを十分に理 解していなかったのである. ところが後に,私の中で事物への認識が進んでゆけばゆくほ ど,この大きな問題を追求してゆこうという決心がますます確かなものとなっていった.)) I [ 1 6 2 ] ,VII巻 , 1 8 5ページ.]



第X I I I章



868



公理論と論理学



ったからである. L e i b n i zは続ける ( [ 1 6 2 ] ,VII巻 2 0 0ページ):((複雑な論証を . .



いくつかの単純な計算に,また,漠然としたあやふやな意味しかもたない言葉を . . きちんと定めた記号に帰着させぬ限り,論争に終止符を打つことは決してできな



.....



いであろう.実際,偽推理[*]のすべては計算間違い以外の何ものでもなく,謬 . . . . . . . . 論[*]も実は文法違反 ( s o l o e c i s m u s )もしくは未熟語法 ( b a r b a r i s mu s )以外の何も のでもなく,哲学的文法法則そのものにより容易に反駁されるべきものだからで



[ 3 0 ] ,邦訳, 9ペ ー ジ を 見 ある)).こうして彼は,思考に対する((アリアドネの糸)) [ よ]たる((幾何のときに線を引くように,また算術で初心者にやらせる演算形式の ように,精神を導いてくれる敏感でしかも大まかな或る方法))( [ 1 6 2 ] ,VII巻 , 2 2



.....



ページ)を引き出すことを期待する.



L e i b n i zは((形式による ( i nf o r m a )推論しかしない))で((終結部をわれわれに保 証するのに))( [ 1 6 2 ] ,IV巻 , 2 9 5ページ)必要な規則に達し得ると考えている.彼



[ 1 6 1 ] ,IV巻 , x v i i ,4 ) : これによって,((私は,学校で行なわれる はさらに言う ( このスコラ的推論方式*)のみならず形式的なものに依拠して結論に到るすべての 論証を理解し,そこにはどんな項目をも補足する必要がない;その結果連鎖式



( s o r i t e ) , 繰返しを避ける三段論法の別の連鎖, さらには上手に行なわれた計算 から代数計算や無限小解析に至るまで,私から見ればほとんどが形式的な推論で ある一ーなぜならその論証形式は前もって決められており,



したがって決して思



い違いなどしないことが確かだからである)).特性言語はその機能として目に見 え容易に認識されうる形式を与える一―—それと言うのも((通俗的な言語は論証す



るために非常に有効ではあるが,にもかかわらず,それは数え切れない多義性を 持ち,論証の過ちが言葉の形成と構成そのものから明らかになるような,そうし た計算には役立ちえない……))( [ 1 6 2 ] ,VII巻 2 0 5ページ)からである.



L e i b n i zは自分の文書中にこのように記述している計画のうち,ほんのわずか しか実現させなかった.三度にわたって彼は命題計算を試み,その結果のいくつ



o o l eに先んじている. さらに,彼は抽象的な計算と,彼の記号体系の意味 かは B を特殊化することによってその計算から得られる解釈された計算との違いをはっ [ * ] 偽推理 ( p a r a l o g i s m e )は(無意識にする)誤った推論,謬論 ( s o p h i s m e )は形式的推論 規則には叶っているが,あきらかに誤った結論に導くもの ( Z e n o nの背理等). * ) 三段論法によるもの.



I I I 1 9世紀末までの形式化の発展とその役割の理解



8 6 9



きり区別している;ある所で彼は書いている:((この法則が成り立っているいか なるところにおいても,現在の計算を適用しうる)) ( [ 1 6 2 ] ,VII巻 , 2 4 5ページ);



( Aと B が命題であって, Aが Bであると言うとき,私は A か また別の所では: ( ら Bが従うと理解する})(Cumd i c oA e s tB ,e tqueA e tBs u n tp r o p o s i t i o n e s ,



i n t e l l e g oexA s e q u iB)[ 5 6 ] ; そしてこの簡単な語旬から L e i b n i zはすでに,同 じ計算を,あるときは類計算として (Aと B は概念を表わす),またあるときは 命題計算として,解釈することを知っていたことがわかる.計算をする機械につ いての着想は彼にとって無縁のものではなかった:彼は((理性を模倣する機械))



( [ 1 6 2 ] ,I I I巻 3 7 4 3 7 5ページ)のことをほのめかしている.さらに,彼のまだ若 い時代 1 6 7 4年には,方程式を解く機械の計画をもつくっていた. ところで,こういった構想について書かれまたその不成功におわった企てに関 連する L e i b n i zの文書の大部分は, L .C o u t u r a tによって, 1 9 0 1年 [ 5 5 ]と1 9 0 3 年[ 5 6 ]になって初めて刊行された. 1 8世紀に, L e i b n i zと文通していた人々や彼



l o u c q u e t ,L a m b e r t ) , さらに の一一直接もしくは間接的ー一門弟たち(中でも P 7 6 5年に到って R a s p eによって出版された著作 [ 1 5 7 ](そこには彼の特性言語 は1 について数ページ出てくる)の読者たちも,非常に一般的ないくつかの概念以外 は(しかもそれらの影響力までは測れずに)知ることも理解することもできなかっ たであろう.こうして, L e i b n i zにより企てられた新領域の開拓は, 1 8世紀と



1 9世紀を通じてやり直されることになる.



C o n d i l l a cはそれを再開し,晩年に,言語において表現によつて与えられる,ぁ 7 8 0年に出版された「論理学」 ( L o g i q u e ) る概念の分析が果す役割を強調する. 1 で,彼は次のように述べる:((分析する ( a n a l y s e r )ということは,〔中略〕ある対象 の諸々の質 ( q u a l i t e )に対し思惟においてそれらの存在する同時的秩序を与える ために,それらの質を順々に観察するのとは別のことである.〔中略〕この合成お



[ 5 4 ] ,3 7 6ペー よび分解はものとものとの間の関係に従って行なわれるのである)) (



u n el a n g u eb i e nf a i t e )に帰せら ジ).彼はそこで,((論証の術はよくできた言語 ( れる》,なぜならば((言語は分析手段である))から,と主張する.彼の学説を例証す るため,「計算の言語」 ( L al a n g u ed e sc a l c u l s )(未完,死後 1 7 9 8年に公刊)の中 で,彼はそれを数学,すなわち((その言語が代数である,処理方法のきちんとした



( b i e nt r a i t e )科学》 ( [ 5 4 ] ,4 2 0ページ)に応用している.続く数十年間に,代数学



870



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



の記号言語への結びつきはさまざまな著者の筆の下で,ちょうど L e i b n i zが自分 の普遍的特性言語を弁護したときのように, しばしば代数学での記号法の利点に 対する弁明を伴って,何度も現われた.さらに, G e r g o n n e * >の ' A n n a l e s ' [ 3 ]に おけるさまざまな論文や F e r u s s a cの ' B u l l e t i nd e sS c i e n c e s ' [ 3 2 ]でのいろいろ な評論によれば,当時の数学者の間で,記号法の適正な選択についての関心が広 まっていたことが確証される. かくして 1 8 0 1年に, Cambridgeの教授であった R .Woodhouseは書く ( [ 2 2 4 ] ,



1 8 0 1 ,9 0ページ):((代数とは〔中略〕観念の対比と結合を容易にする目的で発明さ れた言語もしくは文字記号体系である)).



1 8 2 1年に C h .Babbage( 1 7 9 2 1 8 7 1 )は,同じ所 [ C a m b r i d g e ]の哲学協会に提出 Ont h ei n f l u e n c eo fs i g n s した報告「数学的論証における記号の影響について」 ( i nm a t h e m a t i c a lr e a s o n i n g s )( [ 2 8 9 ] ,I I巻 , 3 2 5ページ)において,((記号的言語 の現状))について言及している.代数的記号の使用にあたって彼が見出した利点 の中から特に,これらの記号がその表わしている性質もしくは関係だけを精神に 呈示し,さしあたって問題としてみる必要のないものを,排除こそしないが,脇 に置くことによって,それら諸記号によってもたらされる注意力の集中について



1 9 0 3年になって刊行された「小論集」 ( O p u s c u l e s )の一つにおいて 言及している ( ( [ 5 6 ] ,9 9ページ), L e i b n i zは((雑念を除くため,ものの代りに記号を置く))ことに ついて述べている). 「計算の言語」の中で, C o n d i l l a cは既に次のように注意していた:((演算は記 号の上だけでなされる:〔中略〕方程式か十 a-b=cが与えられれば,これを形作 っている文字が何を意味するかを知る必要なしに,われわれはこの式を変形する. たとえその意味を知っていても,そのことを考えない;文字をそれらの値に置き 換えるのは,演算がなされたあとからである.これらの演算すべてが純粋に機械



[ 5 4 ] ,4 6 8ページ). 的であると私が言うのはこのゆえである))( 上述の書で ( 4 3 6ページ),彼は分数とは((割算をするという表示である))と指摘 する., 1 8 2 1年に, Babbageが文字式の意義づけを置くのは一貫して,それによ り表現された, しかも数の表示に適用されるとは必ずしも認められない,計算法



* >G e r g o n n eは C o n d i l l a cに[論文掲載可否の]意見を求めたことがある.



I I I 1 9世紀末までの形式化の発展とその役割の理解



8 7 1



の指示という点においてである:いわく ( [ 2 8 9 ] ,II 巻, 336 ページ)((方程式吋—



如=一 aを数に限定する代りに,この式は,この方程式に$の値を代入するとき 各項が互いに相殺するような仕方で,のが aとbとから構成されていることを指 示していると考えられる.実は,この意味づけは,元来の間題に含まれているの ではなく,その問題を表現する方程式から生じる)).



3 4 3ページ),彼は指摘する:((文字がただ使用されているだけの その少し先で ( とき,機能的特性記号は論証の効力が依存している意味の他,いかなる意味をも 伝えない)).



1 8 2 4年に到って Babbageは , C ambridge哲学協会に,((機械的な方法で,第二 階定差をもつ数表を計算するために設計された小型の機械))を提出した ( [ 2 8 9 ] ,I I 巻 , 2 17ページ). さらに, 1 8 4 2年以後晩年に到るまでそのかさ張った機械を彼は 組み立てようと努力するが,それは機構があまりにも複雑すぎたため,とうとう 正常には作動しなかった;しかしもっと軽いものにできる工業技術が可能になる とすぐ,この原理は再び取り上げられる:彼の機械は 5 0桁の数 1 0 0 0個に対する



....



記憶装置を持ち,ジャカード織機のそれに似た,穿孔紙テープの上に記録された ..... プログラムにより作動できるようになっていた.現代の電子計算機は, B abbage の機械の機能の一般図式をひき写したものである*).



1 9世紀の第 1三分期を通じて,虚数の記号法の意味と,実数に関する計算規則 の虚数への拡張を正当化する理由とを理解することへの関心が,代数と文字式に



.G i r a r dの恒久性原理 ( 1 6 2 9 ) 向けられた関心の動機の大部分になっている. A ( 第 IV章 , § I I ,A ) )に依存するのは往々にして明らかに誤った結果をも導く_



J h . B e r n o u l l iと L e i b n i zの間の対数についての論争(同上, § I I ,B ) )がその良い例 を提示している. R .A r g a n d ( 1 7 6 8 1 8 2 2 )により 1 8 0 6年 [ 4 ]に提案された幾何学 的表示――それを F .J .S e r v a i sはむしろ((幾何学的解釈)) ( [ 3 ] ,IV巻 , 2 3 4ページ), あるいはまたわれわれもそうした ( § I I ,E ) )ように((幾何学的仮面))(同上, 2 3 0ペ * ) 電子計算機の機能のもう一つの原理は,既に 1 8 2 7年から ' B u l l e t i nd e sS c i e n c e s 'の [ 3 2 ] ,VII巻 , 3 4 7ページ);そこにいわく((二進法算法の企ては ある評論で推奨されていた ( L e i b n i zに帰せられる〔中略〕.冗長さによる不便さはあるが,これにより,あらゆる計算



... .



の演算は最も単純な機械的仕組みに帰着され,この点で,算術機械の製作は他のどんな方 法よりも容易になり,乗法は単純な加法に帰着されて,割算においては試行錯誤を全くな しで済ますことができる)). A .C.の署名があるのでこの本文は明らかに A u g u s t i nCauchy



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



872



ージ)と呼んでいる一ーは構造の同型の概念,および同型な構造を同一視すると いう考え方を全く知らなかった当時の人々をすべて満足させるわけにはゆかなか った. ある一貫した記号法体系(ここでは,虚数に対するもの)のすべての形式的表現



e r v a i sの筆のもとで生まれたのかも における,全体的な,拡張解釈の概念は, S しれない: 1 8批紀末頃には流布していたこの解釈の概念は,ある方程式(もしく



..... ..



は方程式系)の根についてのもので,—1821 年の Babbage(前掲書, [289],



巻 ) ,



I I



と同じ言い方をすれば—ある問題の代数的言語への翻訳によりこの方程



式(または方程式系)が生じたとして,その間題の当初の主張からすると予期に反 すると認められる根が得られた場合に適用される.



§ I I ,G ) ) , Peanoとその学派の手になる,正確で, そこから,すでに見たように ( 専門家用に慣用化された概念に到るまでその進展はさまざまな道を辿る.



しかも



それはゆっくりした足どりで進み,現代的な視点へと向かう数学の観念の進展と 切り離すことができない. P l u c k e rと Babbageの意見を先に取り上げた ( § I I ,



E ) )が,彼らは幾何学の中に,解析学の解釈しか認めていない ( [ 2 3 1 ] ,IXページ). この思想の流れにおいて最も輝かしい部分は一—それをまずこれから追うのであ



るが



Cambridgeの代数学者たちの思想であり,そこには G .B o o l e( 1 8 4 7年つ



いに伝統的論理学の代数化に到達する),および A .N .WhiteheadとB .R u s s e l l



§ V ,A ) )は彼らに ( 2 0世紀初頭における現代数理論理学の最初の扱い易い形式化 ( 帰する)らが属している.



1 8 3 0年 , G .Peacock(1791-1858)-—彼も



Cambridge の教授であった一ーは,



「代数学概論」 [ 2 0 7b i s ]において,続いて 1 8 3 3年に大英科学振興協会でのある会 議報告 [ 2 0 8 ]において,ュークリッドが幾何学の命題を扱ったように代数計算手



順を処理することを目論み,((記号的代数》,すなわち《記号とその組合せの科学》



そこでは約束によって定められた規則を適用して計算を行なう—を((応用 の科学)):すなわちまず第一に算術,((または算術的代数》,((さらに他のすべての諸 科学))(幾何学,物理学等々)から分離しようとしている.この記号的代数が算術 に適用されるために, P e a c o c kが提案している約束は彼によって同値な形式*)の のものである. * )



((形式))は,その当時,((文字式))の同義語でもある.



I I I 1 9世紀末までの形式化の発展とその役割の理解



8 7 3



恒久性原理 ( [ 2 0 8 ] ,1 9 8 1 9 9ページ)と呼ばれ,次のようなものである:((ある別の 形式に代数的に同値なあらゆる形式は,一般的な記号で表わされているとき,こ れらの記号が何を表わすかにかかわらず,〔それに〕同値のままであるべきである》, ...



および((数論において,〔ある別の形式に〕同値なあらゆる形式は,記号が一般的で



l ) )( R .Woodhouseはすでに, 1801年 ( [ 2 2 4 ] , あるとき,それに同値であり続ける * 93ページ)に断言していた: ( ( ( a + b V ニI)x(c+dV二I )と ac+adv 二I+cbv 二i



-bdは互いに同値な二つの形式である;これは同値であると証明されるのでは なくて,実の量の記号に対して証明された法則を,意味のない記号に拡張するこ とにより,このように定めるのである))).



P e a c o c kは((記号的言語))の代数での使用を認めている ( 1 8 8ページ)が,その言 ......



語の部分に対しひとつの一般的な意味を与えている;(((表現における})( 1 9 5ペー ジ),すなわち考え得る解釈の科学に関してと,((値における》,すなわちこれら個 々の科学に特有な,その研究対象である存在の領域に関してと)変数に関し二重 に一般的な意味を. 代数学の扱いにおいて,記号的言語とその形式的表現,次いで原理とその結果 の提示は,意味を定めるすべての解釈に先立つ:((解釈は代数の演算とその結果 ....●



に先行するのではなくて,後に続くものである))と,彼はその後で言っている ( 1 9 5 ページ);((問題にしている記号の特殊な値の変化に対応して意味を変える必要が あることをちょっと検討してみさえすれば,この続き方の順序はすぐ明らかにな る ) ) .



P e a c o c kは彼の恒久性原理の定めるものとは異なった計算規則が許容され得る ことを完全に理解していたが,しかし彼は((どんな種類の応用も許容しない,記号 のみの科学))を導入するという着想には至っていない.



§ I I I ,A ) )を 切 り 離 す 方 法 に 精 通 し て い た 彼 の 弟 子 D .F .Gregory 演算記号 ( ( 1 8 1 3 1 8 4 4 )は,演算をその性質(例えば, F .J .Servais( [ 3 ] ,V 巻 , 9 3ページ)に よって 1 8 1 4年に導入された,可換性,分配性)に従って分類する仕事に着手して



* > Peacoc~ は,解釈されない文字式を構成するために用いるもの(この場合彼は((一般 的))という)と,この記号が与えられた解釈に従って表示するもの(この場合彼は((特殊的)) という)を示すために用いるのとに同じ記号(例えば,加法の記号)を使っているという不 自由さのために, 自分の考えを説明することの困難にぶつかっている.



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



874



いる.彼は《特性によってでなく,それらが従うべき結合の法則によって定義さ れた演算〔傍点,われわれによるこの進展の強調である!〕の結合の仕方を扱う科 学 ) )( [ 1 0 3 ] ,1 8 4 0 )を記号的代数の中に見ている.((意味のない記号))を代数に特有な



eMorganに帰する. ものと見るという平凡なことは d 8 4 3年の W.R.H a m i l t o n ( 1 8 0 5 1 8 6 5 )による四元数 こういった背景のもとで, 1 ( 第I I I章 , § I I I ,D ) )の発見の重要性が認識される.これを数の概念の新しい拡 張と受け取れば,((数の体系))が必ず可換な乗法を持たねばならないという観念は 打ち砕かれる.同じ,あるいは殆ど同じ時期に,これと類似でもっとずっと一 般的な外積(第 I I I章 , § I I I ,E )参照)が Grassma:nnの「広延論」 (Ausdehnurtgs-



l e h r e )[ 1 0 0 ]中に現われた.零因子は Hamiltonの 双 四 元 数 と と も に , 非 結 合 ayleyの八元数とともに導入される(第 I I I章 , § I I I ,D ) ) ; これこれの 的乗法は C ア• プ リ オ リ



解釈が許されるために前もって定めたこれこれの計算法則を満足するということ と関連した((抽象的な》計算に対する興味はついには現われなくなる.そしてこの



8 6 7年に H.Hankel( 1 8 3 9 1 8 7 3 )により刊行された「複素数体系論」 進化全体は, 1 [ 1 0 7 ]における,結合算法の抽象的概念の導入をその頂点とする*)( [ 3 0 ] ,7 2ページ [邦訳, 7 3ページ]).



1 9世紀の第 2三分期に,こうした研究は,自分の分野の哲学に関心を抱く数学 者たちの心に反省と視点の変更を惹起する.((数学,即ち量の科学))という概念が, 1



B a l z a n oの「量の理論」 ( G r o s s e n l e h r e )( 第 VI章 , § I V ,A); [ 1 9 ] )においてもま だ見出されるが,少なくとも彼自身は((量))について,ある表象であって,それら の表象の間を比較する手順を持っているあらゆる種類のものという観念を抱いて いる.その後 1 0年もたたないうちに, Grassmannは「広延論」 [ 1 0 0 ]において,



((量の科学という名前は,数学全体からみて似つかわしくない)) ( 2 2ページ)と反駁 している.さらに 1 0年後,(直接的影響は前者よりずっと大きかった)「思考の法 則 」[ 2 1 ]の中で, 1 8 5 4年に B o o l eは繰り返している ( 1 3ページ):((数や量の観念に



eacockの 精通していることは,数学の不可欠要素ではない》.また, Hankelは P * ) 加法,乗法,べき乗,減法,除法,べき根が, 1822年に G e r g o n n eの ' A n n a l e s ' ( [ 3 ] , XII巻)中に公刊された匿名の予約購読者 ( 1 8 5 9年に, G e r g o n n e自 身 で あ る こ と が 明 ら か になる [ 2 8 0 ] )による「科学の言語に関する論考」 ( D i s s e r t a t i o ns u rl al a n g u ed e ss c i e n c e s )



. . . . .



において,結合の演算の一般的概念のもとに,包括されている.



I I I 19世紀末までの形式化の発展とその役割の理解



8 7 5



提案した代数学の公理化の構想を再び取り上げ,それに形を与えるが(例えば, 同値な形式についての恒久性原理を繰り返している),彼が((純粋に知的な数学, 量の組合せを対象とするのではなく,〔中略〕思惟内容の組合せ(それらは実質的 な対象もしくは関係と対応しうるが,このような対応は必ずしも必要ではない) を対象として持つ,形式の純粋理論))(前掲書 [ 1 0 7 ] ,1 0ページ)という立場をとっ ている時,彼は Gaussの見方を,より広い形で,再発見しているといえる;その ことは数年後に Gaussの著作が刊行されて明らかになる:((数学者は,対象の性 質とその関係の意味内容とを完全に抽象化する;彼はこの関係を数えあげること



I巻 , 176ページ).こ と,それらの間での互いの比較だけしか扱わない)) ( [ 8 6 ] ,I e i b n i zに れに比肩しうる幅をもつ観点を,それ以前に探し求めようとすれば, L まで潮らなければならない(しかもそれほど正確ではない)_それ自身もまた著



0世紀初頭に到り,はじめて公刊されるのであ 者の死後ずっとたって,ようやく 2 る:((普遍数学は,いわば,構想力の論理学である;〔それが扱うのは〕構想力の領



4 8ページ). 城において,厳密な決定が可能なことのすべてである))( [ 5 6 ] ,3 B o o l eが 1 8 4 7年に,彼の「論理の数学的分析」 (Themathematicala n a l y s i s o fl o g i c )[ 2 0 ]を執筆し出版したのは Peacockによる記号的代数の枠内において e i b n i zが失敗した諸点において, であり,その自然な応用としてであった.彼は L ほとんど同じ概念を用いながら成功をおさめている;つまり分類の論理で, 0 の 解釈として彼は空な類—-Leibniz のいうところの空 (non-Ens) をとっている;



L e i b n i zのように,彼は共通部分として積を解釈する;和ば十 yに関しては,$ と yが互いに素のとき(これは xy=Oと表わされる),合併を採用する一ーそして



L e i b n i zもまた,共通部分のない和を考察した.彼独自のものとして残るのは単 位元 1の使用のみである;‘論証可能域 ' ( l ' u n i v e r sdud i s c o u r s ) C * Jがそれに当た



eMorganによりなされた重要な寄与 ( [ 2 8 9 ] ,VIII巻 , 3 7 9ペ り,これは前年に d ージ以降)で, L e i b n i zのものとは異なり,しかもそれにより同時に引算を解釈 するための相対補集合の一 yが定義される. L e i b n i z( [ 1 5 7 ] ,5 1 3ページ)は,((偶 然換位規則 ( rらg l edec o n v e r s i o np a ra c c i d e n t ) ) )(((すべての A は Bである))から ( ( 或 る Bは A である》が導かれること)を正当化するところでつまずいてしまっ



[ * ]



英 ,



u n i v e r s eo fd i s c o u r s e ;[ 1 4 5 ] ,4 0 8ページを参照.



8 7 6



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



た ; A r i s t o t e l e s流の伝統によれば,((すべての A は B である))という((全称命題)) は,この((主語)) A が((存在しない))ならば肯定されない(規則の真理性に対する必 ( Aの))類が ( ( Bの))類に含まれることは,したがって((すべての A は B 要条件); (



である))と完全には対応していない. Booleがあえて困難を乗り越えようとする のは同値な形式に対する恒久性原理に導かれてのことである;彼は演算の満たす べき恒等式全体が,の2=;;:;となることを除けば,数に対してなされた同じ名称を もつ演算によるものと形式的に同ーであることに注意している;それはどうでも よい:彼はこのことが,数による対応する解釈が数の中のべき等元,すなわち 0 と 1とに限られることに由来するという(その当時としては,全く独創的な)見解 を持っているで.今日のわれわれは,二元体が正に同じ形式的恒等式を満たすこと



§ I V ,A ) ) ; しかし演算が異なる結果をあらわす唯一の場合があっ を知っている ( て,それは 1+1 のときである—1 はそれ自身と互いに素ではないから,これは



Booleの論理の代数においては意味を持たない. かくして, 1 9世紀の第 2三分期の終りには,最初の形式的言語, Fregeの「概 念記号」 ( [ 7 9 ] ,§ I I I ,A)参照)が出るまでに,第一階の言語 (§V,A))のためのモ デルを決定する素材に必要な固有概念の萌芽がすべて得られる: deMorganは



n i v e r s e )を導入した (Riemann[ 2 5 0 ]の就任講演中での 考える対象の((領域》(英, u , § VI]において,そして言うまでもなく, Grassmannが「広 ((多様体))[第 IX章 延論」で 1 8 4 4年以降暗に考察しているものにおいて類似性が見られる); Hankel はそうした領域の上での抽象的な結合算法の概念を導入;さらに deMorganは



I ,A)および §IV,B ) )をも導入した.特殊な代数構造の最初のも 関係の概念(肛 I のたちも同じ頃に現われる(しかしそのような構造についての一般的概念はまだ ない):まず第一には,おそらく, B .P e i r c eとC .S .P e i r c e[ 2 1 7 ]により 1 8 7 0年頃



8 8 8年に Peano[209]により導入され 考察ざれた代数であり*),それに次ぐのは 1 た実ベクトル空間である. H.Wiener[ 3 0 4 ]とG .Fano[70]は,関係を伴った点の



i l b e r tは「幾何学 体系としての一一即ち構造としての一一幾何学を取り扱う; H の基礎」 [ 1 2 0 ]の中で,類似の方法を実行している.さらに, Huntington( 1 8 7 4 * > 1 8 5 4年に



C a y l e y( [ 4 7 ] ,I I巻 , 1 2 3ページ)が群の抽象的概念を扱ったとき, P e a c o c k . .



による抽象的な計算を紹介し,さらにそこで,解釈つまり表現の複数性を示している(これ は著しい進歩となっている);



IV 1 9世紀の数理論理学



877



1 9 5 2 )が「絶対連続量の理論」 ( T h e o r yo ft h ea b s o l u t ec o n t i n u o u sm a g n i t u d e ) ( 1 3 0 ]において,(([代数]系 ( k ,o ) ) )を導入するのは 1 9 0 2年になってのことである. 1898年のはじめに, A .N .Whitehead( 1 8 6 1 1 9 4 7 )は「普遍代数学概論」 ( T r e a 3 0 2 ]で,本章冒頭以降の関連著作による知識のすべ t i s eonu n i v e r s a la l g e b r a )[ てに対し,ひとつの統一的見地からのまとめを行なっている.普遍的代数学とは 彼によれば可換で結合的かつ単位元 0の与えられた加法と,その加法に関し二重 に分配的な乗法をもつ計算の科学である.



Whiteheadの「概論」がまさに直面している公理系の構想は,記号的代数学か [ 3 0 2 ] ,v iページ): らの起源の痕跡を残しながらも,形式的公理論を予告している ( ((もっとも広い意味での数学とは形式的,必然的,演繹的なあらゆる論証様式の展 開である. ((論証は命題の意味が全く研究対象とならないという意味で形式的である.数 学の唯一の関心事は命題から命題への推論である.推論規則を正当化することは (中略〕経験もしくは哲学の仕事である.この意味で一切の数学的論証は必然的で ある,つまりそれは規則に従ったものなのである. ((数学的論証は定義の上に基礎づけられているという意味で演繹的である一一



s e l f c o n s i s t e n c y )の吟味のみが必要であ (中略〕その定義に自己矛盾のないこと ( る . ) ) 予告された第 2巻はついに日の目を見なかった. 1 9 0 3年に B .R u s s e l lは,・数



2 5 4 ] 学全体を論理学に帰着させることによって統合する計画書,「数学の原理」 [ を公けにした ( §V,A ) ) . それは数学を統一するという構想によりふさわし , Schroderおよび彼らの



8 7 0年に P e i r c e[ 2 2 2 ]により,そして 1 8 7 7 後継者たちで, Stoneに至る.第二に 1



* >B o o l eの加法は xy=Oつまり”と yが互いに他を排除し合うとき以外は定義されな いので,排他的論理和 ( d i s j o n c t i o ne x c l u s i v e )の制限とも,非排反的論理和の制限とも見 なしうる.後に見るように,どちらの視点もそれなりに役立つことがわかる. * * >P e i r c eの仕事 ( [ 5 8 ] ,1 6 1ページ)は独立らしい.



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



8 8 0



年に S c h r o d e r[ 2 5 8 ]により,順序――それは包含関係で解釈できる一ーが基本関 係として相等性にとってかわった,といって言い過ぎならば,付け加えられた.



[ G H J ,53ページ)が前者の著 三位一体の基本性質((反射性,推移性,反対称性))(



作*)[222]から,この関係によって認識され, Boole代数(と束の理論)の双対原理 ( [ G H J ,1 1 1ページ参照)は後者の著作に糊る.下限としての積の特徴付けと,上 .S .P e i r c eの後の著作 ( [ 2 1 8 ] ,1 8 8 0 } 限としての((非排反的な》和の特徴付けとは, C で現われる. ( ( B o o l e方程式》一ーおよび方程式系一ーを解くための B o o l eのアル



e i r c e ,S c h r o d e rそれに P .P o r e t s k i(1846-1907)により, B o o l e自 ゴリズムは P 身のものよりももっと厳密に正当化し直され,また改良された.



[ 2 5 9 ] ,I巻 , 1 8 9 0 )の中で, S c h r o d e rに よ り 生 み 出 さ れ た 「論理代数学講義」 (



B o o l e代数の公理系は,相補な分配束 ( [ G H J ,350ページ)のそれである.漠然と ながら,彼はその構造を分析し, P e i r c eにならって,順序,零元,単位元,乗法 そして加法を順次導入し,次いで分配律と,そして最後に補元の存在を仮定とし て置いている.先に進む前に,その都度彼は先立つ前提のみからの結論をひき出 そうと努めている一―それは L i l r o t hによる故人追悼記事 ( [ 2 5 9 ] , .I I巻)によれば ほぼ 1 8 7 2年以来, S c h r o d e rが実行していた方法であった.彼はある領域の部分 集合の計算による解釈から,これらの仮定の両立性[公理の無矛盾性]が保証され ることを注意している ( I巻 , 2 1 6ページ).S c h r o d e rは分配律の独立性の間題を 自ら提起し,そのほんの少し前に,分配的でない束を発見している;「講義」の中 で彼は部分群の束によるいくつかの例を与える.またそこで,元の個数が 2 , ' 4 ,8 そして 1 6である B o o l e束の Hasse図式 ( [ G H J ,4 1 1ページ)を紹介する.これら の仕事は束論の前史に属し,後者はこれらから由来する; S c h r o d e rの記述して いるのは解釈だけである;一種の構造を切り離して,それを((束))([ドイツ語]



V e r b a n d )と呼んだのは,何年か後に D e d e k i n dがしたこと ( [ 6 3 ] ,1 8 9 7 )である.



... ..



なお,((半順序))集合自身は H a u s d o r f fにおいて現われる ( [ 1 0 8 ] ,1 9 1 4 ) . われわれが束論として知っているような ( ( B o o l e代数))は, E .V .Huntingtonの ((独立な))公理系とともに 1 9 0 4年から始まる.彼の論文 [ 1 3 1 ]は,これこれの公理



[ 2 9 ] ,I ,第 4章を参照)の研究としての((抽象計 を満たしている特別な個々の構造 ( * > L e i b n i zはこれらの性質のおのおのを, し か し 別 々 に , 証 明 す る 関 係 式 の 存 在 の 可 [ 5 5 ] ,3 8 0お よ び 3 8 2ページ). 能性に目を向けている (



IV 1 9世 紀 の 数 理 論 理 学



8 8 1



算))を捨て去る時期に属していた_それらの構造は, 1 9枇紀末に抽象計算に対 する解釈を与えてその使命を終えたのである. この公理系に次いで,同じ精神による数多くのものが他にも次々と生まれた*).



Huntingtonの記号法は電子技術者向けの多くの手引書の中で今なお普通に用い られている.



1 9 3 4年 ( [ 2 8 1 ]参照)に M.H.Stoneは,どの B o o l e束もある集合の部分集合の 束の部分束に同型であり(主張 A ) , またどの B o o l e束も全不連結なコンパクト位 相空間の開かつ閉な部分集合の束に同型である(主張 B)ことを示した.彼はそれ



ap o s t e r i o r i )正当化 から,図式による三段論法の数多くの表現方法を帰納的に ( e i p n i z以来導入され(彼はとりわけ,いわゆる Eulerの円を した一ーそれらは L 良く使っていた),



J .Venn(1834-1923)-―記号論理学という命名も彼による



[297] —と Lewis



C a r r o 1 1 c * J[ 4 5 ]を経て彼に至る.



1 9 2 8年に I .Zegalkinは数論的解釈を再び取り上げ, Booleの加法を排他的論 理和と対称差によって解釈できるように拡張すれば,それは二元体での加法とし



Z e g a l k i nとは独立に, ても解釈できることを示した (



J .Herbrandも乗法は非排



i m p l i c a t i o nr e c i p r o q u e )に対応するという, 反的論理和に,加法は逆の含意 ( [ 1 1 3 ] ;1 9 3 0 )で使った).S t o n eは 1 9 3 5年に [ 2 8 2 ] , ({双対な))解釈を彼の学位論文 ( B o o l e束上で対称差に類似な演算により,べき等な(が =xとなる)環が定まるこ とを確かめて,この環を Boole環と名付け,逆にこのような環は, x=四 yのとき



x : 5 : yと定義される順序で定まる Boole束の構造を持つことを示す;そこでは差



1 一の =l+xは , B o o l eにおけると同じく,否定によって,また対応する上限は式 の十 y+xyによって与えられ,非排反的論理和によって解釈できる.



S t o n eのこれらの仕事は量子力学の要求に答える研究の流れに結びつけられる —後者は, 1927 年以降 J,



vonNeumann(1903-1957)の主導の下に, 2 0世紀初



頭以来の解析学,代数学,位相幾何学,測度論,確率論,束論,幾何学の公理論 および論理学のそれまで得られた諸知識をひとつのるつぼに流し込む.当時の物 理学者たち ( D i r a c ,H e i s e n b e r g )は,ある状態は複素 H i l b e r t空間の点とみるこ



* > 1964年の R .S i k o r s k iの概論書「ブール代数」 ( B o o l e a na l g e b r a s )第 2版 ( [ 2 6 8 ] ,3ペ ージ)では 30以上の例が調べられている. [ * J 1832-1898. 「不思議の国のアリス」で有名.チェスの名人でもあった.



8 8 2



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



とができ,おのおのの観測量はこの空間の,自己随伴なー――必ずしも有界でない ー作用素と考えられ,その固有値――実である一ーはこの量のとりうるさまざ



i l b e r tのスペクトル理論(第 まな測定結果を表わす,という立場をとっていた. H V I I I章 , § V I I I )は vonNeumannによって最初に今日われわれの知る形が与え られることになる ( [ 1 9 9 ] ,1 9 3 1 )が,そこにおいてスペクトルの部分集合で生成さ れた閉部分空間上への直交射影が,またそこでの自然な作用(合成および恒等作



o r e l部分集合族(第 VI章 , § IX,C ) )の束の 用素との差)によってスペクトルの B \測度 0の集合による商と同型な B o o l e束が定まるような諸作用素が導入される. 上に引用した S t o n eの諸定理は,こうした関心から導かれた;一方それら自身は



Z a r i s k i位相の概念の遠い由来になっている ( [ 6 5t e r ]参照). B o o l e代数は束論と環論というその二つの形の下に, 2 0世紀初頭以来,集合の 代数,位相幾何学,さらに測度論および確率論との結び付きをますます数多いも のにする研究成果を次々に生み出してきた. 代数的論理学 ( l o g i q u ea l g e b r i q u e )の名は 1 9 5 5年 P .Halmos[105]により,類



o o l e代数による実現の処理の諸領域(特に,第一階 の計算と命題計算に対する, B の述語計算)への拡張から結果する代数的構造の研究 ( 1 9 3 0年 頃 に ま で さ か の ぼ る)において与えられた*).



[ G H J ,1 1 2ページ)は論理的に同等な式 ( [ G H J ,1 1 4ペー ((純粋な))命題計算 ( ジ)を同一視しないという点で((論理代数))とは区別される.古典論理と多くの非 古典論理 ( § V ,D ) )では,連結記号 ( c o n n e c t e u r )( [ G H J ,1 1 2ページ)[八, V, ⇔ ,



r , →のこと]は論理的同等性と両立するから,一方で扱われるすべてが他方に u s s e l lが宣伝するまで Fregeの構想はほとんど 置き換えられる.実のところ, R 普及していなかったために,今日命題計算の標題の下に分類されている多くの発 展は,それ以前に,論理代数に関する研究においてなされた.また,((命題計算》 ([ドイツ語J A u s s a g e n k a l k u l )という呼称そのものは「講義」における S c h r o d e r による ( [ 2 5 9 ] ,I巻 , 1 6 1ページ)が,しかしこれは, 1 8 7 7年 B o o l eの著作を知ら ずに H .McColl( 1 8 3 7 1 9 0 9 )によって書かれた,純粋命題計算を扱っている小論



文( [ 1 7 9 ] ; また [ 1 7 8 ] )のひとつの題名:((同等な主張の計算と積分の極限))から示 ) * これらの発展を扱う余裕はないが,その簡潔な歴史に関しては [ 1 4 8b i s ]と [ 1 5 4b i s ] を参照されたい.



IV 1 9世紀の数理論理学



8 8 3



唆を受けている.逆に,この種の計算に対する最初の公理系,「概念記号」



( B e g r i f f s s c h r i f t )[ 7 9 ]における Fregeの公理系は S c h r o d e rのものより確かに早 く1 8 7 9年に出るが(後者は 1 8 8 0年以後そのことを認めている),それは論理代数 での公理系と見なせる. またそこで命題計算は初めて形式的体系 ( s y s t e m ef o r m e l )( § V ,C ) )の枠内で 扱われる一一実のところ,それがまず事の自然な成行のうちに現われ出てくるよ ... うな秩序立った提示によってしかそれは他から切り離しえないのである.これ以



... . ... .. .. . .... ... .... .. .......... .. . . .. . ... ...



後には,こういった取扱いに組み込まれることなく命題計算を特別に見るような



いかなる公理系も存在しない. F regeは 1 8 9 3年の「数論の基本法則」 ( G r u n d g e 巻)で,先のものとはかなり違ったものを与えて s e t z ed e rA r i t h m e t i k )( [ 8 3 ] ,I いる.それに続くのは, 1 9 0 6年から 1 9 1 0年の間の ( [ 3 0 3 ]にある) B .R u s s e l lのも



9 1 7年の N i c o d [ 2 0 2 ]のもので,その後 H i l b e r tとBernaysの周辺,および のと 1 ボーランドで 1 9 2 8年以後おびただしい数のものが現われる.



1 9 2 0年頃,非古典論理を公理化する別の諸体系により,多数の論理計算が導入 され,たがいに関連する仕事が緊密な相関関係をもって次々に現われる;当時の 問題提起から生じた定理(両立性,完全性など)については後に立ち戻ろう.「概 念記号」の中で, F regeは次の公理:



1 p⇒ ( q⇒p )



4( p⇒q )⇒(,q⇒ ,p)



2( s⇒ ( p⇒ q ) )⇒ ( ( s⇒p )⇒( s⇒q ) )



5 , , p⇒P



p⇒( q⇒ r ) )⇒ ( q⇒( p⇒ r ) ) ・ 6 p⇒ , , p 3( および分離規則 ( rらg l ed ed e t a c h e m e n t )つまり肯定式 (modusp o n e n s )による三 段論法,それにそれとはっきり記されていないが置換規則 ( rらg l ed es u b s t i t u -



t i o n )とからなる推論規則 ( [ G H J ,1 1 8ページ)から出発して形式的に導かれるい くつかのものを呈示するにとどめている(置換規則なしで済ますことを可能にす る公理図式 ( s c h e m ad ' a x i o m e s )の概念は 1 9 2 7年 vanNeumann[ 1 9 7 ]により導 入され,そこでは十分念入りにその意味の説明も加えられていた). 真理表 ( [ G H J ,1 1 3ページ)は 1 8 8 5年 C .S .P e i r c e[ 2 2 0 ]により,系統的な決定 手続き ( § V ,E ) )として導入された ( F r e g eは否定と含意 [ 7 9 ]に対し,その形式こ そとっていないが真理表を記述している);これを普及させたのは, 1 9 2 1年の



J .I:ukasiewicz[ 1 7 6 ] ,E .P o s t[ 2 4 0 ] , それに L .W i t t g e n s t e i n[ 3 0 6 ]であった.そ



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



884



れ以前に,考えられている変数による項を考慮に入れた変数の無矛盾論理積



( c o n j o n c t i o nnonc o n t r a d i c t o i r e )あるいは変数の否定――それらは B o o l eのア ルゴリズムによって自然に導入される一ーにより, J e v o n sは与えられた仮定と 両立する論理関数を作る機械的な手続きを記述することができた; 1 8 7 0年に,彼 は[大英]王立協会に彼の使った論理ピアノを提出する一—それは機械仕掛けで 4



変数まで,与えられたものを表示したのち計算結果が表示される ( [ 2 2 4 ] ,1 8 7 0 ,



4 9 7 5 1 8ページ [ [ 1 4 5 ] ,4 2 1ページを見よ]).



S .



C . P e i r c e[ 2 1 8 ]はこの手続きを体系化して, ( ( P e i r c eの法則》 ( ( p⇒q )⇒p )⇒P を発見するに到る.この手続きにより与えられた数の独立変数 ( a r g u m e n t )に対 する連結記号 ( [ G H J ,1 1 2ページ)を数え上げて記述することができ,一方から



8 8 0年以後, 1 9 3 3 他方がいかに定義されるかを研究することもできる.そして 1 年になって初めて刊行される断片 [ 2 2 1 ]の中で, P e i r c eはただ 1個の連結記号(非 排反的論理和の拒否あるいは否定)を提案している.論理積の否定を使う類似の 結果は H .S h e f f e r[ 2 6 4 ]により 1 9 1 3年に公けにされ,彼の用いた棒線



lは 1917



年に J .N i c o d [ 2 0 2 ]により採用されて,ただ一つの公理



( aI C bI c ) )I { [ d i( d id ) JI [ C eI b )I ( C aI e )I C aI e ) ) J }― と,分離および置換の二つの規則のみからなる命題計算の公理系を生んだ. B) 関係の理論 われわれはすでに, L e i b n i zが最も一般的な関係の研究をしようと望んでいた



§ I I I ,B ) ). .1 9泄紀の中頃,この路は A .d eMorganによって切り開 点にふれた ( かれた;これは B o o l eのそれに続く,論理学の発展における偉大な寄与の第二の



8 4 7年の「形式論理学」 ( F o r m a lL o g i c )[ 1 9 3 ]以降, d eMorganは ものである. 1 三段論法の理論をできうる限り最大限にまで拡張しようと努力している;主語と 述語が(少なくとも)ある与えられた数として((解釈され})うる((数値で定義された}} 三段論法*)の他に,((通常})命題の数を倍にふやし,さらに非ーX , つまり考えて いるもっとも一般的な概念が含まれている((普遍域 ( u n i v e r s )に関する })Xの類の



1 8 6 0年に, Cambridge 補類を導入して,三段論法の図式の数を数倍にしている."



* )



例:ある lOXは Y である.



L a m b e r tも類似の研究を行なった.



IV 1 9世 紀 の 数 理 論 理 学



8 8 5



... .....



哲学協会への三段論法に関する一連の報告(それは 1 8 5 0年から始まる)を続ける 中で, d eMorganは,今日まで用いられているような,ある関係の補関係と逆関



1 9 4 ] . 係,二つの関係の共通,合併,(合成による)積*)の関係を導入する [ この機会に彼の言っていることは彼の考え方とその水準の位置しているところ



.......



を完全に明らかにしている:((論理学に関する私の第二と第三の論文で,私は普 通の三段論法が関係を構成する一つの, しかもただ一つの場合であることを強調 した.この第四論文ではさらに一歩を進め,論理学の一分枝たる「関係」の主題 へと立ち入ることにする》.彼は -1



CR=CR







. , , . . . . _



-1



-1



RnS=RnS ,



. ....



((推移的な関係の逆関係は推移的である))といった定理を証明して, さらに結論づ けて言う:((認識の歴史上初めて,関係および関係の関係……といった概念が記 号化された)). 彼の対称性への関心は既に「形式論理学」の中に現われ,そこでは対称性を操 って導かれた彼の名前がついている法則**)



C(AuB)=(CA)n(CB)



C(AnB)=(CA)U(CB)



が述べられているが,同じ関心から彼はまた,他のものから定義されるために今



r e l a t i v e 日では忘れられたひとつの演算,合成による積の双対にあたる((相関和))( sum)を導入している.



1 0年後, P e i r c eは関係の理論をも含むように論理代数を拡張しようと目論む. 彼は関係の理論の発展に,細部においても偉大な理念においてもあまたの貢献を している.われわれは既に,現代的な限定作用素と行列記号に言及した ( § I I I ,



A ) ) ; 彼はまた -1



RoRC C J d [ * J ) * もし R と Sが そ れ ぞ れ A の B に対する関係, Bの Cに対する関係ならば,合成 SoR による積は, aEA および cECに対して, a(S0R)c⇔ ヨ bE B(aRbかつ b S c )



となるような A の Cに対する関係のことである. * * ) 文 章 の 形 で は , こ れ ら は 少 な く と も Ockhamの 「 論 理 学 大 全 」 (Summal o g i c a e ) ( 1 3 2 3 1 3 2 9 )に洞る ( [ 1 4 1 ] ,16ページ)., [ * ] この式はおかしい.むしろ Rの始集合への射影が全射(すなわち Vのに対し(ヨ y: のRy)ならば R玉 RっI d .



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



886



Ro$C CJd戸



R Cc s



といった種類のたくさんの論理式を証明し, 1 8 8 5年 [ 2 2 2 ]以降さらに大きく歩を



[ G H J ,6 0 3ページ) 進め一ー用語は別として一一今日関数計算もしくは述語計算 ( formenormalep r e n e x ) * >を 導 入 し て , 論 と呼ばれるものにおいて冠頭標準形 ( 理式 ヨ ぉVyA(x,y )⇒Vyヨ のA (x,y )



( 1 )



の正しさを証明し,さらに ( 1 )の逆は一般に成立しないが,しかし特別な場合には, 成立し,例えば yが A(x)の中に含まれず,めも B(y)の 中 に 含 ま れ な い と き に は ヨぶ寸 y[A(x)A.B(y)J~Vy ヨの[A(x)A.B(y)J



F ⇒韮A ( x ) / 1 .VyB(y)



となることを証明する. 彼は,関係を未知数と係数にもち,関係に対する作用が現われる方程式を解く



.. ....



方法を見出すことへの自然な関心から,全く自然にここへと導かれた;しかしこ の作用には関係に対する限定作用素も含まれる:彼によれば,これは,関係のグ ラフによる解釈に従えば,解析学におけるものと類似して,無限和および無限積 の記号である;そして命題による解釈に従えば—それは彼が考えついたものに



違いないが一一存在作用素と全称作用素の記号である.対応する命題は従って第 二階( §V,A ) )であり一ー第一階のものに対しても,一般的アルゴリズムはない



§V,E)) —彼は非常に部分的な結果しか得ていない.最後に,論理 けれども (



.. ..



式 ( 1 )の逆が示すようにある方程式の解に対する関係の振舞の多様性から,彼は 普遍な類の個別的な対象を表現するための変数を計算中に導入し,これらの対象 の個数に応じた方程式の可解性の問題を,実質的に,提出している;かくして計 算式に対し,個別的対象の類による解釈手続だけによっても,彼が既に認めてい るように,解釈のさまざまな((領域))が別れて存在する.



P e i r c eに続いて, Schroderは系統的な研究を企てて,それらの結果を 1 8 9 5年 の全部で 6 5 0ページにもなる「論理代数講義」第 3巻 [ 2 5 9 ]で 述 べ て い る ; そ の



* )



ある論理式は Q心 1 Q 2 x 2 ・ ・ ・ Q心 n < pという形で表わされているとき,冠頭標準形といわ



れる一―—ここで Q1, Q 2 ,… , Qnは限定作用素で,ゃは限定作用素を含まない合接あるいは離



接的標準形である.



IV 1 9世紀の数理論理学



8 8 7 '



中で,彼は上述したのと同じ種類の論理式の証明,数多くの特別な場合の方程式 の取扱い,それに十分一般的な場合に近付くための手段の素描を積み重ねてい るが,しかし最終目的には余り近付いていない.彼の((領域))は D edekind流 の ((思考領域)) ( D e n k b e r e i c h )である;その((個体))[*]は((思考可能なもの))(Denkmog-



l i c h e )の((純粋多様体))[**]の中から取られる.彼はさらに, d eMorganと P e i r c e の創造的な研究の後,関係の理論に主要な貢献をしたものとして, D edekind[ 6 2 ] の連鎖の理論 ( K e t t e n t h e o r i e )を引用している;そして第 9講 を , 関 係 の 理 論 に 関する彼の記号法の中でほぼ公理化された連鎖の理論の叙述に充てている.彼は この公理化に慣れていたためその単純化に気づき,それは彼にとって良い前兆と



見えた. Frege の研究の中で,命題式—-1897 年の「概念記号」 [79] 以降,((純粋関数計



算))とでも呼びうるものの中で,取り扱われる一ーーと,関係のグラフと類を表わす



式—-1893 年の「数論の基本法則」 [83] 第 1 巻で導入される一ーとが一挙に別の ものとされる. 1 9 0 3年の「数学の原理」 [ 2 5 4 ]で B .R u s s e l lは こ の 区 別 を 考 慮 す べきこととして取り上げ,命題関数 ( ( xは yに対して関係 R にある))をのRyで 書



regeと Peanoのものに由来する別の記号で類の理論と き表わし,後の章では, F 関係の(グラフの)理論を扱うことを提唱する.このプログラムは,この間に提起



§V,A ) )に合わせる形で, A .N.Whiteheadと B .R u s s e l l されていた型の理論 ( により 1 9 1 0年の「数学原理」 ( P r i n c i p i aM a t h e m a t i c a )( [ 3 0 3 ] ,I巻)の中で,こ



c h r o d e rの「謂義」にまずまさるとも劣らず完全な形で実現さ の点に関しては S れた.型の理論に準拠する点を除けばこうした処理の仕方はわれわれのものと同 じである.



c h r o d e rの弟子たちは彼の試みをさらに追求している. Sehrか この間にも, S d e rは凝集可能方程式 ( e q u a t i o nc o n d e n s a b l e )の 概 念 を 導 入 し た ( [ 2 5 9 ] ,I I I巻 ,







] * [ 原語 ' i n d i v i d u ' . 論理学用語. S c h r o d e rはしかしこれに対し主に現行の「元」 ( E l e m e n t )の用語を充てている. c h r o d e rにあっては, [ * * ] 言葉のあやかもしれぬが,著者は不正確な引用をしている. S r e i n )とは,そこで空集合 「多様体」とは「思考領域」とほぼ同義であり,それが「純粋」 ( v e r e i n b a r )(全体集合を考えられること) を考えられることで,対応する性質「合一可能」 ( g e w o h n l i c h )多様体」がわれわれの集合にほぼ対応する概念になる を併せ持った「通常 ( ( [ 2 5 9 ] ,I巻 , 342ページ).







888



X I I I章



公理論と論理学



5 5 0ページ)ー一凝集可能方程式とは即ち,あからさまに限定作用素を用いないで, 他の作用素だけを使って書かれた方程式と同値なもののことである(中でも合成 による積と相関和は限定作用素を隠してしまう:例えば, ScP0Qは



V応 t y [ のSy⇒ ヨ zはPz/¥zQy)] と読まれる).



ところで, K o r s e l t * )は,方程式:



ヨuヨ v ヨwヨ z ( uキ V/¥Uキ W/¥Uキ Z/¥Vキ W/¥Vキ Z/¥Wキ z ) で,しかもその((領域))が少なくとも 4個の元を持つものは凝集可能でないことに 気付く.そこで,別の道から問題に取り組む必要がある;まず初めに,((番号付方



Z a h l g l e i c h u n g e n )に制限する一―そこでは関係に関わる限定作用素が一 程式))(



1 ,2 ,3 ,… ,n )という形式で表現される((領域))上 つも出てこず,領域が有限のとき ( でそれらは検討される:このような方程式を解く間題は,結局,この方程式が表 わす第一階の論理式 ( §V,A ) )が満たされている領域で,その方程式に含まれる 関係パラメータの解釈を見出す問題に帰着される.



1 9 2 5年の論文 [ 1 7 4 ]で , L .Lowenheim( 1 8 7 8 1 9 4 0 )が三つの主要な結果を提示 しているのはこの場合である.そのうち二つは重要である:一つは任意の番号付 方程式は二項関係だけが表われるものに帰着されることであり,他の一つは独立 変数の関係だけしか表われない番号付方程式は,それが有限濃度のあらゆる領域 で満たされていれば,恒等式になるというものである.三番目のものは,現代の 論理学で最も基本的なことの一つ, Lowenheim-Skolemの定理の最初の形であ る:無限((領域))で満たされている全ての第一階の論理式は,実は可算な領域です でに満たされている.



1 9 2 0年に Th.S k o l e m ( 1 8 8 7 1 9 6 3 )は,なお論理代数の記号法を用いているが, 合成積と相関和は消去した形で,その間題を再び取り上げる.彼は Lowenheim の証明の欠陥を補って,要するに,定理の最終的な形を証明する:モデルを持つ 第一階の述語集合はすべて可算モデルを持つ [ 2 6 9 ] . 続く 1 0年の間に,この種の問題の扱いにおいて, H i l b e r t学 派 の 記 号 法 が



Schroderのそれに次第にとって代り,現代的意味論へと徐々に進展してゆくが, それについては後に扱う ( §V,F ) ) .



' *Lowenheim への手紙の中で—この手紙は彼の論文 [174] 中にある.



IV 1 9世紀の数理論理学



889



C ) _ FregeとPeanoによる公理化された論理学 : ' S c h r o d e rは 1 8 8 0年に「概念記号」におけるもはや論証や代数の類似とは思え ない論理学の記号法の導入に対し批判を加えた.それに対し Fregeは 2年 後 次



c a l c u l u sr a t i o c i n a t o r )で のように答えている:((私は実際単なる「論証計算法」 ( e i b n i zの意味での「特性言語」 ( l i n g u ac h a r a c t e r i c a )を創り出そうと はなP o i n c a r e:((真の数学は,現実無限 ( l ' i n f i n ia c t u e l )[無限個のものの同時的存在]に



おいて行き詰まることがな L e i b n i z( [ 5 6 ] ,4 2 4 9ページ)によって提案された素因数分解の類似した使い方より もこの着想の方が簡単である;なぜなら彼はこのようにして素数で表現された概念の組合 せを表現しようとしていたのであるから. しかし,整数によって言語の表現式を表わすと いう着想の先駆者として L e i b n i zを考えることはできる.



936







X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



彼の名前が付いている定理(ほとんど同じ頃に, Turing[ 2 9 1 ]の方でも独立に得



9 ] : 述語計算の決定アルゴリズムは存在しない(これは,論 ていた)を証明した[4 理式が論理的に真であるか,あるいは真でないかを,有限回の手順でうまくいっ たときに告げる,アルゴリズム的(よって帰納的)手続きが存在するならば,ある 論理式が存在して,それに対する手続きぱ,真偽を確認できる展開法則が現われ ることがなく,無限に続くということを意味する; B ethの表 [ 1 2 ]は , G entzenの



[ 8 8 ] ,[ 8 9 ] )からヒントを得て,そのような手続きの一例を構成している). 表( Skolemは 1 9 2 3年に,数論において,無限個の数からなる類に作用する限定作 2 7 1 ] . 用素が現われない論理式だけを扱うことでどこまでゆけるかを探求した [ こうしてこれを契機として彼は(原始)帰納的定義の領域を調べ,帰納法の図式に



B o u r b a k i ,[ 2 9 ] ,1巻[集合論], おいて,(通常の)((弱い})帰納法を((強い})帰納法 ( 第 m章 , § 4 ,n ° 3 )に置き換えても得られる関数の集合を広げるわけにはいかな いことを示すに至った.この仕事は,この理論(現在原始帰納的数論と呼ばれる) が,その決定可能性が有限主義的方法で証明されるしかも自明でない理論の一つ の例を与えるという理由から,いたlに対して a ( a ,n)=aとなるような補助的関数 a ( a ,n )と,後の二つの



...



変数[すなわち b ,n]に関し同時に次の帰納的な図式を満たす関数 c pを導入する:



p二゜~+~)a::(a, n)



p ( a ,c p ( a ,b ,n+1 ) ,n ) . c p ( a ,b+1 ,n+1 )=c



) * ョ x(x~a) および 't:/x (の ~a). * ) 彼の c pの定義図式はここで与えたものとは異なるが,それがこれらの式を満たす ことは証明される.



V 2 0世紀の偉大なる理念



9 3 7



求める関数は c p ( a ,a ,a )で , こ れ が ど ん な 原 始 帰 納 的 関 数 よ り も 速 く 増 大 す る ことを彼は示す.同時に彼は,二重の帰納法で定義された関数が必ずしも原始帰 納的でないことも示している.



e f f e c t i f )定 義 と 列 挙 ( [ 1 0 4 ] ,[ 2 7 ] ) , 矛盾なく定義された計算可能な関 実際的な ( 2 6 ]を要求する E .B o r e lの伝統を継いで, Herbrandは 彼 の 最 後 の 論 文 [ 1 1 4 ] 数[ において,すでに Ackermannに よ っ て 考 え ら れ て い た 一 部 の 数 論 の 無 矛 盾 性



(§V,C ) )を 明 ら か に す る 証 明 を 与 え る 目 的 で , 実 際 に 計 算 可 能 で あ っ て , し か



1 9 3 1年)*)の G o d e lへ の 手 紙 の 中 で も先のものを含む関数を導入する.この頃 ( o d e lが 1 9 3 4年の P r i n c e t o nの講義 [ 9 7 ]の中で,一般帰納的関数**) 彼は,後に G と命名する概念を,幾分制限することによってそこから引き出した,ひとつの概 念の定義を述べている.



hurchと Kleeneは , 1 9 3 2年以来別の種類の関数,((ぇ定義可能な))関 次いで C 9 3 6年 数***)の研究を進め,これらが計算可能であることを明らかにしている. 1 hurch[49]と Kleene[ 1 3 8 ]はこれが一般帰納的関数と一致する概念である に , C テーゼ



ことを証明し,



さらに Churchは ( ( C h u r c hの主張))という名で知られる仮説を表



明する;それによれば実際に計算可能なあらゆる関数(直観的概念)は一般帰納的 関数(正確な数学的定義の対象となっている概念)による形式的な式で表現される.



uring( 1 9 1 2 1 9 5 4 )は 完 全 に 独 立 に な さ れ た 研 究 [ 2 9 1 ]で,全 ちょうど同じ頃 T く異なる定義を取り入れ,計算可能な関数についてのひとつの概念を提案し,計 算可能性の直観的な考え方に対する彼の定義の道切さについて同様の仮説をたて



2 9 2 ] , この概念がぇ定義可能な関数,したがって一般帰納 さらに少し後で [







[ 1 1 0 ] , 619ページにある Godelの証言を見よ. * ) この定義の言うところはすなわち,原始帰納的な形成手順のほかに,すべての ( x 1 , X 2 ,…,叫)に対して c p ( X 1 ,…,Xn,y)=Oとなる最初の gが存在するような c pに限り,し c p ( x i , X 2 ,…,叫)をそのような yとして, c pから¢ への推移を認めることにある [ 1 4 0 ] .K l e e n e のその後の研究 ( [ 1 3 9 ] ,1 9 3 8 )から(同じ手順によってだが,ただしある段階で止まってし まわない値の計算のみに道用される)部分的に定義された帰納的関数を容認するという興 *l



味が起こってきた一―—その関数は,定義されない値からはじめると場合によっては無限に



《堂々めぐりする))ことがありうる((プログラム))により Turingの意味で計算可能な関数で ある. * * * ) 読者をまった<訳が分からないままにしておかないために, Churchが入x c p ( x ,y ) は(パラメータ y に依存する)関数か→ c p ( x ,y )であること等を注意している点だけ指摘し ておこう.この時期の歴史は K l e e n eによる「数理論理学」 [ 1 4 1 ]中で語られている.



938







X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



的関数の概念と一致することを証明した.さて,彼の意味で,ある関数が計算可 能であるとは,それが彼の記述しているある型の理論的機械によって計算できる



( T u r i n g機械)}の名で呼んできた:これは ときであって,われわれはこの機械を ( 空か満ちているかどちらにもなりえる区画が無限に連なった一本の線状のテープ から構成された記憶装置を含む;別の諸装置はそこにおいて,ある有限個の状況, ((状態)}を許容する;各段階で,この機械は記憶装置の一つの区画を検索し,前も って決められた,検索された区画の状態と内容による指示を含むプログラムに応 じて,次の三つの演算の列を実行してゆく.その最初は区画に関係し(その指示 に従って,区画はもとのままか,もしくはその内容を逆にする),二番目はテープ の位置に(その指示に従って,次の段階に予期される検索は,検索された区画のす ぐ前の区画もしくはすぐ後の区画に向けられる),三番目は(その指示に従って) 別の装置の集合を(場合によって)別の状態へ移行させることに関わる.現代の電 子計算機もこのように考えられており,ただ T uring機械は無制限の記憶容量を もつことと,故障なしに機能し続けるという点でのみ異なる.《C hurchの主張}) は,それ以来計算可能性についての直観的概念を説明するべく考えられた別の諸 概念が帰納的関数の概念に還元されることにより,他にも数多くの確証を得てき た.最もしばしば用いられるものの中に, P o s t( [ 2 4 1 ] ,1 9 3 6 , および [ 2 4 2 ] ,1 9 4 3 , これらは 1 9 2 0 1 9 2 2年にさかのぼる研究に由来する)の概念と, Markov( [ 1 8 7 ] ,



1 9 5 4 )のアルゴリズムの概念とがある.



G o d e lの議論における,原始帰納的関数の数学的取扱いおよびその定理が適用 される形式的体系についての詳細な記述のような正確さは持っていないが,



H i l b e r t( [ 1 2 3 ] ,[ 1 2 6 ] ,§V,C ) )の構想に従って完全に形式化されたとされる数学 上の命題の中に,決定不能な命題,すなわちそれ自身もその否定もともに形式的 証明を持たないような命題が存在するという結果は, 1 9 2 5年 末 既 に P .F i n s l e r



[ 7 2 ]によって他に先んじて得られていた.彼の論法は,彼に着想を与えた R i -



c h a r dの論法 ( [ 2 4 9 ] ; §V,A ) )と同様,形式的対象に対し適用されるにもかかわ らず,直観的で非形式的なものにとどまっている. F i n s l e rは(値 0または 1をと る)無限の 2項系列と,この列の一つが無限個の零項を含むような形式的証明,も しくは無限個の零項を含まないような形式的証明を考察する.このような証明を 列挙し,それらの証明が関わっている列にこの列挙を移し変えて,対角線の列を



V 2 0世 紀 の 偉 大 な る 理 念



939



取り,その各項の値を逆にして得られた((反対角線))の列を作ることができる.こ れは列挙に属しえず,したがって考えている証明のどれとも関係づけられない; 故に無限個の零項を含まないという命題は((形式的に決定不能))である.



しかしど



の項も 1になる列は無限個の零項をもたないことについて前もって決めたいかな る長さをも越える形式的証明を見出せる;それ故この列はこの列挙の中で無限回 繰り返して数えられている;故に反対角線列は無限個の零項を含み,考えている 命題は形式的証明を持たないにもかかわらず,やはり直観的に偽である.



1 9 3 7年に, Turing[ 2 9 2 ]は形式的体系の概念の定義が適当か否かの判断基準と して,所与の可算個の記号の集合上に構成された体系の構成において分離抽出さ れる記号列や記号列の列等々の形成規則についての帰納的特徴を押さえることを



0世紀中葉の論理学者たちは,似たような回り道の末,帰納 提案した*). さらに 2 的関数が論理学のあらゆる分野の中で基本的役割を果すことに気付いた.これは 数論においても同様であり,実際に帰納的関数の研究はその中の 1章を成してい る.このことは, 1 9 7 0年に M a t i j a s e v i c[ 1 8 8 ]が H i l b e r tの第 1 0問題を解決した 定理,すなわち(整数係数の多項式を 0に等しいとして得られた)不定方程式の解 の集合が帰納的可算集合と一致することを主張する定理の結果を見れば十分に理 , § I X ,F )を見よ). 解される(第 V章



F) モデルの理論の登場 形式的言語とそこで証明できる論理形式との区別,それに研究対象としてそれ らを設定することは,当初からそれらの意味の変革,およびそれらの解釈の識別 と,その平行した研究の遂行から切り離せない.ある形式的言語が内容として研 究すべきものを持っていると想定しうることを示す構造を表わすために,モデル



) * この視点は Godelによって採用された ( [ 1 1 0 ] ,6 1 6ペ ー ジ ) . 変 数 に 番 号 を 付 け て 記 号列を((コード化する))仕方において重要な点は,その証明で利用された超数学的概念のコ ードにおいて,その帰納的な性格,したがって定義可能な性格を維持するために,その n 1 ,n 2 ,… ,n , . )の((コード)) ((コード化))が原始帰納的であるということであるのがわかる.列 ( n 1 3 nか ・ ・ P i kf ましたがって,単なる実例の意味しかもたない; n i , として与えられた表現 2 ・ ・ ・ , n , .f ま棒線を用いて書かれているとしてもよいし, [ n 1 ,… ,n , . ]を(数字として棒線,コン マそれに二つのかぎ括弧を用い) 4進数の表記として採用してもよい. C a n t o r (第 VI章 , § V I I I ,A ) )の 発 見 し た 炉 か ら Nへ の 全 単 射 写 像 ( x ,y)~(x+y)(x +y+l)/2+yの 重 要 性 は , こ れ が 原 始 帰 納 的 で , こ の よ う な コ ー ド 化 を 許 す と い う 点 に ある.



9 4 0



第X I I I章 公 理 論 と 論 理 学



という非常に適切な用語を論理学に導入したのは他でもない v onNeumann



[ 1 9 6 ]であると思われる. 2 0世紀後半においてモデル理論とは,形式言語の解釈 の研究,およびそれらの解釈が記述するモデルの理論と元の解釈との関係の研究



0年間に,術語は最終的に固定されていないに に用いられる名称である.先の 2 しても,形式言語とその表現式における,内容の復元の研究を意味論と呼んでい る.これまでのあらゆる経過が示すところでは,こうした研究への専心に際し, 数学者たちをその下に結集させるような,統一的な概念の創造といったことを彼 らは期待していない.



1 9世紀から 2 0世紀に伝わった公理主義 ( § I I ,G ) )によって,先程述べた状況, つまり形式言語の役割を演じる仮説ー演繹的理論の基本的概念の働き,およびこ の理論の許容することが認識されるさまざまな解釈,すなわちモデルの働きが提 示される.ある公理体系は予期しないようなモデルを持ちうることが知られる:



i l b e r tが 絶対幾何,非ユークリッド幾何のモデルのように;しかしながらまた H 「幾何学の基礎」 [ 1 2 0 ]の初版と再版の間で直面したはずの諸問題,すなわち初版の 公理論の問題がある ( § I I ,H)参照). 1 9 0 4年に, 0 .Veblen[ 2 9 4 ]は本質的に一一 つまり同型を除いて一ー一つのモデルしかもたない公理系に対して範疇的 ( c a t e -



g o r i q u e )という修飾語を考え出す.そこでモデルはその公理論の諸公理が説明



すべきひとつの—絶対的な――幾何的実在でしかないという当時の一致した意 見は範疇的な公理系への要求から説明される. H i l b e r tは「基礎」の体系が必要



§ V ,A ) )である飽和の公理を加えてこ な範疇性を呈するように,第二階の公理 ( i r i m a n o f f( [ 1 9 0 ] ,[ 1 9 1 ] )は Zermeloの公理系が範 の体系を完全なものにする. M 疇性を欠いていることを同様につきとめ ( § V ,B ) ) , また F r a e n k e lは集合の類を 最大のものに還元させる—その後は取り上げられなかった_—-制限の公理を



1 9 2 1年に提唱し [ 7 5 ] ,T a r s k iは 1 9 3 1年の論文「形式的演繹科学に関連せる真理 の概念について」 [ 2 8 5 ]の中で,絶対的真実の概念を取り扱っているのが見られる.



S c h r o d e rによる関係の代数 ( § I V ,B ) )を受け継いだ結果は,いわば,逆の状況 を呈する.2 0世紀のはじめ頃に提出された大部分のモデルは構造に関するもので



§ I I I ,B )参照).他方では特別な構造の理論が導入され始める:体 ( S t e i n i t z ある ( ( 2 7 8 ] ) , 束 (Ded~kind [ 6 3 ] ; §IV,C ) ) , 算術 ( D e d e k i n d[ 6 2 ] ,Peano[ 2 1 0 ] ;§ I I , D e d e k i n d[ 6 1 ] ; 第 VI章 , § V ) , 多元環 ( B .P e i r c eおよび C .S .P e i r c e G ) ) , 実数 (



V 2 0世紀の偉大なる理念



9 4 1



( 2 1 7 ] ) , 群( C a y l e y[ 4 7 ] ; .§ I I I ,B ) ) . 関係の代数はいわば極大な構造の理論,すな わちある領域上のあらゆる段階の型の関係についての理論である.この分野の問 題提起からすると,ある等式に現われる関係を分離することにより,この等式に よって決定された構造についての研究がもたらされる.第一次世界大戦の終り頃



i l b e r tは彼のプログラム ( § V ,C ) )の実現をはかるために研究班を作る目的 に , H プリンキビア



でB ernaysを助手にした後,二人で Whiteheadと R u s s e l lの「数学原理」 [ 3 0 3 ] の言語をまねてひとつの形式言語を作り上げるが,彼らはこの作業を通して自覚 的に関係の代数の遺産をまとめている:((演繹的科学の方法論で現在発展しつつ ある研究においては(特に H i l b e r tの囲りに集まっている G o t t i n g e n学 派 の 研 究 においては),相対的性格を持つ,別の概念が真理の絶対的概念よりはるかに大き



..... .. .. ....... ..



...



な役割を果し,また前者は特別な場合として,後者を含んでいる.それはある個 体領域 aで成り立つ,あるいは真とされるという概念である))と, T a r s k iは既に 引用した 1 9 3 1年の論文 [ 2 8 5 ]でいっている.この用語法は S c h r o d e r学派のもの



B e f r i e d i g u n g ) , 恒真領域 ( G i i lt i g k e i t s b e r e i c h ) , 普遍的恒真性 である:充足性 ( ( A l l g e m e i n g i i lt i g k e i t ) , といった用語は,すでに S c h r o d e rの「論理代数講義」 ( [ 2 5 9 ] ,[ 2 6 0 ] ,1 8 9 0 1 9 1 0 )において見出される.それらの意味は自明のことと され,論理式をその解釈と混同するという欠点を持つこの言語において,ある表 現式(多項式の形の一ーただしその演算は連結記号あるいは限定作用素として読 むことを許す)が 1に等しい(普遍的関係である)こととして,直観的に扱われる. この式と解釈との混同は H i l b e r tに到ってはなくなっている;表現式は形式的な ものに過ぎず,その解釈の表現はなしですむ;しかし上記の用語の直銀的採用は 続く. T arskiはそれを入念に作られた理論で置き換える. ある論理式の充足性を変数に対して(その解釈を許すのに適した)構造の要素を あてはめることによって定義するために,彼はその論理式の構成に従って,一歩 一歩進んでゆく(例えば',Aが充足可能であるのは, A が充足不可能なとき, しかもそのときに限る);まず最初に(連結記号も限定作用素もない)単純形式的 表示式の独立変数にあてはめられた要素列は,この式の関連する変数を解釈する グラフに属さねばならない.ある論理式がある構造で充足可能になるとは,それ がこの構造の領域の値の少なくともひとつのあてはめによって充足されることで あり,論理式がある構造において真であるとは,領域のいかなる値をあてはめた



942



第X I I I章



公理論と論理学



ときにもその式が充足されることである;論理式が普遍的に真であるとは,(解 釈を許すのに道した)あらゆる構造において真になることである. ある構造が論理式のモデルになるのはこの論理式がそこで真になるときである が,これについては後に述べよう.ある論理式が仮説からの意味論的帰結(また は論理的帰結)であるとは,この仮説のすべてのモデルがこの論理式のモデルに



a l z a n o[ 1 7 ]は((導出可能性》に想到したのであ なることである:まさにこうして B る . こうして帰結についての二つの概念,演繹的帰結 ( §V,C ) )と意味論的帰結の 概念にわれわれは直面することになる.演繹的帰結は明らかに意味論的帰結であ る一ーなぜなら推論規則の諸前提のモデルはすべてその結論のモデルになるから. この逆が問題である:体系の意味論的完全性の問題がそれである. この意味で完



9 2 8年に H i l b e r tとAckermannが「記号論理学 全性という用語を用いたのは, 1 1 2 8 ]の初版で,第一階の述語計算に対する問題を述べたときにさかのぼ の基礎」 [ ると思われる.その答は 1 9 3 0年の初めに, G o d e lが彼の学位論文 [ 9 2 ]で証明し



9 2 1年に た完全性定理という形で与えられた.命題計算についての完全性は 1 P o s t [ 2 4 0 ]によって証明されていた.高階の述語計算については L .Henkin[ 1 1 2 ] によって 1 9 5 0年に証明された. しかしながら,すでに説明したように ( §V,A ) ) , 高階の表現式の期待される 意味から予測されるモデルで満足している限りでは,この定理はもはや成り立た ない(こうしたモデルのすべてにおいて,直観的に真になるが,公理からの演繹的 帰結でない論理式がある).彼の定理を得るために Henkinは,思いも及ばぬ着 想によって,先のものとは異なるモデル(例えば上で述べた論理式を満足しない モデル)を考慮せざるをえなかった.このモデルは((超準的 ( n o n s t a n d a r d ) } }と呼 ばれる. こういったモデルを初めて正確に述べたのは, 1 9 3 4年の S k o lem[ 2 7 3 ]である.



eanoの公理 ( § I I ,G ) )のモデル 問題になるのは,具体的に構成された第一階の P であって,この中に N に同型な最初の部分の他にこれより大きいある元が存在 する.したがってそのような元は無限個存在し[公理から,最大元は存在しない], それらのうちに最初の元は(もしあれば 0にはならないので直前の元があるはず だから)存在しえない:ゆえにこのモデルの順序は((本当の整列順序》ではない.



V 2 0世紀の偉大なる理念



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この状況から,第一階の数論の言語の中には, [Nに同型な]最初の部分を定義す ることのできるどんな論理式も存在しないし,したがってモデルの,双補的な, 後の((無限整数))の部分を定義するどんな論理式もまた存在しないことがわかる; かくしてこの最後の切片が空集合であるか,または最初の元を持たねばならない ということは書き漏らされたことになる. こうした状況が理論的に可能なことと,それに対する説明とは,すでに上で引



1 9 6 ]において, 1 9 2 5年すでに vanNeumannによって漠然とながら 用した論文 [ 予見されていた.彼はそこで,ある公理のモデルから可算な部分モデルを取り出 せるという L owenheim-Skolemの定理 ( § I V ,B ) )の証明を与えている:((体系



S'中には一連の集合と写像がある.これらは集合論の形式的要請を満たしてい る.可能な基数のどれに対してもこの基数をもつ集合が存在する.



しかし,これ



らの基数はどれも外見上のものであって,その体系に属する写像の群に関する基 数にすぎない.



というのは体系 S'が〔中略〕考えられる写像全部を含むことは決



してないからである;ある((より上位の》体系 Pはすでに新しい写像で,例えば



S'の(無限)集合すべてを互いに写しあう写像を含む可能性がある》と彼は話を結 ぷ .



ところがその何ページか後で,彼は再び話を元に戻す:((しかし,おそらく有



限性についても状況は同じであろう.有限性の定義にはいずれにせよ((すべての)) および((存在する))といった,全体系に関した概念が現われている結果〔中略〕,そ れは確定したことがそこから何も言えない類のものである.整列順序についても 全く同じことである.〔中略〕集合 aは体系ふでは整列集合(または有限集合)で あるようにみえるが,((もっと細かい》体系ふでは整列集合にならない(または無 限集合になる)というふうになっている一ーそれはたんに,最初の元をもたない aのある部分領域 bが体系ふでは集合ではなく,目にとまらずに済んだのであ るが,一方体系ふでは集合であるという理由からである(有限についても同様



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である).〔中略〕さらにまた H i l b e r tの始めた方法も,ここでは役に立たない: なぜなら,この異議は集合論の無矛盾性に関するものではな